中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 自己探求の時代

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で8807人、そのうち1273人、神奈川862人、埼玉780人、千葉429人、愛知970人、大阪1263人、兵庫507人、京都199人、福岡378人、沖縄270人、北海道156人などとなっています。2日連続で1万人を下回り、ピークは過ぎたように見えますが、相変わらず重症者数は高水準で、若年層・中年層の死者も出ています。緊急事態宣言延長決定後初めての週末となりましたが、各地の人出は増えてきており、このところの行動制限緩和案がさらに気の緩みを助長させるのではないかと懸念します。全国知事会や医師会も、政府の行動制限緩和に見られる楽観論に懸念を示しています。現在取りざたされている行動制限緩和案は、危機管理の基本に則ったものではなく、あまりにも楽観的で稚拙な内容です。菅首相は「コロナ対策に専念するために総裁選に不出馬」と言い、この行動制限緩和案を菅首相の最後の仕事として、これまでの後手後手ではなくやっている感を演出しようとしているように見えます。しかし、菅首相はすでに過去の人、新型コロナの出口戦略は次のリーダーがしっかりと状況を認識・検証・分析し、的確な判断に基づいて行うべき最重要課題です。既に終わった人が付け焼刃で行うような簡単な課題ではありません。

さて、今日は、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスから、ピーター・F・ドラッカー

「自己探求の時代」という論文を紹介します。

ナポレオン・ボナパルトレオナルド・ダ・ヴィンチモーツァルトのような偉人は、常人の域をはるかに超えた才能を持っていましたが、自己をマネジメントしたからこそ、偉業を成し遂げたのです。

これからは、普通の人も自己をマネジメントできなければなりません。大きな貢献が可能な適所に自己を置き、50年にも及ぶ職業生活の中で生き生きと働き、自分の仕事をいつ、いかに変えるかを知らなければならないのです。そのために重要なことは自己の強みを知ることです。

1.自己の強みは何か 

 人が、自己の強みと信じているものは、たいていが間違いです。強みならざるものを強みと信じ、見当違いのことが多いのです。これは企業や組織にも言えることです。企業自身が自社の強みと考えているものが、はたから見れば強みではなく、場合によっては弱みであるということは往々にしてあります。

 何事かを成し遂げるのは、強みゆえです。弱みによって何かを全うすることも、成果を上げることはあり得ません。そのために、まずが自分の強みは何かをしっかりと認識することです。

⑴フィードバック分析

 ドラッカー氏は、「自己の強みを知るには、フィードバック分析しかない」と言います。なすべきことを決めたり、始めたりしたならば、具体的に書き留めて、それを半年後、一年後と、期待と実際の結果を照らし合わせて検証するということです。

 このフィードバック分析によって、自分の強みが何かが明らかになり、さらに、既に行っていることや行っていないことのうち自分の強みを発揮するうえで邪魔になっているもの、自分が得意でないもの、強みを発揮できないこと、自分には不可能なことも明らかになるのです。

⑵強みを活かすために何を為すべきか

 フィードバック分析によって、いくつかの行うべきことが明らかになります。

  1. 明らかになった強みに集中すること
  2. その強みをさらに伸ばすこと
  3. 無知の元凶ともいうべき知の傲慢を知り、正すこと
  4. 自己の欠陥を改めること
  5. 人への接し方を改めること
  6. 出来ないことはしないこと
  7. 並み以下の能力を向上させるために、無駄な時間を使わないこと

2.仕事の仕方を自覚する

 多くの人が、自分が得意とする仕事の仕方を自覚せず、得意でない方法で仕事をして成果が上がらないという状況に陥っています。自分の強みと同じく、仕事の仕方も人それぞれです。強みを発揮できる仕事で、本当に成果を上げるには、得意な仕事の仕方で仕事をすべきです。

⑴読んで理解するか、聞いて理解するか

 読んで理解する人間と聞いて理解する人間の2つのタイプがあります。両方であるという人はほとんどいません。また、自らがどちらであるかを認識している人もほとんどいません。読み手が聞き手になることは難しいのです。読み手が聞き手として行動しても、何も理解できず何事もなしえないのです。また逆も然りです。まずは自分がどちらのタイプであるかを認識しなければならないのです。そして自分のタイプに合った仕事の仕方を見つけることです。

⑵学び方を知る

 仕事の仕方について重要なことに学び方があります。学び方も人それぞれです。実際に行動することによって学ぶ人もいれば、人の話を聞いて学ぶ人も、自分が話すのを聞いてもらって学ぶ人もいます。

