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休日の本棚 10日で学ぶMBA

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1214人、そのうち東京337人、神奈川162人、埼玉118人、千葉151人、愛知53人、大阪69人、兵庫21人、京都7人、福岡31人などとなっています。首都圏は先週土曜日よりも増えており、少なくとも首都圏では減少傾向が鈍化し下止まりしていることは明らかです。このような状況が続くと、3月7日の緊急事態宣言解除も難しくなります。このところの減少傾向で気の緩みが出たのか各地で人出が増えています。新規感染者が減少したと言っても、現在の状況は第2波のピーク時と変わりません。まだまだ気を緩めずに、徹底した感染防止対策を取らないと第4波が襲来し、GW頃に再び緊急事態宣言発出という事態になりかねません。

さて、今日は、ティーブン・シルビジャー著「10日で学ぶMBA」(SoftBank Creative)を紹介します。

MBAとは、Master of Business Administration の略で、経営学修士号・経営管理修士号と呼ばれる学位で、経営学の大学院修士課程を修了すると授与されます。MBAは資格ではなく学位です。

以前、マサチュセッツ工科大学の著名な経営学教授ヘンリー・ミンツバーグは「実際のビジネスは複雑なものであるのにMBA教育はビジネスを単純化しすぎて教えている。それでは現場で通用しない」と警鐘を鳴らし、そこからMBA不要論MBA有害論が出てきました。ミンツバーグ教授は、経営学自体やビジネススクールで教えている科目の有用性は認めていて、ビジネススクールでの教え方を批判しているにすぎません。

また、最近、アメリカの実業家・投資家であるイーロン・マスクが「MBA取得者が増えすぎた結果、会議に費やす時間が多くなり、現場を見ないことでイノベーションの停滞が起こっている」と指摘したことから、再びMBA不要論が再燃してきています。

しかし、ミンツバーグ教授が言うように、MBA教育に問題はあるとしても、そこで学ぶマーケティング・アカウンティング・ファイナンス・オペレーション・経営戦略などは有用なはずです。MBAで優秀な成績を収めた人たちの中には、企業や起業においても優れたビジネスモデルを確立している人も多くいます。問題はMBAで学んだことをどのようにビジネスに生かしていくかということです。MBAブームとなり多くのビジネススクールが生まれ、多くの人が入学すればそれだけ質の低下も出てきますが、そのこととMBA不要論とは関係ないはずです。一人ひとりがビジネススクールで何をどのように学ぶか、それを社会に出てからどのように活かすかにつきます。

しかし、ビジネススクールに通う時間やお金もないという人や、MBAを取得したが再び学びたいという人にうってつけの本が、この「10日で学ぶMBA」です。この本では、米国トップ10のビジネススクールの教育内容の真髄が紹介されています。ビジネススクールに通っている気分になって学べると思います。

第1日 マーケティング

 マーケティングは技法と科学が特殊にまざったもので、優秀なマーケターが有する経験、直観、創造性は教えることはできません。しかし、正規の教育では、マーケティングという仕事に取り組む際の枠組みと語彙だけですが、ビジネススクールのカリキュラムの主眼では、本格的なマーケティング戦略の策定に置かれています。

 ここで学ぶことは ⑴マーケティング戦略策定の7つのステップ ⑵購買プロセス ⑶セグメンテーション(市場の細分化) ⑷製品ライフサイクル(PLC) ⑸知覚マップ ⑹マージン ⑺マーケティング・ミックスと4P ⑻ポジショニング ⑼流通チャネル ⑽広告 ⑾プロモーション ⑿プライシング(価格設定) ⒀マーケティングの経済性 です。

第2日 倫理

 MBAカリキュラムの倫理の目的は、模範的な企業人に仕立てることではなく、ビジネス上の意思決定の陰に隠れた倫理的問題に気づかせることにあります。

 ここで学ぶことは ⑴企業の社会的責任 ⑵相対主義 ⑵利害関係分析 です。

第3日 アカウンティング

 企業活動はすべて最終的には金額で評価され、好むと好まざるとに関わらず、アカウンティングの出番となります。

ここで学ぶのは ⑴会計原則 ⑵アカウンティングの概念 ⑶財務諸表 ⑷比率分析 ⑸管理会計 です。

第4日 組織的行動

 組織的行動の課程の目的は、職場での人間に関わる問題を教えることです。MBAで学んだスキルを現実の世界で使えるように、人間の感受性について、理解させることを目指しています。

 ここで学ぶことは、⑴問題解決モデル ⑵心理学のレッスン ⑶モチベーション ⑷リーダーシップ ⑸創造力 ⑹実際の仕事の進め方 ⑺権力 ⑻組織のモデルと構造 ⑼システム理論 ⑽組織の進化と改革 ⑾変化への抵抗感 です。

