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深層的なパーパス経営

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6万8039人で、月曜としては過去最多となっています。オミクロン株の感染拡大を抑え込むには日頃の感染防止対策の徹底と3回目のワクチン接種であることは言うまでもありません。岸田首相は、3回目のワクチン接種について、「1日に100万回までペースアップすることを目指す」と表明し、大規模接種会場が開設されたにもかかわらず、予約が延びていないのが現状です。モデルナ製ワクチンが敬遠されるいるのが原因です。専門家はモデルナ製とファイザー製で効果に差がないと接種を求めていますが、1,2回目でモデルナ製を接種し高熱・倦怠感で苦しめられた者からすれば、モデルナ製は敬遠したいところです。私も3回目のワクチン接種を躊躇しています。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「ハーバード大教授が語る、パーパス経営を『上っ面で終わらせない』方法」という記事を取り上げます。この記事は、最近「ディープ・パーパス:優れた企業の革新」という本を上梓したハーバードビジネススクールのランジェイ・グラティ教授に話を聞いたものです。

以前にも「パーパス経営」について書いていますが、パーパスとは「存在意義」のことです。元々は米英で粋すぎた株主至上主義に対する疑問を背景に「行き過ぎた株主主権の揺り戻しとして企業が自らの存在意義を規定するもの」として出てきたもので、環境も文化も異なり株主至上主義が行き渡っていない日本でそのまま適用するのは間違っているという考えもあります。

しかし、日本においても企業の存在意義を再定義することには意義があるように思います。経営者自らが、自社のパーパス=存在意義を真剣に考え、ただ考えるだけでなく、それに沿った形で事業を構想したり、組織内部にすり込み、さらにガバナンス態勢を整え、社員一人ひとりにまで行き渡らせる、ここまでやって本当の意味でのパーパスの再定義です。経営者が本気にならなければパーパス経営はできません。

1.パーパス経営が急速に広まった理由

 先ほども書きましたが、英米でのパーパス経営は、元々は株主至上主義への反動から生まれていますが、新型コロナのパンデミックで、更に加速しました。個人が社会や環境の変化の中で、自らの生き方を見直すように、企業もさまざまな危機や変化に直面する中で、新たな指針が必要となり、「私たちの企業は何のために存在しているのか」を問うようになったのです。この「何のために存在しているのか」という存在意義が、その後の指針となります。だからこそパーパスの価値が再認識されているのです。

2.「表層的なパーパス」と「深層的なパーパス」

 グラティ教授は、「ディープ・パーパス(深層的なパーパス)」という概念を初めて提唱しています。グラティ教授によれば、パーパスには「表層的なパーパス」と「深層的なパーパス」があり、両者の違いは大きく言えば2つあるということです。

 1つは、「パーパスステートメント」ができあがるまでの過程の違いです。

 パーパスステートメントをつくる(書く)のは簡単です。気の利いた文章を作るのが得意な人はいますし、それを仕事にしている人もいます。できあがった美辞麗句を社員に伝えただけでパーパス経営が行なわれていると言えるでしょうか。

 先ほども書きましたが、経営者自身が真剣に考えて本気になってこそ、本当のパーパス経営です。表面的なパーパス経営では何の意味もありません。

 一方で、深層的なパーパスは、経営者が中心となり、経営者と社員が長い時間を掛けて真剣に検討し何度も議論する中で生まれてくるものです。

 例えば、マイクロソフト社のパーパスは「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」ですが、この言葉にたどり着くまで社内で長い時間を掛けて徹底的に議論したと言われています。

 もう1つが、パーパスの活用方法の違いです。

 パーパスステートメントを掲げることは簡単ですが、それを社員に浸透させることは難しいのです。何もせず、単にパーパスステートメントを張っているだけではパーパスは表層的なままです。

 経営者自らが社員一人ひとりに、パーパスを浸透させるために、自ら実践する必要があります。戦略立案、人材採用、新規事業開発など、どのような仕事を行なう際にも、経営者を始め管理者層がパーパスを実践し、それを下へと伝えていくことです。すべての社員がパーパスを意識しながら仕事を行なうようになって初めて、組織の隅々にまで行き届き社員の行動指針となり、「深層的なパーパス」と言えるようになるのです。

3.日本企業がパーパスを深層的に活用するヒント

 パーパスとミッションについて、グラティ教授は、ほぼ同意語として使われていると言います。しかし、ミッションよりもパーパスという言葉が使われるのは、ミッション(使命)には「外から与えられる」イメージがあり、社員が自ら関わることとして受け止めづらく、形骸化しやすいという問題があるのです。それに対してパーパス(存在意義)は、企業・経営者が内から規定できるもので、社員自身が関わり社員の動機付けになり得るのです。

 日本の多くの企業には企業理念や社訓が毛筆で書かれて壁に飾られています。重要なのは、こうした表層的なパーパスを深層的なパーパスに変えることです。朝礼の時に、これらを声を出して復唱するだけでは深層的なパーパスにはなりません。

 壁に飾られている企業理念や社訓が現在でもパーパス足り得るのかを検証し、パーパスを再定義することも重要になります。社史を読み、操業の精神を引っ張り出し、それを現ダインのパーパスとして再定義するとです。重要なのは、過去を振り替えるだけでなく、社内で議論を重ね、未来につなげるパーパスを再定義することです。

4.パーパスの効用

 パーパスを設定する効用は4つあります。

  1. 企業戦略の方向性が明確になる
  2. 社員がヤル気になる
  3. ブランド価値が高まる
  4. ステークホルダーやコミュニティーとの関係性が深まる

 日本企業の中には、パーパス(存在意義)を語る際に社会貢献を重視しすぎる嫌いがあります。世のため・人のために役に立つというのは極めて重要なパーパスですが、企業は関西弁で言えば「儲けてなんぼ」です。利益を上げてこそ、それを活かして社会貢献できるのです。企業の目的は第一に利益を上げることです。これまで何度も紹介している稲盛経営や永守経営も、利他の精神を語りながら、利益を上げることを第一義としています。