中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

ジャック・ウェルチの「人治」による経営

f:id:business-doctor-28:20200131144747j:plain

おはようございます。昨日の新規感染者は全国で5320人、そのう東京1240人、神奈川737人、埼玉422人、千葉487人、愛知246人、大阪525人、兵庫218人、京都143人、福岡200人、北海道92人、沖縄113人などとなっています。重傷者は1001人と1000人を超え過去最多を更新し、1日の死者も104人と100人を超え過去最多となりました。緊急事態宣言が発令された地域では高止まりしていますが、その他の地域で感染が増加し、昨日変異種が見つかった静岡は県独自の感染拡大緊急宣言を発令、沖縄は政府に緊急事態宣言の発出を要請しました。

また、政府は、遅まきながら1都3県の緊急事態宣言発出に合わせ11か国の国と地域のビジネス往来を一時停止していますが、静岡で見つかったように変異種はすでに国内に流入している可能性は否定できません。こうした中、神戸港に入港した貨物船舶の船員に感染者が見つかっています。多くを輸入に頼っているわが国としては貨物便や貨物船を完全に止めるわけにはいきませんが、こうした船員・乗員が市中に出て感染を広げることのないように水際対策を徹底してもらいたいものです。

自民党は、菅総理にコロナ収束に向けた提言を提出しました。自民党が示した提言には「危機管理は最悪の場合を想定して準備を整える」として、3段階の工程表が示されています。第1段階は緊急事態宣言などの発令、第2段階は新型コロナ対策の特措法と感染症法の改正、第3段階はワクチン接種の体制整備と迅速な普及をなっています。

先日来書いているように、危機管理は最悪の事態を想定しあらかじめ準備を行うことが基本で、今頃このような提言を行うことは遅きに失していますし、内容的にも危機管理からすれば極めてお粗末です。形だけ危機管理を行っているような姿勢を見せただけ、一種のパフォーマンスだと言っても過言ではありません。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「GEのジャック・ウェルチが人を育てるときに、一番意識したこととは?」を取り上げます。ジャック・ウェルチは、フォーチュン誌で「20世紀最高の経営者」に選ばれた、ゼネラル・エレクトリック社(GE)の最高経営責任者を務め、経営手腕を発揮し「伝説の経営者」と呼ばれた人物です。昨年3月1日に亡くなられました。

時代や環境変化を乗り越え、永続する強い会社を築くにはどのようにすればよいのでしょうか?会社を良くするも悪くするも、経営トップのあり方にかかっています。ウェルチ氏の経営手腕は、中小企業の経営にも役立つところがあると思います。

まず、本記事から外れて、ウェルチ氏の経営手法を見ておきます。

ウェルチ氏は、ピーター・ドラッカーの信奉者で基本的な経営手法は、

  1. 「リストラ」「ダウンサイジング」といった大規模な整理解雇を行うことで、資本力の立て直し図る
  2. 企業の合併・買収(M&A)と国際化を推進する
  3. 部下にあえて過大なノルマを課して克服させ、業績も人材も同時に伸ばすストレッチ・ゴールの手法を取り入れる

というものです。

ウェルチ氏は、CEO就任後「ナンバーワン、ナンバーツウの戦略しかやらない」「参入障壁が低くて多数乱戦になる事業はやらない」「市場や技術の変化の激しい事業はやらない」と手がける事業領域を大胆に絞り込む戦略を取りました。これはポジショニング戦略です。この戦略的意思決定は数年後に増収増益をもたらし、これにより、「伝説の経営者」「20世紀最高の経営者」として認められるようになったのです。手がける領域を絞り込む戦略は、業界の競争構造を重視する戦略の典型で、他社に先駆けて魅力的な業界に参入し、先行者優位を確保できれば長期利益を可能にします。しかし、利益の高い魅力的な業界は誰にとっても魅力的で他社も参入を考えます。一時的に利益の高い業界でも次々と他社が参入してくれば持続的な競争優位は難しくなります。一時的な利益に目が奪われ長期的な視点が欠落すればかえって損失を被ることにもなりません。ウェルチ氏はこの点をしっかりと見極めたうえで、手掛ける事業領域を絞り込むことにしたのです。

