中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 インバスケット思考

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6097人で、内訳は東京1494人、神奈川729人、埼玉414人、千葉388人、愛知343人、大阪532人、兵庫269人、京都146人、福岡284人、北海道188人などとなっています。4日ぶりに全国で7000人東京も2000人を下回りましたが、検査件数の少ない日曜日としては過去最多で油断はできません。

空港検疫でブラジルからの入国した男女4人に英国・南アの変異種とは異なる新たな変異種が見つかりました。11の国や地域からのビジネス入国を停止せず認めている現状では、こうした変異種が国内に流入するのは目に見えています。変異種の感染力はこれまでの新型コロナウイルスの1.7倍以上と高く、強毒化しているかどうかはエビデンスがないものの変異が進めばワクチンが効かなくなる可能性があります。今朝テレビに出ていた医師によれば、1度コロナに罹患して抗体ができても変異したコロナウイルスに罹る可能性があるということです。また、海外から変異種が流入するだけでなく、国内でウイルスが変異していく可能性も指摘されています。現在急激に増えている感染者が旧来の新型コロナウイルスによるものなのか、それとも変異種(国内で変異したものも含め)なのか、しっかりとした見極めが必要なように思います。既に英国と南アの変異種は国内で約30件見つかっていますが、そのうちの7人は入国後の陽性確認や国内感染によるものです。東京大学の飯野雄一教授は「変異種が流入した場合、数か月後には爆発的な感染拡大を引き起こす」と警告し「数人の流入でも相当危うい。緊急事態宣言発令の機会に、感染拡大を確実に押さえる必要がある」と警戒を促しています。しかし、政府はビジネス入国を一時停止せず緩和したままで、水際対策が不十分、認識の甘さが目立ちます。万が一、水際対策に失敗し変異種が流入し爆発的感染拡大につながった場合、誰がどのように責任を取るのか「政治家の覚悟」を示してもらいたいものです。

さて、今日は、鳥原隆志著「インバスケット思考」(WAVE出版)を紹介します。鳥原氏は株式会社インバスケット研究所の代表取締役で、法人向けのインバスケット教材開発と導入をサポートする日本で唯一のインバスケット・コンサルタントです。

インバスケットとは、架空の人物になりきり、制限時間内でより多くの案件を高い精度で正しく処理することを目標とするバーチャル・ビジネス・ゲームのことです。インバスケット(未処理箱)に入っている案件を処理していくことが求められるゲームなので「インバスケット」という名前が付いたと言われています。

インバスケットのルーツは、1950年代のアメリカ空軍の教育機関で、将校候補者の学習の習熟度や応用度を図るために開発されたと言われています。刻々と状況が変化し、突発的な事態が起こり得る中で、士官学校で学んだ知識や技術が実際に活用・応用できるかを模擬体験する意味合いで使われたのでしょう。その後、一流企業などで、管理者・リーダーの教育ツールとして利用されるようになり、現在では官公庁や中小企業でも教育・研修ツールとして使用されるようになっています。

また、個人の能力開発のツールとしても注目されています。これまでの自己啓発は知識の吸収を中心とした読書やセミナー受講、つまりインプットが主流でしたが、インバスケットは今持っていると士気や能力をどれだけ出すことができるかというアウトプット型の教育ツールです。インバスケットは蓄積されている知識やノウハウを使って、実際に起きるイベントや案件を処理し、活用できるようにする道具なのです。

先ほど書いたように、インバウンドは、架空の人物になり切り、制限時間内に、未知の・未処理の案件を的確に処理するシミュレーションゲームです。多くの人は、持っている能力を十分に発揮せず日々を過ごしています。全力を出し切って短時間で何かをやり遂げれば、達成感が湧き、心地よい疲労感と脱力感が生まれます。インバスケットはそのような状態を疑似的に創り出し、能力を最大限発揮できる環境を与えるものです。

「60分で20案件処理できるか!?」

人は極限状態でないと持っている力を発揮できません。ひとつひとつをじっくり考えていたのでは自分の実力を出し切ることは難しいものです。火事場の馬鹿力を出せるようにシミュレーションし、能力の発揮度を高めて、日ごろの業務や判断方法に活かせるようにトレーニングするのがインバスケットです。

インバスケット・トレーニングには4つのルールがあります。

  1. 主人公になりきる・・・客観的に観察、他人事のように考えてはいけない
  2. 時間を意識する・・・「60分・20案件」1つの案件に3分しかかけることができません。60分の中で案件の優先順位をつけて処理を行うことが重要
  3. 自分自身の実力で考える・・・主人公になり切り自分ならどう判断し、どう行動するかを自分の頭で考える
  4. 絶対的な正解がないことを理解する・・・インバスケットには絶対的な正解はありません。気づいた点でよいと感じた部分を修正し、自分の案件処理の方法、インバウンド法を身につける

本書では、関東と関西を中心に46店舗を展開する洋菓子の製造販売企業「多摩洋菓子株式会社」の「東京中央店店長 青山みあ(23歳)」になり切ります。堪要ガキ株式会社は燃焼45億円の業界中堅クラスの企業ですが、昨今の外食需要の減少と少子化などの影響で経営不振となり、経営陣が大幅に入れ変わり、新経営陣による抜本的な営業改革が進行中です。そうした中、6年のアルバイト勤務を経て昨年正社員として入社し、三ツ谷店の洋菓子部門のチーフを任されていた青山みあが東京中央店の店長に大抜擢されました。

