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休日の本棚 GRIT やり抜く力

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で9万9694人で、東京は1万8891人で2日連続で前週の同曜日を下回っています。しかし、昨日も書いたようにピークアウトしたとみるのは時期尚早です。死者数の累計で大阪が東京を上回りました。大阪では昨日の死者数が24人で、7日から10日までで100人が亡くなっています。その大半が高齢者で、いかに高齢者への感染を抑えるかが最重要課題です。重症病症使用率も高まっており、吉村知事は、まん延防止等重点措置の延長か緊急事態宣言発出要請かを検討するようですが、どちらにしても飲食店中心の対策では意味がありません。オミクロン株の特徴に応じた感染防止対策をとるべきです。

さて、今日は、アンジェラ・ダックワース著「GRIT やり抜く力」(ダイヤモンド社を紹介します。著者のダックワース氏は、ペンシルバニア大学心理学部の教授です。彼女は、ハーバード大学で神経生物学を専攻、卒業後はマッキンゼー経営コンサルタントとして活躍、その後中学校の数学教師に転身します。そのとき、授業内容の飲み込みの早い子供が必ずしも良い成績を収めているわけではなく、欠席もせず真面目にノートをとりよく質問する子供の方が成績がいいことに気づき、大学に戻って心理学を学び、人間の能力と成功の秘訣について研究を重ねます。

ダークワース氏は学歴と将来の経済的成功には因果関係はなく、「自制心」や「やり抜く力」のような非認知的能力の方が影響していることを明らかにしました。「才能やIQや学歴ではなく、GRIT=個人のやり抜く力こそが、社会的に成功を収める最も重要な要素である」という「グリット理論」を提唱しました。この本は、人生の成功にはGRIT=やり抜く力が必要であることをさまざまな研究結果から紹介してくれています。

話は横道にそれますが、昨日冬期オリンピックの男子フィギュアスケート羽生結弦選手が失敗したものの果敢に4回転アクセルに挑戦し、世界で初めて4回転半が認定されました。ショートプログラムの不運を乗り越え、すべてを出し切りやり抜きました。94年ぶりに3連覇は成し遂げられませんでしたが、見る者に感動を与えてくれました。この感動を生み出してくれたのは、羽生選手の才能・スキルはもちろんグリッド=やり抜く力ではないでしょうか。

1.グリットとは?

 GRIT(グリット)とは、「やり抜く力」「粘る力」と定義される言葉です。困難に遭ってもくじけない闘志、気概や気骨などを表す言葉で、社会的に成功している人たちが兼ね備えている特性です。「PEAK PERFORMANCE 最強の成長術」(ダイヤモンド社の著者ブラック・スタルバーグ氏は「長期的な目標を掲げ、その実現に剥けて関心を失うことなく努力し続ける性向」と言っています。

 グリット(GRIT)には4つの要素が必要とされています。その4つは

  • Guts(度胸):困難なことに果敢に立ち向かう
  • Resilience(復元力):失敗しても諦めずに続ける
  • Initiative(自発性):自分で目標を見据える
  • Tenacity(執念):最後まで諦めずにやり遂げる

です。この4つの頭文字をとってGRITと呼ばれているのです。

 ダックワース氏は「グリット(やり抜く力)は、後天的な能力であり、強い目標意識に伴って習得される」と言っています。グリットは、生まれ持った才能や知能とは関係なく、失敗を恐れず挑戦し、それを根気よく続けていくことで後天的に磨いていくことができるということです。

2.知能と功績には関係がない

 ダックワース氏は、スタンフォード大学の心理学者キャサリン・コックスが1926年に、偉業を成し遂げた301名の歴史上の人物の特徴を調べた研究結果を見つけます。その研究結果によれば、イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルが推定知能指数190で最も高く、最も低かったのは100~110で一般の人をわずかに上回る程度でした。確かに一般の人と比較すれば若干知能指数は高いですが、「功績の偉大さ」を比較すれば、上位10名と下位10名との知能指数に差はありません。この結果から、ダックワースは、「知能」と「功績」との関連性は極めて低いと結論づけています。

3.グリット(やり抜く力)の正体

 功績には才能や知能(IQ)が関係ないとすれば、成功者と一般の人との違いは何でしょうか? ダックワース氏は、「動機の持続性」であると結論づけています。これは「情熱の持続性」です。

 グリット(やり抜く力)というのは「ものすごく頑張る」ということではありません。この本でも、ダックワース氏は「ものすごく頑張るだけではやり抜く力があるとは言えない。それだけでは不十分である」「好きになるだけでなく、愛し続けないといけない」と語っています。

 成功するためにはただ頑張るだけでは不十分で、小さなことからコツコツと情熱を燃やしながら、一つずつ積み重ねていくことです。

 この動機というか情熱を燃やし続けることが一番難しいことです。人というのは「すぐに飽きっぽいもの」であり「熱しやすく冷めやすいもの」です。情熱を持続させることは至難の業と言えます。

 ここで重要なのが長期的な目標設定だというのです。

 例えば、ランニングを例にとれば、初心者は「まずは3キロ走る」「毎日走る」という目標を設定しますが、これは短期的で漠然としすぎているのです。「ハーフマラソン完走」「フルマラソン完走」「憧れのレース(例えば東京マラソンホノルルマラソン)参加」などの長期的な目標設定が重要なのです。長期目標が設定されると。それに向けてのトレーニングの方向性も定まり、実現のための第一歩を踏み出しやすくなります。ただ長期的な目標設定にはデメリットがあります。あまりにも時間がかかり過ぎ目標達成までモチベーションが続かないことです。

 ここで重要になるのが、長期的な目標にたどり着くまでの細分化された目標です。「スモールステップ」というべきもので、このスモールステップを段階的な短期目標として達成しながらモチベーションを維持し続けるのです。

 このスモールステップのメリットは、長期的な目標達成のための課題を発見しやすくなるということにあります。課題が明確になれば、軌道修正できるのです。これは仕事においても同じです。長期的目標の達成には短期的な目標設定とその達成、課題の抽出と軌道修正が不可欠です。長期的な目標と短期的な目標をうまく組み合わせることがやり抜く力を維持し続けるためには必要不可欠なのです。

4.やり抜く力を強化するには

 この本に挙げられている例を紹介します。

 ある人がレンガ職人に「何をしているのか?」と問います。1番目の職人は「レンガを積んでいる」と答えます。2番目の職人は「教会を造っている」と答えます。3番目の職人は「歴史に残る大聖堂を造っている」と答えます。

 ダックワース氏は「1番目の職人にとってはレンガ積みは単なる『仕事』に過ぎない。2番目の職人にとっては、レンガ積みは『キャリア』、3番目の職人にとってはレンガ積みは『天職』を意味する」と言っています。

 自分の天職が何か分からない人や今の仕事が天職ではないと思っている人がほとんどです。しかし、自分の見方次第で今の仕事が天職に変わるのです。そのために、自分の今の仕事を見つめ直し、「この仕事はどんなふうに人々と繋がっているのだろうか?世の中の役に立っているのだろうか?」と問いかけることが大切なのです。

本書は、「人生は才能や知能ではなくグリット(やり抜く力)で決まる→やり抜く力とな何か→やり抜く力を強化するには」という構成になっていて、読みやすく分かりやすいないようになっています。