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休日の本棚 AIを読む

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おはようございます。

今日は、AIに関する本をいくつか紹介したいと思います。

先日、5Gについて触れた際に、5Gの導入によってSFのような生活が実現するようなことを書きました。このような新たな未来社会の実現にAIは欠かせないことになります。AI(人工知能)とは、人間が有しているような知性・知能を人工的に実現する技術のことです。これまでにもAIブームがあり、今回が3度目のAIブームです。過去2度のブームでは、簡単なゲームやパズルが解けるようになったものの応用範囲が限定的ですぐに下火になりました。しかし、今回は、先進的な機械学習、特にディープラーニング(深層学習)によってコンピュータに大量のデータを学習させ、人間のように音声や画像を認識したり、最適な判断を下したりできるようになるのです。ディープラーニングでは人間の脳を模した「ニューラルネットワーク」を使ってビッグデータを処理することになります。ここでも脳科学の知見が応用されています。人間が成長に伴い学習するように、まさにAIがビッグデータをもとに学習していくことになります。2016年3月15日にAIの囲碁プログラムアルファ碁がトップレベルのプロ棋士に圧倒的な強さで勝ち世界に衝撃を与えました。 

AIの適用領域は主に①音声認識②画像認識③自然言語処理の3つがあります。①音声認識ではアップル社がiPhoneに搭載したSiriやアマゾン・エコーがあります。②画像認識ではグーグルマップ、これを利用するグーグルカーの開発、医療現場での画像診断などがあります。③自然言語所為としては機械翻訳があります。このように、AIによってどのようなことができるのか、AIによって社会はどのように変わるのか、AIの未来を見据えて企業がどのような取り組みを行っているのか、などAIに関する基礎を分かりやすく解説してくれているのが、古明地正俊・長谷佳明著「AIまるわかり」(日経文庫)です。

アメリカの著名な発明家で科学者であるレイ・カーツワイルは「AIは今後指数関数的に成長し2045年には人間の知性を超越した存在になる」(シンギュラリティ)と警鐘を発しています。また、ジョニー・デップ主演の「トランセンデンス」という映画がありましたが、この上演に刺激され、天才物理学者のホーキングらは「AIは人類を滅亡に導くかもしれない」と警告しました。AIが自ら成長し判断するようになると、そもそも人類はAIを制御できるのかという問題が生じます。AIを搭載したロボット兵器は人類の意思を無視してターゲットすら自らが決めてしまうことになり、すべての人類がターゲットにされることにもなりうるのです。SF映画のようであってこれが近い未来の現実だということです。またAIの進化に伴い多くの職種で雇用機会が奪われます。さらにAIとロボット技術がすべての産業を塗り替えてしまうことを見過ごすと日本の産業はすべてグーグルに支配されることにもなりかねません。こうした点から、AI(人工知能)は人類の敵なのか、という問題意識を持ちAIの現状を説明してくれているのが、小林雅一著「AIの衝撃」(講談社現代新書です。

AIが自ら暴走し人類を破滅させる恐れがあるわけですが、ロボットの行動基準や倫理観をどのように決めるかということが課題となります。こうした観点からAIに善悪を教える方法について説明しているのが、鄭雄一著「東大教授が挑むAIに『善悪の判断』を教える方法」(扶桑社新書です。「人を殺してはいけない」という道徳は普遍的なものなのか(一人殺せば悪人で、百万人殺せば英雄)を考え、道徳を「共通の掟」と「個別の掟」で成り立っているとしてこの2つを纏める道徳の基本原理「仲間らしくせよ」「仲間を裏切ってはならない」を道徳エンジンとしてロボットに搭載することでAIに道徳を教えるのです。著者は医学者かつ道徳哲学者で直接的にAI技術とかが関係するわけではありませんが、なかなか面白い本です。

中国では信用情報機関AIが算出した個人の信用スコアが社会のいたるところで利用されスコアの低い人が差別を受けるという事態が生じています。日本でも企業の採用活動や金融機関の与信の場面でAIが活用されています。AI自身にダメ人間というレッテルを貼られることになるのです。また権力者がAIやデータを用いて有権者の心理を把握し有権者一人一人の行動を秘密裏に支配できる可能性もあります。それでは民主主義が危険に晒されることになります。AIと民主主義、AIと選挙制度、AIと個人情報・プライバシー、AIと裁判などAIは憲法においても問題となるのです。こうした点から書かれた本が山本龍彦編著「AIと憲法」(日本経済新聞出版社です。

憲法や法律に興味のある方にはお勧めです。これまでの憲法の教科書にはない視点で面白いと思います。

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