モチベーションを高める科学的方法
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で5721人、そのうち東京843人、神奈川308人、埼玉228人、千葉114人、愛知663人、岐阜108人、大阪501人、兵庫209人、京都127人、岡山123人、広島212人、福岡399人、沖縄198人、北海道681人などとなっています。これまでのファイザー社製に加えアストラゼネカ社製とモデルナ社製のワクチンが承認されました。これでワクチンの量に対する懸念は払拭されましたが、ワクチン接種が順調に進むかは接種を担当するマンパワーによります。菅首相は1日100万回の接種を行い7月末までに高齢者に対するワクチン接種を終える意向を示していますが、マンパワーの不足により不可能です。政府が十分なワクチン接種体制をつくらず、自治体への丸投げで自治体の負担は増加する一方です。トラブルが起こることなくワクチン接種が順調に進むことを願うばかりです。
さて、今日は、マイナビニュースの「応用神経学者が教える『モチベーションの高め方』 『いざ』というときに無限の力を発揮する方法とは」という記事を取り上げます。この記事では、応用神経科学者の青砥瑞人氏が「科学的にモチベーションを高める方法」を教えてくれています。
ビジネスや企業経営において、いかに従業員のモチベーションを高めるかということは重要な課題で、昔から多くの経営学者がモチベーションを高める方法論・理論を提唱しています。マズローの欲求五段階説、マグレガーのⅩ理論・Y理論、ハーズバーグの動機づけ=衛生理論など、以前紹介したと思います。今日は、こうした理論ではなく科学的な観点からモチベーションを高める方法です。
仕事であれ勉強であれモチベーションを上げるためのカギとなるのは「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」という2つの神経伝達物質です。
ドーパミンは、何かに興味関心を持つことで分泌されやすくなる神経伝達物質で、やる気や幸福感だけでなく、多くの生命活動、特に感情や意欲、思考などん心の機能にも大きくかかわっています。ノルアドレナリンは「何かをやらなければならない」というプレッシャーを伴うような神経伝達物質です。
脳生理学者の有田秀穂氏は、三大神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン)を「心の三原色」と表現し、次のように説明されています。分かりやすい説明だと思います。
ドーパミンだけでなく、ノルアドレナリンも大きくモチベーションに関わります。例えば提出期限が迫ってきた場合に『そろそろやらなければマズい』といった気持が湧いてきて何とか期限に間に合い危機を脱出できたという経験がある人も多いでしょう。このような場合、ノルアドレナリンが出て、脳のあらゆる力を高めて鋭敏化するというノルアドレナリンの働きに助けられたのです。逆に、提出期限が刻一刻と迫ってきているという強迫観念に縛られて何から手をつければいいか分からなくなって期限を徒過したという経験を持つ人もいるでしょう。これはノルアドレナリンの過剰な働きで、脳が鋭敏化するためにやらなければならないこと以外のことにも過敏になり注意が分散してしまった結果です。
集中して仕事に取り組まなければならないときほど、周囲の雑音が気になって集中できない、以前に体験した嫌な出来事や自分の中で気になっていることなどに注意が向かい集中できない、と言ったこともノルアドレナリンによる弊害なのです。
2.日常生活の中の興味関心を大切にする
ノルアドレナリンには上記のような弊害がありますが、ドーパミンもノルアドレナリンも、モチベーションを高めるにあたって重要な働きをしてくれることは事実です。重要なのはドーパミンとノルアドレナリンとでバランスが取れていることです。ビジネスパーソンにとっては「やらなければならないこと」が多すぎて、ノルアドレナリンが分泌されやすい状態になっています。その結果、先ほどのノルアドレナリンの弊害が出てくるのです。むしろ、「やらなければ」という危機感によって分泌されるノルアドレナリンよりも「やりたい」という意欲によって分泌されるドーパミンの分泌を高めることが重要になってきます。
青砥氏は「日常生活の中において自分の興味関心とできるだけ素直に大切に付き合っていく」ことで「やりたい!」「知りたい!」といった気持ちを持つ機会が増え、それだけドーパミンの分泌を誘発できるようになると言っています。
仕事に対するモチベーションを高めたいと言っても「やらなければならないこと」が多すぎて、最初から仕事に対して「やりたい」という気持ちが湧かないのが現実です。青砥氏は、仕事から離れた日常の中で「やりたい!」「知りたい!」という興味関心を普段から大切にすることが重要だと言っています。仕事から離れた日常の中でドーパミンを頻繁に出せるようになれば、仕事の場でも比較的容易にドーパミンの分泌を促すことができるようになるのです。
3.「学習済み」ではない「未知の世界」に目を向ける
ドーパミンはさまざまな場面で分泌されるものですが、特に「Want(欲する)」と「Seek(探求する)」という情動によるのです。その人が「もともと持っていた興味関心」というだけでは範囲が狭く十分なドーパミンの分泌には不十分です。そこで、青砥氏は「未知の世界」に目を向けることを薦めています。
「Want」は学習済み・経験済みのことを欲してドーパミンが分泌されたときの情動を指します。しかし、「Want」の情動では新たな未知の仕事に対して興味関心をもってやりがいを見出せる脳の仕組みを持つことができないと言われています。ここで「Seek」の情動が重要になるのです。「これをやれば自分は快楽を得られる」と学習済みのことではなく、「快楽を得られるかどうかは分からないけれども、とにかくやってみたい」という思いからドーパミンが分泌された状態が「Seek」の情動なのです。知らない世界に対する好奇心を持つということが大切なのです。
4.ゴールを据えない「無目的の興味関心」を大切にする
ゴールや目的を設定するということがモチベーションを誘発することがあるのも事実です。しかし、ゴールや目的ばかりを重視する結果、あまりにも遠いゴールやあまりにも高い目標を設定しても、モチベーションにはなりません。全く経験のない人がその先にあるゴールや目的を立ててもその人のモチベーションにはならないのです。例えばジョギングの経験がない人がフルマラソン完走という目的を打ち立ててもモチベーションは高まらないでしょう。ジョギングをしていく中で「〇か月後に〇kmを〇分以内で走る」という風に目に見えた目的やゴールを設定し、それが達成されてさらに高い目的やゴールに向かうことでモチベーションが生まれるのです。ゴール・目的というのは自分が体験したうえで作られていくものです。
ゴールや目的に縛られてしまうと、逆に身動きが取れなくなることもあります。そうなると、自分の世界を狭めてしまいます。
青砥氏は、「『よくわからないけど、なんか面白そう』という精神で自分の世界を広げていく」「『無目的の興味関心』を大切にすることで『Seek』の情動を持つ機会が増え結果的に未知の仕事やハードルの高い仕事に対するモチベーションも高まってくる」と言っています。
この記事はビジネスにおけるモチベーションを高める理論とは異なり、脳科学者が科学的なドーパミン・ノルアドレナリンという情報伝達物質の分泌を効果的に促すことでモチベーションを高める方法について書かれたものですが、勉学に勤しむ学生だけでなくビジネスパーソンにとっても役立つのではないでしょうか。
人間は年を取ると頭が固くなり興味や関心の対象が限定的になってしまいます。いくつになっても、少年のような心をもって何事に対しても目を輝かせ興味関心を持つことが大切だと思い知らされました。