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パワハラ防止法施行

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おはようございます。

昨日の東京の新規感染者数が19日ぶりに30人を超え34人となり、「東京アラート」が発動されました。東京アラート発動の目安となるのは、新たな感染者数が1週間平均で1日20人以上、感染経路不明者が50%以上、1週間の新規感染者が前の週を超えることです。直近は感染経路不明者が50%を超え、1週間の新規感染者数は前週の2倍を超え、東京アラート発動の目安の2つを超えました。先月末の30日に14人が感染し、その時にすでに感染経路不明者が50%を超え、1週間の新規感染者数が前週の2倍以上と目安を超えていました。しかし、その時には6月1日にステップ2に移行させ自粛を緩和させることがすでに決まっていましたし、経済活動とのバランスから発動は見送られました。しかし、今回は、感染者数のうちの約3割が「夜の街」関連でありそのうちの約4割が新宿に集中し、感染者数の半数が20歳代から40歳代と若者の感染者が増加していることへの危機感から東京アラート発動に至ったと考えられます。緊急事態宣言解除に伴う気の緩みで各地の人出は増加し各所で「密」が生まれているように思います。第2波の入り口に差し掛かっているようにも思えてきます。今一度しっかりと3密を避け、手洗い・マスクなど新たな生活様式を励行しましょう。

さて、今日は「パワハラ防止法」についての話をします。パワーハラスメントの防止を義務付ける法律が、6月1日に施行されました。大企業の場合は2020年6月1日から義務化されますが、中小企業の場合は2022年3月31日までの努力義務期間を設けたうえで本格的には2022年4月1日から義務化されます。企業にとって重要な法改正にもかかわらず、新型コロナ関連のニュースに埋もれてしまっているように思います。

パワハラ防止法」という法律が制定されたわけではありません。働き方改革に関連して2018年に制定された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)が改正されて「パワハラ防止法」という側面を持つようになったということなのです。

ここで重要なのが、職場におけるパワハラ対策が事業主の義務となったことです。労働施策総合推進法の第8章に「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」が新たに設けられました。

これに伴い、パワハラの定義が明確化されました。厚生省の「職場におけるハラスメント関係指針」によれば、次の3つの要素をすべて満たす行為がパワハラとなります。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

上記3つの要件のすべてを満たす言動がパワハラとなります。しかし、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導についてはパワハラには当てはまりません。

また、パワハラの典型的な例として、6つの類型が示されています。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害など)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言など)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視など)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不必要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害など)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことなど)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

厚労省は、「客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導の場合は該当しない」「個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もありうる」としています。パワハラに該当するかどうかは「職場におけるハラスメント関連指針」を参考にケースバイケースで適宜判断することになります。

例えば、1の身体的攻撃について、誤ってぶつかったという場合はパワハラに当たりませんし、2の精神的攻撃について、ルールを欠いた言動が見られ再三注意しても改善されない労働者に一定程度強く注意する場合はパワハラには当たりません。3の人間関係からの切り離しについて、新規採用者を育成のために隔離して教育・研修を行ったり、懲戒規定により処分を受けた労働者に別室で研修を受けされたりする場合もパワハラには当たりません。4の過大な要求について、育成のためにレベルの高い業務を任せる場合も、5の過小な要求について、閑散期で高度な能力を要求される業務がない場合にレベルの低い業務を行わせることもパワハラには該当しません。6の個の侵害について、労働者の了承を得て個人情報を必要な範囲で人事労務の担当者に伝達し配慮を促す場合もパワハラには当たりません。

そして、事業者はパワハラ防止・解決するための措置を講じなければなりません。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発…パワハラをしてはいけないこと、その背景などを労働者らに周知・啓発する。
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備…パワハラの相談窓口を整備するほか、担当者が適切に対応できるようにする。
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応…事実関係の迅速かつ正確な確認、被害者への配慮の措置などをする。

このほか、パワハラの相談者や行為者のプライバシーを保護することや、パワハラの相談者に解雇などの不利益取り扱いをしないことも求められています。

この「パワハラ防止法」は、大企業では2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から施行されますが、罰則規定はありません。このため実効性を疑う声もありますが、労働局の指導や勧告で是正されないときには企業名が公表されることになっています。

中小企業には約2年の猶予期間がありますが、この2年は努力義務が課せられています。パワハラ防止に向けた努力は必要です。ハラスメントの防止に向けた意識を高め、相談窓口の設置や職場環境の改善に取り組み、パワハラ対策の措置義務を守るようにしてください。