中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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マーケティング・ミックス 4P・4Cを考える

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1285人、そのうち東京293人、神奈川99人、埼玉67人、千葉48人、愛知129人、大阪226人、兵庫60人、福岡23人、沖縄25人、北海道166人などとなっています。明らかに全国的に急増しています。大阪では3カ月ぶりに200人を超えました。都構想で新型コロナ対策がおざなりになったからであることは明らかです。東京では300人に迫る勢いで、こうした中20日から東京版GoToイートをスタートさせ、今日から食事券の販売がなされます。また北海道では感染拡大で病床がひっ迫しています。

菅首相は、「今までよりも踏み込んだクラスター対応を実施する」と言っていますが、口先だけのような気がして、経済優先の政府には具体的対策を期待できません。われわれ一人一人が密を避け感染防止対策を行っていくしかありません。

こうした中、米製薬会社ファイザーが開発中の新型コロナワクチンが臨床実験で9割以上の予防効果があると発表しました。これが事実とすれば、喜ばしいことですが、「できた抗体がどれくらい持続するのか」「副作用はないのか」などまだまだ課題は山積みです。このワクチンは-60~-80度という超低温での保管が必要なので、輸送や保管方法でも課題がありそうです。それでもワクチン開発が一歩前進したことで新型コロナとの闘いに希望が持てるようになります。

さて、ITmediaビジネスオンラインに「デジタルで『4P』はどう変わる プロモーションは『会話』が勝負?」という記事がありました。今日は、この記事を取り上げるというよりは、4Pについて考えてみたいと思います。

4Pとは、マーケティング・ミックスと呼ばれる4要素、つまり、製品(Product)価格(Price)流通(Place)販促(Promotion)のことです。

マーケティングというのは、色々と定義されますが、著名なマーケティング学者のP・コトラーによれば「個人のニーズと欲求を満たすために、交換過程を通じてなされる人間の活動」と言われています。分かりやすく言えば、企業が顧客が真に求めるニーズに応じた製品やサービスを作り提供することによって顧客が効果的にその価値を得られるようにする活動ということです。

マーケティングは、市場や顧客情報を収集して分析するところから始まります。こうした市場や顧客情報をを基に、市場構造を把握します。具体的には、顧客やその特性に基づいて市場を細分化(セグメンテーション)して全体像を把握します。次に、細分化された市場のどこで戦うのか、標的(ターゲット)となる領域を探します(ターゲティング)。更に、標的とした領域で、競合と差別化できる独自の位置をつかまえます(ポジショニング)。これらの一連の流れは頭文字をとってSTPマーケティングと呼ばれます。これで、戦いの構図が決まります。あとは実践です。マーケティング・ミックスに落とし込むことになります。

優れた製品やサービスを開発しても、売れるとは限りません。競争力のある価格を決めたり、顧客の目につく場所に並べたり、顧客が手に取って見たくなるデザインやパッケージを考えたり、宣伝活動をしたりしなければ売れません。マーケティングに必要な4つの要素を揃えて、これらを有機的に統合させ、売れる仕組みを考えることが4Pということになります。

この4Pは、顧客の購買意欲・購買行動に大きく影響します。まず市場において人々が対価を支払い購入しようとする直接の対象が製品です。顧客がその製品を購入してくれるかどうかは、その購入に必要となる金額や支払いの条件にも影響されます。更に製品や価格が優れていても、流通していなかったり顧客にその良さが伝わらなかったら熟れません。企業が製品を購入してもらうためには製品や価格だけでなく流通や販促活動も必要となり、適切なマーケティング・ミックスの設計が不可欠です。

