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休日の本棚 目的ドリブンの思考法

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3万9416人で、感染者数が前週同曜日と比較して増えている地域がかなりあります。沖縄では過去2番目の感染者数で、県は「GW中に感染した人からの二次感染が始まっている」と警戒と感染防止対策を呼びかけました。これは沖縄に限ったことではなく、来週あたりから、二次感染が拡大し各地で感染者数が増加するのではないかと懸念します。

さて、今日は、望月安迪著「目的ドリブンの思考法」(ディスカヴァー・トゥエンティワンを紹介します。

何が正解か分からず混迷の時代であるVUCAの時代には、これまでの延長や過去の成功体験が役に立たなくなってきています。成果を出すためには従来のやり方にとらわれず、その仕事を「何のためにやるのか」という目的から考えることが必要になります。

混迷する時代には、過去の延長線上に未来を見るのではなく、望む未来を最初に描くこと、その未来から現在に立ち戻り、その実現に必要な手段を見つけ出すこと、つまり未来起点の「バックキャスト思考」が必要なのです。何が正解かわからない今の時代、「できるかできないか」など分かりません。「やりたいこと」を起点に未来を描いていけばいいのです。

これまで、何度も「ぶっ飛んだ目標」の大切さに触れてきましたが、目的が疎かだと、具体的に何を目指して(目標)、具体的に何をすればいいのか(手段)が分からなくなり、目標の達成からほど遠くなってしまいます。長期的目標やぶっ飛んだ目標を設定しても、何のためにそれを目標として設定するのかといった目的が明確でなければ、目標に突き進む意欲も湧いてきませんし、人(社員)の共感を得てともに突き進んでいくことはできません。

1.目的と目標の違い

 目的と目標は時に混同されて使われることもありますが、両者は厳密に異なります。

 「目的」というのは、読んで字の通り「目」で見える「的」のことで、到達点=ゴールです。これに対し、「目標」というのは、「目」で見える「標」、つまり最終的なゴール(目的)に向けての指標となるものです。

 目標設定が必要なのは、目的を明確にしただけでは何をどうすればいいか分からないからです。目的に向けて、長期目標を設定し、更に細分化した中期目標、短期目標を設定することで、目的への道筋が明確になり、とるべき手段(何をすればいいか)も分かるようになるのです。目標は組織やチームの実行力やモチベーションを左右する重要な要因なのです。

 「バックキャスト思考」というのは、「望む未来像」を起点に現状に立ち戻り、未来像を実現スリ方法を考える逆算の思考法です。これは「目的」を起点として、その達成に必要な「目標」や「手段」を打ち立てようとする三層ピラミッド構造の考え方です。

 【第一層】Why・・・成し遂げるべき「目的」を設定

 【第二層】What・・・目的を成し遂げるために達成が必要な「目標」を設定

 【第三層】How・・・目標達成に必要な「手段」

2.目標の4つの効能

 目標は、組織やチームに次の4つの効能を与えます

  1. 抽象度の高い目的を実務に落とし込む・・・目的は目指したい将来像を示したもので、どうしても抽象的なものになります。あまりに抽象的であり実際に実務としてどう動けばいいのか分かりません。抽象的で手触りのない目的を具体的な目標に落とし込む必要があるのです。ビジョナリーな世界で描いていた目的が目標の設定によってリアルな実務に落ちてくるのです。
  2. 有効な対応策を体系的に洗い出せる・・・目標があれば、それをターゲットとして打ち手の洗い出しを体系的に行うことができます。抜け・漏れを防ぎながら、目標達成に有効な柵を考えやすくなります。
  3. リソースの無駄遣いがなくなる・・・目標があれば、それを目印として、組織のリソース、いわゆるヒト・モノ・カネを集中できるようになります。
  4. 達成と成長が実感できモチベーションが高まる・・・目標という中継地点を置きそれを達成していくことで、チームは仕事の成果や成長をその都度実感でき、目標を刻むことでチームやメンバーのモチベーションが高まります。

3.目標設定の仕方

 目標設定の意義は上述の4つですが、目標を設定するにはどうすればいいのでしょうか?端的に言えば、目標は、目的をいくつかの部分に分けて具体化したものですから、目標の設定は「目的の切り分け」に他なりません。そのときの切り口は次の2つです。

  1. 構成要素への切り分け
  2. 時間軸での切り分け

⑴ 構成要素への切り分け

 挙げられている具体例で「英語を身につけ海外顧客と商談ができる」という目標設定を考えます。このとき、英語は、①リスニング ②スピーキング ③リーディング ④ライティング ⑤文法・語彙という構成要素に分けられます。

 ①リスニング・・・海外ドラマのナチュラル苗雨後を聞き取れるようになる

 ②スピーキング・・・自社事業の要点を英語で説明できるようになる

 ③リーディング・・・英字新聞・ニュース記事を読みこなせるようになる

 ④ライティング・・・英語での資料作り、メール作成ができるようになる

 ⑤文法・語彙・・・ビジネスで用いる単語1000・語法300を習得する

 ①~④の目標は目的を成し遂げるために「達成が必要な条件」を定性的に切り出したもので、⑤の目標は定量的な水準値が設定されています。

 このように、目標を定性的な条件、定量的な水準値に分解すれば、具体的な手触りのある目標が見えてくるのです。

⑵ 時間軸での切り分け

 これは「いつまでに」という期限を目標に与えるものです。期限を設定しなければ、「今やらなくてもいい」と、先日書いた「先延ばしグセ」がでて、結局知らず知らずのうちに立ち消えてしまうこともあります。

 「どのような状態・水準」を「いつまでに」実現するのか、それを切り出すことが目標設定の基本です。

 一見して遠い彼方にある目的を具体的に分解して、その到達に向けた中間地点を段階化し、期限設定することで、彼方にあった目的を手元に引き寄せ、具体的勝つリアルな対処を打つことができるようになるのです。

4.困難は分解せよ

 目的を目標に分解する理由は、「困難を分解せよ」ということです。

 大きな問題は、それを構成するより小さな問題に分けることで、対処が容易になります。切り分けられた小さな問題を潰していくことで、いつしか元の大きな問題も解消できるのです。これは目標設定においても当てはまります。一見して困難な目標より小さな目標に分解することで、目標達成の実効性・実現可能性を高めることができます。それにより目的成就の確度も高まります。

 大きな目標(長期的目標)を小さな目標(中期・短期目標)に分解し、小さなところから一歩ずつ、成し遂げていくのです。これなら、なんとなく「できる」と思えるようになります。大きな目標を前に途方に暮れる前に、小さな目標に細分化できないかを考えることが大切なのです。