中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 成功の秘訣は氣にあり

f:id:business-doctor-28:20210605081443j:plainおはようございます。

昨日の新規感染者は全国で25,876人で、3日連続で過去最多を更新しました。その内訳は、東京5405人、神奈川2878人、埼玉1824人、千葉1778人、神奈川1347人、大阪2586人、兵庫907人、福岡1195人、沖縄743人、北海道523人などで、神奈川、千葉、大阪をはじめ15府県で過去最多となっています。1日の新規感染者数が100人を超えるのが33都道府県(うち1000人を超えるのが7都府県)というのは異常です。東京都の陽性率は24%を超えており、都のモニタリング会議は行政が把握できていない感染者が多数いる可能性を指摘しました。これは、東京に限らず、どの地域でも起こっていることではないかと懸念します。感染の中心は20~30歳代ですが、10歳代以下の子供にも感染者が増えており、彼らは比較的軽症なため感染に気付かず、ウイルスが家庭に持ち込まれて大人が感染するという事態になることが懸念されます。来週からパラリンピックが開催されます。私自身は「中止の英断をすべき」と考えますが、今の菅首相組織委員会では不可能なので、少なくとも「学校観戦」で感染を広めないように切に願います。

さて、今日は、藤平光一著「成功の秘訣は氣にあり」(東洋経済新報社を紹介します。著者の藤平氏は、日本の武道家で、心身統一合氣道の創始者です。以前紹介した中村天風に師事し、心身統一法を学び、合氣道と融合させ心身統一合氣道を立ち上げたのです。野球界では、王貞治広岡達朗松井秀喜松坂大輔ら、相撲界では千代の富士を指導するなど、多くのスポーツ選手に「氣」を教えています。

平氏は「氣」や「天地の理」を重んじ、心と体を一つにする「心身統一」が重要であるとし、多くの問題はそれを行う人が上手く「氣」を使いこなすことができていないことや、心と体が不統一の状態であることによってもたらされているとしました。心身統一合氣道は、その概念を体現化したものにすぎず、スポーツだけでなくビジネスや日常生活にも広く応用できるものだと言います。

「氣」というのは、日本や中国で色々な意味に使われます。変化・流動する自然現象(天気・空気など)、精神・生命・心の動き(元気・精気・気力・根気など)、その他(気配など)に大別されます。中国思想では、宇宙に充満する微細な物質で、しかも連続していて分解できず、万物を形成し、それに活力を与えるものとされています(百科事典マイペディア)。また、ブリタニア国際大百科事典では、「気は人間の心から独立で、宇宙に顕在し、それ自体活動力を持った共通普遍の質量であって、個々の物を凝集すれば物は生存し、散逸すれば物は死滅するとされた。中国では気の量的変化は考えられていない」としています。

平氏は、「この天地には、氣という素晴らしエネルギーが満ち溢れている。そのエネルギーは、もちろん私たちの体の中をも駆け巡っている。これを上手に利用すれば、ありとあらゆる人間の可能性が無限に広がっていくのだ。対人関係、健康、そしてビジネス……日々を明るくし、人生の成功をつかむことも可能になる」と言っています。

この本は次の5章で構成されています。

第1章 氣の出し方

第2章 ビジネスに活かす氣

第3章 成功のための五大原則

第4章 健康に活かす氣

第5章 自分でできる氣圧療法

ここでは、第1章の気の出し方第2章ビジネスに活かす氣について触れておきます。

1.心身統一の4大原則

 藤平氏によれば、氣というのは簡単の言えば宇宙エネルギーのことで、プラスの氣とマイナスの氣があるのです。自分にはできるというプラスの言葉を使いさえすれば宇宙エネルギーが活動します。ダメだと考えれば宇宙エネルギーが逆流して失敗するのです。プラスの思考、つまりポジティブ思考が大切だということです。しかし、世の中にはネガティブなこと、マイナスのことばかり考えてしまう人がいます。

 藤平氏は、心身統一の4大原則を守り、行っていけば、誰でも氣が出せるようになると言っています。

 【心身統一の4大原則】

  1. 臍下の一点に心を静め、統一する
  2. 全身の力を完全に抜く
  3. 身体のすべての部分の重みを、その最下部に置く
  4. 氣を出す

 この4大原則をすべて同時にやれということではありません。1つが完璧にできたなら、ほかの3つもすでにできているはずなのです。臍下の一点に心を静める状態になると、完全に力は抜けているし、重みも全部下に来て、必ず気が出ます。また、重みを下にできれば必ず氣は出ているし、心は臍下に静まり全身の力は抜けています。

 もう一つ重要なことは呼吸法です。

 【氣の呼吸】

  1. 息が洩れるのではなく吐く
  2. できるだけ静かな音で吐く
  3. 頭部の氣より吐き始め、つま先の氣まで吐く
  4. 鼻先より吸い、つま先から始まり頭部に充満するまで吸う
  5. 吸い終わったら臍下の一点に無限に沈める

