休日の本棚 9割のお客がリピーターになるサービス
おはようございます。
今日も過去に紹介した本を改めて紹介します。過去の記事を貼り付けるだけで申し訳ありません。
今日は、国友隆一著「9割のお客がリピーターになるサービス」(三笠書房:知的生き方文庫)を紹介します。この本はブラディング、マーケティングに関する本で、10年ほど前に出た本ですが今でも十分に役に立ちます(コロナ禍の現況では有益です)。
「売れない時代に”それでも売る”サービス」には共通点があります。それはリピート率の高さです。ディズニーリゾートにしろ、マクドナルドにしろ、セブンイレブン、ユニクロにしても収益を伸ばしたり、ライバルに比べ高止まりしている企業やお店も、リピーターによって支えられています。ディズニーランド・ディズニーシーも、セブンイレブンもリピート率は90%以上です。
どうすればリピート率を90%以上にできるのか、少なくともそれに近づけることができるのかです。リピート率を上げるというと販促手法を連想しますが、販促中心では90%のリピートを獲得することはできません。この本では、必要なのは「志」と言っています。すべては顧客との関係を見直すことから始まります。お客さまは、企業やお店にとって「赤の他人」です。この事実をきちんと正視し、そのお客様という名の赤の他人に来てもらい、リピーターになってもらうためには、何をどうすればいいのか。試行錯誤しながらも諦めずに徹底し継続すれば間違いなくリピーターが増えていきます。本書はその方法を具体例やエピソードを紹介しながらわかりやすく説明してくれています。
例えば、「お客様にとって価値あるサービスをいかに無料で提供するか」ということです。先ほどのディズニーランドやセブンイレブン、ユニクロ、マクドナルドも有料の価値にどれだけ無料の付加価値をプラスαして提供できるかを考えそれを実践しています。
第1章 ここに「サービスの真髄」がある=お客様を”感動”させる企業に不況はない
期待を超えるサービスが感動を呼びます。「感動を与えるサービス」以上のサービスを受けると、お金を払った上で店員に感謝しさえします。それはサービスを受けたことが快感体験になったからです。常に「価格」以上の「価値」を提供することです。無償のサービスも圧倒的に印象深いサービスの一つです。しかし、「気前がいい」のは本物のサービスではありません。損得にシビアだから無料や無償のサービスを提供するのです。長い目で見れば、無償や無料のサービスでリピート率が高まって来店客数が安定し、結果的に新規客を集めるよりもコストが低くなるからです。
第2章 「商品力」なくして「収益力」なし=大繁盛のお店が大事にしている10のこと
品揃えとしての商品力を高めることも大事です。すなわちメニューの多さです。例えばマクドナルドのコーヒーですが、スターバックスなどに比べると味は落ちます。しかし、商品そのものさえよければリピート率が上がるというわけではありません。価格も含めたコストパフォーマンスが重要です。マクドナルドならもっとおいしいコーヒーを創ることが出来るでしょう。しかし、「値段のわりに美味しい」を追求するのがマクドナルドなのです。
店に雰囲気や接客態度も顧客の心をつかむ大切なポイントです。いまやこうした部分も商品の一部と言っていいほど、その良し悪しがリピート率を左右する要因になっています。例えば、スターバックスは、「ちょっとした贅沢を提供するサードプレイス(自宅でも職場でもなく、ゆっくりとくつろげる第3の場所)」というコンセプトで、店内でゆっくりくつろげるよう様々な工夫がなされています。ソファーの設置、「コーヒー」は香りを楽しむものということから従業員の香水や整髪料にまで制限し、「音」にも配慮しています。
このほかにも、ユニクロやサイゼリヤ、セブンイレブンなどの事例を挙げて大繁盛している企業や店についていかにリピーターを増やすかについて説明がなされています。
第3章 「ブランド力」はここから生まれる=思わず”とりこ”になってしまうサービスの秘密
例えば作業中にお客様から声をかけられたとしましょう。あと1秒で終わるので、その間お客様をお待たせしました。「たかが1秒ではないか」そう思ったらサービスの達人にはなれません。超買い手市場なのでお客様に合わせるしかないのです。すぐ対応することによってお客様の心が動かされ信頼関係が生まれるのです。ビズネスの範疇を超えてサービスを提供すると、お客様との心の触れ合いが生じ、お客様はビジネスの面でも行動を起こします。サービスが良いか悪いかはすべてお客様が決めることです。お客様に「この店はサービスがいい」と感動してもらうためにはこれまでの常識では考えられないようなレベルの対応をしなければなりません。お客様が「価値がある」と認めて初めて価値があるのです。
ここでは、サイゼリヤ、リッツカールトン、赤福などの例が挙げられています。
第4章 これが業界№1企業の「経営戦略」=そこまでやるか サービスのプロが徹底していること
自分ではお客様のことを考えてサービスを提供しているつもりでも、実際は自分の日常生活のリズムや感情、常識に合わせて動いている、「顧客満足」のためが「自己満足」になっていることが多いのです。
ここでは低価格の家具で収益を伸ばしているニトリの例が挙げられています。ニトリの似鳥昭雄社長は日本人の生活が豊かになるのであればイケアに負けてもいいと言い放っています。その二ケアは、コスト削減のために頭を使っています。普通家具を作る際、材料にする木の50~60%を活用する(40~50%は端材となり処分される)ところ、ニトリは95%を活用するのです。「そこまでやるか」というレベルまでやるのです。
例えば、ディズニーランド、ディズニーシーのトイレですがいつ行ってもきれいに掃除されています。トイレだけを専門に掃除して回るキャストがいて1か所のトイレに4,5分に1回巡回しているのです。これもそこまでやるかというサービスで、顧客が気持ちよく楽しめるために必要のことなのです。
