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休日の本棚 アントレプレナーの教科書

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6214人で、東京922人、神奈川251人、埼玉214人、千葉171人、愛知199人、大阪676人、兵庫144人、京都160人、広島429人、山口180人、福岡135人、沖縄1414人などとなり、爆発的に感染拡大しています。先週は新規感染者に占めるオミクロン株の割合が9%程度であったのが46%と跳ね上がり、オミクロン株の感染力の強さを示しています。政府は広島・山口・沖縄の3県にまん延防止等重点措置の適用を決定しましたが、今後対象地域が増え緊急事態宣言発令となりそうな勢いです。しかし、オミクロン株は重症化リスクが低いので、昨日も書いたようにいかにウイルスと折り合いをつけながら経済を回していくかということが重要になってきます。ただ、重症化リスクが低いとしても、感染者が出て濃厚接触者と認定されれば、欠勤者が急増し社会機能の維持が困難になるという事態にもなりかねません。既に沖縄では医療従事者の感染・欠勤が増え、医療体制が逼迫してきています。こうしたことも踏まえた対策をとるべきです。

さて、今日はティーブン・G・ブランク著「アントレプレナーの教科書」(翔泳社を紹介します。著者のブランク氏はシリコンバレーの元シアントレプレナーで、8社の企業に関わり4社を上場させた伝説のアントレプレナーです。アントレプレナーというのは、事業家や起業家のことです。経営者や企業家とは異なり、ゼロから事業を興す創業者といった意味合いが強く、新しい市場を切り開くイメージで用いられる言葉です。

一昨日、「売れないものは諦める!」で、キングジムの例を挙げ、「売れないものに固執せず、ダメなら諦める」ことの重要性を指摘しました。しかし、「多くの顧客の要望に対応し、当社の技術を結集して開発した商品だから絶対売れる」と鳴り物入りで販売したにもかかわらず、さっぱり売れず、人知れず消え去った商品は多いのです。

多くの顧客の要望に対応しているのに、どうしてこういうことが起きるのでしょうか?

一般に、コンセプトを作る⇒製品開発する⇒機能検証テストをする⇒販売開始する、といった「製品開発モデル」で商品開発は進められます。

ブランク氏は、これが間違いであると指摘します。何処に間違いがあるかというと、顧客が買うか買わないかが検証されていないのです。顧客の要望に対応したと言いながら、商品開発の段階では顧客視点が全く欠けてしまっているのです。

1.製品開発ではなく顧客開発をしろ

 ブランクが言っていることは、「製品開発をするのではなく、まずは顧客開発をせよ」ということに尽きます。顧客開発は営業の仕事ではなく、開発部門の仕事でもあるのです。製品開発を顧客開発を分けて考えることは間違っています。顧客が買ってくれる製品を開発するのが開発部門の仕事です。

 新商品の役割は、顧客に新しい価値を提供することです。成功する商品は、顧客が価値を認識して買いますが、失敗する商品は、誰も価値を認識せず買わないのです。

 数多くの顧客のニーズに応えようとすることは間違っています。すべての顧客のニーズに応えるということは不可能です。自社の強みは何かを明確に把握して、その強みを活かせる顧客ニーズに絞って応えていけばいいのです。

 ここで重要なことは次の3点です。

  1. 自社商品が解決する顧客の課題は何か?
  2. 顧客はその課題を重要で切実を考えているか?
  3. どうやればその顧客に到達できるか?

2.顧客開発モデル

 ブランク氏が提唱する顧客開発モデルでは、

  顧客発見 ⇔ 顧客実証 ⇒ 顧客開拓 ⇔ 組織構築

の4つのステップがありますが、このうち最初は、徹底的に少数の顧客に絞り込んで進めていくのです。最初の段階では、「顧客発見」と「顧客実証」のサイクルを回し続けることになります。

 ここで重要なことは、

  1. 課題を抱え、その課題を理解している顧客がいること
  2. その顧客が解決策を探していて、期限もあること
  3. 顧客が課題解決にお金を惜しまないこと

です。最初の段階ではその他大勢の顧客のことはいったん頭の中から追い出して、この少数の顧客に注力することです。

 商品開発は、時間もかかれば、ヒト・モノ・カネといった経営資源にも限りがあります。だからこそ、徹底的に少数の顧客に絞り込み、その少数の顧客が「どうしても欲しい」という商品に仕上げることです。

3.商品開発が失敗する理由

 顧客開発モデルは、これまでの商品開発の常識とは相容れません。しかし、従来の常識が正しいとも言えないのです。特にアントレプレナーはゼロから起業し新しい市場を切り開く人たちです。従来の常識にとらわれていたのでは、既存の企業や既存の商品に太刀打ちできません。

 アントレプレナーにとって、従来の常識が間違っているというのは次のような点にあります。

  1. 間違い1 すべての顧客のニーズを理解しようとする・・・すべての顧客のニーズに応えるということは不可能です。多数の顧客ではなく、絞り込んだ少数の顧客がどうしても欲しい機能を実現することです。まずはニッチなところからスタートすることです。
  2. 間違い2 顧客の機能要望リストを製品開発部にそのまま渡す・・・すべての顧客要望リストを営業から開発部門に渡したのでは、開発の作業が増えるだけで顧客が買うかどうかはわかりません。少数顧客がどうしても欲しい機能は何かに絞って、営業から開発へ情報を上げればいいのです。
  3. 間違い3 顧客を集めてインタビューして、買うかどうかを確かめる・・・インタビューで「欲しい」「買いたい」という顧客が必ずしも買うとは限りません。以前「ネット・プロモーター経営」でも書きましたが、顧客満足度調査などのインタビュー結果は真実を表していないのです。重要なのは「欲しい」「買いたい」ではなく、「絶対に買う」という少数の顧客です。この少数の顧客にコミットできれば商品は必ず売れるのです。

 少数の顧客が唯一の選択肢として買うようになれば、その商品は売れます。少数の顧客が買うようになったあとで、より多くの顧客へと範囲を広げていくのです。最初から大勢の顧客を対象としていたのではいつまでたっても売れません。売れる前に消えてしまうのがオチです。

 新商品を成功させることに必要なことは、素晴らしい製品を開発することだけではなく、顧客にインタビューすることでもありません。「どうしてもその商品が必要だ」という少数の顧客のニーズを把握し、その顧客にとっての唯一無二の選択肢(商品)となることです。顧客の範囲を広げるのは、そのあとなのです。