中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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パートナーシップ構築宣言

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おはようございます。

昨日の全国の感染者は1358人で、そのうち、東京263人、大阪196人、愛知147人、福岡123人、神奈川81人、沖縄77人、埼玉64人、千葉50人、兵庫52人と都市部とその周辺での感染拡大が止まりません。また、栃木、三重、滋賀、徳島で過去最多を更新しています。また、死者も7人増えて、これまで1043人の方が亡くなられています。

感染が拡大している都府県で独自の緊急事態宣言を発出し、時短営業の要請や感染防止対策が不十分な飲食店などへの休業要請が相次いでいます。来週からお盆休みが始まりますが、各都道府県でお盆の帰省自粛に対する対応が異なります。地域に感染者の多寡がある以上当然のことですし、一律と言うわけにはいきません。要は、帰省を考えている人が帰省先の状況や家族・自身の体調などを考慮して判断すべきことです。

新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長も、分科会の開催を待たず「お盆の過ごし方」という緊急提言を出されました。それでは、お盆休みの帰省では、高齢者と接する機会や飲酒、飲食の機会が多くなるので、マスクや換気などの感染防止策を徹底し、大人数の飲食を避けるなど、高齢者などの感染につながらないように注意を促しています。また、感染防止策などの対策が難しい場合には、感染が収まるまで当分の間、オンライン帰省を含めて慎重に考慮することを求めています。特に、最近接待を伴う飲食店などクラスターが発生している感染リスクが高い場所に行った人にはより慎重な判断を求めています。

新型コロナの影響で、解雇や雇い止めにあった人は7月31日時点で4万1391人で、そのうち製造業が最も多く7003人となっています。これまではインバウンドの減少で宿泊業が最多となる傾向がありましたが、ここにきて製造業が追い抜き、新型コロナ感染拡大の影響ががインバウンド産業から需要減に直面する製造業へと徐々に間口を広げつつあることが見て取れます。なお、この数字は、各地のハローワークで把握できたものだけで集計されていますので、実際にはこれ以上の解雇や雇い止めがあるものと思われます。

今日は、「日本経済の石垣(上)下請けと共存共栄 再構築宣言」と言う朝日新聞の記事を取り上げます。

大企業が社長名で約束する「パートナーシップ構築宣言」には、「不合理な原価低減要請は行いません。下請け事業者から協議の申し入れがあった場合には協議に応じ、下請け事業者の適正な利益を含むよう、十分に協議します」と書かれています。中小企業庁が6月から参加を呼びかけ、三菱電機アイシン精機など226社が名を連ねています。下請を虐めず、共存共栄を目指すと公約する仕組みを作ったのは、これまであまりにもひどい実態があったからです。一般的に仕事を発注する元請けの方が立場が強く、仕事をもらう下請けの方が弱い立場にあり、元請けから値引きやその他の行為を求められた場合断り切れないということになります。

「新型コロナの影響で、相当多くの企業が赤字となります。赤字になれば、下請けや取引先に支払う購買費を徹底的に削るし、コストアップを中小企業に押し付けると言うことが起こります。そうしたことが起こる前に、この宣言で防ぎたい。」これが、この宣言つくりに関わった日本商工会議所の三村明夫会長の思いです。日本商工会議所の会員124万社のうち約9割を占めるのは中小企業です。こうした中小企業が下請けをしたり物を納めたりして大企業を頂点とするサプライチェーン・日本経済を支えています。

この関係を城の石垣に例えたのは、嘗て日本商工会議所会長を務めた元新日鉄会長の永野重雄氏です。永野氏は著書の中で「重量、形状の変わった石を使ったればこそ強固な石垣となったわけで、大・中・小の石はそれぞれ相互に補完し合っている。日本経済が、世界経済至上驚異的な発展を遂げたのも、大企業から中小企業まで、相互に補完し合ってきたからだと言える」と書いています。

三村氏は、そんな石垣も「修復、再構築すべき時が来た」と言っています。「アベノミクスで円安になり内需も増えたのに、大企業と中小企業の利益率の格差が広がっている。大企業にとってもサプライチェーンという石垣が強くなければ、自らの強さも発揮できないはずだ」と、パートナーシップ構築宣言で、下請けだけに限らず多くの企業が開冷める先への価格引き上げ交渉がしやすくなることを期待しています。

大企業と中小企業との強固な関係が日本経済を支えてきたことは事実です。

しかし、伝説のアナリストと言われるデービッド・アトキンソンはその著書「国運の分岐点」の中で、「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いからだ」と言っています。アトキンソン氏の見解は、大企業は効率化やコスト削減の無理を弱い立場にある下請けに押し付け、下請けはブラック労働の無理をさらに弱い立場にある労働者に押し付ける日本の「非効率な産業構造」を批判しているのです。だからと言って生産性の低い中小零細企業を潰してしまえということではありません。こうした負の連鎖を断ち切るためには、下請け、下請けで働く労働者と言った弱い立場の地位を高めていくしかないのです。これまでのように「下」に押し付けるということは駄目だというわけです。この点は、パートナーシップ構築宣言に通ずるところがあります。パートナー構築宣言により下請けのような弱い立場の者が大企業と対等の立場で協議でき、共存共栄で日本経済を盛り立てて行けるなら、まだまだ日本経済が立ち直る余地はあります。まだ参加者は226社にすぎませんが、多くの大企業が参加し日本経済を支えていくことを期待します。