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仮定おじさん 危機管理の基本と真逆

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4927人、そのうち東京1204人、神奈川957人、埼玉328人、千葉363人、愛知330人、大阪431人、兵庫149人、京都110人、福岡204人などとなっています。7000人という数字に慣れ、かなり減った印象を持ちましたが、月曜日としては最多を更新し、重症者も973人と過去最多となっています。高止まりしているようにも思いますが、緊急事態宣言の効果は出ておらず、まだまだ油断できません。

こうした中、昨夜、厚生労働省と静岡で緊急会見が行われました。静岡で海外渡航歴もなく帰国者との濃厚接触もない男女3人から英国型の変異種が見つかったのことで、感染経路も不明な人もいて、既に変異種の市中感染が広がっている恐れがあります。中韓など11の国と地域からのビジネス往来の停止が遅れたことが原因で、水際対策の失敗です。変異種は感染力が強く市中感染が広がれば更に感染者数も増え、重症者・死者も増えます。しっかりと感染対策に取り組みましょう。

昨日、通常国会が開催されましたが、菅首相の施政方針演説は相変わらず、ひどいものでした。内容的にも首相就任時の所信表明演説と大差ありませんでした。ただ、今回の施政方針演説では「対策と経済の両立」という文言が消え、菅首相と二階で強引に推し進めた「GoToトラベル」などGoToキャンペーンに触れることはありませんでした。相も変わらず、下を向きで原稿を棒読み、時に読み間違え、心がこもっておらず、心に響く言葉や、熱意を全く感じませんでした。「徹底した対策」というべきところを「限定した対策」と言い間違えるなど最悪です。演説冒頭で「安心を取り戻すため、新型コロナを一日も早く収束させる。闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく決意だ」と述べましたが、まずは、後手後手と批判されるこれまでの対策の遅れを真摯に反省し謝罪するとともに、これからは先手必勝で対策をとるから与野党、更には国民へも協力をお願いするという姿勢を示すべきだったと思います。オリンピック・パラリンピック開催について、「人類が新型コロナに打ち勝った証として、世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意のもと、準備を進める」と語っていますが、80%以上の国民がオリンピック開催は困難、延期か中止しかないと考えている状況で、残された半年で(開催か中止かの決定までは3カ月程度しかありません)、どのようなコロナ対策を行い、どのようにして開催するつもりなのかが見えてきません。決意は立派ですが、具体的な方策がなければ粋がっているだけの茶番劇、裸の王様です。施政方針演説は、単なる決意表明の場ではなく、政府の基本方針や政策についての姿勢を示すために行われるものです。この国会で、しっかりと新型コロナ対策に取り組んでもらいたいものです。今国会に対し、野党は吉川元農相の収賄事件や安倍元首相の桜を見る会など「政治とカネの問題」を取り上げ、デジタル庁を設置するデジタル改革関連法案や地球温暖化対策推進改正案の審議も予定されていますが、まずは新型コロナ対策が最重要課題です。野党も対決姿勢を強めるのではなく、まずは新型コロナ対策に協力して国民の命と健康を守ることを最優先してもらいたいものです。

さて、昨日は危機管理について書きました。今日は、女性自身「菅首相『仮定の質問に答えず』は『危機管理の基本と真逆』」という記事を取り上げます。

1月7日、1都3県の緊急事態宣言発令を伝える記者会見で、延長についての記者からの質問に対し、「仮定のことについては私からは、答えは控えさせていただきたい」と回答し、その後のテレビ出演でも「仮定のことは考えない」と再び回答し、ネット上で「仮定おじさん」と揶揄されました。

この記事は、危機管理を専門とする関西大学の河田惠昭特任教授に話を聞いた内容ですが、政治だけでなく企業の危機管理にも当てはまるので、紹介します。

河田特任教授は次のように言います。

  • 危機管理の観点では、最悪の場合を考えないといけないんです。最悪の事態を想定して、そうならなかったときに「無駄だった」と言うのではなく「(最悪の事態に)ならなくてよかった」と思うことが基本です。最悪の事態を想定しておかず、実際に最悪の事態になってから対策をするのでは遅いんです。「仮定の質問には答えない」という回答は、指導者が言うべき言葉ではありません。このようなことを言うならば、トップをやってはいけません。

