中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 ゼロからのMBA

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3886人、そのうち東京1410人、神奈川539人、埼玉318人、千葉244人、愛知75人、大阪380人、兵庫122人、京都52人、福岡60人、沖縄81人、北海道111人などとなっています。首都圏・関西圏だけでなく、北海道や鳥取(29人、過去最多)など地方でも感染ペースが加速し、第5波が全国的に広がりつつあります。東京五輪まで5日となり、今日バッハ会長らIOC幹部の歓迎会が40人規模で開かれます。国民には不要不急の外出は控え会食も4人までと要請している状況で、何を考えているのかと腹立たしさを覚えます。先日も岸田派の政治資金パーティーが200人規模で開催され、日本の政治家は馬鹿ぞろい、自分らだけ国民と違う、上級国民・貴族と思っているのでしょう。開いた口がふさがりません。

さて、今日は、佐藤智恵著「ゼロからのMBA」(新潮文庫を紹介します。著者の佐藤さんは東京大学教養学部を卒業後、NHKに入社しディレクターとして何不自由なく生活していました。ところが27歳のとき、佐藤さんは「アメリカに入学して自分を成長させたい」との思いで留学予備校の門を叩きます。そこで「将来何をやりたいか分からないなら、MBA留学がいい」と予備校講師に勧められ、佐藤さんの人生が変わるのです。

佐藤さんは一念発起、壮絶な受験勉強の末、1年未満で名門コロンビア大学経営大学院に合格し、NHKという安定した職場を手放し、アメリカに留学するのです。

貯金もなく学費等1000万円近くを借金し、おまけに経済や経営の知識もほとんどなく、30歳でHNK・仕事を辞めてコロンビア大学経営大学院に入学、MBA(Master of Business Administration 経営学修士を取得するのですから、大したものです。

この本は、佐藤さんのアメリカ留学記、MBA取得体験記です。面白く勇気がもらえる本です。私も、もっと若ければ留学体験したいところですが、国内でもスキルやセンスを磨く方法はいっぱいあります。死ぬまで勉強だと思い頑張ります。

MBAで学ぶべき内容については、以前「10日で学ぶMBA」「Personal MBA」という本で紹介しています。もっと手っ取り早く、要点が知りたいという人には「図解 わかる!MBA」(PHP文庫)が要領よくまとまっています。先ずこの本から簡単に紹介しておきます。

  1. 戦略・・・⑴戦略なくして勝利なし ⑵何のための会社なのか ⑶限られた資源をどう使うか ⑷自社内にある競争優位の源泉は? ⑸強さと弱さを冷静に見極める ⑹差別化と集中でトップをねらえ ⑺攻撃か防御かを見極めよう 
  2. マーケティング・・・⑴マーケティングとは何か ⑵周囲の変化にどう対応するか ⑶狙うべき顧客とそれ以外を峻別しよう ⑷最も効率的な組み合わせを考える ⑸顧客は商品に何を求めているのか ⑹値段のつけ方で大きな差がつく ⑺潜在的顧客を掘り起こせ ⑻流通を制する者が市場を制す ⑼ブランドの威力をあなどるな ⑽結果のブレは前提に戻って対応せよ
  3. 組織・・・⑴強い組織はどうしたら作れるか ⑵組織のどこに注目するのか ⑶あなたの会社に最適な組織の形とは ⑷スピードと効率を追求するために ⑸強い組織は文化を育て、文化に育てられる ⑹真に組織が変われば、結果もついてくる ⑺いかに社員にやる気を出させるか ⑻社員は正当な評価を欲している ⑼経営者は「夢」を語れ!
  4. 会計・・・⑴会計を知らずして意思決定はできない ⑵この期間、いくら稼いで、いくら損をしたのか ⑶会社の財産は今どれくらいあるのか ⑷キャッシュ(現金)は会社の血液 ⑸会社の実態を把握して問題点をあぶりだせ ⑹どのくらいの製品を販売すればいいのか
  5. コーポレート・ファイナンス・・・⑴将来、どれくらいの価値を期待できるのか ⑵会社の資本コストをつかむ ⑶投資に対して、どれくらいの収益が期待できるか ⑷この会社は、将来売りか買いか ⑸何をもとに銘柄を評価するのか ⑹一体現金でいくら儲かりそうか
  6. トピックス・・・⑴物流が戦略ツールになった ⑵顧客のためにどう品質を管理するのか ⑶ベンチャー精神を忘れてはならない

この本では、経営の基本的な教科が、トヨタソニーといった有力企業を実例として、図を使って分かりやすく解説されています。MBAの学位を持っていなくても、ここでの知識はすぐに仕事に活かせます。

