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休日の本棚 世界で最もイノベーティブな組織の作り方

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2万4904人、東京は3616人で15日連続で前週の同じ曜日を上回りました。政府は、7月前半にスタートさせるとしていた「県民割り」の全国への拡大について、判断を誤ると第7波に繋がりかねないとして、推移を見極める考えです。第3回目のワクチン接種からも時間が経ち、この厚さで冷房を入れ換気が不十分に9なっていることに加え、BA.5に置き変わりつつあることが拡大の要因のようです。

さて、今日は、山口周著「世界で最もイノベーティブな組織の作り方」(光文社新書を紹介します。山口氏は、電通・BCGを経て、現在は組織開発を専門とすツ平グループに参画し、イノベーション、組織開発、人材・リーダーシップイクセリなどを行ないながら、多くの著書も出しています。

この本は、「もともと創造性の高い日本人なのに、なぜイノベーションに不向きなのか?」をいうことを切り口に、イノベーションを生み出すための組織とリーダーシップのあり方を教えてくれる本です。イノベーションとリーダーシップという山口氏の専門分野の知識をもとに、さまざまなエピソードと事例を交え、組織論やリーダーシップ論についてのヒントが得られる内容になっています。

  • 日本人は個人としてはイノベーティブだが、組織がボトルネックになっている
  • イノベーションを推進知るのは「若手」か「新参者」
  • 好奇心駆動型のアントレプレナーに課題優先型のエリートは勝てない
  • リーダーは「決め方」を決める
  • 優れた集合的意思決定は個人超える

など、興味深い論点が語られています。

1.共感を生み、イノベーションを起こす「ビジョン」

 山口氏は、イノベーションを起こせる組織の特徴として、明確な「ビジョン」の存在を挙げています。多くの日本企業で、「ビジョン」が掲げられていますが、ビジョンを掲げる目的は何でしょうか。

 組織は愛情を注げる同じ志を持った仲間で支えられています。逆に言えば、社員の志を一つにまとめ上げるビジョンやミッションが示されていない会社や組織は、社員がバラバラに好き勝手な考えや意見で動くことになります。重要なのは「リーダーがしっかりとした夢や志を持っているか」「チームとしてどんな仕事を成し遂げたいか、その思いをきちんとメンバーに伝えることができるか」です。

 この本で、山口氏は本当に組織を動かすビジョンには次の3つが必要であると言います。

  1. Where(どこに行くのか)・・・「ここ」から「ここではない別の場所へ」。そして「別の場所」がどこなのかを知っているのはリーダーしかいない。リーダーシップの本質の一面は「移動」にあり、その必然的結果として、リーダーは常に「行き先」を示すことが求められる
  2. Why(なぜやるか)・・・「ここではないどこか(Where)」が示せたとして、わざわざ今いる「ここ」から「ここではないどこか」に移動するには、その移動を合理化し納得できる理由が必要です。なぜなら、ほとんどすべての一は、長くいれば長くいるほど、「ここ」に対してさまざまな愛着やノスタルジーを覚えているからです。
  3. How(どうやるか)・・・ビジョンの実現には、最終的に必ず何らかの行動の変化が伴うわけですが、何をどのように変えていくかの指針がなければ、彼らは最初の一歩を踏み出すことはできません。この「最初Pの一歩」を踏む出すための大きな方向性を規定するのが「How」なのです。

 本書には、良いビジョンの例がいくつもあげられています。その中から、古いですが1961年にケネディ大統領が演説で述べた「アポロ計画」のビジョンを紹介します。

  1. 【Where】1960年代に人類を月に立たせる
  2. 【Why】人類が挑戦しうるミッションの中で最も困難なものであり、であるが故にこの計画の遂行は、アメリカ及び人類によって新しい知識と発展をもたらすだろう
  3. 【How】民間/政府を問わず、領域横断手w期にアメリカの科学技術と頭脳を総動員して最高レベルの人材、機材、体制を整える

 アメリカらしいパイオニアスピリットも感じられるビジョンで、多くの人を熱狂させました。まさに、人々をワクワクさせる「ぶっ飛んだ目標」です。

2.日本企業でイノベーションが起こりにくい構造的要因

 日本人は個人として葉創造性が豊かですが、組織がボトルネックになっています。それには、次の3つのポイントがあります。

  1. イノベーションを推進するのは「若手」や「新参者」であることが多い
  2. 日本人は組織内の目上の人に自分の意見を言ったり反論したりすることに心理的ハードルを感じる
  3. シニア層が若手よりも多く、シニアの影響が大きい

 日本企業でイノベーションが起こりにくいのは、こうした構造的要因があるのです。

 個人の想像力が上がれば、個人の集合体である組織の想像力も上がると考えがちですが、それは間違いです。「多様性の科学」のときにも書きましたが、多様な考えやアイデアが生まれても、地位の高いリーダーが部下の意見やアイデアを考慮せず却下し、自分の意見を押しつけるのです。イノベーションを起こすには多様な視点やアイデアが求められるのですが、多様な視点やアイデアが地位のあるリーダーに押しつぶされている限りイノベーションを起こすことはできないのです。

 イノベーションのためには多様な視点が求められます。そのためには長年組織や業界にいた人の考え方だけでなく、若手や新しく組織に入った新参者の意見や視点が重要になるのです。しかし「若造や新参者は黙っていろ」という雰囲気が組織にあると、せっかくのフレュシュな意見が出ても押しつぶされ、それが繰り返されると、意見を言うことも諦めてしまいます。

3.組織文化の変革

 イノベーションを起こすためには組織文化を変えなければなりません。

 組織文化というのは、事業目的を達成するために組織で共有された行動原理や思考が固定・反復されてできた固有の文化を表わす言葉です。簡単に言えば、「組織構成員の間で共有されている信念や価値観」です。

 組織文化が共有され浸透すると、次のようなメリットがあるとされています。

  • 組織に一体感が出る
  • 意思決定がしやすくなる
  • 自由度が高まる
  • 企業イメージが形成される
  • 人材の定着率が向上する

 組織文化というのは理解するだけでは何の役にも立ちません。それが身について、具体的に行動に移せることが重要です。組織というのは静的な存在ではなく動的な存在です。行動に移せなければ、組織自体崩壊してしまいます。

 組織文化を変えるには、組織の一人ひとりの言動を変え、上下のコミュニケーションの風通しを良くすることです。

 この本に「聞き耳のリーダーシップ」が書かれています。部下に意見を促し本音を語ってもらうために、上司自らが積極的に聞きに行くのです。これは、先日「信頼関係を築く聞き方」で書いたことに通じます。

 変化の激しい時代には若者や新参者、外部の者の視点に学ぶことが大切です。外部環境に対処するには、ときには自分たちがいち早く変化することが必要で巣。そのためのイアタらしい着眼点を能動的に獲得することです。そしてそれは、リーダーや上司が率先してやらなければならないことです。

 組織文化を変わりと、風通しの良い職場・組織になります。多様な意見やアイデアが個人の意見やアイデアに留まらず、組織の意見やアイデアになります。そうすることでイノベーションが起こりやすくなるのです。