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「場当たり的上司」からリーダーを考える

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おはようございます。昨日の新規感染者は全国で2974人と過去最多となりました。その内訳は東京602人、神奈川214人、埼玉188人、千葉155人、愛知242人、大阪415人、兵庫149人、福岡79人、北海道241人などとなっています。

東京、埼玉、千葉、岐阜(45人)、高知(20人)、大分(25人)の1都6県で新規感染者が最多を更新しています。大阪、北海道では病床使用率が上昇、医療がひっ迫し自衛隊の看護官が派遣されましたが、東京においても、入院調整が間に合わず翌日に持ち越されている事例が多発しているようで、医療がひっ迫しているのは明らかです。

東京都のモニタリング会議で専門家は「通常医療との両立が困難な状況になっている。医療提供体制がひっ迫し始めている。高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らすことが重要」との危機感をあらわにしました。しかし記者会見した小池都知事は「不要不急の外出の自粛と小まめな手洗いなど5つの『小』を徹底しましょう」と述べるにとどまっています。

政府分科会の尾身会長は「国民へのお願いに頼る時期は過ぎた」と言っています。また、分科会では、本日の会合で、分科会が感染状況が4段階のうち2番目に深刻な「ステージ3」に相当するとみている地域について①減少 ➁高止まり ③拡大継続に分類し、段階に応じて自粛要請などのレベルを変えるよう提言をまとめることが分かりました。➁③の地域ではGoToトラベルの停止を検討するように改めて盛り込むことのようです。これは、分科会からの提言を無視し適切な対応を取らずGoToを推進してきた政府に対する分科会からの最後通牒と言ってよいものです。

この期に及んで、加藤官房長官は「ステージ3の危険な地域は存在しない」と記者会見で述べGoToをさらに推進する始末、専門家の意見を無視する政治家の見識のなさにほとほと呆れるとともに、日本の将来が不安になります。菅が首相の座にいる限り新型コロナ対策は何も期待できません。

さて、今日は、「菅総理は『場当たり的上司』の典型か」というデイリー新潮の記事を取り上げます。この記事を取り上げながら、再びリーダーについて考えてみたいと思います。

先日の世論調査で、菅首相の新型コロナ対策について「評価しない」が「評価する」を上回りました。この記事では、その理由を「菅首相の言葉に力がなく、方針に一貫性が見られないからだ」と結論付けています。

「GoToキャンペーンが感染拡大の原因とするエビデンスはない」というのなら堂々とGoToを続けていけばよいのに分科会からの提言や知事からの要請で一部地域を対象除外とするなど微妙に方針を変更し、その一方で「来年6月末まで続行」と早々に決めてしまいます。

新型コロナ禍のような危機的状況では、完璧な対策はありませんし、状況を適切に分析・判断して臨機応変に軌道修正していくということがリーダーには求められることは否定しません。

しかし、菅首相が行う政策は「軌道修正」というようなものではなく極めて「場当たり的」です。政府の経済対策は、「経済の回復」イコール「GoToキャンペーン」となってしまっています。実際にはGoTo以外の方策もある(救済しないといけないのは全業種)というのに、観光業・飲食業を救済することが経済対策であるかのようになってしまっています。官房長官時代に自らが肝いりで始めた(二階幹事長の意向もあり)GoToにしがみ付きこれを維持せんがために場当たり的に変更を加え、一時中止を拒否し維持していこうという姿は醜くすらあります。今日の分科会からの最後通牒を受けどう変えるか注目です。

こうした状況はどの企業でもよく見られることです。

以前にも書きましたが、リーダーに必要なのは、適切に状況を分析し検証を行い間違っていると分かれば、失敗を素直に認めたうえでそれを切り捨て軌道修正していくという強い意志です。

