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心理的資本

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4万2538人で、東京では全週同曜日から1550人増加し、46都道府県で前週を上回っています。先週より減ったのは茨城1県のみです。何ら行動制限のないGWなので当然予想されたところです。経済を回すためにGW中の行動制限を行なわなかったのは間違いではなかったと思いますが、次はどのような状況になればブレーキを掛けて、どのような制限を課すかということです。この点を明確にしておかなければなりません。この2年以上に及ぶコロナ禍で、明確な基準を設けて適切に対処したことはありません。そろそろ学習してください。

さて、今日は、otona×answerの「“クソどうでもいい仕事”の増加も一因?日本の企業で『心理的資本』が低下している3つの理由」という記事を取り上げます。

心理的資本」という言葉が注目を集めていますが、立教大学中原淳教授によれば、「心理的資本』とは、端的に言えば、『人がいかに希望や目標を持ちつつ、物事に挑戦し、出来事を意味づけ、逆境をはねのけてでも、前に進むことができるか』という『人の心の状態』のこと」です。「資本」と言われているように、これが原資となって、その上に、さまざまな成功や幸福が築かれていくのです。

この「心理的資本」には、①ホープ(hope:希望)エフィカシー(efficacy:自信・効力感)レジリエンス(resilience:回復力)オプティミズム(optimism:楽観)の4つの因子があるとされています。これらの4つの因子が相互に影響し合って生まれてくるものです。

1.今、なぜ「心理的資本」が注目されるのか

 組織で成果を出すためには、メンバーが言いたいことを言えて、恐れることなく新しい挑戦ができることが必要不可欠です。心理的安定性のある職場が求められています。そのためには心理的資本が重要になってきます。しかし、元来、日本の雇用制度や処遇システムは、そこで働く人たちの心理的資本を毀損しないようにできています。日本では終身雇用が前提で、欧米のようにダメなら契約満了で打ちきりか解雇になるという仕組みではありません。余程のことがない限り、クビになることはなく安心して働けるのが日本の雇用システムです。社内で激しい競争があるわけでもなく、重い責任を負わされるわけでもなく、給与も評価もそれなりで、大きな失敗さえしなければ、順調に階段を上っていくことができます。欧米のように「他人を蹴落としてでも」ということはなく、精神的にも疲弊することは少ないはずです。

 それにもかかわらず、今、「心理的資本」が注目を集めるのは、これまでの終身雇用を前提とした日本型の働き方から、ジョブ型雇用へと働き方改革が行なわれているということだけではありません。これまでは、日本企業で配慮されていた「心理的資本」が低下してきているのです。

2.心理的資本が低下する原因

 先ほど述べた心理的資本の4つの因子、①希望 ②自信 ③回復力 ④楽観が失われていく新しい原因があるのです。

 一つは「勉強不足」です。インターネットやITの普及により高度化・専門化したスキルや知識が必要になっています。こうした新しいスキルや知識について行けない人は、自信が持てず、楽観もできません。現状維持を志向し、何か新しいことをやってみようとしませんから、自分のキャリヤに希望も持てません。いわゆる「働かないおじさん」です。このような人が増えると組織に心理的資本が蓄積されません。

 「働かないおじさん」問題は、本人や企業の問題と短絡的に割り切るのではなく、本人・企業・社会(国も含め)が抱える複雑な問題で、最適解を求めて相互に協力しつつ解決を図らなければなりません。今企業を支え、これから定年を迎えるミドルシニアを含めた日本人全体が、より長く生き生きと活躍できる環境の構築が必要不可欠です。

 また、「自由の不足」というものがあります。コンプライアンスという大義名分によって社内手続きやチェック・報告に関する業務が、働く人の時間と意欲を奪います。

 ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)が増えているのも事実です。誰のために、何のためにやっているのか分からないような仕事では、希望も自信も持てるはずがありません。確かに、どんなに意味のない仕事のように見えても、会社にとっては意味があるのですが、本人に意味づけができていないのです。こうした仕事をこなさなければ、企業も社会も回っていきません。

 会社(上司)も本人の希望と違う地味な目立たない仕事や作業を振り分けなければなりません。目の前の仕事と本人のやりたいこととをどう結びつけるのかというマネジメントが重要です。地道で意味がないように見える仕事が、どのように会社の目標や成果に繋がるのか、本人のやりたいこととどのように結びつくのかを丁寧に説明することで、意味づけができ腹落ちすれば、やる気が生まれ、自分の意志で積極的に行動するようになります。そうすれば心理的資本は蓄積されていくのです。

日本企業は、これまで雇用慣例として、心理的資本、つまり労働者の心の状態を大切にしてきました。欧米のように労働者が資本家や経営者のツール、使い捨ての存在ではありません。心理的資本は日本企業の強みです。今一度、心理的資本の重要性に目を向けてみるときです。欧米型の雇用システムが絶対的に良いわけではありません。日本型の良さを残しつつ、欧米型の良さを取り入れることです。