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VUCAの時代に求められるマネージャーの役割

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で21,570人、そのうち東京4220人、神奈川1948人、埼玉1316人、千葉1135人、愛知1617人、大阪2368人、兵庫1079人、京都587人、福岡879人、沖縄750人、北海道426人などとなっています。政府は、今日、北海道・宮城・岐阜・愛知・三重・滋賀・岡山・広島の8道県に緊急事態宣言を発令するようです。これで、緊急事態宣言の対象は21都道府県となります。また、高知・佐賀・長崎・宮崎にはまん延防止等重点措置を適用し、まん延防止等重点措置の対象は12県となり、計33都道府県がいずれかの対象となります。あいも変わらず、後手後手の対策で、宣言を出すだけならば、バカでもサルでもできます。いずれにしても東京五輪・パラの強行開催で、政府や菅首相に危機感や切迫感がなく、国民の緩んだ意識を引き締めることはできず、効果薄です。企業もそうですが、緊急事態が発生した時には、トップが危機意識を持ち、その危機感を社員に真摯にかつ丁寧に伝え、トップが持っている危機意識を全員が共有し、一丸となって難局に立ち向かうことで、危機を乗り越えることができるのです。危機感露の基本すらわかっていない人たちが国を動かしているのですから、国民は不幸です。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「働き方の多様な時代にマネージャーに求められる役割とは?」という記事を取り上げます。

この記事は、東京海上日動火災保険会社(以下、「東京海上日動」と略します)の人事企画部人材開発室の桜井武寛氏と菊地謙太郎氏に話を聞いたものです。

東京海上日動は、その経営理念の一つに「社員一人ひとりが創造性を発揮できる自由闊達な企業風土を築きます」と謳っています。東京海上日動は、人材育成に並々ならない熱意を持っている会社です。

1.VUCAの時代だからこそ、多様性を競争力にしたい。

 今は「VUCAの時代」と言われます。VUCAについては、先日も書きましたが、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉です。簡単に言えば、「VUCAの時代」というのは「先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代」を意味します。「何が正解かわからない時代」と言ってもいいでしょう。

 東京海上日動は、保険という目に見えない形のない物を商品として売る仕事であり、社員一人ひとりが生み出す信頼が競争力の源泉であり、社員一人一人の成長が会社の成長に直結しています。だからこそ、人材育成が経営戦略のうちで最も重視されるのです。これまで「日本で一番『人』が育つ会社」というビジョンが、2021年に「すべての社員が成長し続ける会社」と形を変え、より一層、「社員一人一人の成長」が前面に打ち出されたのです。

 桜井氏は、「VUCAの時代と言われる今、我々に必要なのは多様性を競争力に変えていくことだ」と言います。それは東京海上日動に限ったことではありません。

 いつも言うように企業経営は「人」です。「人」は他の経営資源とは異なり、使い捨てするものではなく、育んでいくべきものです。一部の者が会社全体を牽引していくような企業や組織は、持続的成長はできず、このVUCAの時代では生き残ることはできません。社員一人ひとりが企業や組織にとって重要な資源であり、社員一人ひとりが成長し、その総和が最大化していくことで、会社や組織が成長していけるのです。

菊地氏は「多様性」というキーワードを出す理由として、2つを挙げています。

  1. 正解が一つとは限らず、従来の「勝ちパターン」だけで勝負しても成果を出すことができなくなっている昨今、多種多様な人々の価値観や発想を組み合わせることで生まれるイノベーションが求められていること
  2. 「会社は個の集合体」であり、働くことに対する個人の価値観が多様化している時代において、お互いを認め合い、刺激し合うことで新たな可能性を生み出していく必要があること

 更に、菊地氏は「部下が上司を超えていくような成長をしなければ、会社全体の成長は実現困難だ」と言っています。ところが、部下が成長し自分を超えていくという危機感を抱くと、出る杭を叩くような上司はいます。しかし、部下を育成することは上司の重要な役割です。それも自分を超えていく部下を育成することです。自分が経験してきたことをそのままなぞらせるような経験則重視ではなく、部下が自分の経験を最大限にして自分で成長につなげていける環境が重要です。もちろん経験則も重要で上司が自分の経験を部下に伝え部下の成長を促すべきですが、部下は上司の経験をそのままなぞるのではなく、自分のものとして自分の経験として追体験し自分の成長につなげていかなければなりません。

2.マネージャーの支援がカギになる人材育成の3本の柱

 働き方が多様化しつつある今、マネージャーに求められる役割は非常に大きく複雑になっています。

 まず、マネジメントというのは、ドラッカーによれば「ヒトと組織の強みや創造性を最大限に引き出して経済的・社会的に価値ある成果を上げること」とされています。日本では、マネジメント=管理と捉えることが多いのですが、「管理」というのはマネジメントの一面にしかすぎません。ドラッカーのようにマネジメントをとらえると、マネージャーとリーダーとは近づいてきますが、両者は別のものです。

