中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

「現場力」と「知識創造理論」

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1309人で、そのうち東京350人、神奈川133人、埼玉114人、千葉145人、愛知63人、大阪98人、兵庫46人、京都17人、福岡48人などとなっています。全国的には大幅に減少していますが、首都圏は下止まりしたような状況です。イギリス型の変異株ウイルスが埼玉、東京、京都、鹿児島、新潟、兵庫の6都道府県で計23件見つかり、京都と鹿児島では変異株の感染者が確認されたのは初めてです。変異株は感染力が強うということなので、今後変異株が蔓延して感染拡大につながらないことを祈ります。

今日から医療従事者を対象にワクチン接種が始まります。医療の最前線で新型コロナと戦ってくれている医療従事者に先行接種することは当然ですが、一部の医師には、ワクチン接種後の経過観察日誌をつけることが要請され、接種の安全性を調査するとのことで、高齢者への接種は医療従事者への2回目の接種が終わってからということです。これではまるで医師を対象にして副反応などを調べる人体実験です。医師の中にも急遽作製され簡単に特別承認されたワクチンに対し不安を抱いている方もいます。一部の医師からは、自分たちへの接種も治験の一部のように感じるという声が上がっています。

医療従事者の方々には感謝しかないです。われわれ一人ひとりが気を緩めることなく感染防止対策を行うことが、医療従事者の負担を軽減する最善の方法です。今しばらく頑張りましょう。

さて、今日は、東洋経済オンラインの「『まず現場』大企業ほど見逃す『経営の本質』『現場』が元気になれば、『企業』は必ず強くなる」を取り上げます。

新型コロナ禍で、経済だけでなく、日本人の価値観や考え方、働き方も大きく変化し、企業も大きく変貌を遂げようとしています。この時代、変革できなければ生き残ることも難しくなります。この記事は、経営コンサルタントの遠藤功氏と一橋大学名誉教授で経営学(経営戦略・組織論)が専門の野中郁次郎氏との対談です。その内容を要約して紹介します。

両氏は、いまの日本の企業は「大企業より中小企業が『現場力の宝』だと断言できる」と言っています。

1.「現場の知恵」を生かせば、企業はよみがえる。

 「詳細な分析を行い、いい戦略を策定すればいい会社になる」ということはありません。先ずは「現場」です。現場を元気にし、都的創造活動をボトムアップで実践すれば、会社は成長し、利益も上がるようになります。「現場を元気にし、そこで働く人たちの知恵を使い」ながら粘り強く実践すればいいのです。

2.中小企業は「現場力重視」が浸透しやすい。

 「こういう無駄をなくしたら、お金が浮く」「こういう工夫をしたら、仕事の効率が上がる」「こんなサービスをしたら、お客様が喜んでくれる」といった現場の声をたくさん集め、現場とともに1つ1つに取り組んでいけば、現場の人たちの目の色が変わり、どんどん現場が元気になっていきます。

 こうした「現場重視」の考え方については、大企業の方が動きは鈍く、中堅・中小企業の方が反応は早く、現場に浸透しやすいと言えます。

3.企業は「体格」より「体質」が重要

 中小企業に大企業のコンセプトとを持ち込んではいけません。逆に中小企業のコンセプトが大企業の役に立つことはります。

 中小企業が日本経済を支え、それこそ「知的創造」を日々行っています。

 「大企業が中小企業よりも上」という考えや雰囲気は間違っています。大きさという企業の「体格」は大事ですが、それよりも重要なのは「体質」です。「体格」がいくら立派でも「体質」が悪かったら、すぐに病気にかかってしまいます。

「体質のいい中小企業」は「体格だけの大企業」よりも上です。

 遠藤氏は、その「体質」を決めるのが「現場力」「知識創造」だと言っています。中堅・中小企業こそ、現場を重視するとともに、「知識創造理論」を学び、実践していく必要があるというのです。

この記事の内容は以上ですが、ここで「知識創造理論」について触れておきます。

「知識創造理論」は、野中郁次郎氏が提唱する理論で、意識的に知識を創り出す方法論のことです。

野中氏が知識創造理論を提唱した背景には「なぜ日本企業がこの20年間で急速に力を失っていったのか」という問題意識があります。そして、日本企業における卓越性やイノベーションのあり方を問い直し、日本企業の閉塞感を打破できるような21世紀に求められる経営の知のあり方と実践の中で理論化しようとしたのです(野中郁次郎・竹中弘高著「知的創造企業 新装版」東洋経済新報社

知的創造理論の特徴は、「人間中心の精神・価値観」に基づいた経営のあり方を前提に、実践という立場から理論を再構築しようとしています。企業内部の有形資源のみを資源とし、一企業の利益を最大化するために競争優位や利益追求に主眼を置いた従来の市場原理主義的な経営理論とは一線を画し、知識を資源として捉え重視する理論です。

知識には「暗黙知」と「形式知」があります。「暗黙知」は言語や文章で表現しにくい主観的・身体的な経験知で、個人に体化される認知スキルや身体スキルを含みます。これに対して、「形式知」は特定の文脈に依存しない一般的な言葉や論理で表現された概念知です。イノベーションのような「新たの知識の創造」においては、「まだ言葉にならない個人のアイデア」のような「暗黙知」をうまく育てて、誰でもが共有できる価値のある知識、「形式知」に変換するということが必要になります。簡単に言えば、これが知識創造です。

「知識創造の現場で起こっていること」はもっと複雑で説明しにくいのですが、繰り返しイノベーションを起こすには、その仕組みを理解することが重要なのです。知識創造理論では、暗黙知形式知の概念をうまく活用し、知識創造の仕組みを体系化しています。SECIモデルと言われています。

その流れは、次のようになります。

  1. 共同化(Socialization)・・・体験を共有し、暗黙知を伝える。
  2. 表出化(Externalization)・・・暗黙知を言葉に落とし込む。
  3. 連結化(Combination)・・・他の形式知を結合し、知識体系を創る。
  4. 内面化(Internalization)・・・個々の内面に次につながる暗黙知が育つ。

このSECIサイクルによって、知識創造はこの順番で、暗黙知形式知が相互作用しながら進むとされています。

この「知識創造企業」は1995年に英語で出版され、世界中にナレッジマネジメントブームを引き起こし、世界のビジネスの現場に大きな影響を与え、日本の多くの企業も知的創造を取り入れてきました。野中氏らは、大企業の経営を中心に研究されており、この知的創造理論も中小企業を念頭に置いた理論ではありません。

しかし、大企業に比して規模が小さく、現場力がすぐに上へと上がっていく中小企業の方が現場の暗黙知形式知に変換し、それを現場に浸透させていくということは容易なように思います。

遠藤氏が言うように、中堅・中小企業で「現場力」「知的創造」に取り組むことは、極めて有用であると思います。