中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

新型コロナ追跡システム

f:id:business-doctor-28:20200618082841j:plain

おはようございます。

昨日の東京の新規感染者は16人と減少しましたが、大阪で4人の新規感染者が出ました。ミナミのバーで発生したようで、また福岡中州のキャバクラでもクラスターが発生した模様です(北海道でも「昼から」でクラスターが発生し、客の28人と連絡が取れないということです)。大阪・博多の感染は東京から来た客によってもたらされたと言う噂もあります。西村担当大臣は予定通り、明日19日から県をまたいだ移動制限を解除するようです。益々東京から地方へ感染が広がり第2波に突入する心配があります。

こうした中いくつかの朗報があります。

1つは、富山県立大学と金沢大学の共同グループが、国内で初めて下水から新型コロナウイルスの検出に成功しました。両県で新型コロナ感染が拡大していた時期の下水調査について、富山県立大学・端昭彦講師は、「感染者が急増していく時期より、1週間くらい前のタイミングで下水からコロナウイルスの陽性結果を得ることが出来ています。今後、第2波が起こるという時に、この下水の調査によって第2波の予兆をできるかもしれない」と言っています。このような下水調査が感染拡大の兆候を察知できるなら喜ばしいことです。

次は、大阪府は、大阪大学大阪市立大学を共同で開発している新型コロナウイルスのワクチンを今月30日に治験開始すると発表しました。新型コロナにおいてワクチン開発と治療薬の開発が待たれています。大阪府吉村知事は、「全国初である」と言い、「新型コロナウイルスとの闘いを大きく反転攻撃させていきたい」と意気込みを語っています。まず、6月30日に医療医療関係者30人程度で人への治験を開始し、10月に数百人規模に拡大、今年中に10万から20万単位での製造が可能となり、来年春~秋頃の実用化を目指すということです。治験の中で課題が出てくる可能性もあり、まだまだ前途多難な感は否めませんが、大阪から全国にこうしたワクチンが広まり感染拡大を防止できるなら喜ばしいことです。また、大阪だけでなく、全国の多くの大学や研究機関もワクチンの開発や治療法の確立に乗り出しています。そちらの方も頑張ってほしいです。お互いが切磋琢磨することで相乗効果が生まれます。そうすることで安全性の高いワクチンが安定的に製造され、実用化の時期も早まります。

また吉村知事は、クラスター調査をして検査し囲い込むことの重要性を指摘しています。日本で感染拡大を最小限に食い止めることが出来たのは、初期段階のクラスター対策だったように思います。第2波への備えにクラスター対策は重要です。昨日発生したミナミのバーでの感染がクラスター化しないことを願います。

今日は、「第2波拡大防止 コロナ追跡システムの実効性」というニュースを取り上げます。感染拡大を防ごうと大阪府京都市などではQRコードを使った「新型コロナウイルス追跡システム」が導入されています。感染者に接触した可能性がある人を早期に把握し、感染者の芽を摘み取るのが狙いですが、使うかどうか利用者次第で実効性があるかどうかはこれからです。

海外では日本と違い、強力な追跡システムがとられており、多くの課題が出てきています。韓国では、衛星を用いた位置情報や防犯カメラの映像、クレジットカードの決済情報などを元にAI技術を駆使し、感染者の移動経路を徹底的に追及することで一定の感染封じ込めに成果を上げてきました。しかし、個人のプライバシーまで侵害されるという懸念が浮上しています。一旦封じ込めが成功した5月上旬、ソウル歓楽街のクラブで集団感染が発生した際、個人情報の流失を恐れた客が来店者名簿に虚偽の記載を行ったことから連絡が取れない客が多数出ました。また、追跡システムで感染者が同性愛者のクラブに出入りされていたことが公表されたことで、ネットで同性愛者を非難・攻撃する書き込みが増加し問題になっています。

日本における一般的な追跡システムは、依頼があったスーパーや飲食店などの店舗や施設に公共団体が個別のQRコードを発行し、各店舗はコードを入り口に設置・掲示します。利用者は来店時にコードを読み取り、案内に従って、メールアドレスや利用日時を登録します。使うかどうかは利用者の自由です。もし利用した店舗で一人でも感染者が出た場合には、同じ時間帯の利用者にメールが送信されるという仕組みです。症状が出た場合には速やかに連絡するように呼び掛けています。ただ、海外の追跡システムとは異なり位置情報がないことから、当局がとり得る感染者の探索方法には一定の制約があり、本当に感染者が発見できるのかという疑問も出ています。また、QRコード非対応の端末を使用している人は登録できません。また、通知を受け取った利用者が、SNSで店名を公表し拡散するということも考えられます。店側もこうした点を考慮して(場合によっては情報拡散、誹謗中傷によって休業・閉店の可能性も出てきます)参加するかどうか決めなければなりません。

利用している店舗・施設は、大阪で6月10日現在1万5063件、京都市は6月3日現在389件の申請があると言います。

利用するかどうかは利用者の判断に委ねられていますので実効性は未知数です。

問題はプライバシーとの関係です。

大阪府は、「管理するのはメールアドレスで氏名や生年月日などの個人情報は入手しない」と説明し、京都市も「プライバシーには踏み込まない」としていますが、メールアドレスに名前や生年月日を入れている人は多いと思います。アドレス自体もれっきとした個人情報です。大阪府をはじめ多くの自治体は膨大な個人情報を有しています。メールアドレスと地方公共団体保有する個人情報を結び付けることは可能です。また、例えば、QRコードにスマホで読み取りメールアドレスを登録することで、どのイベントにどの日時に来たということを府に知らせることになります。個人の行動履歴もれっきとした個人情報です。メールアドレスが流出して悪用される危険性もはらんでいます。また、こうした地方公共団体の説明が納得できるか、信用できるかと言うと疑問です。現在の追跡システムでは、吉村知事を始め公共団体の長は「個人情報は取得しない。プライバシーの侵害にならない」とごまかしています(吉村知事は法律の専門家ですから、分かったうえでごまかしています)。こうしたメールアドレスや行動履歴を取得することになるということを予め説明して同意を得たうえで利用を促すべきです。QRコードの横にこのことをしっかりと明示しなければなりません。

個人のすべての情報を紐づけしようというのはマイナンバーカードと一緒です。 注意が必要です。安易に利用すべきではないように思います。

また、政府の「感染症対策テックチーム」が開発したいわゆる「接触確認アプリ」は、最終調整をしたうえで、今日リリースされます。これは、「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策特設サイト」からダウンロードできるようです。

西村担当大臣は、「アプリを導入すると、他人と一定時間以上、近距離にいたことがスマホに記録され、接触した人の中で感染者が出た場合、”感染したかもしれない”という通知をいち早く受けることが出来る。海外では中央のサーバでデータを管理したり、当局が一情報を取得したりする方法のアプリもあるが、導入率は2割程度にとどまっている。一方、今回のアプリは個人情報保護法を最重要視しており、電話番号や一情報は取得しない。データは端末で管理され、通知する場合も誰が感染者か伝わらない仕組みだ」と言ってインストールを勧めています。このアプリは、スマホに搭載されているブルートゥースの機能を使って、接触した人同士を記録し、保存される情報は接触してきた相手のスマホの情報だけ、位置情報は含まれないと言います。情報自体が完全に匿名化されているため、その情報から個人を特定することはできないとされています。しかし、言ってはきりがありませんが、政府が行っていること、どこまで信用してよいか疑問です。日本ほど個人情報保護に甘い国はありません。いずれシステム上の不備も出てくるでしょう。これもしばらく様子見です。