 マネージャーは特定の目的を達成するためにあらゆる要素を制御することが主たる仕事となります。プロジェクトや領域、予算、時間枠、プロセスなどの物事や、チームメンバーや顧客、業者、パートナーなどの人をマネージし、指令などを順守させ効率的に物事を実行することです。

 一方、リーダーは、コントロールよりも他者に影響を与え鼓舞し、会社の成功に貢献できるようにすることが主たる仕事です。そのために大局的見地からビジョンを立て、それを効果的に伝え、部下たちからの信頼を得ることが必要になります。

 マネージャーとリーダーとは厳密にはその役割は違いますが、ドラッカーのように、マネジメント「自由で生き生きと躍動する人と組織を創り、成果につなげること」と捉えると「組織運営と顧客創造のマネーティングとは密接につながっている」ので、リーダーにもマネジメントのスキルは必要です。

 菊地氏によれば、東京海上日常で重視している点が2つあります。

  1. 多様性を活かせるような組織風土や関係性、育成環境をいかにつくるかという「組織マネジメント」
  2. 個の多様性をいかに引き出すかという「個のマネジメント」

 東京海上日動が拠り所とする考え方は3つあります。

  1. 仕事における人の成長は「7(仕事上の経験):2(上司からの助言や影響):1(研修や読書)」によるという法則
  2. 経験学習理論=経験したことを内省して、成功したことも失敗したことも、次の経験に活かせるように言語化・教訓化することで、成長スピードを高めていくという考え方
  3. 成長循環モデル=組織が成果を出すために、メンバー間の「関係の質」を高めること 「思考の質」「行動の質」を高め、最終的には「結果の質」につながるという考え方 

 桜井氏が言うように、部下の育成が上手くできている組織には、暗黙知のようなものがあります。その組織の成長を全社的に広げるためには、暗黙知形式知化すること、つまり見える化して全員が共有できるようにすることが重要になります。

3.部下の経験学習をマネージャーはどう支援するのか

 経験学習理論には、経験する→振り返る→教訓を引き出す→応用するという経験学習サイクルを回す上で「振り返りの壁」や「教訓化の壁」があると言われています。

 まず、内省を促すには、上司と部下との間に信頼関係があることが不可欠です。「この人の言うことなら受け入れられる」という状況でなければ、何を言われても右から左、場合によっては反発すら招きます。

 熱心さゆえに答えを示したがる上司もいますが、上司は問いを投げかけることで部下に考えさせることが大切です。部下自身が自分で答えを見つけられるようにアドバイスを与えること、つまり「どの観点から振り返るのか」切り口を提供することです。

 東京海上日動には「Our Eight」という8つの行動指針があります。①礼を重んずる ②ごまかさない ③人に関心を示す ④相手軸を意識する ⑤当事者意識を持つ ⑥目的を考えて行動する ⑦臆せずチャレンジする ⑧相手の期待を超える の8つです。これらを一つの切り口にして、日々の経験を内省することを求めています。

 また、東京海上日動には年4回行われる「役割チャレンジ面接」があり、上司と部下とが面談し、部下本人のキャリアビジョンの確認とすり合わせを行い、その内容に基づいて当該社員の育成プランを設定するのです。ここでは、お互いに自己開示もしながら、キャリアに1つの明確な答えはないとの前提で、上司と部下が一緒に悩み考えるようにしているとのことです。

4.マネージャーが自然と自己開示できるような機会を

 「マネージャーはこうあるべきだ」という思い込みが強いと鎧を着こんで、部下が自己開示しづらい雰囲気を作ってしまいます。それでは硬直的な組織になるので、マネージャー自身が自然と自己開示できるような機会を作ることが大切です。

 東京海上日動では、1on1では自己開示しづらいこともあるので、「多対多」の場を設けることで、マネージャーも鎧を脱ぎやすい雰囲気を作り出しているということです。特に、リモート環境が進むと、1対1で特定の誰かが1人を見ているだけでは組織が回らなくなります。多対多で、複数のメンバーがお互いを見守っているという安心感があってこそ、一人ひとりのパフォーマンスは上がります。

 ここでも重要なことは上司(マネージャー)と部下の信頼関係の構築です。そのためには、上司(マネージャー)が自分の鎧を脱ぎ捨て人間として対等に部下に接することが大切です。

以上書いた東京海上日動の事例を真似るというのは難しいと思いますが、企業において大切なのは人であり、人の育成には上司と部下の信頼関係の構築が最重要であることは、どんな企業でも同じです。 参考にしてください。