中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

デザイン経営・デザイン思考

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おはようございます。

昨日の新規感染者は1779人で、そのうち東京619人、神奈川201人、埼玉108人、千葉131人、愛知75人、大阪125人、兵庫22人、京都21人、福岡32人、沖縄96人、北海道49人などとなっています。先週の水曜日より東京では118人増え、大阪も17人増えています。リバウンドが懸念されます。ウガンダ選手団の1人に陽性反応が見られたものの他の選手らは成田の航空検疫では濃厚接触者と判断されず滞在先の大阪・泉佐野で濃厚接触者とされ新たに1人に陽性反応が見られました。あまりにも杜撰な水際対策です。これから多くの選手や五輪関係者が入国してきます。このままでは、五輪が安心・安全どころか、国民の健康と命を犠牲にすることになりかねません。厚労省専門家会合で、7月初旬に50%程度が「インド型」に置き換わるとの試算を示しました。順調なワクチン接種でいったん抑え込んだイギリスで、インド型が猛威を振るい、6月に予定されていた経済活動の再開や移動の制限解除を延期する事態になっています。インド型はイギリス型よりも感染力が60%強く、入院する確率も2.2倍高いとされています。日本でも五輪開催前に50%以上がインド型に置き換わるとすれば、その後の感染拡大は目に見えています。五輪開催にうつつを抜かすのではなく、今何を為すべきかを真剣に検討し、実行してもらいたいものです。

さて、ビジネス+ITの「デザイン経営、デザイン思考とは何か?特許庁CDO補佐官に聞く、9つの実践事例」を取り上げます。

デザインをビジネスに取り込む「デザイン経営」や「デザイン思考」という言葉が流行っています。しかし、「デザイン経営」や「デザイン思考」がどのようなものかを理解している人は少ないと思われます。この記事は、デザイン経営とは何か、なぜ注目が集まっているのかについて、特許庁のデザイン経営プロジェクトに携わってきた特許庁審査業務部長西垣淳子氏に話を聞いた内容をまとめたものです。

1.デザイン経営・デザイン思考とは何か

 デザイン経営とはデザインを活用した経営手法のことですが、ここで言う「デザイン」とは「『企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営み』に基づいてブランドを構築し、『顧客の潜在的ニーズを基に既存の事業に縛られずに、事業化を構想する営み』を通してイノベーションにつなげていくこと」です。デザインには「ブランド構築に資するデザイン」と「イノベーションに資するデザイン」の2つがあるということです。

 西垣氏によれば、デザイン経営とは「ユーザーの声にもっと耳を傾けようという活動。ユーザーを中心に考えることで、自分たちが生み出している商品やサービスを使っている人たち、あるいはこれから使ってもらいたいと思っている人たちは一体誰で、その人たちは何を欲しているのか、それを知るところから始まり、そこで根本的な課題を発見したら、これまでの発想にとらわれずに、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出していくこと」です。

 従来の経営は、社内で策定された企画立案から始まって、製品・サービスの開発、協議のデザインプロセスを経て、市場投入とひたすら線形に進みます。これは「良いものを作れば売れる」という考えに立脚したプロダクトアウト型と言えます。

 一方、デザイン経営は、ユーザーに対する共感と理解、課題の設定、試作、実験というサイクルを何度も行きつ戻りつして完成度を高め、ようやく商品化して市場投入します。そこでは「新商品・新サービスでも顧客に選ばれなければ売れない」という価値基準の転換があり、その中心にあるのが「デザイン思考」です。

2.なぜ今? デザイン経営が重要視される理由

 デザイン経営やデザイン思考という考え方は1987年のピーター・ロー著「デザインの思考過程」という本で出てきたのが最初で、それほど新しいものではありません。それなのに、今になってどうしてデザイン経営が注目されるようになったのかと言えば、西垣氏は「21世紀以降の市場の大きな変化がある」と言っています。大量生産を前提としたモノの豊かさから、ユーザーが求めるものが心の豊かさへシフトしたことが影響しています。ユーザーが、何か自分に新しい価値を与えてくれるものであったり、共感できる価値や企業コンセプトで選択するといった方向に変化が起こっており、これらの変化を十分にとらえた企業が伸びているのです。

 企業も従来の価値観のままでは、顧客・ユーザー側の変化を十分にとらえることはできません。ユーザーが変わる中で、企業も経営も変わっていかなければならないのです。その時の経営手法として、視点を顧客側に置く「デザイン思考」が受け入られつつあるのです。

 西垣氏は、デザイン経営を十分に理解している企業としてアップルを挙げています。アップルの製品は機能もデザインも優れていますが、購買者がアップルというブランド価値に満足していることもよく知られています。購入する店舗から製品のパッケージに至るまでブランド価値が確立されており、それらは購入時点だけでなく利用期間も続きます。

 西垣氏は、「日本企業もこうしたブランド価値を、デザイン経営を通じて構築していくべきだ」と主張しています。

3.デザイン経営は何からすべき魔、9つの入り口とは

 中小企業にとっては「理屈は分かるが、うちとは関係ない」「どこから手をつければいいか分からない」というのが本音でしょう。

 特許庁は、中小企業向けに、「みんなのデザイン経営」というデザイン経営ハンドブックを作成しています。そこでは、デザイン経営のすすめ方に正しい順番はないとし、「9つの入り口」を設定しています。企業の課題に合わせてそれを解決してくれる入り口からスタートすればいいのです。

その9つの入り口というのは、次の9つです。

価値の創造をゴールとした

  • 人を観察・洞察する
  • 実験と失敗を繰り返す
  • 心をつかむモノ・サービスをつくる

会社の人格形成をゴールとした

  • 意志と情熱を持つ
  • 歴史や強みを棚卸する
  • 未来を妄想する

企業文化の醸成をゴールとした

  • 社会の行動変容を促す
  • 社内外の仲間を巻き込む
  • 魅力ある物語を発信する

このハンドブックには、デザイン経営を実践した中小企業の具体的な事例も紹介されています。

4.デザイン経営は「手段であって目的ではない」

 これまでも、手段と目的の履き違いについては何度も指摘してきました(DX化、ジョブ型雇用など)。デザイン経営というのも手段であって目的ではありません。流行りだからと飛びつくのではなく、自社の目的・目標を明確にしたうえで、自社が抱える課題や問題の解決の手段としてデザイン経営という手法が役立つかを考えなければならないのです。

 西垣氏も「デザイン経営も、伝え方を誤ると目的化しかねず、そうなったら元も子もありません。デザイン経営を実践していこうという明確な意思が経営者にあり、それを従業員みんなが共有することで、『自分たちの企業とは?』と考える方向に向かっていただきたく、『デザイン経営することがゴールではありません』と一言添えるのを忘れないようにしています」と言っています。