中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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会社存亡の危機におけるリーダーシップ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で232人、200人台になったのはおよそ1年ぶりです。こうした減少傾向に伴って、Gotoトラベル、Gotoイート再開の動きが加速しています。経済を回していくことはもちろん重要ですが、早計な行動制限緩和は、かえって第6波の襲来につながります。これまでのコロナ対策の失敗と同じ轍を踏まないように、Gotoを再開するとしても、きっちりとしたルールとどのような状況になれば中止するのかの基準を明確にして厳格に運用すべきです。これまでのような場当たり的な対策はやめ、危機管理の基本に則って行いましょう。

さて、今日は、幻冬舎GOLDONLINEの「責任のなすり合い、飛び交う怒号・・・『会社存続の危機』に社長が下した決断【物流のケーススタディ】」という記事を取り上げます。

この記事では、自社の急成長に伴い新たなシステムの導入が必要となった企業の事例をもとに、経営者に求められるリーダーシップとSCM(サプライチェーン・マネジメント)の重要性について解説されています。SCMとは、原材料も調達から生産、流通を経て消費に至るまでのプロセスの中で商品や物資の最適な供給を管理するための経営処方のことです。

著書「エクセレントカンパニー」の中で、トム・ピーターズは、「リーダーシップとは、会社の中で物事が横道にそれたときに姿を現し、上手くいっているときには姿を隠しているものである」と言っています。リーダーの仕事は、組織を創り上げることであり、人と技術を活用し革新的で永続的な価値を作り上げることですが、組織が上手く回っているときには、リーダーシップが表に現れる必要はありません。しかし、組織が上手く回らなくなったときに、リーダーシップが表に姿を現し率先して組織を大きく変えていくことができなければ組織は衰退してしまいます。

この記事では、「組織に変容をもたらしリーダーシップとは、価値観を高め、次にそれを守り通すことである」と言い、価値観の例として、マクドナルドのレイ・ロックのような「ハンバーグを挟むあの丸いパンに美を感じること」、IBMのトーマス・ワトソンのような「個々人を尊重すること」、アマゾンのジェフ・べゾスのような「顧客至上主義」を挙げています。

こうした価値観を信じ、それを実践する企業が変容できる企業です。

この記事で【物流のケーススタデイ】をしてあげられているのが、食品トレー容器を製造するF社です。

F社の強みは、市場の変化と顧客ニーズを的確にとらえ、高い機能性とデザイン性をもった商品開発力で、生産のリードタイムは長くなりますが、製品の美しさやデザイン性で勝負し、一気に市場拡大、売上も急成長しています。同社が保有する古いシステムでは、急成長を支えることができず、海外のサプライチェンジ・マネジメントパッケージを導入することになりました。ところが、導入した新システムは、旧システムよりも使いにくいものであり、入力する項目も多く、日本の商慣習に関する細かい対応も難しいものでした。営業担当は入力を嫌がり、正確なデータがインプットされず、工場への生産指示はメールやFAXとなり、新システム導入の意味がなくなりました。結果、導入前よりも状態が悪化し、顧客企業から納期確認が入っても、正確な回答ができず、競合他社に市場を奪われていきます。社内では、営業サイトと工場サイトが責任のなすり合いになり、全体会議では怒号が飛び交うようにもなりました。

危機に陥ってしまった状況を改善するために社長が発揮したリーダーシップとはどのようなものだったのでしょうか?

社長が気づいたのは「営業と工場のコミュニケーションを向上させることが大切」ということです。営業サイトが把握している「需要情報」と工場サイトが把握している「供給情報」はサプライチェーンの基本ですが、それが全く共有されていないことに気づいたのです。誰も状況を把握していないので都度調整が発生し、結果的に声が大きい者の意見が通るという状況になっていました。会社としての顧客戦略や製品戦略は、現場オペレーションとは全く関係なく、その場しのぎの緊急対応の連続で高コスト化し、過剰在庫、欠品、納期遅延により現場は疲弊していたのです。

状況を改善するには、新しく導入したシステムに正確な情報を入力することがまず先決です。しかし「導入しろ!」と声を荒げて指示しても効果は期待できません。何故入力する必要があるのか、何故システムを刷新する必要があるのか、自社の価値観と照らし合わせて、現場に丁寧に繰り返し伝えることから始めました。

何度も言っていますが、ビジネスは人と人との関係、より良い人間関係・信頼関係の構築が最も重要です。そのためにはミッション、ビジョン、バリューを丁寧に繰り返し伝えお互いが理解して共有することが大切なのです。

価値観とは「高品質の製品をどこよりも早く、顧客が必要としているときに確実の届ける」ことです。それを実現するためには、システムの入力を極力簡素化し、正確かつ確実にデータ入力を行うことが重要であると伝え、現場の意見にも耳を傾け、改善すべき点は改善するようにしました。

次に、需要と供給を「見える化」するサブシステム、材料と製品の在庫を管理するシステムを導入し、営業と工場でこのデータを共有しました。その結果、需要情報と供給情報が共通のデータでみられるようになり、全体会議ではこの情報をもとに予算実行の予実管理が行えるようになりました。

これによって、営業から工場まで、販売から材料までつながった情報連鎖が構築されたことによって、会社に信頼性の高いサプライチェーンが構築されたのです。

F社の社長は、会社存亡の危機的状況に陥って、自らリーダーシップを発揮し、組織の改革を断行しています。リーダーシップが表に姿を現しているのです。その際、重要なことは、会社の価値観が何なのかを明確に定義して、それを社員に押し付けるのではなく、繰り返し伝えることで理解と共有を図っていることです。