中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 キャズム Ver.2

f:id:business-doctor-28:20210529081307j:plain

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で8480人で、東京1224人、神奈川354人、埼玉332人、千葉239人、愛知398人、大阪891人、兵庫246人、京都169人、広島547人、山口154人、福岡229人、沖縄1759人などとなり、1週間前と比べると15倍になり、第5波の新規感染者を上回る地域も出てきています。沖縄では約8割がオミクロン株に切り替わり、全国的にもオミクロン株に切り替わりつつあります。オミクロン株は重症化リスクは低いとされていますが、感染力は強く、昨日も書いたように、感染者が増えると濃厚接触者も増え欠勤者が増加し社会機能が麻痺します。感染者が1日100万人を超えるアメリカや20万人を超えるイギリスでは社会インフラが機能しなくなっており深刻な問題となっています。既に沖縄では、医療従事者の発症・欠勤により医療が逼迫し、更に感染者が増えると社会機能も完全に麻痺してしまいます。オミクロン株は重症化リスクが低いと侮ることはできません。

さて、今日は、ジェフリー・ムーア著「キャズムVer.2」(翔泳社を紹介します。著者のムーア氏は、キャズムグループ、TCGアドバイザーズの名誉会長を務めるコンサルタントです。

キャズム(Chasm)というのは「」「隔たり」といった意味を持つ言葉です。

キャズム理論は、新商品や新サービスなどを「受け入れやすい顧客」と「受け入れにくい顧客」との間には溝(キャズム)があり、これを克服することが市場開拓には重要であるとします。

キャズムが生じる箇所は、イノベーター理論をもとに、顧客層を5つのグループに分類することで明らかになります。

f:id:business-doctor-28:20220109085506j:plain

1.イノベーター理論

 イノベーター理論では、顧客は5つのグループに分類されます。

  1. イノベーター(革新者)・・・新しいアイデアや情報をたの人々に先立って最初に採用する人たち。市場全体の2.5%を占める。
  2. アーリーアダプター(初期採用者)・・・コミュニティでオピニオン・リーダーとしての地位にあり、他のメンバーのモデルとなり得る人たち。若干のリスクを許容する流行に敏感な層。市場全体の13.5%を占める。
  3. アーリーマジョリティー(前期追随者)・・・社会集団において、そのメンバーが採用する平均的な時期よりも早く採用する人たち。流行に乗り遅れないように積極的に取り入れようとする層。市場全体の34%を占める。
  4. レイトマジョリティー(後期追随者)・・・大多数の人々がその紅葉を認めたと思われるまで、イノベーションを採用しない人たち。保守的で、新商品や新サービスの導入割合が多数派になったと認識してから検討を始める。市場の34%を占める。
  5. ラガード(採用遅滞者)・・・イノベーションを最も最後に採用する人たち。最も保守的であり、新商品や新サービスが一般化してから採用する。市場全体の16%を占める。

 市場開拓は上から順番に進めていきます。市場を開拓する際には2段階に分けて開拓します。第1段階が「初期市場」で、今後トレンドとなり得る最先端なものに興味を持つ顧客(イノベーター、アーリーアダプター)で構成されます。第2段階は「メインストリーム市場」と呼び、「安心感」「信頼性」「利便性」などを求める顧客(アーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、ラガード)で形成されます。

 顧客がこの順番でスムーズに購入してくれれば何の問題も起こりません。

 しかし、キャズム理論では、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間(初期市場とメインストリーム市場の間)にキャズムが生じており、これが順調なシェア獲得を目指す際の大きな関門になっていると指摘します。

2.キャズムを越えるために必要なこと

 アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間にキャズムがあるのは、この両者の考え方と行動が正反対だからです。

 アーリーアダプターは、リスクを好みます。「他の者が使っていないから差をつけられる」とリスクを省みずに飛びつくのです。これに対し、アーリーマジョリティーは、リスクが大嫌いです。確かにアーリーマジョリティーは流行には敏感ですが、リスクが嫌いなので、ある程度普及するまでは様子見を決め込みます。そして、流行に乗り遅れないギリギリの段階で採用するのです。

 新商品や新サービスを普及させるためには、このキャズムを越えることが必須です。

 そのためには、まず「ホールプロダクト」を用意することです。ホールプロダクトというのは「すべてを提供する製品」「完全な製品」という意味で、顧客が必要とするすべての商品やサービスのことです。

 アーリーアダプターはホールプロダクトがなくても自分でなんとかしてしまいます。場合によっては自分で作ったりします。しかし、アーリーマジョリティーを含め他の人たちは付随商品がなければ、新しい商品やサービスをうまく使いこなすことができません。誰でもが新商品や新サービスを手軽に使いこなせるように付随商品・サービスを充実させなければならないのです。アーリーマジョリティー以降の顧客は全体の84%で、彼らは面倒なことはやりたがりません。ホールプロダクトがなければ新商品や新サービスは絶対普及しないのです。

 次に、「アーリーマジョリティーのユーザー事例」を作ることです。先ほども述べたようにアーリーマジョリティーはリスクを嫌います。そもそも最初のユーザーになりたくはないのです。自分と同じタイプのアーリーマジョリティーが使うのを見て初めて購入を検討するのです。

 ただ、一般的に「アーリーマジョリティーのユーザー事例」を集めても、自分のこととして受け入れません。新商品や新サービスによって他のアーリーマジョリティーが抱える課題や悩みが解決されたことが示されなければなりません。そうすることで同じ課題や悩みを抱えるアーリーマジョリティーが真剣に購入を検討するようになるのです。

 その意味では顧客(アーリーマジョリティー)の課題や悩みを絞り込み、そこに注力することでキャズムを越えることができるように思います。

昨日「アントレプレナーの教科書」でも書きましたが、少数の顧客が唯一の選択肢として買うようになれば、その商品は売れます。少数の顧客が買うようになったあとで、より多くの顧客へと範囲を広げていくのです。最初から大勢の顧客を対象としていたのではいつまでたっても売れません。売れる前に消えてしまうのがオチです。新商品を成功させることに必要なことは、素晴らしい製品を開発することだけではありません。「どうしてもその商品が必要だ」という少数の顧客のニーズを把握し、その顧客にとっての唯一無二の選択肢(商品)となることです。顧客の範囲を広げるのは、そのあとなのです。

まずはアーリーアダプターとアーリーマジョリティートの間にあるキャズムを越えることです。キャズムを越えたあとで、アーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、ラガードへと範囲を広げていけばいいのです。