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休日の本棚 シニア世代を競争優位の源泉に変える

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で325人となっています。東京は26人と今年最低となりましたが、このところ全国では300人台が続き下どまりしている感があります。ロシアでデルタ株とは異なる新たな変異株が発見されました。ロシア政府当局によれば、デルタ株よりもさらに感染力が強く、今後世界的に広がっていくとされています。ワクチンはこの変異株にも効果があるということですが、ワクチン接種したからといって感染しないわけではないので、感染力が強くなればそれだけ感染者が増えるということです。また水際対策が重要になってきます。

さて、今日は、ハーバード・ビジネスレビューから、ミルケン研究所会長ポール・アービングの「働き続ける時代のマネジメント シニア世代を競争優位の源泉に変える」という論文を紹介します。

人生100年時代が到来し、日本でも、定年年齢が引き上げられ、令和3年4月1日施行の高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、高齢者就業確保措置として70歳までの定年引上げ、定年制の廃止などを努力義務としています。

高齢化は世界的な問題であり、避けようはありません。多くの人は、これを危機と捉えていますが、健康で活動的な高齢者も多く、寿命の伸びは世界的な経済発展に寄与するとの研究報告もあります。

この論文は、「高齢者への適切な施策は、何世代にもわたる社員が活き活きと働きやすい環境という多大な恩恵をもたらし、ひいては競争優位につながる」と言います。

1.「超」高齢化がもたらすのは危機ばかりではない

 人口の高齢化がもたらす影響について、チャンスではなく危機が近づいていると受け止める人が多いのが現状です。この人たちは、高齢者の持つ勤労者や消費者としての可能性を見過ごしています。

 今日の高齢者は、上の世代に比べて健康的で活動的であり、学び、働き、貢献し続けることによって老後のあり方を変えようとしています。

 職場には、情緒の安定、複雑な問題を解決するスキル、奥行きのある発想、組織を泳ぐノウハウなどをもたらします。彼らは若年労働者の足りない部分を補い、その指導や支援は業績向上や世代間の協働に役立ちます。第一線を退いてからの仕事、ボランティア、市民活動や社交の場では、経験や問題解決力が社会の福利に寄与します。

 高齢社員に対する先入観を断ち切って人口構成の変化に対応する企業は、多大な利益を手にし、新たな投資収益機会をもたらすとともに、社員と顧客の生活を向上させることができます。

 ところが、多くの企業では、高齢化がもたらす事業機会を見逃しています。

2.年齢差別の蔓延が及ぼす企業や社会への悪影響

 多くの企業で、年齢層の高い社員を過小評価したり辞めさせたりする悪習があります。今日の職場には、年齢に対する偏見という深刻な問題が潜んでいるのです。

 今日では、性別、人種、性的指向をもとに誰かを無視、冷笑、ステレオタイプ化することは社会的に容認されなくなっています。年齢に関しても、そのようなことは許容されるはずはありません。しかし、社内の女性、有色人種、LGBTが自社にもたらす経済的、社会的恩恵に気づくようになり、多様性への取り組みはなされてきているものの、高齢者を含む形での多様性については先延ばしされています。

 企業は若者のほうにはるかに多くの投資を振り分け、50歳代以上を対象とした研修はほとんど行われません。

3.高齢者が働きやすい施策は他の世代にも恩恵をもたらす

 高齢化は、人材採用、報酬、福利厚生の制度、製品・サービスの開発、イノベーションの実現、オフィスや工場の設計、更には業務体制に至るまで、事業運営のあらゆる側面に影響を与えます。

 どうすれば固定観念などの組織上の障壁を排除し、社内の健康で有能な高齢者を活用できるのか、ここでは、具体的にどのような変革を検討すべきかが紹介されています。

  1. 勤務体制の見直し・・・高齢者の能力や以降に合わせて、工夫を凝らしたメンター制度、パートタイム勤務、フレックス勤務、長期休暇制度などを設けるのが望ましい。引退準備やキャリア転換の支援、コーチング、カウンセリング、再雇用などの機会を提供すると、社員がやる気を出し仕事の生産性が上がる。
  2. 職場環境を再考する・・・高齢者に優しい職場を用意することが望ましい。高齢者の健康や安全、生産性の増進につながるだけでなく、高齢者の仕事のしやすさに配慮した施策は、若手にも恩恵をもたらす。
  3. 年齢構成への配慮・・・ミレニアル世代に重点を置いた雇用戦略はピントを把持しており、時間と資金を無駄にしている。世代が異なる社員同士が補い合い学び合う仕組みを作ると、企業にとって長期的な繁栄への道が開ける。若い世代は年義務だと言っている場合ではありません。長者からの助言により恩恵を受ける。世代間の協働を通して、若手のスピードと活力、年長者の知恵や経験が結びつくことこそ、会社の人的資源は将来有望だと言える。

 こうした取り組みに乗り出す際には、まずはあらゆる世代の社員と意見を交わすことが重要です。若手も高齢者も、仕事に関して似たような不安や願いを持っています。一方で、違いもあり、それらを全社的により良く理解し、全員が共感できるようにしなければなりません。

4.先入観を取り払い、機会を創出せよ

 この論文では、「筆者は、高齢になっても働くことの利点を強く信じ、企業リーダーが競争優位を築く上では高齢化を味方につけられるはずだと考えている」と言っています。一方で、高齢化を味方につけるとは、社風の大変革に乗り出すことを意味しており、これはトップ主導で行うしかありません。

 「高齢化はもはや無視できない課題であり、トップリーダーは、人事、製品開発、マーケティングの各責任者、投資家、現状では無関心かもしれない多くのの利害関係者とともに、この問題を最重要課題に据える必要がある」とも言います。

 そのために、リーダーには胆力と粘り強さが求められるのです。

 この長期的な課題に関して確実の前進するためには、困難なだけではなく、場合によっては思い切った決断をしなければならないときもあります。それが優秀なリーダーの取るべき行動なのです。

 日本は、最も高齢化が進んだ国です。高齢化に対する施策は、日本においては喫緊の課題です。高齢者雇用安定法に定められたからとか努力義務だからなどと言っている場合ではありません。高齢者と若者とをどのようにつないでいくのか、高齢者が働きやすい職場をどのように作っていくのかが、企業が成長するためには避けて通れなくなっています。

 リーダーが率先してすべての人を巻き込んで取り組まなければならない課題です。単に定年制を引き上げるなど目先のことだけを変えればいいようなものではありません。組織運営に関するあらゆるものを変えていかなければならない大変革です。

しかし、これをやらないわけにはいきません。アービングが言うように、それが競争優位を築きます。先に取り組んが企業が生き残ることができるのではないでしょうか。