中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 世界最高のリーダー養成機関

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で591人、うち東京136人、神奈川108人、大阪76人、愛知33人、福岡34人、沖縄28人となっています。東京も減少傾向にあるように見えますが、神奈川が高止まりしているのが気になります。国立感染症研究所によれば、新型コロナウイルスの致死率は「第1波」に比べ「第2波」では6分の1程度になっているとのことです。これは検査拡大で無症状や軽症者が多く確認されたことや治療方法が改善されたことが理由だとのことです。そうはいっても昨日は全国で17人(東京・大阪ともに各4人)が亡くなられています。

さて、先日来、「コロナ禍」や「総裁選」がらみで、リーダーシップやリーダーについて書いてきました。そこで今日は、田口力著「世界最高のリーダー養成機関で幹部候補生だけに教えられている仕事の基本」(角川書店)という本を紹介します。

このタイトルにいう「世界最高のリーダー養成機関」というのは、”世界最強企業”として名が挙げられるGE(ゼネラル・エレクトリック社)のリーダー育成機関である通称「クロトンビル」のことです。GEでは世界最強企業の中で最高の業績を上げたトップから15%くらいの社員を対象とした選抜教育がクロトンビルで行われます。ここで、未来の幹部候補生らが切磋琢磨し、研鑽を積むというわけです。著者の田口氏は、そのクロトンビルで日本人として唯一リーダーシップ研修を任され、日本・アジア太平洋地域の経営幹部育成プログラム責任者として研修を企画・立案・実施された人です。今年3月の亡くなられたときに紹介した20世紀最高の経営者としてたたえられるジャック・ウェルチは元GEの会長でした。

本書は、田口氏がクロトンビルでリーダー育成教育に携わってきた経験から、読者が「自分を成長させてさらなる進化を遂げる」ことを目的に、実例を織り込みながらクロトンビルでの考え方やヒントをまとめたものです。世界最強と言われるGEの強さの秘密、その企業を引っ張っているリーダーたちが受ける教育、更には心構えが示され、経営者や人事・教育担当者だけでなく、すべてのビジネスパーソンに役立つと思います。

1 序章 誰もが今より「自分を進化」させられる。

 リーダーとなるには、大切な3つの要素が必要です。

①スキルセット・・・自分が持っている技能(スキル)の品ぞろえです。

マインドセット・・・心構えのことです。「なぜ、何のために」つまり「Why」と「What For」の重視です。「How」ではなく「What For」を考えることが重要です。

③活動範囲・・・活動範囲の違いによって得られる効果は、スキルセットやマインドセットに影響を与えます。

この3つの要素を自分自身で磨き続けることが「世界一の研修」を維持する秘訣であり、同時に、一人のビジネスパーソンとして進化し続けるコツでもあると言っています。 そして、「ビジネス環境の変化に備えて自らを進化させよ」と言います。リーダーにとって必要なのは「不確実であいまいな時代にリーダーシップを発揮できる能力」であり、リーダーになる人物はこのような能力を身に付けなければなりません。まさに会社という組織だけでなく政治の場面でも同じです。そのためには自分自身を成長させる努力のレベルを常に向上させることが求められます。単に現状を維持しているだけでは不十分なのです。

自分を成長させるためには、まず知識を持たなければなりません。獲得すべき知識とはビジネスでは「経済」「業界」「社内」「経営」の4つの知識、そしてこの知識と技能(何かが出来るという実践的な技術)が必要ですが、これらを持っていてもそれらを使うためには「意思」がなくてはなりません。

「スキル」×「マインドセット」=結果なのです。ビジネスで起こっていることはすべて掛け算です。どこかがゼロになれば結果はゼロになります。この点注意が必要です。

2 第1章 「Self-awarenessがすべて」-自分を「知る」

人は自分の意識下にあることしかコントロールできません。自分の価値観を認識せず、物事を判断したり行動したりしていると、判断・行動をコントロールできないのです。肝心の「理由=価値観」を意識できなければ、さまざまな経験をしても、そこから教訓を得ることはできません。「結果について振り返る⇒教訓を導き出す⇒次の判断や行動に生かす」というサイクルこそがビジネスパーソンとしての成長を促進するサイクルです。そのためにも自分の価値観を明確に意識することが重要になります。

本書では自分にとって大切な3つの価値観を挙げ、その理由を説明することが求められています。そして会社の企業文化や組織の価値観と自分が大切にしたい個人の価値観の合致度が、中長期的な成功にとって重要なポイントになると言っています。

また、自分の強みにフォーカスすることが重要だと言います。同じ投入量(コストや労力)を弱みの改善に投資するよりも、強みに投資した方が、結果・効果は強くなるからです。

更に、失敗する要因はかなりの確率で分かっていると言い、①柔軟性➁社会的責任③対人関係能力の3つが欠ければ相当高い確率でビジネスパーソンとして失敗するというのです。そしてこの決定的な失敗要因はその人の性格ではなくスキルだと言っています。一般的に考えれば性格のようにも思えますが、スキルを身に付ければ改善できるのです。

