中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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再び最高裁判決 今度は非正規を救済。その違いは?

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で708人で、そのうち東京284人、神奈川79人、埼玉57人、千葉54人、大阪51人、沖縄39人、北海道30人などとなっています。東京ではアルコールを提供する飲食店に対して営業時間の短縮を要請していた8月20日以来で最も老い感染者数となり、沖縄も30人を超えるのは8月30日以来となっています。10月1日にGoToトラベルに東京が追加され、全体的に気が緩み旅行客が増えたことが原因ではないかと危惧します。1日の新規感染者数で一喜一憂するのも問題とは思いますが、各地で人出も増え、マスクもせず、密状態で大声で喋っているグループも見受けられます。新型コロナは収束したわけではないので、まだ気を緩めてはいけません。

昨日、政府の新型コロナウイルス対策分科会が開かれ、尾身会長は、現在の国内の感染状況について「現状感染の増加要因と減少要因が、あえて文学的な表現をすれば拮抗していて、多くの都道府県では大幅な増加がみられないと同時に、急速な減少も見られない一進一退の状態が続いている」とし「現在の拮抗状況は2つの要因のバランス次第では、上昇要因が少し強くなるといつ崩れてもおかしくない状況」との認識を示しました。

首都圏、関西圏、沖縄、北海道では、実行再生産数(1人の感染者が何人にうつすかを示す指標)が「1」を上回る水準になっており、注意が必要な状況になっています。

3密を避け、新しい生活様式を守りながら、気を引き締めるところは引き締め緩めてよいところは緩めてバランスよく頑張っていきましょう。

さて、今日も最高裁判決です。10月13日には、非正規社員に対する2件(大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件)の判決があり、そこでは「不合理と言えない」と原告側(非正規社員側)敗訴の判決が出ましたが、昨日の日本郵便格差訴訟では、正社員との手当や休暇の格差を「不合理である」として原告側(非正規社員側)勝訴の判決を出しました(損害賠償額算定のために高裁に審理を差し戻し)。

先日も説明しましたが、旧労働契約法第20条(現パート・有期法第8条)の解釈です。合理的か否かは、①職務内容 ②責任 ③配置変更範囲 ④その他の事情という4つの事情を総合的に考慮して判断しなければならないのです。

13日の2つの事件では、退職金や賞与が問題となりました。ここでは、退職金や賞与の目的をどのようにとらえるかが問題となります。退職金や賞与の算定は、個人の能力評価や勤務期間、業績などが間みされますが、どのように反映させるかは会社によりさまざまで支給の目的も複合的です。最高裁は、「正社員としての職務を遂行し得る人材の確保や定着を図る目的」との解釈を取り、原告敗訴の判断を下しました。このような解釈が妥当かは検討の余地もありますが、2審が判断したような「一定期間の勤務に対する功労金」という面に留まらず、最高裁が言うような目的もないとは言い切れません。この意味では、13日の最高裁の判断は、若干経営者側に偏った判決とはいえ妥当だと思います。

これに対し、日本郵政事件は、扶養手当や夏期・冬期休暇が問題となりました。最高裁は、扶養手当については「継続的な雇用の確保」、夏期・冬期休暇は「心身の回復」が目的と解釈しました。特に年末年始勤務手当は「最繁忙期の業務への対価」として、いずれも能力や責任の度合いを目的とはしませんでした。妥当な判決です。

正社員と非正規社員の待遇格差を巡っては、平成25年4月に労働契約法が施行されて以降、同法第20条を根拠に裁判が相次ぎました。労働契約法第20条は平成30年成立のパート・有期法第8条に引き継がれました。

今回の3件の最高裁判決で、大まかな判断基準が示されましたが、これによってすべてが解決したわけではありません。一応の基準や解釈は示されましたが、具体的な事情は会社により異なりますから、具体的な事情の下で合理的か不合理化が問題となり、今後も同様の訴訟は続くと思われます。

各社ともに、今回の最高裁判決の基準を基に、自社の規定やルールを明確化して訴訟が提起されないようにする必要がありそうです。とは言え、今回の最高裁判決を受けて正社員と非正規社員との格差を正当化するような規定やルールを設けることは必ずしも妥当とは思われません。

同一労働同一賃金」が原則ですし、継続的な雇用の確保という観点からできるだけ正社員と非正規社員との格差を撤廃するように努力することが重要だと思います。

産経新聞によれば、日本女子大の原ひろみ准教授(労働経済学)は、「同じ仕事内容にもかかわらず雇用形態の違いで金銭報酬や福利厚生、キャリアアップの機会などの処遇が異なるのが大きな問題。企業は非正規労働者への不合理なしわ寄せを改善する努力をすべきだ」と述べています。また、日本総合研究所の山田久主席研究員も「女性やシニアなど多彩な人材が、生活上の制約がある中で能力を発揮できる環境を整えなければ、長期的には経営が立ちいかなくなるだろう」と指摘し「非正規労働者の処遇改善は社会全体の翁流れ。企業も労働組合同一労働同一賃金を進めていく方針を説明し、合意形成していくことが重要だ」と述べています。

小泉政権下の竹中半蔵経済政策担当相によって大量に生みだされた非正規労働者の待遇改善は、単に企業や労働組合だけの問題ではなく政府にとっても重要課題です。

新型コロナの収束が見えない中、雇用情勢は極めて深刻な状況にあります。非正規雇用だけでなく、多くの人が職を失っています。正社員に比べ非正規社員が解雇しやすいことから人件費削減のための「調整弁」として使われています。しかも、非正規社員が解雇された場合の補償は正社員に比べて低いのが現状です。

菅首相は、就任会見で「雇用を守り事業を継続させていくことが大事だ」と発言しましたが、菅政権の雇用政策が明確に見えてきません。失業や倒産が増加する中、でこれまでの雇用政策では不十分です。先ずは非正規労働者救済を軸とした雇用対策を明確に示してもらいたいものです。立て続けに最高裁判決が出た今こそ、非正規労働者救済のための政策を行う時期です。