中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 リーン・スタートアップ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で159人で、27件で新規感染者ゼロとなっています。全国的には少なくなっていますが、北海道や神奈川では2週続けて前週同曜日に比べて増加しており、注意が必要です。

過去最大規模の経済対策が閣議決定されましたが、規模は大きくても個々の対策を見るとどれも費用対効果が少なく、何を目的とした財政支出か全くわからないもののオンパレードです。その最たるものが、18歳以下への10万円給付、2万円のマイナポイントの付与ですが、公明党に押し切られた愚策中の愚策です。コロナ対策とは言えず極めて不公平なバラマキ以外の何ものでもありません。これまでのコロナ禍で得られたはずの教訓が全く活かされていません。結局岸田政権も何も学んでいないということです。

さて、今日は、エリック・リース著「リーン・スタートアップ」(日経BP社)を紹介します。著者のリース氏は多くのスタートアップ企業を立ち上げ、スタートアップ・ベンチャー・大企業に事業戦略や製品戦略のアドバイスをしているアントレプレナーです。

この本は、スタートアップ企業を成功させる方法を分かりやすく説明しています。

リース氏が行う方法は、「トヨタ生産方式」から学んだものなのです。

1.トヨタ生産方式

 トヨタ生産方式と言えば、「製造にかかるコストを極限まで低減させること」を目的に、ジャストインタイム(JIT)自働化を2本柱としています。トヨタ生産方式は、徹底的にムダを排除することが必要で、トヨタではムダの徹底排除によって、作業能率の大幅な向上を実現しています。ムダとは①手持ちのムダ②作りすぎのムダ③運搬のムダ④加工そのもののムダ⑤在庫のムダ⑥動作のムダ⑦不良のムダの7つです。

 そして、これらのムダを徹底排除するためにトヨタ生産方式ではJIT生産と自働化生産を柱とします。JIT生産とは「すべての工程が、後工程の要求に合わせて、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産(供給)する生産方式」です。自働化生産とは、「生産ラインや機械で不適合品や異常が発生した時点で、品質保証のためにそれらの異常を検知して作業者や機械が自ら生産ラインや機械の自動運転を止める仕組み」のことです。そして、これらを具体化するために、後工程引き取り方式、小ロット生産、平準化生産、かんばん方式などが行われます。

 このようにトヨタ生産方式トヨタの生産(製造)部門で採られている方式なのです。

 トヨタ生産方式と言えば、ムダ排除によるコスト削減という点に目が行きそうですが、本来の本質は効率性、生産性の向上にあるのです。

 ムダの徹底排除、コスト削減だけがトヨタ生産方式ではないのです。場面に応じて対処して効率性・生産性の向上を図るという臨機応変さが必要です。これもまたトヨタの「カイゼン」なのでしょう。

 中小企業の中にも「トヨタ生産方式」「カイゼン」に取り組まれているところもあるでしょう。しかし、トヨタ生産方式をそのまま採用しても効果が認められない場合も多いのです。それはムダ排除やコスト削減にばかり目がいって効率性・生産性の向上という面をないがしろにしているからです。たんに真似をしただけではダメなのです。自社に合った方式を臨機応変に採用する必要があるでしょう。

 トヨタ生産方式の説明はそれくらいにして、この本に戻ります。

 この本のタイトルは、トヨタ生産方式を研究したMITのジェームズ・P・ウォマック、ダニエル・T・ジョーンズらの「リーン生産方式が世界の自動車産業を変える」という本が基になっています。リーン(Lean)は「贅肉がなく引き締まって痩せている」という意味です。「リーン生産方式」では現場の学びを重視し、無駄を徹底的に省くことに主眼が置かれています。

 「リーン・スタートアップ」も「顧客にメリットを提供しない活動は、すべてムダ」というところからスタートし、顧客からの学びを重視し、無駄を徹底的に省いて、新規事業を立ち上げるのです。

2.顧客から学び、改善し続ける

 スタートアップだけでなくすべてのビジネスにおいて、「商品が必要な顧客を早く発見する」ということが極めて重要になりますが、リース氏は「顧客が必要とする『実用上最小限の機能を持った製品』を早く作り、検証しろ」と言い、この「実用上最小限の機能を持った製品」をMVP(Minimum Viable Product)と名付けました。

 リーン・スタートアップでは、「学び」の積み重ねを重視します。「アイデア」をもとに製品(MVP)を「構築」し、顧客の反応などのデータを「計測」し、結果から「学び」を重ね、学びのフィードバックループ、サイクルを何度も繰り返すのです。これはトヨタの「カイゼン」そのものです。ただ、ここでは、徹底的に顧客視点に立った改善が求められています。顧客からの学びを重視し改善を繰り返すのです。

 ここで問題なのが完璧にやろうとして時間をかけすぎることです。学びのループ、サイクルを1回回すのに時間をかけすぎること自体が時間のムダになるのです。

 各活動を完璧にこなすことが目的ではありません。ループ、サイクルを数多く回し続けることで、顧客からの学びを多く蓄積することが目的なのです。

3.戦略の方向転換「ピボット」

 われわれは、新規事業や起業では、すごいアイデアや優れた戦略が必要と考えがちです。しかし、そのようなものはほとんど必要ありません。重要なのは、製品に優先順位を付け、顧客を選び、顧客に検証し、データを取り、学びを積み重ね、方向修正するといった地道な作業の積み重ねなのです。

 細かい修正の繰り返しと戦略の方向転換をしつこく繰り返すことで成功へと向かうのです。この戦略の方向転換を、リース氏は「ピボット(Pivot)」と名付けました。ピボットというのは本来は「回転軸」のことですが、現在、ビジネスにおいては「方向転換」「路線変更」を表す用語として使われています。

 ここでも重要なことは、地道に愚直に、顧客視点に立ってひたすら改善を繰り返すということです。修正や戦略の方向転換は何ら恥ずべきことではありません。元から完璧なものや完璧な戦略などあるはずはありません。

日本では「トヨタ生産方式カイゼンなんて古い」と言う人がいます。「カイゼンばかりしているから日本企業はダメなんだ」と言う人もいます。しかし、カイゼンなくして新しいものは生まれません。すごいアイデアなんてほとんどありません。地道なカイゼン作業の積み重ねしかないのです。

トヨタが生み出したトヨタ生産方式カイゼンを今一度「顧客視点」で見直してみるのによい本です。