中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

副業における従業員・会社双方のメリット

f:id:business-doctor-28:20200928082545j:plain

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2022人、そのうち東京351人、神奈川249人、埼玉81人、千葉76人、愛知169人、大阪145人、兵庫58人、京都46人、広島40人、福岡79人、沖縄183人、北海道183人などとなっています。昨日も書きましたが、感染状況は減少傾向にあるものの、人流の増加で早々とリバウンドする可能性があります。緊急事態宣言延長に伴って一部制限が緩和され、また時短要請や酒類提供禁止を無視して営業する店舗も増えています。こうした状況は協力金の支給が迅速に行われていないことも一因です。中小店舗にとっては死活問題です。時短や休業要請をするのであれば十分かつ迅速な補償が必要なことは言うまでもありません。指示に従わない店舗には命令を出しさらに従わなければ過料を科すという自治体や店名を公開するという自治体もあるようですが、まずは補償です。倒産・廃業してから協力金が支給されても意味がありません。コロナ禍で苦しむ中小店舗、中小企業が継続して事業が行えるようにあらゆる手段で支援すべきです。

さて、今日は、日本の人事部「『副業』に取り組むことで生まれる効果とは?企業と従業員にそれぞれどんなメリットがあるか」を取り上げます。

働き方改革」とともに現在のコロナ禍の影響もあって、副業・兼業を認める企業が増えています。これまでは就業規則で副業・兼業禁止を謳っていた企業が大半だったのを考えると大きな変化です。この記事では、従業員が副業を持つことのメリットは何か、企業はそれをどのように支援し、何に注意を払えばいいのか、副業について長年研究してきた川上淳之・東洋大学准教授に話を聞いたものです。

1.上場企業の3割以上が副業・兼業を認めている

 2017年の「働き方改革実行計画」で副業・兼業を推進する流れができました。これまで原則禁止であった副業・兼業が推進されるようになったのは望ましいことですが、本当は必要もないのに「他の人がやっているから」という理由で副業・兼業をするというブームのような状況ができ行き過ぎの感があります。

 これまでは厚生労働省作成の「モデル就業規則」に「副業を認めない」(原則禁止)の一文が入っていましたが、現在の「モデル就業規則」では、副業は原則自由となり、本業に支障がある場合、情報流出のリスクがある場合、競業他社で働く場合、会社の名誉や信用を損なう場合などの事情があるときに禁止・制限できるとされています。

 こうした状況もあって、徐々に副業・兼業を認める企業が増え、現在のコロナ禍でさらに増加傾向が見られます。

 副業に取り込もうとする人が増えている理由は、大きく分けて4つあると言われています。

  1. 働き方改革で社会的に認められるようになったこと
  2. リモートワークなどの効率的に働く環境(ITに代表される技術インフラなど)が整ってきたこと
  3. コロナ禍によって労働時間が短縮されたり休業したりする企業が増え、減収分を補う必要があること
  4. 失業しても困らないように手に職をつけたい、キャリアの幅を広げたいと考える人が増えたこと

 「働き方改革実行計画」では、「イノベーション」が大きな目的とされ、副業を持つことで刺激を受け、新たに生まれたアイデアや人的ネットワークを本業に還元するという構図を想定しています。しかし、こうした考えはビジネススキルの高い正社員を対象とした構図で、必ずしも現実にはマッチしていません。

 もともと副業というのは、正社員でない非正規の人たちが1つの仕事だけでは生活できないので他の仕事を掛け持ちするというケースが圧倒的に多いのです。それがコロナ禍で、非正規でない正社員も収入が十分でなくなり、掛け持ちで仕事をしなければならない状況に追い込まれてきているのです。