2.ビジネスに活かす氣

  • 自分から「やれる」と思って氣を出せば、何も苦しいことなどない。まずは真剣にやってみることだ。どんな仕事でも、真剣に取り組むと、必ずその中に活路が見えてくる。これをやってやろうという対象が必ず出てくるものだ。真剣に取り組む時、一番楽にやるためには、氣をそこへ向けることだ。氣を向けないと疲れる。誰でも、好きなことに集中しているときには疲れなど感じない。好きになることは、物事に気を向けるということであり、気を向けるということは好きになることである。好きになればそこに意義を見出せるようになる。
  • 遊びと仕事はどちらもなくてはならないものである。遊びができない者は仕事もできない。遊びであれ仕事であれ、そこに向ける氣のエネルギーは同じプラスのものである。遊ぶ時には大いに遊べ、遊ぶ方向に全部の氣を向けろ。仕事をするときには仕事の方に全部の気を向けろ。それでこそ、真剣な人生を歩んでいける。
  • 「氣をつかう」という言葉があるが、氣をつかって、相手を思いやることが、ビジネスを成功させるための基本である。氣を出して、相手に氣を使っていたら、逆に氣が入ってきて成功するのだ。氣は他人のために使えば使うほど自分の体の中に入ってくる。企業でも、人の迷惑を無視して、自分の会社だけ利益が上がればいいという姿勢では育つことはできない。
  • ビジネスにおいて、成功の秘訣はプラス思考である。現代はアイデア、企画の時代である。物質はすでに満ち溢れているため、ライバルに差をつけようと思ったら企画力を磨かなければならない。このとき最も重要なことは心をプラスにすることだ。何かを企画しようとするのなら、自分はこれだけはやり遂げるんだと、まず心に決める。あれこれと悩むより、出来上がった状態を前提に考えること。それがプラス思考の第一歩だ。実際に始めれば、いろいろと困難にぶつかることもあるだろう。そんな時は、すべてを徹底的に検討して、ダメなものを排除していく。そうすると、最後にはできる方向へと自然と向かっていくものだ。氣を出すことが成功の第一歩、逆境のときこそ、氣を出してチャレンジしていかなければならない。
  • ホラを吹け! 「会社から10の仕事を割り当てられたなら、自分は30やって見せると、人前でホラを吹け」 仕事の結果などやってみなければわからない。ホラを吹かれて怒る人もそれほどいない。ホラ吹きだと思われるだけだ。それなら堂々とホラを吹け。30の目標は達成できなくても15くらいはできる。社員全体がホラを吹けば会社の業績は飛躍的に伸びる。
  • 企画とは発想である。いい発想を得るには、天地の心を借りればいい。自然体、即ち氣が出ている状態で心の波を静めていくのだ。頭でこね回しているうちは絶対碌なアイデアは出てこない。もちろんその前段階として、ぎりぎりまで徹底的に考えて検討する。さんざん考えてどうしても出てこなければ、まずは座って「氣の呼吸」をし、心を静めるようにする。
  • 発想の心得5原則
  1. 氣の出ている人になる
  2. 天地自然を信じる人になる
  3. 物事にこだわらない
  4. 何事にも不思議と思う心を持つ
  5. 思いついたことは、一生涯続けるつもりで考える
  • セールスの五原則を励行せよ
  1. そのものの値打ちを知る
  2. プラスの氣で行う
  3. 買ってくれではなく相手のためになることを信じる
  4. 必ずアフターケアをする
  5. 売れないときも、帰るときに相手にプラスの心を置いてくる
  • 経営者の心得
  1. 経営者は常にプラスでなければならない。トップがマイナスになると、部下もみんなマイナスになってしまう。
  2. 経営者は判断を誤ってはいけない。経営者が判断を誤ると、従業員の家族までみんなが犠牲になる。
  • 重要な岐路での判断ほど、経営者にとってつらいものはない。特に今の時代、何がどう変わっていくかわからない、先の読めない時代である。だからこそ、より一層正確な判断が必要とされ、経営者の責任はますます重くなってくる。そのとき、心を無限に静め、天地の声を聞くことである。まずは本気になって考えることである。最初は様々な考えが心の中を駆け巡る。だが、波立つ水面が、時間とともに静まっていくように、少しずつ心の波も静まっていく。心が無限小に静まったとき、天地からの声が心の中に映るはずだ。もちろん、天から、ああしろこうしろと教えてくれるはずはない。心の波を静め切ったときに映った心、その心には間違いはない。土壇場になったら、右往左往せず、黙って座り氣の呼吸をして心身統一の状態になることだ。

平氏は、「これからのビジネスは理性ではなく、天地に直結する心(藤平氏は『霊性心』と呼びます)で行わなければならない」と言います。「霊性心」という言葉を聞くと、超自然的な力のように思えますが、「氣」は自然界に普通に存在するエネルギーだと思います。昨日も書きましたが、企業経営は利益の追求を第一義とするものではなく、「事業を通じて世の中をよくするためにある」のです。

氣を出して、相手に気をつかい、相手のことを第一義に考える、これがビジネスの基本です。つまりお客様第一主義です。また、そうすることで世の中全体が良くなります。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」の経営もこのことを示しています。この「三方よし」の経営は、伊藤忠商事の創業者伊藤忠兵衛が、近江商人の先達への尊敬の念を込めた「商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れも益し、世の不足をうずめ御仏の心にかなうもの」という言葉に端を発しているのです。

この本の藤平氏の「氣を活かした経営」も稲森氏の「人間中心の経営」も「近江商人三方よしの経営」も基本はすべて同じだと思います。

f:id:business-doctor-28:20210821114559j:plain