中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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選択的週休三日制と労働に対する意識

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 おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4536人、そのうち東京743人、神奈川225人、埼玉164人、千葉123人、愛知445人、大阪331人、兵庫140人、京都81人、岡山82人、広島166人、福岡211人、沖縄302人、北海道551人などとなっています。重症患者は1413人と過去最多を更新しています。関西の2府1県、首都圏の1都3県は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の延長を要請しました。政府も6月20日ころまで延長する方針ですが、解除の時期について、分科会の尾身会長は、「ステージ3」ではなく「ステージ2」になるのを条件とすべきとしています。変異株がじわりと広がっている状況では、安易に解除すると間違いなく早くリバウンドします。万が一オリンピックが開催されるとすれば、オリンピックの時期に感染が拡大し4回目の緊急事態宣言発令ということになりそうです。その際、政府が緊急事態宣言発令に躊躇するようなことがあると、爆発的な感染拡大となり、日本は終わってしまいます。こういうリスクを考えると、イベント開催が自粛・制限されている中で一大商業イベントに過ぎないオリンピックを強行開催するのは理に合いません。経済界でも中止の声が高まり、昨日書いたようにマスコミ界も漸く中止の声を上げています。もはやオリンピックは中止しかありません。今優先すべきは、オリンピックではなく、国民の命と健康を守るべく、新型コロナ対策に打ち込むことです。

まず、今日は、日本の人事部「『選択的週休三日制』の議論が進む背景」という記事を取り上げます。

「選択的週休三日制」というのは、希望者が週に三日間休むことができる働き方のことで、2021年4月に自民党の一億総活躍推進本部が提言したものです。選択的週休三日制が導入されれば、育児・介護・治療・学業・ボランティア・副業など、さまざまな事情を抱える人にとって仕事との両立がしやすくなり、企業にとっても多様な人材を確保できることになります。導入には法改正の必要はなく、企業の労使の合意を得て制度を導入すればいいだけなので、導入も比較的容易にできます。

1.選択的週休三日制の議論が進む背景

 現在では多くの企業が週休二日制・完全週休二日制を導入しています。かつての長時間労働から労働環境は大幅に改善されています。2019年における日本の年間労働時間は1644時間で、全世界で22位です。1位メキシコ(2137時間)、3位韓国(1967時間)、10位アメリカ(1779時間)、15位イタリア(1718時間)、20位カナダ(1670時間)などに比べても短い数字になっています。それにもかかわらず、なぜ今、選択的週休三日制が議論されているのでしょうか。

 その理由の1つは、労働力の縮小という問題があります。日本の生産年齢人口は1995年以降減少の一途をたどり、従来の男性に依存した労働環境のままでは労働力の確保が困難になっています。女性やシニア、外国人などの様々な属性の人を職場に呼び込むために多様な労働環境の整備が必要になるのです。

 今回の選択的週休三日制は単に「休むを増やす」ことが目的ではなく「生産性を高める」ことが目的です。とくにIT分野などで高度技術を持つ人材が不足しており、新たな知識やスキルを学び社会に還元するということが期待されています。

2.導入の実態

 すでにいくつかの企業が導入を進めています。以前書いたみずほフィナンシャルグループをはじめ、ユニクロファーストリテイリング、ヤフーでも選択的週休三日制を採用しています。そのうち、みずほフィナンシャル・グループでは週休四日制も選択できるようになっています。給与形態も企業によって様々で、週休三日を選択した場合給与は通常の約8割になるケースや一日当たりの労働時間を増やすことで週休二日制と同じ労働時間・同じ給与を維持するというケースもあります。

 自社で選択的週休三日制を導入する場合、従業員の働き方や要望を踏まえ、制度条件を策定する必要があります。

次に、現代ビジネスの「生産性が『日本より40%高い』ドイツ人が、月~金を『平日』と呼ばない理由」という記事を取り上げます。

ドイツの2019年の年間労働時間は1386時間で、第35位です。日本と比べると1年で258時間も労働時間が少ないということになります。それは8時間労働で計算すると、日本人はドイツ人よりも1年で約32日多く働いていることになります。

国内総生産GDP)」は、日本が3位でドイツは4位ですが、「1人当たり名目国内総生産」になると、日本は24位、ドイツは10位です。日本はドイツよりも長時間労働をして、ドイツより1人当たりが生み出すGDPつまり生産性が低いのです。

日本とドイツの違いはどこにあるのでしょうか。これについてドイツ在住のこの記事の記者は「働くということに対する考え方、生活の姿勢が最も大きな違いである」と言っています。

1.消費者重視の日本、労働者重視のドイツ

 日本もドイツも同じ敗戦国で、敗戦後は工業立国として発展し、両国ともモノづくりが得意です。こうした共通点があるにもかかわらず、今日のような違いが生まれたのは、「ドイツは国民をどちらかと言えば労働者だと捉え、労働者の権利に重きを置いてきた。日本は消費者だと捉え、消費者の権利を重視している」(ドイツ日本研究所・ヴェルデンベルガー博士)からです。

 ドイツでは、労働者の権利を重視するために休日を充実させ、1日に働く時間も厳格に決め、徹底的に労働者が働きやすい環境を作り上げてきました。

 一方、日本は消費者の権利を重んじたので「お客様は神様」という意識が強くなり、神様のためにコンビニは24時間オープンし、土日に休む店などもってのほか、ネットで注文すれば翌日に届くのは当たり前になっています。顧客第一主義の重要性は何度も指摘していますが、あまりにも度を越した顧客第一主義が、労働者の首を絞めストレスの原因にもなってしまっているのです。

2.「平日」ではなく「働く日」

 この記事では、「ドイツでは労働観が日本と違う」と言っています。

 アルバイト(Arbeit)というのはドイツ語で「労働」のことです。語源はゲルマン語の「arba」で奴隷・苦役のことだそうです。月~金曜日を「Arbeitstag」と言い、意味は「働く日」ということです。キリスト圏なので、週末は安息日、一切労働をせず、店も開いていません。安息日に苦役はしないのです。

 日本では月~金曜日は「平日」で普通の日です。休日が特別な日になっています。日本では「週休二日」「週休三日」と働く日が普通で、週何日休めるかということにフォーカスしています。

 ドイツでは、「週休二日」という言葉はなく「Funftagewoche週五日労働」となります。働くことが特別というか働くことに意味を持たせ、週の中でどれだけ特別な働く日があるかに重点が置かれているのです。

 ドイツ人は「働きすぎない人種」だそうです。しかし、いい加減なに仕事をしているわけではありません。基本的に割り当てられた仕事をすることには勤勉で、それ以上のことはあえてしないのです。「定時に来て定時に帰る」「その間は真面目に勤勉に与えられた仕事をする」というわけです。

 日本では、ダラダラと仕事をし、自分の仕事が終わっても周りが残っていれば帰りずらい雰囲気があり、用もないのに残業するというケースが往々にしてあります。毎日遅い時間までダラダラ残っていたのでは、生産性が上がるはずはありません。

「選択的週休三日制」が議論され、多様な働き方が導入されることは良いことですが、労働に対する意識についても日本の労働観が本当によいのか考えてみる必要がありそうです。