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権限委譲

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2万2768人で、着実に減少傾向が続いています。しかし、感染した入院患者の13%が1年後も後遺症に悩まされているということです。特に症状として多かったのが、倦怠感や疲労感、呼吸困難や集中力の低下などです。単なる風邪やインフルエンザと同じと侮ることはできません。

さて、今日は日経ビジネスの「任せることで上司も部下も成長――『権限委譲』のススメ」という記事を取り上げます。これまでも部下の育成について、「認めて、任せて、褒める」のが基本と言い、「任せ方」についても色々書いてきました。繰り返しのような話になりますが、面白い記事なので紹介することにしました。

「360度フィードバック」の結果を受け取った津守課長が、自己評価とあまりにもかけ離れた低評価に、諫山部長に詰め寄るところから始まります。プレーヤーとしては一流だった津守課長ですが、管理職としては十分な成果を上げられていません。管理職になった以上、部下を育てることも大切な仕事なのに、プレーヤーとしての意識が抜けていないのです。「部下の仕事はすべて把握しておきたいし、自分でやった方が早く確実なんですよ。任せたところで思うような成果は期待できないし、指示してもその通りに動いてくれない」と言う始末です。権限委譲、つまり「部下に任せること」ができないのです。

1.権限委譲

 権限委譲というのは、上司が部下に仕事と行動を任せることを意味します。業務の遂行に必要な権限は部下に委ねるが、最終的な結果に対する責任は上司が担うのです。上司が権限委譲することの最大の目的は、部下に成長の機会を与えることです。

 優秀なプレーヤーであった管理職には、権限委譲が苦手という人はかなりいます。特に日本企業では、マネジャーとプレーヤーを兼務しているようなケースが多く、マイクロマネジャーに成り下がり、津守課長が言うように「自分でやった方が早く確実だ」と考えてしまうのです。

 優秀な上司が権限委譲をしたがらない理由としてはさまざまなことが考えられます。

  • 時間がない・・・事後とが忙しく、任せるべき仕事を部下に説明したり、フォローしたりする時間的な余裕がない。それなら「自分でやった方が早い」「余計な時間を使わなくて済む」と考えてしまう。そもそも、どの仕事を部下に任せるかを考える余裕すらない。
  • 「任せるリスク」への抵抗・・・部下の能力に確信が持てず、成果の質に不安があるため、敢えてリスクを取りたくない。任せると進捗が把握できず、管理が難しくなることを恐れる。
  • 仕事が好きで、誇りを持っている・・・仕事が好きで仕事に誇りを持っていることで、部下に渡したくない(部下に取られたくない)と思ってしまう。
  • 自分の立場やプライドを守りたい・・・仕事を部下に任せることで、自分の権限や威信が失われることに不安がある。部下が結果を出したときに、自分の立場が危うくなったりプライドが傷ついたりすることを恐れている。

 その夜、津守課長は夢を見ます。夢の中で、権限委譲しなければと悩む「ホワイト津守」と権限委譲する必要はないという「ブラック津守」がせめぎ合いをしています。

 「部下に任せれば部署の成果が上がらないが、部下を育てなければ」と悩むホワイト津守に、ブラック津守は「別に部下が育たなくたってよくね?自分で成果を出し続ければいいだけだろう」と言います。

2.権限委譲のメリット

 夢から覚めた津守課長は「ブラック路線でいいんじゃないか」と思い始めます。そこにインスパイアマンが現れて、津守課長を諭します。

 プレーヤー時代に、悪い評価のフィードバックを受けたことがなかった津守課長は、360度フィードバックで低評価を受け「リーダー失格」の烙印を押されたように感じショックを受けていたので、夢を見たのです。

 インスパイアマンは、「360度フィードバックですべてが高評価、なんて人はいない。誰だって強みもあれば、弱みもある」「完璧主義を手放すところから始めないといけない。そうしないと、権限委譲もうまくいかない」と言います。

 権限委譲の最大の目的は部下に成長の機会を与えることにあります。それ以外にも、上司や組織にとっても大きなメリットがあります。

⑴ 部下にとってのメリット

  • 知識や経験が増え、能力開発につながる
  • 主体性や自立性、競争力の向上に役立つ
  • 仕事に対する動機付けや満足度にプラスの効果がある

⑵ 上司・組織にとってのメリット

  • 部下に仕事を任せることで、より重要な仕事に取り組むための時間ができる
  • 個々のスキルや経験値が上がることでチーム力の底上げにつながる
  • 各自が現場で判断できるようになることで、意思決定のスピードが向上する

3.部下への仕事の教え方

 部下に、どのように仕事を教えるかは難しいところですが、部下を指導しようと考えるからうまくいかないのです。「指導」しようと思うと、細かく指示を出したり、管理したくなるものです。「支援」すると考えるのがいいのです。

 仕事を任せる前に、委譲できる仕事と委譲できない仕事を整理した上で、部下の知識やスキル、経験、目標などを考慮して適切だと思う人を選定することが大切です。

 権限移譲できる仕事には、「定型業務」「部下が行ったことのある業務と関連したもの」「業務のゴールとプロセスが明確になっているもの」「部下の能力やスキルを伸ばせるもの」などがあります。一方で、権限移譲が適切でない仕事は、「経営陣が『マネジャーが行なうべき仕事』と考えるような重要な業務(チームや部下の目標設定、動機付けや支援、最終的な意思決定など)」「機密性の高いもの」「不確実な要素が多いもの」「リスクが大きく、任された部下が重圧を感じてしまうようなもの」などです。

 部下の成長に繋がるかどうかを考えるのが大切なのです。そして、仕事を依頼するときには、目的をしっかりと説明して理解してもらうこと、その際に部下の目標達成や成長につながるメリットを伝え、本人の意欲や仕事に見合った能力があるかどうかを確認することが大切です。

 そして、仕事を任せた後は、事細かく指示をしたり口を出したりするようなことはせず、必要なときにフォローできるようにしておくことです。そのためには、部下が助言や支援を求めやすい雰囲気を作ることです。普段から声かけやコミュニケーションを通じてよりよい人間関係や信頼関係を構築しておくことが大切です。

4.権限と一緒に分け与えたい「自信」

 部下から相談されたときなど適切なタイミングでのフィードバック、良かった点や感謝の気持ちを伝えるポジティブな声がけは、部下のモチベーションの向上につながります。何よりも大事なことは、部下が成果を出せていないというのは、上司である自分の責任という意識を持つことです。上司としての責任と覚悟を持つべきです。

 プレーヤーとしては一流で自信があっても、リーダーとしての自分に自信を持てるようになることも大切です。自分がバリバリ仕事をこなすヒーローであり続けるのではなく、部下を支える影のヒーローを目指すことです。

 この記事では、「権限委譲」を「エンパワーメント」に言い換えてもいいと言っています。エンパワーメントというのは「自信を与えてやる」「力をつけてやる」という意味ですが、部下に権限委譲するということは、部下に自信や力をつけさせてやる、つまり部下を成長させることです。部下に権限を委譲し部下をパワーアップさせるのです。

部下に仕事を任せず、事細かに指示を出していたのでは、部下は「言われたことだけやればいい」と考え、成長せず、チームの成果も上がりません。

権限委譲、エンパワーメントは、部下が自ら成長し、結果を出せるチームを作るためには欠かせないものです。自分で考え行動できる部下が増えると、リーダーはより重要な仕事、リーダーにしかできない仕事に時間を使えるようになります。

リーダーが部下を信頼して、権限委譲、エンパワーメントを積極的に行うことです。リーダー自身が変わらなければ部下もチームも変わることはありません。