また、菅首相は、東京都の感染者数が2日連続で2000人を超えたことについて聞かれ「(年末年始の感染者数増加は)想像もしませんでした」と発言し「やはり年末の1300人、あの数字を見たときに、判断をしなきゃならないのかなという風に思いました」と、己の見通しの甘さと出てきた数字を見てから科学的根拠なく突然判断したことを自ら明かしています。これについて、河田特任教授は次のように言います。

  • 今の政府は見守っているだけなんです。ワクチンが出てくれば解決すると思っている。今どうするかを問われているのに、ことが起きてから被害を補填する姿勢で、被害額が余りに大きくなりそうだとさらに様子を見る。すべてが後手で、間違っています。コロナは戦争です。戦争で一番やってはいけないのが、”ピースミール・アタック”、つまり戦力の逐次投入です。様子を見て、兵力を増やしていくやり方で、ガダルカナル戦もこれで失敗しました。政府はまさにこれをやっています。

菅首相は、官房長官時代の昨年8月に「事態が収束した後には、特措法の改正も含めて検証する必要がある」と、驚くべき後手後手の発言をしています。「収束後」では目の前の危機に対応できないのは明らかで、結局今になって今国会で改正が審議されます。川田特任教授は次のように言っています。

  • 危機管理という意識がないからかみ合わないのでしょう。今まではこのやり方で致命傷になっていなかったからです。バランス感覚だけで逐次投入して、第1波も第2波も何とかなった。この小さな成功体験によって”正常化のバイアス”がかかり、「第3波も大丈夫だろう」と思っているのです。有事において意思決定する人がこのような危機管理のイロハが分からない人ではダメなんです。

また、特措法改正の罰則規定を進める一方で、政府は、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業の新たな対策として、売上が前年より50%以上減少した取引業者に最大で40万円の一時金を支給する方向で調整していますが、「全然足りない」との批判もあります。この点に関し、河田特任教授は次のように言います。

  • 目標を定めて、「いつまでにこうならなかったら、強制力を持った法律に切り替えます」という菅首相自身の”覚悟”を示さないといけないんです。また仮に40万円の補償が政府の限界だとしたら、「これ以上の金額を出すと日本の財政が危険」という判断の根拠も出すべきなんです。国民はこの問題が簡単じゃないことは知っています。納得できる説明を求めているんです
  • リーダーシップがないのは政治的判断の根拠を示さないからです。背bb門下は科学データを示していますが、政府の対応はそれに連動していません。政治の世界は科学だけでは判断できませんが、政治的判断の根拠が全く示されないから国民の理解も得られないのです。
  • 西村康稔大臣ではなく、危機管理ができる人をトップにすべきではないでしょうか。コロナに対して事実上のトップの西村大臣は「専門家の意見を見て判断」と言うばかりで、責任者としての自覚がない。「自分ならこうする」と言うべきなんです。できないなら、内閣官房危機管理監や内閣防災担当などをコロナ担当にトップにするのはどうでしょう。イノベーティブなことをするには、勇気とチャレンジ精神が必要です。
  • 菅首相自身も「私はこれからこういうことをします。選挙もします。コロナの問題に政治生命をかけて取り組み、失敗したら首相を辞めます」と言ったらいいんです。それがトップの覚悟を伝えることです。

菅首相の支持率はどんどん低下し、不支持率が支持率を上回り逆転しました。新型コロナ対策が後手後手に回っていることが要因ですが、菅・二階では次の選挙は戦えないと次期首相候補を模索する動きも出ています。このままコロナ対策が失敗すれば、菅政権は短命で終わってしまいます。そろそろ、菅首相には「政治家の覚悟」を示してもらいたいものです。

危機管理というのは最悪の事態を想定し、予め対策を行うことです。昨日も書きましたが泥縄では駄目です。予め、最悪の事態を想定し、危機管理マニュアル、コンティンジェンシー・プランやBCPを作成して、危機に備えてください。また、危機的状況において、リーダーシップの有無や可否が分かることもあります。リーダーとしての覚悟をもって危機的状況に取り組むことが必要です。危機管理とともに改めてリーダ-シップについて考える時かもしれません。リーダーシップについては、これまで何度も書いていますので参考にしてください。