第5日 定量分析

 MBAのカリキュラムの中で最も難しいもので、ファイナンス、アカウンティング、マーケティング、オペレーションに使われる基本ツールを学ぶものです。数字を使うテクニックこそ、MBAとそうでない者との差が出るところで、定量分析の理論を使ってビジネスの問題を解決するのがMBAの主な仕事となります。

 ここで学ぶのは、⑴ディシジョンツリー分析 ⑵キャッシュフロー分析 ⑶正味現在価格分析 ⑷確率論 ⑸回帰分析と予測 などです。

第6日 ファイナンス

 ファイナンス部門は、新規顧客の開拓や従来の客への株式販売を促進するために働いています。ファイナンスの視点からすると、企業の目的はその所有者の富を最大限に増やすことです。ファイナンスの仕事は、株式相場といった投資の分野と、融資、勘定の支払いといった現場の仕事の2つで構成されます。

 ここで学ぶことは、⑴ビジネスの構造 ⑵ベータ指数 ⑶有効フロンティア ⑷資本資産評価モデル ⑸効率的市場仮説 ⑹投資の評価 ⑺割引キャッシュフロー ⑻配当成長モデル ⑼資本予算 ⑽資本構成 ⑾配当政策 ⑿合併・買収(M&A)です。

第7日 オペレーション

 オペレーションは、MBA過程の中で唯一、製品の製造やサービスの提供に直接関わるものです。製造やサービス提供こそがビジネスの究極の目的です。オペレーションはエンジニアリングや数字に関するものばかりではありません。人間的な側面もあります。技術的・定量的なアプローチを学べば、さまざまな数学的ツールを使いこなすことができ、オペレーションの問題に客観的な取り組みが可能になりますが、人間的な側面からのアプローチはオペレーションの問題を労働者の視点で見ることを教えてくれます。

ここで学ぶのは、⑴オペレーションズ・リサーチの歴史 ⑵問題解決の枠組み ⑶フローチャート ⑷線形計画法 ⑸ガント・チャート ⑹クリティカル・パス・メソッド ⑺待ち行列 ⑻在庫 ⑼最適発注量(EOQ) ⑽資材所要量計画(MRP) ⑾品質 ⑿インフォメーション・テクノロジー です。

第8日 経済学

 経済学を学んだからといって、確かに状況が予測できるわけではありません。しかし、世界中のビジネス動向の根底にある「目に見えない力」について何らかの見識を与えてくれるはずです。

 ここで学ぶことは、⑴需要と供給 ⑵ミクロ経済学 ⑶機会費用 ⑷限界効用 ⑸弾力性 ⑹市場構造 ⑺マクロ経済学 ⑻ケインズ派マネタリズムの理論 ⑼国民総生産の計算法 ⑽国際経済学 です。

第9日 戦略

 戦略は最も刺激的な過程ですが、戦略を立てるためには、MBAの過程で学ぶすべての知識の裏付けが必要です。戦略的思考には、その業界の特性、ライバル会社、短期的及び長期的なビジネス環境などを含めた包括的なビジネス分析が必要となります。

ここで学ぶことは ⑴7つのS ⑵バリューチェーン ⑶統合・拡大戦略 ⑷業界分析 ⑸競争戦略 ⑹シグナリング ⑺ポートフォリオ戦略 ⑻グローバリゼーション ⑼相乗効果 ⑽漸進主義 です。

第10日 MBAのミニコース

 ここでは次の9点についてミニコースとして簡単に説明されています。

  1. リサーチと競争的情報収集のミニコース
  2. 10秒でわかるパブリックスピーキングのミニコース
  3. 1分で学ぶネゴシエーションのミニコース
  4. 1分で学ぶ国際的なビジネス運営と外交政策のミニコース
  5. 企業法のミニコース(20分で法の達人)
  6. 1分で学ぶビジネスライティングのミニコース
  7. 10分で学ぶ不動産投資
  8. 10分で学ぶリーダーシップ講座
  9. 10分で学ぶファイナンシャル・プランナー講座

MBAは一昔前よりは身近な学位になっていますが、取得するのも容易ではありません。2年間ビジネススクールに通わなければなりませんし、年間数百万円というお金がかかります。しかも、日本のビジネススクールは、一部を除きアメリカのビジネススクールに比べれば質が低く、卒業してMBAを取得してもそれほど役立っているとは思えません。

この本で、アメリカのトップ10のビジネススクールが教えている課程を学ぶことは、レベルの低いビジネススクールに通うよりも役に立つように思います。

この本に挙げられている課程で興味を抱いたものがあれば、その分野の専門書を購入して、昨日書いた熟読の技法で学んでいけば、さらに知識を広げることができます。

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