中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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SF思考

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で79人で、29県で感染者ゼロとなっています。昨日6月~9月期のGDPが発表されましたが、2四半期ぶりのマイナス成長です。新型コロナによる緊急事態宣言の長期化、無観客の東京五輪などが影響しています。緊急事態宣言の解除により人出も増加し、10月~12月期は消費は上向きつつあるようですが、原油価格の高騰に伴う物価上昇、半導体不足の影響や第6波の懸念などで先行きは不透明です。アメリカではコロナ前の水準に戻っていますが、日本ではコロナの被害が小さい割に回復が遅れています。もともとコロナ前から成長率は低く、アベノミクス以来の政府の政策によるミスです。コロナのせいではありません。コロナが比較的落ち着いている今こそ、経済の回復に向けた抜本的な対策を行うべきです。バラマキの小手先の対策では何の役にも立ちません。長期的な視点でもって日本経済の立ち直りを図ってもらいたいものです。

さて今日は、ダイヤモンドオンラインの「優れた経営者にはもう常識!世界標準のビジネスをドライブする『SF思考』」という記事を取り上げます。

SF思考」というのは、三菱総合研究所筑波大学との共同研究から生まれたもので、現在と非連続的な未来を構想し、現実を変えていくためにSFを活用しようとするものです。

文学にしろ、映画にしろ、漫画にしろ、SFは「科学的思考法から発想した世界構造」を掘り下げるという点に特色があります。SFの場合、現代社会のリアリティや人間心理の掘り下げよりは、まず世界の構造を考え、その後にそこに生きる人間の行動や思考に思いをはせるというアプローチです。このアプローチはまさに未来を構想するための方法論と合致します。

複雑な新技術が実装された社会をシミュレートしたい場合もSFは役立ちます。例えば、AIは便利な反面、これまで人間が行ってきた判断をAIに委ねるというリスクが伴います。例えば「自動運転AIの問題点や決断のポイント」という問題について、SF的な発想をすれば、背景世界から各場面を想像でき、難しい決断をするためのヒントが得られるはずです。

新規事業を構想する場合でも、ゼロカーボンの温暖化対策にせよ、競合の動きや過去の成功体験に学ぶだけでは革新的な取り組みはできません。日本だけでなくグローバル(地球全体)に、更には宇宙まで視野を広げなければなりません。これからのビジネスにはどうしてもSF的な発想は不可欠なのです。

1.日本人のSFリテラシーは世界一

 欧米では、SF的な発想をビジネスに活用するということが、ごく普通に行われています。

 日本人は、「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」「銀河英雄伝説」「エヴァンゲリオン」などといったSFアニメで育ってきました。日本人は、SFの英才教育を受けたSFエリートなのです。それにもかかわらず、日本企業にはSFプロトタイピングが広がらないのです。それは、日本人が真面目すぎるからだと言われています。趣味と仕事は別、仕事にSF的な話を持ち込むのはNGと考えているのです。

 この記事では、「今の45歳~50歳くらいの人は受験戦争も厳しかったし、真面目に一社で勤め上げようというマインドが強くて考え方が固まってしまっています。変人が少ないのです」と言っています。企業に変革をもたらすためには、良い意味での変人でなければなりません。

 日本の企業では、これまで「自分はSFが好きで」などと公言するのもはばかられるような雰囲気がありました。自分が好きなものを堂々と公言し、それをビジネスに活かすことはできないのか、そこから新しいアイデアは生まれないのかを考えることでイノベーションを起こせるかもしれないのです。

2.「腹落ち」していない人は変われない

 日本では、自分の意見をはっきりと口に出して言葉にするのがはばかられ、自分の意志を言葉にする機会が極端に少なくなっているように思います。

 日本では、組織や企業だけでなく、社会全体に「同調圧力」が蔓延し、自分の考えや意見と異なる判断基準を押し付けられ、その押し付けられた判断基準に従って行動してしまいます。多数派の意見に従わなければ不利益を被るかもしれないと感じ、多数派に同調してしまうのです。

