中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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永守重信氏の言葉

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で113人で、26県で感染者ゼロとなっています。欧州や韓国で感染再拡大が広がる中、日本だけが感染拡大を押さえ込んでいます。日本では衛生環境が良く国民の意識が高く真面目に感染対策を行っているからでしょう(政府の感染対策が優れているからではありません)。日本生命保険の調査で、飲みながら親睦を深める「飲み二ケーション」を「不要」という回答が6割を超え、初めて「必要」と回答した割合を上回ったとのことです。新型コロナ禍で人々の意識が変化したことの表れであると思われます。これまでも書いていますが、仕事だけでなく、人間関係においてコミュニケーションは重要な意味を持っています。これまでは「飲みニケ―ション」はコミュニケーションの一つの形として企業内でも重要の位置づけがなされ奨励されていました。一方で、部下への説教や強制参加、飲みたくない・飲めない者への強制などといったハラスメントがあったことも否定できません。コロナ禍で、コミュニケーションが大幅に減っており、個人のモチベーション、エンゲージメントの低下に繋がり、組織の生産性にも大きな影響を与えています。今後は、企業においても、お酒に頼らない親睦やコミュニケーションのあり方を考えていく必要があります。

さて、今日は、東洋経済オンラインの「永守重信『人の心をつかんでこそリーダーだ』」という記事を取り上げます。

永守氏は日本電産の創業者で、現日本電産会長です。永守氏が日本電産を創業したのは、1973年自宅の6畳間でわずか3人の従業員を前に、「兆円企業を目指す」「精密小型モーターの分野で世界一になる」と宣言し、それから半世紀で、今や世界に300を超えるグループ企業を擁し、従業員11万人を抱える「世界一の総合モーターメーカー」に成長させました。先日も「SF 思考」で書きましたが、永守氏は「10億円企業になる」という目標を掲げる際に「やがて自家用ドローンが普及し、ロボットの数が人口を超える」「これによって精密小型モーターの受注が大幅に増える」という未来像を語ります。「SF思考」で書いたように、永守氏の話にはストーリーがあり、聞く人が「ワクワクして面白く、やってやろう」とやる気にさせてくれます。

この記事では、永守氏が語る「最高の自分をつかむ」ための生き方、「悔いのない人生を歩む」ための知恵が語られています。永守氏の言葉は経営者だけでなくすべてのビジネスパートンにとって役に立つと思います。

1.困難は「解決策」を連れてやってくる

 永守氏は「人生とは、苦楽が交互に織りなす『サインカーブ』である。どんな人生でも良いことと悪いことは50対50になっており、多くの苦しみを経験したあとには、必ず大きな喜びがやってくる」と言います。

 だからこそ、困難や逆境の中にいるときこそが、飛躍のチャンスであり、ここから逃げずに乗り越えたときに大きな喜びが待っているのです。「困難は必ず解決策を連れてやってくる」から、逃げずにその困難にしっかりと向き合い、解決策をつかみとることが大切なのです。

2.心の機微をつかむ

 会社や職場でも、上司が部下の心の機微をつかんでいれば、部下は楽に働け、のびのびと力を発揮できます。

 永守氏は「心の機微をつかむとは、厳しさと優しさを時と場合に応じてバランス良く発揮していくこと」と言います。

 以前から、部下の育成方法で「認めて、任せて、褒める」と言っていますが、当然部下がミスをすれば「叱る」ことも必要です。叱ったあとには必ずフォローすることを忘れてはいけません。永守氏も「叱るべきときには徹底的に叱るが、そのぶんの心配りを忘れないこと」と言っています。

 「とくに昨今の若者に対し、ただ激しく叱るだけでは逆効果」と言い、「最初は『褒める』を大きく『叱る』を小さくから入っていきながら、『叱る』をだんだんと大きくしていく。『褒める』と『叱る』をバランス良く織り交ぜていく『ハイブリッド式叱責方』が必要である」と言っています。全くその通りですが、ここでも重要なことは、お互いの信頼関係の構築で、そのためにコミュニケーションが重要だということです。

3.リーダーに求められる力

 永守氏は、「リーダーに求められる力として最も重要なのが『訴える力』である」と言っています。

 リーダーは、理念、ビジョン、自分の情熱、夢などを、聞く者の心にしみこませ、魂を揺さぶるまで、何度も語り続けなければなりません。永守氏は、これを「千回言行」と言います。人は目で見たり、耳で聞いたりだけでは動きません。自らの意思で行動するためには、その理由がしっかりと腑に落ちていなければならないのです。つまり「腹落ち」していることです。千人全員に理解させるためには千回同じことを言わなければならないのです。

4.時代の流れを見据えて常に変化し続ける

 セオドア・レビットの「マーケティング近視眼」を紹介したときに書きましたが、成長産業というものは存在しません。成長のチャンスを創出し、それに投資できるように組織を整え、適切に経営できる企業だけが成長できるのです。何の努力もなく、自動的に上昇していくエスカレーターに乗っていると思っている企業は、必ず下降期に突入します。永守氏も「どんなに隆盛を極めた事業でもピークアウトは必ず訪れる。したがって中長期的な視点に立って次の一手を打つことが何よりも大事だ」と言います。

 物事には、変えていいものと変えてはいけないものとがあります。変えてはいけないものは、理念、社是、あるいは会社の基本精神です。要は企業の根っこにあるもの、存在意義です。

 時代の変化につれて、根っこ以外の枝葉の部分については、どんどん変えていかなければ時代の流れに乗り遅れてしまいます。

 例えば、かつては「人の倍働く」というのが当たり前の時代でした。「長時間労働」こそが「ハードワーキング」の定義でした。

 しかし、今はハードワーキングの定義も変わってきています。肝心なのは、競争相手に勝てる仕事をしたかどうか、時間ではなく仕事の質が重要なのです。結果がすべてなのです。肉体ではなく頭脳をフル活用する「知的ハードワーキング」が求められているのです。

 企業変革については、ジョン・P・コッターの「企業変革の落とし穴」で紹介した企業変革の8段階が参考になります。

  1. 変革が緊急課題であるという認識の徹底
  2. 強力な推進チームの結成
  3. ビジョンの策定
  4. ビジョンの伝達
  5. 社員のビジョン実現へのサポート
  6. 短期的成果を上げるための計画策定・実行
  7. 改善成果の定着とさらなる変革に実現
  8. 新しいアプローチを根付かせる

5.人材の育成

 永守氏は、人材の育成について、「自ら考えて行動する」型にはまらない「とんがり人材」が求められると言います。そして、若い人に向けて「一番になれるものを見つけて欲しい。それが見つかれば自信を持って人生を歩んでいけるはずだ。そして『大ボラ』を吹いて欲しい。旗を掲げて夢を叫ぶからこそ、『成し遂げる力』を発揮することが出来る」と言っています。

 「S F思考』でも書きましたが、重要なのは「何がしたいのか」ということです。いまは、誰も先が見通せず、何が正解か分からない時代です。だからこそ自分が「何がやりたいのか」という意思がなければ、前に進むことは出来ません。

 永守氏も目標を語るときにあわせて未来像を語ります。

 未来像がポジティブであればあるほど、共感する人が増え、それによって実現の可能性も高まります。先行きが分からない時代なので、未来像なんてどのようにでも描けます。それを腹落ちできるストーリーにまとめ上げ、意味づけできるか、つまりそのストーリーを聞いた人が納得して共感できるかのかかっているのです。