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休日の本棚 ORIGINALS  誰もが「人と違う」ことができる時代

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4万8825人で、8日連続で前の週の同曜日を上回っています。このまま第6波が収束することなく、第7波へと突入するのではないかと懸念します。お互いこれまで通りの感染防止策をとりながら気をつけるしかありません。

さて、今日は、アダム・グラント著「ORIGINALS 誰もが『人と違うこと』ができる時代」(三笠書房を紹介します。以前紹介した「GIVE&TAKE」の第2弾といったところで、著者のグラントはペンシルベニア大学ウォートン校教授(組織心理学)です。この本の監修は一橋大学ビジネススクール教授の楠木建氏が行なっています。

この本は、ワールド・エコノミック・フォーラムの「影響力のある人たちが選ぶ読むべき本トップ10」にランクインしました。ビジネスパーソンが読むべき本です。

1.「オリジナル」な人とは?

 この本がいうオリジナルな人とは、既存の価値観に逆らい、斬新なアイデアを発揮するだけでなく、実際の行動によってアイデアを実現していく人のことです。世の中には、多数派や従来の方法に従い現状を維持する同調性(コンフォーミティ)によって物事を達成する方法と、これまでの価値に逆らって、アイデアを生み出し実現する「オリジナリティ」によって物事を達成する方法があります。この本で書かれているのが後者です。

 一般に多くの人が従っている既存の価値観に同調せず、完全遅滞から一歩踏み出して良い世界・環境を作るために行動できる人が「オリジナル」な人なのです。

 この本では「エリートや天才といった人たちほどオリジナルな人には泣けない」と言っています。彼らは既存の価値観に従った方が楽で評価されるからだというのです。つまり、幼い頃から突出した才能を発揮する早熟な天才児は、大人になって世界を変革することはまれです。それは、彼らが独創的なことを行なう術を身につけておらず、周囲から評価されたいがために既存のルールに従うからです。

 オリジナリティを発揮するには、特別な才能は必要ありません。重要なのは「好奇心」を原動力に、既存のものに疑問を持ち、より良い選択肢を探すことです。「好奇心」というのは、既知のものを違った視点で見つめ、新たな洞察を得ることです。

 世界を創造するオリジナルな人は、「自主的に物事を考える人」で、「好奇心」が強く、「周りに同調しない」「反抗的」という特徴が指摘されています。

 このオリジナリティは、不変の性質ではなく、その気になれば、誰でもがなれるものなのです。

2.起業家はリスクを好んでいるわけではない

 われわれは、オリジナルな人というと、生まれながらリスクや不安に強く、我が道を行くタイプと考えてしまいがちです。そして、オリジナリティを発揮するにはリスクを冒すことが必要だと思いがちです。しかし、そんなことはありません。

 この本の指摘によれば、オリジナルな人というのは、我々が思っているよりもずっと普通の人なのです。オリジナルの人は表面的にはリスクや不安に強いように見えて、内心では、普通の人と同じで、不安や恐怖を抱いています。

 多くの人は起業家をリスク・テイカーであると考えますが、成功した人は、ある部分ではリスクを冒しつつ、他の部分では慎重になることでバランスをとっているのです。起業に集中して一発勝負を狙うよりも、リスクを分散し、リスク管理をしながら起業した方がうまくいくのです。ある研究によれば、起業家は自ら進んでリスクをとりに行くのではなく、むしろ一般の人たちよりもリスク回避型であることが多いのです。一般の人との違いは、不安や恐怖を抱きつつも「行動を起こす」ということ、「失敗するよりも挑戦しない方が後悔する」と感じていることです。

3.キラリと光るアイデア、創造性の見抜き方

 オリジナリティの最大の障害は、アイデアの「創出」ではなく「選定」にあると言っています。以前、イノベーションについて書いたときにも言いましたが、何もないところからパッと新しいアイデアがひらめくと言うことはほとんどありません。むしろ、既存の知と既存の知を組み合わせることで新しいアイデアが生まれイノベーションに繋がるのです。従って、この本が指摘するように、アイデアの「創出」よりも、既に存在する既存の知(アイデア)の中からうまく「選定」することが重要なのです。

 世の中に溢れているアイデアからうまく選定できる人は限られています。この人がオリジナルな人なのです。

 人間には認知バイアスがあります。自らアイデアを思いついたときに、興奮や達成感で舞い上がり、自分のアイデアの長所ばかりを過大評価し、欠点や短所を過小評価するようになります。自分のアイデアを適切に評価できるようになるには、他者からの評価を収拾することが大切になります。

 有望な企画ほど最初は却下されがちです。これは判断する上層部が新しいアイデアを実行して得られる利益よりも悪いアイデアに投資してしっぱんする方に目を向けがちだからです。この本では、「独創的で成功するアイデアはそのまま伝えると受けいられない。アイデアを何度も小出しにして出すことが効果的」といっています。

また、気難しい上司に意見を伝え、味方につけることも効果的とも言っています。

4.傑作を生み出すには多くのバリエーションを試すこと

 傑作や良いアイデアを生み出すには、たくさんな作品やアイデアを生み出すことだと言います。多くの作品やアイデアを生み出すことで、正しいものに突き当たる確率が高まるということです。

 どうすれば、良いアイデアを作ることができるか?人よりも多くのアイデアをとにかくたくさん生み出すしかありません。はじめから傑作や良いアイデアになると分かっていたら試行錯誤してアイデアを生み出す努力をやめてしまいます。とにかく試行錯誤して努力するしかありません。

 オリジナリティを発揮したければ、とにかくたくさん作ること、大量に創作するしかないのです。最も多作な人ほど独自性に秀でて優れた作品を生み出しているのです。

 多くの人が斬新なものに到達できないのは、アイデアをちょっとしか出しておらず、その少数のアイデアを磨き上げることにとらわれているからです。影響力のアイデアや成功するアイデアを生み出したいのであれば、とにかく大量のアイデアを生み出すことです。

5.先延ばしが創造性を高める

 先延ばしが創造性を高めることが指摘されます。

 早い行動やアイデア選定にはメリットがありますが、一度選定したアイデアに縛られてしまいます。1つのアイデアに縛られてしまうと、他のアイデアに目が行かず、他のアイデアとの組み合わせなども見えなくなってしまいます。

 先延ばしはマイナスのイメージがありますが、先延ばしをしてあれこれ考える時間をとることでアイデアが温められ、幅広くアイデアを検討することで、最終的に良いアイデアが生まれます。先延ばしは「生産性の敵」ですが「創造性の源」となりうるのです。

6.ビジネスの優位性はタイミング

 オリジナリティ溢れる性行為した起業家は先に先行者利益を取っていると思われがちです。しかし、実際は、先発企業の失敗率は47%、後発企業の失敗率はわずか8%です。先行者となることは利点もある反面、不利な点も多いのです。

 オリジナルであることは、先発者である必要はなく、他とは異なる、他よりも優れていればいいので、タイミングが重要なのです。

この本には、他にも有用なことが色々書かれています。

人間がどうやって組織や社会の中で、個人のオリジナリティを発揮するのかについて、独創性を発揮する人が直面する問題、組織での振る舞い方、人の説得の仕方、良いアイデアのみ開け方など多岐にわたって説明されています。

この本の知見は、生き方や働き方に多くの示唆を与えてくれると思います。