中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

行動インサイト

おはようございます

昨日の新規感染者は全国で4万893人で、東京では8日連続で前週同曜日を下回っています。山際経済再生担当相は、記者会見で、大型連休で移動の自粛を呼びかけなどの制限は求めない考えを示し「通常の大型連休として、皆様にはお過ごししていただければ良いのではないか」と述べました。GW開けの感染状況が心配です。ステルスオミクロン株(BA.2)は感染力は26%増というデータもあり、専門家の中には「5月中に、東京都内の新規感染者は3万人を超える」という意見もあります。既に、全国的にBA.1からBA.2に置き換わっており、感染爆発の懸念は拭えません。やがて訪れるであろう第7波の大きさを少しでも小さくするためにも、これまで通り、密を避け、マスク、手洗いなどの基本事項を遵守するしかありません。

さて、今日は、日本の人事部の「ナッジなどで知られる『行動インサイト』とは」という記事を取り上げます。

1.「行動インサイト」とは

 「行動インサイト」というのは、行動経済学の技法の1つで、行動科学や社会科学などの実証的な研究結果を基に、人がどのような選択を行なうかについて洞察することです。人間の行動を観察することで、心理的な傾向を分析誌、それを理論化するアプローチです。

 行動インサイトは、ここ10年で行政や企業での活用が進んでいます。例えば、レストランで、何を注文するか迷ったとき、メニューに記載された『おすすめ』に背中を押されたという経験は誰にもあるはずです。これは行動経済学の「ナッジ(nudge)]」という手法です。

2.「ナッジ」とは

 ナッジ(nudge)とは、「肘で軽く突く」という意味で、強制的ではなくちょっとしたきっかけを与えることで消費者の行動を促すことです。

 人は選択肢が与えられることで、自分で選んだという意識が芽生えます。ルールで強制されるのではなく、望ましい行動をするよう、誘導する際に有効な手段が「ナッジ」です。

 「ナッジ」の事例として、先ほど「おすすめ」を挙げましたが、他にもコンビニのレジ前に足跡マークがつけられたり、ネットショッピングで、メールマガジンの登録欄に予めチェックボックスが入っており、不要な人はそれを外すというやり方も「ナッジ」を活用したものです。選択の余地を残しながら、消費者を特定の選択肢に誘導すれば、消費者は自発的に選択した感覚があるため、商品やサービスの体験を損ねません。

 イギリスでは、納税通知書に同じ地域にする住民の納税率を記載し、その納税率を見た滞納者の納税義務意識が高まり、地域全体の滞納率が減少しています。これも公共政策におけるナッジの活用です。

 人々の行動変容を促す「ナッジ」は人事領域にも活かすことができます。長時間労働をしなくて済むような仕組みや、企業に対する意見を素直に発現できる仕組みなどができれば、多くの企業で活用できます。

 「ナッジ」には、「デフォルト設定(とってほしい選択肢を予め初期設定として用意することで、その選択肢を選んでもらいやすくする)」や「インセンティブ(何らかの報酬を用意することで行動を促す)」といった基本的なテクニックがあります。それを仕組みの中に組み込むことです。一方で、ナッジには、個人の選択に対して無意識のうちに先入観を与えてしまいます。それが倫理や社会利益に反しないよう設計側の配慮が求められます。

3.極端回避性

 鰻屋では、一般に「松竹梅」という3つのメニューがあります。一番注文されやすいのは真ん中の「竹」です。これは行動経済学の「極端回避性」と呼ばれるものです。

 価格帯が複数あると、人は安い者よりも高い者の方が品質がいいと考えます。一方で、最も高いものは、贅沢すぎる、失敗したときの痛手が大きいと考えます。その結果選択肢が3つあれば真ん中を選ぶのです。

行動インサイトの活用は、個人の自由を奪わず、かつコストがかからないために爆発的な支持を得ています。しかし、場合によっては期待した効果が得られないばかりか、逆効果になる可能性もあります。新型コロナのワクチン接種を促すメッセージについて、ナッジの活用が接種以降を高めるかを調査した研究では、高齢者には有効だったものの、若年層には効果を発揮しなかったようです。

人事マネジメントに行動インサイトを活用する場合、ナッジ一辺倒な施策ではなく、従業員データを用いて施策を個別化させた方が効果を発揮するのではないかと思います。類型化された意思決定には限界があり、類型からはみ出る人も一定数いるのです。いくつかのパターンを設定して、従業員の特性・個性に応じて使い分けるのがベターではないでしょうか。