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イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1767人、そのうち東京253人、神奈川188人、埼玉121人、千葉93人、愛知151人、大阪245人、兵庫76人、京都29人、福岡75人、沖縄55人、北海道36人などとなっています。東京は3か月ぶりに300人を下回りましたが、相変わらずステージ4の段階で今なお厳しい状況にあります。街の人出は増えてきており、マスクをしていない人も見受けられます。新型コロナウイルスは、一旦下火になったかと思うとすぐに火の気が燃え上がるということを繰り返していて、気を緩めた途端爆発的に拡大します。まだ気を緩めることなく、これまで通り、マスクや手洗い、換気、不要不急の外出自粛を行っていくしかありません。

さて、今日は、ダイヤモンド・オンラインの「一流ビジネススクール教授陣が指南『イノベーションに挑戦する企業経営者の指針』とは」という記事を取り上げます。

今は「VUCAの時代」と言われます。以前にも書きましたが、VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代」のことです。何が正しいか全くわからない時代と言っていいでしょう。コロナ禍で、ますます先行きが見通せなくなってきています。

企業がこの混迷する環境の中で、生き残るためには、継続的なイノベーションを起こしていくしかありません。そのためには、継続的なイノベーションを起こし続ける企業文化をいかに生み出すか、イノベーションを促す企業文化へ変革できるかが重要です。

この記事は、ビズネススクールの教授陣に、イノベーションに挑戦する企業経営者の行動と意思決定の指針について聞いたものです。

1.平時の「思い込み」の排除が従業員の創造性を開放する(ブライアント大学・マイケル・ロベルト教授)

 多くの企業では、創造性豊かな人材の採用、新規事業担当組織の構築など新な仕組みを取り入れてイノベーションを起こそうとしていますが、上手くいかないケースが多いのです。その原因は、組織に強く根付いた「組織的な思い込み」にあるのです。新たな仕組みを作るよりも、まずは「思い込み」を取り除くことが先決です。

 昨日も書きましたが、リーダーは自分が率いる人たちと同じ仕事をすることではなく、人々を率いて仕事をさせることです。ロベルト教授も「ゴールへの道のりを片付けることであって、メンバーに答えを与えて何をせよと指示するのではなく、チームを一つにまとめ、問題にアプローチする視角を考え、分析を求めるのが良いリーダーである」と言っています。

 イノベーションを成し遂げるうえで、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で取り入れられていますが、企業文化に根付いた「完璧主義」が問題となります。実験やプロトタイピングはを行うことは、完璧でないものを受け入れるということです。実験やプロトタイピングを通じて完璧でないものを修正しながら完璧なものに近づけていくというプロセスが重要なのですが、企業に根付いた「完璧主義」が実験やプロトタイピングを台無しにしてしまいます。

 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになってしまいます。「早期に、何度でも、粗削りでも」をモットーとした企業が生き残ります。ある段階では完璧でないことを受け入れることが大切です。

 「完璧主義」という思い込みを捨てて、完璧でないことを受け入れる企業文化を醸成することが、イノベーションを起こし続けて生き残る近道だというです。

2.実験重視の企業異文化構築に向けて(ガーバード・ビジネススクール、ステファン・トムキ教授)

 実験重視の企業文化を構築することが、既存企業にとって最も挑戦的な課題であると言っています。

 そのためには、組織の底辺からトップリーダーに至るまで「スプライズ(驚き)」を価値あるものと考えるようになること、つまり「好奇心を啓発する」企業文化を創らなければなりません。企業文化として、組織全体がサプライズをよいものと受け入れるようになり、こうしたマインドセットが定着すれば、好奇心が組織全体に広がり、人々は失敗をコストのかかった過ちではなく、学習機会と捉えるようになります。

