中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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「いきなりステーキ」と「大戸屋」

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                              大阪市中央公会堂

 一昨日(12/10)の続きのような話です。

まずは、「いきなりステーキ」の店頭に社長直筆の「社長のお願い」の張り紙を貼られているというニュースについてです。この社長の訴えについて、ネット上では賛否両論の意見があるようですが、これもいきなりステーキの経営戦略の一つとすれば、あえてそれを批判するつもりはありません。いきなりステーキが急激に勢いを落とした主な原因は、鳥貴族と同じく拡大路線にあったと言えるでしょう。店舗同士の競合で売上が前年度比4割減とされていますが、果たしてそれだけが原因でしょうか。今ではタスマニアビーフアメリカ牛肉の輸入によって低価格でステーキが食べられる店が増えています。立ち食いスタイルや一定グラム以上のオーダーなど高齢者の顧客や女性客などの取り込みが十分にできなかったことも原因の一つでしょう。この点については椅子が設置されオーダーカットが選べるなど対応がとられているようです。しかし、もし今後拡大路線を転換し不採算店舗の閉鎖などの戦略がとられたとしても、現状では売上増は難しいのではないかと思います。吉野家がとっている戦略のように、ステーキハウスというコアを守りつつサイドメニューを増やし高齢者や女性客などの客層を増やすことが必要になるでしょう。

次に大戸屋について、「赤字転落、その原因は安すぎるから?」というニュースがありました。大戸屋の赤字転落の理由については、人件費増、バイトテロ、創業者と経営陣のお家騒動、度重なる値上げなどいろいろと挙げられているようです。しかし、安いと言えば吉野家はさらに安く、同じ定食屋のやよい軒も安いでしょう。安すぎるからだけが原因ではなさそうです。確かに、大戸屋は店内調理にこだわり他の定食屋よりは旨いという評判です。「安いがまずい」ではなく「若干高いが旨い」定食屋というコンセプトもありかも知れません。その意味では採算が得られる程度に値上げを行うという戦略もありでしょう。経営戦略のうちの差別化戦略です。高くてもいくという大戸屋ファンがいるかもしれません。これは顧客がどのように反応するかが読めず難しい判断になりますが・・・

単価の安い店では一人当たりの売上、利益は少なく、いかに回転率を上げるかが勝負です。大戸屋の場合も回転率を上げる方策を考えるべきでしょう。人はゆったりできれば長居をします。吉野家は、席と席との間隔は狭く窮屈で食べ終われば出るしかありません。こうして回転率を上げています。それでも客が来るというのはそれだけの魅力があるからです。しかし、牛丼屋と定食屋の違いというものもあるでしょう。定食屋で食事をするというのは、高級店でないにしろ、少しはゆっくりしたいという思いがあるからでしょう。あまり追い立てるような接客をすれば客足が遠のきます。それでも少しでも回転率を上げるために座席割を検討する必要があるかもしれません。

競争戦略には3つの基本戦略があります。まずは、コスト・リーダーシップ戦略。これは競争相手よりも低価格を実現することを目的とするものですが、徹底したコストの切りつめが必要になります。次は、差別化戦略。これは競争相手が真似できない製品・サービスの独自性で優位に立とうとする戦略で、顧客が価値を見出す他社との違いを作り出す必要があります。最後に集中戦略。特定の製品・サービス、顧客層、地域など限定した領域に集中することで優位に立とうとする戦略です。

3つの戦略のうち、自社の強みに合致し競争相手が応戦しにくい戦略を選ぶ必要があります。

「いきなりステーキ」や「大戸屋」のように売上げ減・利益減に陥らないために、自社の戦略を考えてみてください。