中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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名ばかりの改革

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で7万1633人で、初めて7万人を超えました。そのうち東京1万4086人、神奈川4794人、埼玉3890人、千葉2621人、静岡1461人、愛知4663人、大阪9813人、兵庫4303人、京都2216人、広島1252人、福岡3615人、熊本1018人、沖縄1256人などとなっています。今後もしばらくはこのペースで感染者数は増加すると考えられ、東京都の試算では、2月8日時点で140万人と都民の10人に1人が濃厚接触者になると言うことです。社会インフラの麻痺・社会機能不全が現実味を帯びてきています。こうした状況を見据えて、国や地方公共団体、企業、さらには個人も、新たな危機への対策を考えなければなりません。特に企業においては、早急に危機管理体制を点検し、不十分であるなら、コンティンジェンシー・プランや事業継続計画(BCP)を今一度見直し、作成していないのであれば作成することです。

さて、今日は、ITmediaビジネスオンラインの「"やってる感”だけ先走るーーなぜ日本企業は『名ばかりの改革』を繰り返すのか」という記事を取り上げます。

これまでも企業変革や改革の必要性に何度も書いています。コロナ禍で激動のビジネス環境においては、変革や改革なくして生き残ることすら困難な状況になっています。厳しさを増す新しいビジネス環境に対応するためには、ビジネスのやり方を抜本的に変えていかなければなりません。

1.名ばかりの改革

 例えば、働き方改革ですが、厚生労働書のWEBサイトには、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す」と書かれています。

 労働時間の削減やコロナ禍でのテレワークなどの導入は、それ自体としては望ましいことですが、働き方改革が目指す目的は「多様な働き方を選択できる社会」と「一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにする」ことです。そのためには、生産性を向上させて賃金単価を高めたり、社員毎に異なるキャリアの希望により添って個別にサポートしたり、もっと休みを取りやすくしたりと包括的な取組みが必要です。

 働き方改革が、労働時間の削減や世間の流行に従うテレワークの導入というような表面的な取組みにとどまるようであれば、名称と実体が乖離した「名ばかりの改革」に陥ります。

 実際、"やってる感"だけの「名ばかりの改革」は山のようにあります。

 働き方改革の一環で提唱された「同一労働同一賃金」もその1つです。同一労働同一賃金とは、会社や雇用形態の違いなどに関係なく、同じ仕事をすれば同じ賃金が得られる仕組みですが、日本で同一労働同一賃金を呼ばれているものは、個々の会社の中でしか適用されません。正規・非正規などと呼ばれる雇用形態の違いだけで賃金に差がつくことは認められない者の、会社が異なる場合は適用外となっています。会社間を横断した外部労働市場同一労働同一賃金をどう実現するかは、有識者の間で議論されましたが、関連法の早期成立を優先させるために棚上げとでなったまま、法施行前から既に名ばかりの改革となっていました。

 また、同じ働き方改革で、限定正社員という制度がありました。限定正社員は無期雇用であるものの職務や勤務地が限定されている点が通常の正社員とは異なります。職務を絞って専門性を高めたい、家庭の事情で転勤したくないなど安定した収入を得ながら限定した範囲で働くことを望む人たちから期待されていた制度でした。しかし、職務や勤務地が限定される分、賃金が下がる可能性があることや希望条件を満たせなくなった場合に解雇は可能かというデリケートな課題があり、定着しませんでした。

 このところ「ジョブ型雇用」が頻繁に話題になり、私も何度もブログで書いています。ジョブ型雇用は、会社が用意した職務毎に雇用契約を交わす職務主義の仕組みで、欧米では極めてオーソドックスな雇用形態です。日本のメンバーシップ型雇用とは根本的に違うものです。

 現在、ジョブ型雇用を導入する企業や導入を検討する企業が増えています。しかし、その大半は内実を見ると限定正社員の変形版です。職務記述書の作成など異なる制度のように見えますが、限定正社員が抱えていた課題が解決されたわけではありません。もし本当に欧米型のジョブ型雇用を導入するとなると、人事権も縛られて限定地域内での異動もできなくなります。生半可な気持ちでブームに乗った「便乗ジョブ型雇用」ではうまくいくはずはありません。

 働き方改革同一労働同一賃金、ジョブ型雇用など、新しい名称の思索が推進される背景はさまざまで、政府主導のものもあれば企業主導のものもあります。これらは何らかの課題を解決する手段として導入されるものです。それ自体が目的ではありません。目的達成のために必ず実効性のある取組みにしなければならず、名ばかりの改革で終わらせてはいけないものばかりです。

2.名ばかりの改革にしないために

 働き改革やそれに付随する一連の取組みが名ばかりの改革になってしまわないようにするには、経営者や管理職など決定権を持つ組織内の者が、会社や社会のためにお自らの成功体験やエゴを捨てて、能動的に組織構造変革に踏み込む必要があります。

 企業変革は、どのようなものであれ、時間がかかるものですし、経営トップが中心となり全社を巻き込んで行なわなければ成功できません。だからといって、手をこまねいていたのでは、この激動の時代、継続的な成長はおろか生き残ることすらできません。

 そこで求められるのは、コンプライアンスのような強制力に対する受け身の姿勢ではなく、法制度という強制力がなくても能動的にあるべき姿を実現しようとする誠実さ・真摯さです。  

 先日、コッターの「企業変革力」を紹介したときにも書きましたが、企業変革を行なう者にはマネジメント力とリーダーシップ力のバランスが必要です。変革が進まない企業ではマネジメント力に優れた人材はいてもリーダーシップ力を持つ人材が欠けています。変革を成功に導くには、人々を駆り立てる単純明快なビジョンを立てて、実現に向けて率先して人々を引っ張っていけるリーダーが必要です。