 トムキ教授は「データが意見に勝るという原則に固執すべき」と言います。意見や直感に基づいてなされると、組織のヒエラルキーが影響を及ぼすようになります。上司の意見が部下の意見よりも重視されるのです。だからこそ客観的なデータが得られる実験を重視すべきだということです。データ至上主義には問題もありますが、データ無視はもっと厄介な結果を引き起こします。

 また、トムキ教授は「コンセンサス重視の企業文化は障害になる可能性がある」と言います。コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、それまでのプロセスに時間がかかりすぎます。実験という環境では、すべてを遅らせることになり、実施の障害になるのです。

 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為で、実験の前の段階でコンセンサスを得ようとしても、どのような結果が出るかわからないので時間の無駄、無意味です。まずは実験すること、その結果によって次の行動を考えていくべきです。

3.ビジネスモデルイノベーションで競争優位に立つ(ハーバード・ビジネススクール ラモン・カサデサス=マサネル教授)

 多くの企業がDXに挑戦しながら、成果を上げることができていません。この原因について、ビジネスモデルイノベーションBMI一般に言える、諸活動のコーディネーション問題が生じている可能性があるからだと指摘されています。

 つまり、デジタル化した時にうまく機能するような諸活動の調整のあり方が、ノンデジタルの時の調整のあり方と大きく異なっているということです。そのことに気づかずにDXを推し進めてもうまく機能するはずはありません。

 ここで、マサネル教授は次の4点を指摘しています。

  • 進んで実験せよ
  • 不確実性を歓迎し、リスクを取れ
  • 失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまくいかなかった人々に汚名を着せるな
  • 異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなしうる、視野を広げる貢献を過小評価するな

VUCAの時代において、多様性はもっとも重要な要素です。多様性や相違を受容することは、単に社会的責任であるばかりでなく、自社の競争優位性を高めるイノベーション重視の企業文化を育むことになります。

4.カイゼンから、製品やサービスのカクシンへ(ウェスタン大学 ロバート・オースティン教授)

 トランスフォーメーションと呼ぶような大きな変革を成し遂げるのは相当難しいことです。今日のリーダーにとって最も困難な課題の一つです。

 オースティン教授は、2種類の変化を混同しないことが大切だと指摘しています。その2種類とは、①自分自身が起こしたものでないこと(世界情勢や自社を取り巻く環境など) ②リーダー自身が起こし、そちらへ組織を向かわせようとする変化 です。

 どちらの変化も対処することは難しいのですが、①外から与えられた変化への対応が喫緊の課題です。この変化に対応できなければ生き残ることができなくなるからです。

 日本企業は、プロセス・イノベーションカイゼンなどで比較的容易くできるようですが、ラディカルなイノベーションを起こし、顧客やビジネスモデルに大きな変革をもたらすことは容易にできません。

 オースティン教授は日本型のカイゼンに代表されるようなプロセス・イノベーションを否定しているのではありませんが、プロセス・イノベーションは、価格引き下げなどの間接的なインパクトしか与えず、効果が極めて薄いのです。ラデカルなイノベーションBMIはより直接的なインパクトを与え効果も大です。

 オースティン教授は、「日本企業は、もっと後者のことを真剣に考えるべきだ」と言っています。

5.価値創出の手段としてのM&A(ハーバード・ビジネススクール カール・ケスター教授)

 日本企業でもM&Aは増えてきていますが、買収側の企業が変わるというよりも被買収側の価値創造を目的とするものが多く、更に買収後の統合がほとんど進んでいないということです。日本のM&Aで、買収後の減損件数が3割程度あり、M&Aによる価値創造が困難であることを示しています。

 M&Aの買収時のプロセスにおいて、資本コストの意識を高める必要があります。これまで、日本企業は、資金調達を銀行に頼っており、資本コストの認識が十分にあるとは言えません。価値をどうやって創造し、計測するのかを根本に資本コストの概念があるのに、その出発点があやふやだというのは問題です。

イノベーションを起こし成長を続けるためには価値創造の手段としてM&Aを考える必要があります。