マーケティング・ミックスを実行するには、3つの整合性を考える必要があります。

  1. まずはターゲティングとの関係です。ターゲットとする顧客のニーズや消費行動と整合していなければなりません。ターゲットとする顧客が、そのプロモーション(Promotion)に反応して、製品(product)を、その場所(Place)で、その価格(Price)で買ってくれなければなりません。
  2. 次に4つの要素間の整合性です。4つのPはそれぞれ独立したものではなく、相互に関連しています。例えば、製品の品質やブランドは価格に強い栄光を与えますし、その価格もプロモーションや流通の仕方とも密接につながっています。高品質のブランドイメージを維持するために、価格や流通や宣伝方法にも整合性を持たさなければなりません。
  3. 個々のマーケティング・ミックスは、企業の全社戦略や事業戦略とも密接に関係します。消費者は製品イメージを企業イメージと重ねてみています。企業の戦略と整合性を保たなければなりません。

しかし、この4Pはすべて売り手側、つまり企業サイドの視点に立ったものです。下手をすると、記号の独りよがりになってしまいます。その意味では、マーケティングにおいて顧客の視点も重要になります。これが、R・ラウタ―ボーンが提唱する4Cです。これは、製品を顧客の価値(Customer value)に、価格を顧客のコスト(Customer cost)に、流通を顧客の利便性(Convenience)に、プロモーションを企業と顧客のコミュニケーション(Communication)にと、とらえなおそうというわけです。こうした顧客視点も効果的なマーケティング・ミックスを設計するうえで重要な視点になります。

ITmedia ビジネス・オンラインの記事では、デジタル化で企業と顧客とのコミュニケーションが増加したと言っています。確かに企業と顧客とのコミュニケーションが増えることは、マーケティング・ミックスから言えばよいことのように思われます。しかし、一方で、炎上リスクを抱えることになります。ちょっとした何気ない一言が、炎上し不買運動にもつながるのです。先日も老舗タイツメーカー・ATUGIのツイッターに「アツギの商品を着用した女の子を描いていただきました!タイツの日、1日を通して朝・昼・夜のシチュエーションで女性の脚もとを彩るタイツ・ストッキングをお楽しみください」と発信し、そこで、タイツを着用した女子高生やCAをモチーフにしたイラストが載り、「じゃあ付き合っちゃおうか」というセリフやプライベートゾーンが見え隠れする描写がなされ、ネットでは「女性を性的に消費している」との批判が殺到し不買運動にまで発展しました。ATUGIには悪気はなかったと思いますが、ターゲットは女性なのに男性目線での描写となる(イラストレーターの起用にも問題があったのでしょう)など、ターゲティングとプロモーションの整合性が欠けて大きなミスを犯しました。

ATUGIのケースは一方的な発信ですが、企業アカウントによる会話は、炎上リスクと隣り合わせにあるように思います。双方的な会話というのは親しみがわき、うまくいけば購買につながりますが、下手すると大炎上にもつながるので注意が必要です。本当に双方的なコミュニケーションをとるというのであれば、炎上リスクを下げる工夫が求められます。企業アカウントの組織的な運用体制をしっかりと作りアカウントポリシーの設定も重要になります。

SNSを通じた情報の拡散を求めすぎるとなると、やらせにもつながり「フェイクニュース」にもなりかねません。あるユーチューバーが豊胸の事実を隠してバストアップ関連商品の宣伝やプロデュースを行っていてネットで炎上したことがありました。損害賠償を求められるなど大問題になりました。

企業アカウントによる会話が炎上リスクを伴うのはデジタルだからというよりも、コミュニケーションの難しさからです。そこには企業と顧客との関係の難しさがあります。顧客と言っても結局は極めて我儘ですぐに気が変わってしまう存在です。他社でよりよい製品や安い製品が出ると直ぐに乗り換え、これまで高評価だったのを低評価に変えてしまうのです。こうした炎上リスクがあることを認識したうえで、企業としては企業倫理を守り続けていくことが重要です。

企業が倫理を守りコンプライアンス違反を行っていなければ、炎上も大炎上にまではならず、すぐに火は消えます。

いずれにせよ、マーケティングにおいては企業側の視点としての4Pだけでなく顧客視点の4Cのバランスを考えながらマーケティング戦略や施策を検討することが求められます。