さて、問題は山積みです。60分で20案件処理しなければなりません。

1.第1案件・・・青山みあの東京中央店店長最初の日、新米店長を支援するエリア指導員の甲斐から緊急事態発生で店に行けないというメールが入る。あなたならどのような判断を取るのか?ここで求められているのは、①当事者意識 ②組織活用力 ③内容把握力です。

2.第2案件・・・店員からの相談です。バースディケーキに名前を入れるサービスですが、子度家から花の絵も描いてと言われ描いたところ、マニュアル以外のサービスはするなとチーフから注意を受けた店員、お客様の喜ぶ顔が見たかっただけなのに…。ここで求められているのは、①顧客志向 ➁意思決定力 ③統制力 です。

3.第3案件・・・副店長から「自分の娘と同じくらいの人の下で働くとは思いませんでした」などと言われる。あなたならどのような判断・行動をとるか?ここで求められているのは、①人材活用力 ②問題発見力 です。

4.第4案件・・・ライバル店が駅前に出店との情報が入る。ここで求められるのは ①情報活用力 ②リスク察知力 です。

5.第5案件・・・女性従業員から洋菓子部門が優遇されていて不公平だという不満が入る。ここで求められるのは、①組織形成力 ②問題解決力 です。

6.第6案件・・・「重要 緊急 掃除道具の発注」というメールが届く。ここで求められるのは、①優先順位設定 です。

7.第7案件・・・連絡ノートに「店長様 あの実は…ごめんなさい。何でもないです」という記述があった。ここで求められるのは、①対人関係能力 です。

8.第8案件・・・「閉店時間20時なのに19時45分くらいに行くと片付けの準備をしている」と客からクレームが入る。 ここで求められるのは、①問題発見力 ②能力の発揮度 ③指導力 ④意思決定力 です。

9.第9案件・・・本社指定の社運を賭けた商品が売れない。エキナカ店で持ち帰り中の温度管理と持ち運び中に形が崩れることが原因か? ここで求められるのは、①方針管理能力 ②問題分析力 です。

10.第10案件・・・「私、休み入りません。泊まりこんでもいい」と言う従業員。ここで求められるのは、①コンプライアンス能力 ②人事労務管理 ③危機管理能力 ④問題発見力 ⑤評価力 です。

11.第11案件・・・従業員が廃棄商品を持ち帰っている。ここで求められるのは、①リスク管理力 ②対人関係能力 ③組織活用力 です。

12.第12案件・・・進物部門と洋菓子部門が販売場所で揉めて一触即発の状態。ここで求められるのは、①交渉能力 ②全体最適視点 ③意思決定力 ④調整力 です。

13.第13案件・・・本社営業部にクリスマスケーキ予約推進リーダーの氏名を報告しなければならないところ、副店長が自分に任せてくれと言ってきた。ここで求められるのは、①人材活用能力 ②問題発見力 ③組織形成力 です。

14.第14案件・・・本社商品部長が、東京中央店の廃棄率が昨年に比べ異常値になっていると原因調査と対策の報告を求めてきた。しかし、昨年比は上がっているが全国平均から見れば、6割未満の廃棄率だ。ここで求められるのは、①情報分析力 ②組織活用力 です。

15.第15案件・・・自分が知らない冷蔵ケース入れ替え工事の連絡が入る。ここで求められるのは、①問題発見力 ②調整能力 です。

16.第16案件・・・親が、会社の経営不振を理由に「娘を辞めさせる」と言ってきている。ここで求められるのは、①リーダーシップ ②コミュニケーション ③情報伝達能力 ④スケジューリング です。

17.第17案件・・・洋菓子部門から衛生用布巾と消毒用アルコールがほとんどないと言ってきているが、副店長は消耗品の予算が厳しいので使いまわしするように指示している。ここで求められるのは、①問題発見力 ②優先順位設定 ③指導力 ④創造力 です。

18.第18案件・・・従業員から「クリスマスはトナカイの着ぐるみはどうですか。周りはサンタの格好なので目立ちます」「ライバル店は紅茶フレーバーのケーキが大人気。うちのメニューにはありません」とのアイデア。ここで求められるのは、①情報活用力 ②対策立案力 ③組織形成力 です。

19.第19案件・・・夏のアイスケーキ販売コンクール4位入賞の粗品を取りに来ていないと総務課から連絡・苦情が入る。ここで求められるのは、①人材活用力 ②洞察力 です。

20.第20案件・・・従業員が発注ミス(桁を間違えて)。先月も同じミスがあった。ここで求められるのは、①問題発見力 ②対策立案力 ③課題形成力です。

これらの20案件を通じて様々な問題点が見えてきますが、組織の課題は短期間ですぐに解決できるものではありません。中長期的な視点でそれらを解決するのがリーダーの役目であり、インバスケットにゼッタイと言える正解はありませんが、同じ案件からどのような課題を形成するかによってチームとしての成果や質も変わってきます。

性別・年齢・職業・役職も違う青山みあになり切り、与えられた20の課題を60分と言う限られた時間で自分の頭で考えながら解決していくうちにインバスケットな思考が身につき、自分が持っている知識やノウハウ、経験を最大限活用し発揮できるようになると思います。 

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