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成長戦略会議「実行計画」で示された「中小企業の構造改革」とは

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2518人、そのうち東京533人、神奈川197人、埼玉151人、千葉82人、愛知195人、大阪386人、兵庫182人、沖縄49人、北海道205人などとなっています。また、山梨(19人)、岐阜(42人)、奈良(39人)、広島(46人)、高知(15人)の5県で1日当たりの感染者数の過去最多を更新しました。重症者は497人出過去最多となり死者も36人出ています。

大阪では、新型コロナの重症者数が急増している状況を受け、府の独自基準「大阪モデル」で赤信号を点灯させ、「医療非常事態宣言」を出しました。重症病床の使用率が70%に迫り、医療がひっ迫していることから危機感を募らせ、「医療非常事態宣言」が発動され、15日までの不要不急の外出自粛営業時短の延長を求めたものですが、15日までという期間で十分かは、一人一人の行動にかかっています。また、北区と中央区の飲食店の時短営業要請の延長ですが、外出自粛要請で影響を受けるのは北区・中央区の飲食店だけではありません。実質的に他地域の飲食店も外出要請で開けていても客足はなく営業時短と同程度の影響を受けます。2区だけに協力金が支給されるというのでは分断・差別を助長するだけです。他の地域の飲食店への支援もしっかりとしてもらいたいものです。

新型コロナワクチンが開発され実用化に向かっていることは喜ばしいことです。既にイギリスとロシアでワクチン接種が開始されました。ワクチンの効果について3カ月程度しか持たないという研究結果もありますが、先日発表された横浜市立大学の研究グループによれば、「ワクチン接種の効果が少なくとも半年は続く」との研究結果が出たとのことです。

新型コロナは2度感染するという説もあります。すでに感染し抗体ができたと安心はできないというわけです。再感染の例は各国で報告されていて、2度目の感染では1度目よりは症状が重くなるケースもあるというのです。それでは、ワクチン接種で抗体ができてもその効果が時間とともに失われ、その後、万一新型コロナウイルスに感染すればワクチン接種をしない場合よりも症状が重くなるということにもなりそうです。

なぜ、再感染という事態が生じるのかは分かっていないようですが、感染しても十分に抗体を作ることが出来ない可能性が指摘されています。

また再感染して軽症や無症状のケースもあるので、再感染に気付かず他の人にうつすこともあるのです。

新型コロナウイルスは、まだまだ未知のウイルスです。日本医師会の中川会長が言うように、「このウイルスを甘く見てはいけない」のです。未だにGoToに躍起になっている政府はあてにできません。一人一人が緊張感・危機意識を持って3密を避け新たな生活様式を実践してこの難局を乗り切りましょう。

さて、今日は、12月1日の政府の成長戦略会議で公表された「実行計画」を取り上げます。

その目的は、「我が国の最大の課題である生産性向上に向けてあらゆる取り組みをするとともに、成果を働く人に分配することで働く国民の所得水準を持続的に向上させ、経済の好循環を実現すること」です。具体的には

  1. 2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略を盛り込み、今後革新的なイノベーションに取り組む民間企業に対し、国家的プロジェクトとして新たな技術開発を支援すること
  2. ポストコロナに向けた企業の改革の支援。事業再編を進める企業への支援の段階的強化。雇用の維持に取り組む一方で、新たな分野への労働移動を円滑化するため、いわゆるトライアル雇用の支援や在籍出向のルールの明確化。デジタル化に取り組むビジネスモデルの税制での支援。
  3. 中小企業の足腰を強くするための支援。中小企業の合併などの規模拡大に対する税制面での支援。中堅企業へ発展途上にある企業への補助金・金融支援。大企業と中小企業のパートナーシップの強化。

こうした中で、人への投資の強化も挙げられていて、「雇用の維持と労働移動の円滑化」のほか「テレワークの定着に向けた労働法制の解釈の明確化」「新しい働き方の実現」なども盛り込まれています。

これまでも成長戦略会議のメンバーに「生産性の低い中小企業の淘汰」を主張するアトキンソンが入っていることを批判的に書いてきましたが、この「実行計画」では、「中小企業政策が、小規模事業者の淘汰を目的とするものではないことは当然であり、ポストコロナを見据えて、中小企業の基盤を強化することで、中小企業から中堅企業に成長し、海外で競争できる企業を増やしていくことが重要」と書かれています。この点は大いに評価してよいところです。しかし、菅首相アトキンソンが主張する最低賃金の引き上げを強行すれば、低賃金労働で成り立っている中小企業は退出を余儀なくされ、その中には優良企業も含まれることになりかねません。中小企業だけでなく日本企業の生産性の低さは、大企業の問題です。大企業が中小・零細企業から搾取するという悪しき構造を改革しない限り日本企業の生産性は向上しません。その意味で大企業と中小企業のパートナーシップの強化がうたわれているのは良いと思います。しかし、問題は、具体的にどのような構造改革を行うかです。単に中小企業の構造改革だけを推し進めても何の役にも立ちません。行うべきは日本企業全体の構造改革です。

また、後継者不足・後継者不在で、生産性が高い優良な中小企業が廃業に追い込まれるというケースが見られます。これは日本経済にとって大きな損失です。

「実行計画」では、コロナ禍の影響を受けた中小企業の業態転換を通じて生産性・競争力を高めること、M&Aを通じて後継者問題を抱える中小企業を存続させ、さらに生産性を高めることを支援する方針が打ち出されています。具体的には、新たな補助金制度の整備、中小企業の再編を促す税制面の措置などです。事業承継のためのM&Aを積極的に実施し、生産性が高い優良な中小企業が存続できることは日本経済にとっては大きなプラスになります。しかし、補助金や税制面といった金銭的な支援だけでは不十分です。合併される側の労働者の雇用をどのように維持するかということも重要な課題です。

この「実行計画」に書かれていることは理念としては素晴らしいですが、問題はこの「実行計画」をどのように実行に移すのかといった各論です。これがしっかりと検討され具体化されなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。

地域経済や雇用を支える中小・零細企業が持続的に発展し成長していくために、政府としてはどのような支援策を行うのか、早急に示しても欲しいところです。