さて、佐藤さんの「ゼロからのMBA」に戻ります。

佐藤さんがMBA留学を行った時期と比べ、現在はMBAがブームとなり、多くのビジネススクールが乱立し、十分な教育も行わずMBA学位だけを与えるようなところもないわけではありますん。こうした状況から、MBA不要論やMBA有害論が生まれているのも事実です。MBAというのは学位であって資格ではありません。要は経営修士を終えたというだけであり、それだけではそれほど意味がありません。重要なのは、MBA学位を有しているかどうかではなく、MBAで教えられるような知識を有し、それを縦横無尽に駆使して仕事ができるかということです。有名大学を卒業した人がすべて優秀かというとそうでないのと同様、MBAを持っている人がすべて優秀というわけではありません。昨日書いたように、スキルとともにセンスがないといけないのです。

佐藤さんも言われるように、「MBA留学というのは、その人のこれまでの延長線上にあるわけだから、MBA留学したからと言って、急に社長になったり、億万長者になるわけでもない」のです。ただ、MBA留学によって、貴重な体験ができ、人生に選択肢が与えられることも事実でしょう。要は、人生を変えるか変えないかは、その人次第なのです。

さて、佐藤さんが、コロンビア大学ビジネススクールで履修した科目は次の通りです。

  1. 1学期(必修)・・・⑴ファイナンス ⑵マーケティング ⑶会計Ⅰ ⑷統計 ⑸ミクロ経済学
  2. 2学期(必修+選択)・・・⑴オペレーション(必修) ⑵マクロ経済学(必修) ⑶会計Ⅱ(半期・必修) ⑷意思決定モデル(半期・必修) ⑸キャピタルマーケットと投資(選択) ⑹真のプリンスを探して(選択)
  3. 3学期(選択)・・・⑴インタ-ナショナルビジネス戦略 ⑵トップ・マネジメント・プロセス ⑶広告戦略 ⑷リテーリング ⑸交渉術
  4. 4学期(選択)・・・⑴戦略から見たミクロ経済学 ⑵エグゼクティブ・リーダーシップ ⑶ターンアラウンド・マネジメント ⑷上級ファイナンス ⑸映画プロデューサーへの道

佐藤さんはNHKの出身ということもあり、「メディアやエンターテーメントの授業を多くとりたい」との思いもあって広告や映画の授業を履修していますが、MBAの基本的な科目については、上記の「10日で学ぶMBA」「Personal MBA」「図解 わかる!MBA」で十分に基礎は学べます。

ただ、ビジネススクールの授業で重要なのがケース・メソッドです。ケース・メソッドは、経営学を机上の学問に終わらせないために、ハーバードビジネススクールが開発した実践的な学習方法です。前半で物語風に会社の概要や悩みが語られ、後半に財務諸表や関連データが載っているペーパーが配られます。授業では徹底的に議論がなされた後、教授が、その会社の経営陣がどのような判断をしたのか、その結果どうなったのかを解説してくれるというものです。概して日本人はこうしたケース・メソッドに基づく議論が苦手です。大学の授業にしてもほとんどが受け身であり、自分の頭で考え積極的に議論に参加しようという人が少ないのです。これでは、知識を得ることはできても、実践に活かすことができません。結局日本の教育では薄っぺらな知識を得ることができても、実践に役立てることができません。

昨日の話からすれば、ケース・メソッドで具体的なケースを扱い、それを自分の頭の中で抽象化し、そこで得られた論理を頭の引き出しに入れ、それを引き出して具体的な問題や課題に対処するという「具象と抽象の往復運動」のトレーニングができるということです。このトレーニングによって、スキルと共にセンスも磨かれていくのでしょう。

この本は、佐藤さんのMBA留学体験記ですが、MBA留学をしようという人には大いに刺激になって役に立ちます。また、留学など考えていないし、MBAも関係ないという人にとっても、佐藤さんの熱意と苦労は、大いに刺激になって、頑張ろうという気を引き起こしてくれます。

数学も苦手、経済も苦手という佐藤さんの思い切った挑戦ですが、同じことができるでしょうか? 佐藤さんはトップ10の学校を目指します。それは「目標は高い方がいいから」という単純な理由からです。この単純な理由こそが重要です。「身の丈に合った人生」を求めていたのでは成長はありません。高望みするということも必要なのです。

林真理子さんは「やった後悔は日に日に小さくなるけれど、やらなかった後悔は日に日に大きくなる」と言っています。佐藤さんも「冒険のない人生ほどつまらないものはない」と言います。

一度きりの人生ですから、とにかくやってみることです。

人生いくつになってもチャレンジと勉強です。お互い頑張りましょう。

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