 しかし、こうした閉鎖的・同質的な日本のの社会構造や企業の体制では、IT化やグローバル化に伴い大きく変化した社会では上手く回りません。社会構造や企業の体制を大きく変革しなければなりません。

 自分の意志を言葉にできないということは「暗黙知の形式化」ができていないということです。

 この記事では、SF思考も「自分がやりたいこと」を他人に伝わるように形式化する手段だと言っています。今の時代に正解と言えるものはありません。誰も先が見通せず、何が正解かわからないのです。だからこそ「何をやりたいか」という意思がなければ前に進めないのです。

 「自分は何のために働くのか」という意思が明確でないまま、上から降りてくる仕事だけをこなすというのでは、どんなに優秀な人でもリスクは取れませんし変化もできません。成長できないのです。

 先日書きました「パーパス経営」も、企業としての意志=存在意義を明確にして、従業員に腹落ちさせようというものです。従業員にパーパスを浸透させ、従業員がそれに共感できなければ、パーパス経営などできません。

 日本企業の多くはパーパスを上手く作ることはできていません。

 それには経営者の任期が短いというのが原因の一つです。大企業や社外から社長を招聘している企業では2年2期、3年2期と決めている会社がほとんどです。それでは「任期中上手く乗り切ろう」ということになり、思い切った改革などできませんし、パーパスを作ってもそれを浸透させる時間がありません。それでは本気になって取り組もうという気にもならないでしょう。

3.未来を意味づけることから「納得」が生まれる

 日本でもグローバルで強いオーナー型の企業の経営者はSF的な思考をしています。ここでは、日本電産会長の永守重信氏が挙げられています。永守氏は「10兆円企業になる」という目標を語るとき「やがて自家用ドローンが普及し、ロボットの数が人口を超える」という未来像をセットで語ります。永守氏が描いているイメージはSF的ですし、やっていることはSF思考です。永守氏の話にはストーリーがあり、聞く人が「ワクワクし面白いし、共感し、やる気にさせてくれる」ものです。

 優れた企業、優れた経営者は時間軸が長く、少なくとも、30年、50年策を見据えています。ソフトバンク孫正義氏に至っては300年ビジョンまで語っています。

 未来像がポジティブであればあるほど、共感する人が多ければ多いほど実現する可能性が高くなります。経営者が語る未来像が社員に腹落ちすれば「一緒にやろう」と言う人は増え、更に腹落ちした社員から社外の人にまで広がり実現の可能性は大きく高まります。

 先が分からない不確実な時代ですから、ある意味未来なんてどのようにも解釈できます。それを腹落ちできるストーリーにまとめて、意味づけできるか、つまり、そのストーリーを聞いた人が納得できるかにかかっています。この記事でも「正確性より納得性」と言っています。

4.ビジネスパーソンの「知の探究」のためのSF思考

 長く続いている組織や企業は探索よりも深化に偏っています。これはまさにイノベーションのジレンマが表しているとことです。業界トップの企業が、顧客の声に耳を傾けすぎ、更に高品質な製品やサービスを提供することでイノベーションに立ち後れ、新興企業に後れを取ってしまうのです。

 イノベーションを起こすためには探索が必要不可欠です。そして、探索を行うには「未来像の腹落ち」が不可欠です。「30年後にこんな会社になろう」「ビジネスでこんな価値を出そう」というビジョンが腹落ちしていれば、多少リスクがあっても前進できますが、そうでなければ些細な失敗で躓いてしまいます。

 イノベーションの出発点は「知の探究」です。新しいものを生み出すには、自分が当たり前と思っている認知の外へ飛び出さなければなりません。地球を飛び出して宇宙へと旅立つようなものです。

 意識を遠く飛ばすタイプの「知の探究」には、SFは認知の外に出て未来を考えるには格好のものです。SFを読むだけで新しい発想やアイデアがわきイノベーションを起こせるわけではありませんが、意識的に異文化を掛け合わせていくことで幅が広がりアイデアや発想の芽が生まれます。

日本企業もSF 思考やSF的な発想を取り入れることで変革を起こしましょう。