第5章 「リピート率97.5%」の舞台裏=これがお客様に気づかせない完ぺきな気配り
ディズニーランド(リピート率97.5%)の具体的なコンセプトは①安全➁礼儀③ショー➃効率で、特に①安全が重要視されています。ディズニーランドの園内には砂粒一つありません。毎晩園内をホースで隅々まで水洗いしているからです。もし転倒すればすりむいて出血する恐れがあるため砂はすべて洗い流すことにしているのです。地面は一見アスファルトやコンクリート舗装のように見えますが、歩行により足の衝撃を吸収する特殊な加工が施されています。
伊勢丹にしろ成城石井にせよ、メーカーや卸が商品を提案すると、商品そのものの良し悪しを問うのはもちろん、何を基準にその商品を良いと思うのか、どういう点がよいのかを論理的に説明することが求められます。
論理はお客様を起点にスタートしてお客様をゴールにして結ぶ、論理の展開は、理念やビジョン、戦略や戦術を軌道にして進められ、それを十分に展開し実行すれば強烈なサービスを提供できると言います。例えばユニクロのファーストリテイリングの企業理念には「正しさへのこだわり」があります。その正しさを追求する理念が「本当によい服、今までにない新しい価値を持つ服を想像し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」です。かっこいい服とか高そうに見える服ではなく、良い服です。これには原材料、紡績、部品などの品質や細かい箇所まで行き届いた縫製、デザインなどのファッション性とともに価格であることも含まれているのです。
また、セブンイレブンなどのコンビニエンスストアには夏でもカイロが売られています。カイロと言えば冬が相場と決まっていますが、夏でも早朝川釣りや海釣りに行く人が買うことがあるからです。品揃えの多さがサービスにつながります。
また、阪急百貨店の大食堂の例が挙げられています。1929年世界大恐慌が訪れ日本でも東京や大阪で失業者が増えました。多くの食堂では、「ご飯だけの注文はお断りいたします」という張り紙が貼られました。ところが阪急百貨店の大食堂は、阪急グループ創業者小林一三の指示により、ライスのみの注文を受けることとし、更にテーブルには食べ放題の福神漬けを置いたのです。
マクドナルドは何をやるにしても派手です。接客やサービスはもちろん、キャンペーン、社内コンテスト、テレビCMなど目立ちます。しかし、数字には極めてシビアなのです。鉛筆一本の無駄も許さないというほどです。無料サービスを提供している企業ほど数字に細かいのです。
第6章 「サービスの達人」になるために=思いやりのないサービスはサービスではない
本物のサービスはマニュアルからは生まれません。想像力を論理的に整理しながら働かせることで素朴な思いやりをプロの思いやりにすることが出来ます。プロの思いやりを前面に出して経営・サービスを展開することでも客様に強烈なサービスを提供でき100%に近いリピーター率を実現できます。相手がお客様だから思いやるのではありません。人間だから、当然のこととして思いやるのです。もし「お客様だから」という理由だけで相手を思いやるのであれば、店の外でそのお客様に遭っても知らん顔をしたり素っ気ない態度をとったりしてしまいます。仕事中だから隊うため前でお客様を思いやってもお客様の心には響きません。
温かい心のこもった挨拶は接客の基本です。わずか一言二言の言葉でも一生忘れられない言葉になることもあります。その一言二言に挨拶する人の魂が込められると、その一言二言を通じて魂がお客様の心を包むことにもなります。
でも、情は大切ですが情に流されては駄目です。
第7章 商売で「一番大切なこと」=誰からも愛される会社が社員に教えていること
成長を止めない企業や店の共通点は次のようなものです。
- 思考や心の動き、行動がパターン化されておらず、柔軟である
- 外部に対して好奇心が強くその変化を敏感にキャッチする
- 社会における自分の居場所を、傷ついたり試行錯誤しながら探し続けている
- 成長しそれを喜ぶDNAを持っており、その成長が最も著しい時期でる
- 細胞など生命の新陳代謝が旺盛で、その分最もエネルギーに満ちている。生きているだけで輝いている
人材育成についてマクドナルドでは「人を育てないと昇進できない」システムが取られています。「人を育てる」ことが、日々の業務の核になり、人を育てることが自分の次のキャリアアップにつながるのです。教育は店内におけるOJTとハンバーガー大学におけるOffJTに分けられ受講生が採点評価されるのではなく講師が採点されるのです。マクドナルドの人材育成では「ついてこられない受講生が悪い」という判断がなく、教える側、育てる側に努力や工夫が足りないというわけです。消費者と接しているのは受講生です。ついてこられないからと切り捨てたらサービスの質が落ち消費者に迷惑が掛かります。だから、できる、できないではなく、できるようにしなければならないのです。また、受講生が居眠りしていたらその責任は講師にあると判断されます。
「働くのは生活のため」「仕事は義務」と多くの社員が考えている会社では人を育てようとしても本当の意味で人は育ちません。
この本は最後に行っています。
「お客様に喜んでもらうことがどんなに自分の喜びにつながるか。それを体験させ、肌で感じてもらう。より喜んでもらうよう努力し心底喜んでもらうことで、教える相手がどんなの魅力的であるかを感得してもらう。さらに努力して、より魅力的になった自分に出会ってもらう」
リピート率を上げる、固定客やファンを増やすということは、それだけで自分の喜びを増やすということであり、生きる喜びを前以上に体験できるということです。
あらゆるビジネスで、サービスとは何か、サービスの極意を教えてくれている本です。