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「脱ハンコ・ペーパーレス化」加速の流れは本当に良いのか?

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で401人、そのうち東京108人、神奈川37人、千葉37人、埼玉35人、大阪39人、北海道22人、沖縄20人、熊本19人などとなっています。緩やかな減少傾向にあるものの、東京はじめ首都圏は下げ止まりし、北海道と沖縄が少し増えているように見えます。GoToトラベルの影響ではないかと懸念します。千葉の特別老人ホームや熊本のキャバクラでクラスターが発生しています。また、陸上自衛隊朝霞駐屯地での訓練に各地から参加した女性自衛官26人が感染したようですが、感染が発覚したのは訓練を終えて所属部隊に戻ってからというのです。各地方の所属部隊で感染が拡大しないことを願います。

アメリカでは、新型コロナで入院中のトランプ大統領がサプライズで支持者の前に現れるなどのパフォーマンスをして、自らの健康をアピールしていますが、中南部と西部を中心とする9州で先週1週間の新規感染者数が過去最多を更新しています。季節の変化による気温低下で屋内にいる時間が増えたことが原因と見られています。

感染症専門医の忽那賢志氏が「気温や湿度と新型コロナとの関係」という記事を投稿されています。これによりますと、インフルエンザなどの呼吸器系ウイルス感染症は季節性の変動があり、冬季の乾燥し寒い気候が、ウイルスの安定性と伝播性を高めるのと同時にヒトの免疫系を弱めるために、増加する傾向があるのです。新型コロナウイルスも風邪を引き起こすヒトコロナウイルスと同じコロナウイルスです。

日本国内の新型コロナと気温との関係を見た研究では、気温が低い地域ほど感染者数が多いという傾向が見られました。同じような研究は、ブラジル、アメリカ、中国でも行われており、そこでも「気温や湿度が低いほど患者数が増加する」という結論が出ているとのことです。

しかし、忽那氏はこうしたデータを分析しながら「冬は少なくとも夏よりは流行しやすい環境になるが、必ずしも気温や湿度が流行を規定するわけではない」と言います。つまり、気温や湿度は新型コロナの伝播に影響はあるもののその程度は低く、冬に流行するかどうかは私たちの感染対策の徹底具合によるというわけです。

先ほどのアメリ中南部や中部の感染者数の増加も、気温が影響したというより気温低下で屋内に集まることで「密」が発生したことによるものです。冬季になり屋内にいる機会や時間が増えますが、屋内でもマスクを着用する・手洗いする・換気をするなどの新しい生活様式を行い、密を避けることが何よりの感染防止対策になります。

河野行革相の鶴のひと声で、「脱ハンコ」が加速しています。各府省は個人や事業者から年間1万件以上の申請がある約820種類の手続きのうち、785種類について押印の廃止を検討しています。各都道府県、自治体でも同様の動きがみられます。

また、河野行革相はファックスの見直しも求めており、書類のやり取りをなくそうという考えです。

これまで、官僚は権益を守るためや前例踏襲主義により、複雑な手続きや押印を長年継続してきましたが、菅首相は「政府の政策に反対するなら移動してもらう」「部署を代わってもらう」と圧力をかけ官庁人事を掌握してきました。こうした人心掌握術はいかがなものかとは思います(民間企業でリーダーがとるべき行動ではありません)が、硬直化した官僚制度の下では効果を発揮しているように思います。

こうした「脱ハンコ」「ファックス廃止」は良い流れのようにも見えます。菅総理が「デジタル庁」を目玉政策に掲げ、マイナンバーカードの普及や行政手続きのオンライン化を進めようとしていることから、当然の流れと言えます。加藤官房長官は「国民のために働く内閣を掲げる中で具体的な実践をしている。国民の皆さんの利便性にもつながる」と言いますが、確かに役所に提出する書類に押印するという手間は減るものの、行政手続きのオンライン化は遅れており、これこそが急務です。定額給付金マイナンバーカードを利用したオンラインシステムが正常に作動せずトラブル続きであったことは記憶に新しいところです。GoToトラベルや地域共通クーポンでも、突貫工事的に制度が作られ、事務局も業者も混乱が続いたままでスタートしています。「脱ハンコ」「ファックス廃止」の前にオンライン化が急務ですが、急ぐあまり不十分なシステムが構築されることだけは避けてもらいたいものです。

また、重要なのは、「脱ハンコ」で押印をやめた場合に本人の意思確認をどうするかということです。やはり、「認印」はなくしても「実印」と「印鑑証明」は残すべきで、絶対に本人の意思確認が要請される書類には「実印」、「印鑑証明」は必要です。

またオンライン化を進めても、ネットに慣れない人・高齢者が多くいます。こうした人たちには窓口での手続きが必要です。何でもオンラインというわけにはいきません。

こうしたことは企業においても同様です。企業内部の書類については押印を廃止することはそれほど困難なことではありません。しかし、企業の発注書、納品書、契約書など取引先に送付したり取引先と取り交わしたりする外部書類については、取引先の契約方法に従う必要があって自社だけで廃止するわけにはいきません。これはペーパーレス化で電子契約、電子印鑑を利用する場合も同様です。これについては9月28日に書いていますので参考にしてください。

オンライン化、デジタル化には、これまでも繰り返し書いていますように情報管理・セキュリティ対策が最重要課題です。日本の情報管理・セキュリティ対策は極めて甘く、すぐにサイバーテロの餌食になります。オンライン化・デジタル化は急務ですが、情報管理・セキュリティ対策を疎かにしてはいけません。

また、すべてをオンライン化・デジタル化することは不可能ですし、そのようなことをすればインターネットを利用できない人に対するサービスの低下につながります。それは役所だけでなく民間企業でも同じです。インターネットを利用できない顧客を取り込むことが出来ません。必要なのは、ここでもバランスです。「ハンコが必要なもの」と「必要でないもの」、「オンライン化するもの」と「オンライン化しないもの」とに分けて対処することが重要です。