日本企業だけテレワークで生産性が低下する理由
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で1128人で、そのうち東京290人、神奈川100人、埼玉106人、千葉82人、愛知39人、大阪103人、兵庫41人、京都9人、福岡34人、北海道63人などとなっています。東京は先週火曜日よりは60人増え、大阪は2週間ぶりに100人を超えるなど、下止まりからリバウンドに転じているようにも見えます。変異種は全国で380件報告されており、今後の広がりが懸念されます。変異株が確認された国は12か国あるのに、日本が入国制限を強化している国は17か国にすぎません。しっかりとした水際対策を取らない限り、変異種の流入・拡大を封じ込めることはできそうにありません。
また、医療関係者へのワクチン接種が行われていますが、約10万人で17件の副反応(アナフィラキシーショック)が報告されています。アメリカでは100万人に5件ということですから、日本の副反応の発生率は欧米に比べて高く、その要因等の分析が必要です。しかし、一方で、ノ―ベル医学・生理学賞を受賞した大村智氏が発見した物質を基に開発された「イベルメクチン」(寄生虫が引き起こし感染症の特効薬)が新型コロナウイルスを終息させる切り札になるかもしれないという嬉しいニュースも飛び込んできています。これが事実とすれば、もっと積極的に日本初のイベルメクチンの効能判定を行い、世界に先駆けて処方を確定し、コロナ治療・予防薬として使用を進めるべきではないでしょうか。
さて、今日は、現代ビジネスの「なぜ日本企業だけ『テレワークによって生産性が落ちる』のか?その根本的な理由」を取り上げます。
新型コロナの感染拡大に伴ってテレワークを導入した企業も少なくありませんが、欧米ではテレワークによって生産性が向上したという共通認識が出来上がっている中、日本ではその効果について疑問視する声も多いのです。
調査結果によれば、第1回目の緊急事態宣言時と第2回目の緊急事態宣言時とで、テレワークの実施率に大差はなく、第1回目の緊急事態宣言でテレワークを導入した企業はそのままテレワークを継続し、テレワークを導入しなかった企業は相変わらず出社勤務を続けているという状況が見えてきます。
こうした状況は、コロナ禍という時限的なものではなく、構造的・恒久的なものになる可能性が高いと思われます。今後、テレワークを継続実施する企業とそうでない企業とに二極化した場合、日本の経済界に大きな影響を及ぼすことにもなります。この記事では、その理由は、「テレワークへのシフトは、単にテレワークだけの問題にとどまらず、ビジネスのデジタル化(DX)とも密接に関係しているからだ」と言っています。
「テレワークで生産性が低下した」という人の割合は、欧米に比して日本では極端に高く、その理由として次のようなものが挙げられています。
- 対面での素早い情報交換ができない
- パソコン、通信回線などの設備が劣る
- ルール上、自宅からできない仕事がある
注目すべきは、インフラやルールの問題よりも、情報交換という業務プロセスや業務慣行に由来する理由がトップになっているということです。
テレワークによって素早い情報交換が妨げられる最大の理由は、日本の組織は基本的に責任の所在があいまいで、ビジネスプロセス全体が文書化・ルール化されていないからです。日本の企業社会には、業務をスタートさせるときに、事前に責任の所在を明確にし、文書化してプロセスを定めるということを嫌う風潮にあります。見切り発車でスタートし軌道修正し、トラブルが発生すれば場当たり的に処理をし、誰が責任を取るのかも曖昧で終わってしまいます。場当たり的な対処のために、ノウハウとして蓄積されることもなく、あとで同じトラブルが発生しても、再び場当たり的な処理を行うことになります。これでは生産性が向上するはずはありません。
これまでは、ルール化や文書化ができていなくても、皆が顔を合わせていれば何とか仕事はできていました。しかし、テレワークが進行し、デジタル化が進むとビジネスの多くがITインフラとセットになります。ITシステムに業務プロセスを移管する際には「阿吽」の呼吸は通用しません。誰に権限があり、どの業務はいつまでに誰が実施するのかが明確に定義されていなければ、ビジネスをシステム化することはできません。
日本企業は他国に比べビジネスのデジタル化が遅れていると言われますが、この記事では、「その理由はIT技術の問題ではなく、ビジネスの文書化が遅れていたことにある」と言っています。テレワークが十分な効果を上げられていないのは、文書化やルール化といったビジネスプロセスの問題だということです。
コロナ終息後は、今までのペースをはるかに超える水準でビジネスのデジタル化が進むと予想されます。ビジネスのデジタル化が進まなければ日本企業はグローバルな社会で生き残りをかけた闘いに勝利することはできません。しかも、デジタル化の動きは不可逆的なもので、デジタル化できた企業とそうでない企業には構造的かつ致命的な格差が生じます。
ビジネスプロセスを文書化したりルール化するにはかなりの時間と労力がかかります。しかし面倒な作業だからといって避けて通ることはできません。地道に行っていくしかありません。
続いて、ビジネス+ITの「一橋大 楠木建教授に聞く『事業戦略』、なぜDXやSDGsが余計なことになり得るのか」という記事の中からDXに関する部分を取り上げます。
楠木教授は、「デジタル技術で物事を効率化すること自体はいいに決まっている(中略)ただし、DXはどこまで行っても『手段』でしかない。その手段によって『何を達成しようとしているのか』『その目的に対して、DXという手段が有効なのかどうか』は、個別の記号の商売の文脈の中で初めて決まってくるものです(中略)『DXに乗り遅れるな』はその通りなんだけれども『具体的に何をどうするのか?』が大切です」と言っています。
全くその通りです。以前にも書きましたが、手段と目的を混同しているきらいがあります。DXにも所詮は目的ではなく手段です。「流行り」だからといって今すぐにデジタル化・DXに飛び乗る必要はありません。「具体的に何がしたいのか」という目的が先です。自社の目的達成にデジタル化・DXが有効なら導入すればいいですし、今すぐに導入する必要がなければ事故を待てばいいのです。その間に、ビジネスプロセスの文書化やルール化を行っておけばいいのです。