 自分の得意な学び方を知り、それに基づいて行動することが、成果を上げるためのカギであり、自分の得意な学び方に基づいて行動しないことで失敗するのです。

 理解の仕方(自分のタイプを知る)と学び方こそが、仕事の仕方に関して最初に考えるべき最も重要な問題です。しかし、そのほかにも、誰かと組んだ方がいいか、一人でやった方がいいかも知らなければなりませんし、誰かと組んだ方が良ければ、誰とどのように組んで仕事をするかを知らなければなりません。さらに、①緊張や不安があった方が仕事ができるか、安定した環境の方が仕事ができるか、②大きな組織の方が仕事ができるか、小さな組織の方がいいかというもも重要です。

 ドラッカー氏は、「今更自分を変えようとしてはならない。うまくいくわけがない。それよりも、自分の仕事の仕方をさらに磨いていくことである。得意でないことや、できないことにあえて挑んだりしてはならない」と言っています。確かに、自分の強みを知り、得意な仕事の仕方で成果を上げることは大切ですが、現代のように何が正解かわからない混迷の時代には、時には自分を変えて思い切った挑戦をしていくことも重要ではないかと思います。

3.自分にとって価値あることとは何か

 自己をマネジメントするためには、自分にとって価値あるものが何であるかを知らなければなりません。

⑴組織の価値観との共存

 組織の価値観が自分の価値観と違うならば、欲求不満に陥り、碌な仕事もできません。価値観は人間だけでなく、企業にも組織にも存在します。

 企業や組織において成果を上げるためには、働く者の価値観と、企業や組織の価値観が矛盾してはいけません。必ずしも同じである必要はありませんが、共存できるものでなければなりません。

⑵所を得る

 自分の強みや仕事の仕方がわかる抜つれて、自己の価値観もわかってきます。そうすると自分の適所もわかってきます。逆に自分に相応しくない場所もわかってきます。

 最高のキャリアは、あらかじめ計画して手に入れられるようなものではありません。自己の強み、仕事の仕方、価値観を知ることによってチャンスをつかむ用意がある者だけが手に入れることができるものです。

4.なすべき貢献とは何か

 多くの人が言われたことをなすだけの従者になっています。決まったことや謂われたことだけをすればいい時代ではありません。「なすべきことは何か」という問いを自問自答しなければなりません。ドラッカー氏は、この問いの答えを出すには次の3つを考えねばならないと言います。

  1. 状況が何を求めているのか
  2. 自己の強み、仕事の仕方、価値観からして、いかにして最大の貢献をなしうるか
  3. 世の中を変えるためには、いかなる成果を具体的に上げるべきか

しかし、高い目標を掲げても、実現できなければ意味がありません。期限はせいぜい1年半とし、具体的なものにしなければなりません。

  1. 目標は難しいものでなければならないが、実現可能なものでなければならない
  2. 意味のある、世の中を変えるものでなければならない
  3. 目に見えるものであって、数字で表せるものであることが望ましい

5.互いの関係に責任を負う

 一人で働き、一人で成果を上げることは難しいものです。他の人々と共に働き、他の人の力を借りて成果を上げています。成果を上げるには第三者との関係について責任を負わなければなりません。

⑴他の人を許容する

 他の人も自分と同じような人間であるという事実を受け入れることです。それぞれが自己の強みを持ち、自分の仕事の仕方を持ち、自分の価値観を持っていると知ることです。そして、成果を上げるためには、共に働く人たちの強み、仕事の仕方、価値観を知らなければなりません。

 上司や同僚、部下に関わらず、共に働く人たち、自分の仕事に不可欠な人たちを理解し、その強み、仕事の仕方、価値観を活かすことが大切です。仕事というのは、仕事の論理だけでなく、共に働く人たちの仕事ぶりに依存している物なのです。

⑵コミュニケーションについて責任を負う

 企業や組織には多くの軋轢が存在します。しかし、その摩擦のほとんどが、相手の仕事、仕事の仕方、条幅していること、目指していることを知らないことに起因しています。それは、お互いに効きもせず、知らされていないことが原因です。要はコミュニケーション不足です。

 組織は権力によって成立しているのではありません。信頼によって成立しています。信頼とは好き嫌いではありません。相互理解です。従って互いの関係について互いに責任を負うことが不可欠です。それは責務と言ってもいいものです。十分なコミュニケーションを行って、新貝が相手の強み、仕事の仕方、価値観、目指す貢献、目標としている成果を知り、それらを共有することです。

1997年7月号に載った論文ですが、今なお色あせることなく、読むに値する内容になっていると思います。