元GE会長のウェルチはメディアから「なぜ20世紀最高の経営者と言われるようになれたのか」という質問に「Self-awareness」(自分に対する気づき)と答えています。

現GE会長のジェフリー・イメルトも「リーダーシップとは終わりのない自分探しの旅」と言っています。GEでは、自分を認識することの重要性を教えていることがよく分かります。「自分とはどういう人間か」については、「自分自身が認識している自分」と「他人が認識している自分」があります。GEで教えているのは、周囲の人がどのようにあなたを認識しているかがすべてということです。優れたリーダーに共通するのは、「公開された自己」の部分を継続的に大きくする努力を続けていたとういうことです。つまり、自分が認識し他人も認識している自分、自己認識と他者の自分に対する認識が合致している部分を大きくするのです。かつて私が大学時代に「政治過程とはイメージの統合過程である」と「政治家の自己イメージと国民がその政治家に抱くイメージとをいかに合致させるかが重要でありそれによって、リーダーシップを獲得する」と論文で書いたことがありますが、まさに同じことを言われているように思います。

3 第2章 「最初の60秒で結論を見せる」-自分を「伝える」

 ビジネスに起こっている問題の根本的な原因の7割から8割は「コミュニケーション」に関連することです。コミュニケーションは双方向の情報のやり取りによって成立し、コミュニケーションの本質は「意思の疎通」「情報の伝達」にとどまらずそれらを「一緒に共有する」ことです。日本人・日本社会には本当の意味でのコミュニケーションはありません。シビアなビジネスの世界でも「なあなあ」で終わってしまいあとでトラブルになることが往々にしてあります。これらはコミュニケーション不足、意思や情報の共有が出来なかったことから生じます。欧米でのコミュニケーションは言葉と言葉を戦い合わせてお互いの考えを理解し、「妥結点」(妥協点ではありません)を見出したらがっちりと握手するというものです。まず、はじめに言葉があるのです。グローバル・ビジネスの世界では、交渉の場で黙っていたら相手の言ったことを認めたか、何も考えていないかのどちらかだとみなされ軽蔑されます。

日本人と欧米人のコミュニケーションの取り方に違いがあります。日本人のコミュニケーションの取り方は起承転結に則り最後に結論が出てきますが欧米では先ず結論ありきです。本書では「I love you because」で提案すると言っています。また、ドラマを例に挙げ、日本の刑事ドラマでは最後に犯人が分かるのに、「刑事コロンボ」では最初に犯人が分かりそれを追い詰めていくというのです。先ず結論があってその結論にい達家庭が示されるというわけです。

また、ビジネスにおける「三点一平面決定の法則」というのが紹介されています。

  1. 報告は3つにまとめる・・・文書でも口頭でも、要点を3つにまとめるという者です。いろいろ言いたいことはあるが、3つにまとめることで本当に重要な事項について絞ることが出来、インパクトのある報告になるということです。このプロセスで物事に優先順位をつける思考が身に付きます。報告を受ける立場でも2つなら少なく4つなら多いと感じるので3つがちょうどいいというわけです。
  2. プレゼンテーションのメッセージは3つで構成する・・・プレゼンでは、⑴問題や課題の客観的な現状とその分析 ➁問題や課題に対する解決策 ③解決策を実施した場合に想定される効果 の3つが主要な柱になります。
  3. 提案するときは3つの選択肢を提示する・・・ここで重要なのは主導権が相手にあると思わせるためにb妙な心理の働きを利用することです。相手が何に最も関心を払うかを忘れずに、腰と、硬貨性、実現性、創造性、重要性など自分の提案内容に最も適した基準で3つの絞ることです。

先ほど、「まずは結論ありき」ということを書きましたが、結論を簡潔な文章にまとめることです。キー・メッセージが決まれば ①問題 ➁解決策 ③インパクトというキー・メッセージを支えるメッセージを考えます。そしてそれらのメッセージとキー・メッセージとの整合性を考えるのです。プレゼンテーションの場合、最初の60秒が命です。この出だしで聴衆の関心を引き付けられるかがポイントです。

日本では「能ある鷹は爪を隠す」「陰徳を積む」という言葉があり謙遜が美徳とされています。良い仕事をしていればだれかが見てくれているというのはビジネスでは通用しません。結果が全てです。「能ある鷹は爪を隠すな」です。爪を見せるだけでは不十分、その爪は鋭く強う者であることを示すためには、何かを引っ掻いて見せなければなりません。つまり実績を見せるのです。

ちょっと長々と書きすぎましたが、まだ全体の半分くらいです。本書で語られているのはリーダーになろうとする人に必要なこと、リーダーに必要な能力をどのように身につけるか、ということなので、経営者だけでなくビジネスに携わるすべての人に役に立つと思います。明日続きを書きます。

ただ、明日は早朝から出かける予定なので、朝早くアップするか、夜遅くアップすることになるかもしれません。宜しくお願いします。

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