 こうしたことを考えると、イノベーションにつながるからという理由で副業・兼業を推進するという政府の考えは現実を十分にとらえていないと言わざるを得ません。

2.副業支援に当たって留意すべき4つの条件

 まず、政府が掲げる「イノベーションにつながる副業」ですが、自己成長や人的ネットワークの拡大など、実際に効果を上げているのでしょうか。

 確かに副業・兼業によって「人とのつながりができた」という人は増えていますし、「副業によって、これまでなかった経験や知識を手に入れ、スキルをさらに深化させることができた」という人もいます。しかし、こうした効果が明確に表れるのは、専門的・管理的商業におけるケースです。こうした職務は自分で裁量できる範囲が大きく、副業で得たビジネスアイデアが本業に直接生きてくるからです。それに対して、ルーティンワークや裁量の幅が小さい対話的職業(事務・販売・営業など)では、思ったほどパフォーマンスの変化が見られません。

 しかし、副業には、自分のキャリアに不安を持っていた人を安心させる効果があります。本業での自己成長があまり見込めないなどの理由からキャリアに不安を感じている人をケアする施策として役立つのです。

 もう1つ、ワークシェアリング的な効果があります。現在のコロナ禍で、雇用を維持しながら減収分を副業で賄ってもらおうとする措置です。また、定年延長と同時に副業を認める企業も増えています。再雇用となった場合減収になることが多く、その減収分を副業で補ってもらおうという発想でしょう。

 従業員の副業を支援するためには厚労省ガイドラインにある4つの条件に照らして問題がないことを確認する必要があります。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、会社の利益を害する場合

 このいずれかに該当する場合は、副業を禁止・制限することができます。また副業を持つことで長時間労働にならないか、など従業員の健康状態をしっかりと管理することも必要です。

 また、従業員が副業を希望してきた場合、「本業に何が足りないのか」を考えることも重要です。給与面で不満があるのか、社内での将来のキャリアに希望が持てないのかなど、背後にある問題や不満を聞き出すコミュニケーションが大切です。

 副業を認める場合、単に収入目的の副業よりもスキルアップにつながる副業の方が、企業にとって望ましいことは言うまでもありません。最初は収入目的であったとしても、その仕事を通じてどんなスキルが得られるのか、本業にどうつなげていくことができるかと言ったことを話し合い、少しでも社内でのパフォーマンス向上へとつなげることが人事や上司の役割です。

3.副業を持つ働き方は今後さらに加速していく

 副業・兼業を認めている企業は徐々に増えていますが、まだ6割以上の企業が副業・兼業を原則禁止しています。副業を認めた以上「本業を優先しろ」とはいい図落、そのうえで時間管理や健康管理などのサポートをしていくことが求められます。禁止している企業には、こうした調整にあまりコストや時間をかけられないといった事情があるようです。また、副業希望者との丁寧はなコミュニケーションや支援も上司や人事の負担になるからです。

 しかし、副業を認めている企業に魅力を感じ入社を決意する人が増えています。そうすると優秀な人材が副業を認めている企業に集中していくことになります。将来的に副業を経由して転職していく新たな人材市場が形成されていくとすれば、副業を禁止している企業はその市場にアクセスできないことになり、やがては企業の実力やブランド力の差になっていく可能性があります。こうしたことを考えれば、副業を原則認める企業が増えていくように思われます。

 副業の流れができると、スキルアップのビジネス面だけでなく、これまでは生活のためにあきらめなくてはいけなかった夢や趣味などを副業のカタチで続けることもできるようになります。

 同時に、企業も今では長期雇用を確約できませんし、従業員もずっと会社が存続すると確信できない時代です。経済の低迷やコロナ禍のような不測の事態に対して抱かざるを得ない不安を少しでも解消してくれるのが副業です。

 また、非正規や高齢者など不安定な雇用状況にある人、正規であっても収入が低い人にとっては、副業は一種のセーフティネットでもあります。本来はすべての人が安心して働ける環境を整備していくことが求められますが、それができない檀家いでゃ副業が果たす役割は大きなものがあると言えます。

今、副業が一種のブームではありますが、副業したいという従業員の中には、収入面だけでなく仕事に対する悩みや不満を抱えている人がいます。こうした人とのコミュニケーションは極めて重要です。また、副業を持つと忙しくなり、ワークライフバランスのゆがみが生じやすくなります。本業と副業とで家庭や健康面で支障が出ないように支援することも大切です。

副業は従業員個人と企業の双方にとってメリットがあるように支援していく必要があります。