この記事で挙げられている「場当たり的上司」の例を紹介します。

会議等で「戦略(もどき)」を口にする役員・管理職です。ある大手企業の各事業部の「戦略」なるものを見ても「戦略」とは思えないものばかり、まさに「場当たり的」なものばかりだと言います。例えば、「戦略」として「売上対前年度8%アップ」と挙げられていたとします。「これが本部の目標ですか?その根拠は?」と問うと「そんなものはありません。前年度は5%の目標を上げ3%しか達成できなかったので、前年より高い目標を上げ挽回を目指しています」という管理職からの返答。「では、その戦術は?」「今部下に考えさせているところです」「昨年度3%に終わった原因は?」「今部下に検討させているところです。私が感じているのは営業不足、訪問数が圧倒的に不足していることです。1日3件の訪問を指示したところです」という具合です。

これでは、状況認識も検証もなされておらず、「戦略」ではなく単なる目標数値にしかすぎません。目標達成のための戦術も全くありません。何の根拠もなく業績が悪かった原因を訪問数不足と一方的に決めつけ半ば強制的に実行を促しています。

この記事では、「この半端ないあてすっぽう感、武器なしで強制的に戦わせる無責任感、部下への丸投げ」は、どこか「担当大臣が」「専門家の意見を踏まえて」というよく耳にするフレーズを想起させると言っています。「担当大臣が」状況を適切に認識・判断して自らの職務を行うならまだしも、碌な仕事をせず、「専門家の意見を踏まえて」と言いながら都合の悪いところでは専門家の意見を無視するというのが横行しています。これは政治の話だけでなくあらゆる組織でも起こり得ることですが、困ったものものです。

さて、別の事例ですが、ある会社の本部長が掲げる「原点回帰」という戦略についてです。「原点回帰とはどういう意味ですか」「わが社の創業者は顧客第一ということを方針として大きな会社に育て下られました。そのことを観な忘れているので、顧客の要望をしっかり聞いてそれにも耐えるのはソリューションだと思います」「顧客第一主義とは具体的にはどういうことをするのですか」「顧客の要望をしっかり聞いてそれに応えるということです」という具合です。

ここで問題なのは誰もが反論できない一般論を持ち出し抽象度を上げることで正論を述べていると思わせていることです。「顧客第一」と言われると誰も批判はできません。

今回のコロナ対策で、「感染拡大を食い止める」「国民の命と経済を守る」「医療体制を充実させる」など、誰も反論・反対はできません。これに「全集中で取り組む」と言われれば文句のつけようがありません。こうした抽象論を大上段に振りかざすことで、そのための具体的な戦術をこれまでどれだけ準備し、実行できてきたかが見えづらくなっています。ごまかすことも容易にできるのです。

この記事では、「菅首相は、政治的な力を発揮していると自分では思っているかもしれないが、国民の多くを共感させて国民が団結するという方向に引っ張っていく力が発揮できていない」と言っています。

以前にも書きましたが、リーダ-に求められることは、現実を誠心誠意をもって正直に正確に伝え、人が明確に理解できる形でメッセージを伝えることです。その際、希望のないメッセージは人を自暴自棄にさせるので、メッセージのどこかに人々がエネルギーを注ぐことが出来る希望が持てる将来展望を示すことが必要です。こうした希望のある将来展望のあるメッセージなら人はそれに向けて一致団結して取り組み耐えることが出来ます。

この記事でも「共感を得るのは、単に感情が一致するだけ、情に訴えるだけでは駄目だ」と言っています。共感を得るには、相手を理解した上で理解してもらう能力が必要なのです。

企業でも政治の場でも、トップがどうしたいのかというビジョンを示し、立ちはだかる壁をどう乗り越えていくのかを、人々が理解できる言葉で語る能力が問われます。そこには表現力もさることながら、熱意や論理的整合性も求められます。残念ながら菅首相にはこうした能力も熱意も全くありません。

菅首相は「場当たり的上司」の典型だというのは間違いないところです。菅首相を反面教師にして、経営者、管理職等「場当たり的な上司」にならないように気を付けて下さい。