日本企業は大企業も中小企業も、組織能力に重点を置いています。つまり、「競争に勝つための独自の強み」に重点を置いた戦略をとろうとしていますが、他社がまねできない経営資源を構築するには時間がかかりますし、現在のグローバルな経営環境・社会環境のもとではなかなか困難です。特に新型コロナ禍のような危機的状況で、自社の生き残りをかけて早急に取り組まなければならない状況では困難です。

いま日本企業には、「他者と違うところに自社を位置づける」というポジショニングの視点が重要です。自社の位置づけ(ポジショニング)を明確にしたうえで、独自の強み(組織能力)を強化していく、つまり、ポジショニングと組織能力とのバランスが取れた戦略が採れれば最強ということです。なかなか難しいことですが、こうした視点を意識することで、他社とのポジションの違い、他社と違う独自の強みが見えてくると思います。

さて、ここから、本記事に戻ります。本記事は、特にウェルチ氏の「人材育成」について述べています。ウェルチ氏は、CEO就任中はもとより退任後もMBAのオンラインプログラムを立ち上げるなど人材育成に尽力されています。

ウェルチ氏は、「自身のコピーではなく『クローンづくり』を意識した」と言います。

GEでは、選ばれた者たちは若いころから責任を持たされた事業部門の収益目標を達成すべく、事業運営の腕を上げるべく、与えられたチャンスに取り組み、ハードルをクリアできれば責任を持つスパンを広げ、さらに上のレベルの腕を磨き、経営層へ一歩ずつ近づくキャリアパスができています。このように、よい会社には社内に人を育てようという文化があります。

アメリカ流のマネジメントでは、人が治める「人治」が基本にあります。「人治」というのは、個人の能力を持って組織を治めるマネジメントの考え方、つまりより優秀な人材を組織図の上位に立たせ、その個人のイニシアティブや適切な判断、前向きの行動によって、事業や組織を発展・成長させる考え方です。そのためには人材の育成は欠かせません。

ウェルチ氏は、自分のコピー、つまり自分と同じ判断を強いるのではなく、自分と同じような思考ができるクローンづくりを重視しました。ウェルチ氏は、主要ポジションのマネージャーたちにも直接話しかけ、キャリアパスと上下の間での思考を植え付ける指導を行い続けたのです。トップのコピーを作るのではなく、実務の難題への取り組みを通じてトップと同じ思考回路を作り上げることが重要なのです。

日本企業の場合、創業者などのワンマントップが健在な場合を除き、過去のやり方を踏襲し、現社長や会長が選び、大株主や旧経営陣の長老が認める社内からの生え抜きを次の座に据えます。社内から選ばれる人材は、無難に社内を渡り歩いてきた人材で尖ったところがなく、「和を以て貴し」を重視し従来のやり方を踏襲する路線を継承します。しかも2期4年の持ち回りが慣例化しているような企業では、中長期的な視点での抜本的な改革や戦略的な判断には躊躇が起きます。一般的に、社内から選ばれた社長の多くは、上司に気に入られ揉め事を起こすことなくうまく世渡りしてきた人物です。他の役員や旧経営陣にリスペクトを払い、同意を形成して意思決定しようとします。「俺はこうやりたい。これで決まりだ」などと言えるのは、創業者か創業者の後ろ盾を得られるワンマントップくらいです。

これまでは日本型の経営スタイルでも何とかなってきましたが、グローバル化が進み経営環境や社会環境が変化するようになると日本型の組織重視では生き残れません。やはり「人治」が重要になります。「人治」マネジメントの肝は、健全に考え、先に起きることを読み、適切に判断できる人を育てることにつきます。この記事では、「それにはトップを含めた上長が、組織の直属の部下に考えされてやらせ、総括をしっかりと行わせるPCDAが組織で行われることが大切」と言っています。