中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

不況時に変われる会社

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おはようございます。

全国の商店主やタクシー運転手らの「街角の景況感」が14.5ポイント低下しました。新型コロナウイルス感染拡大の悪影響が鮮明に表れ、これは東日本大震災以来の低水準です。特に外食業・観光業が落ち込んでいます。また、内閣府は、発表するGDP(10月~12月)を前期より年換算で7.1%減に下方修正しました(2/17の発表では6.3%減)。マイナス成長なので「景気後退」というべきですが、内閣は「緩やかに回復」というおかしな論理を使っています。このまま経済活動の抑制が続けば雇用や賃金に悪影響が及び、一時的な景気後退では済まなくなります。安倍総理は後手後手に回った感染対策の失敗を隠そうと躍起になって感染拡大防止策を繰り出していますが、経済活動・景気対策とのバランスをいかにとるかということが大切です。自粛要請に偏り景気対策・経済活動に関する目配りが不十分なように思います。このまま進みオリンピック中止という事態になれば「令和恐慌」は避けられません。またオリンピックが開催されても必ずオリンピック後に不況が訪れます。

今日は、ダイアモンド・オンラインの「不況でも成長!『変われる企業』に共通する5つの特徴」を取り上げます。

世界で最も革新的な企業100社のうち、アメリカ企業が51社、日本企業と中国企業がそれぞれ7社となっています。そのうちの日本企業は、ファーストリテイリングユニクロ)32位、キーエンス38位、オリエンタルランド40位、ヤフー69位、日本電産80位、ファナック81位、資生堂87位です。

これらの顔ぶれを見ると多くが創業者主導・トップダウンの会社です。

本記事は、「これ以外にも、リクルートコマツなどエクセントかつイノベーティブは企業は多数存在するとして、仮に景気が後退局面の入り口だとしても、それを打破するために学ぶべき先例や好例は枚挙にいとまがない。経営努力と実現によっていくらでも状況は改善できる」としています。そして「変われる会社」の特徴として

  1. オーナーまたは強いトップレッドの会社
  2. 外国資本の多い会社
  3. 事業の海外依存度の高い会社
  4. 傍流出身または外部招聘の会社
  5. 倒産寸前または倒産経験のある会社

を挙げ、「共通するのはいずれも変化への圧力が非常に強い」という点だとしています。これについては、若干疑問があります。今回のコロナショックで海外依存度の高い会社が痛手を被っています。倒産寸前の会社は今回のような事態には持ちこたえられません。また、トップダウン型経営の問題点については以前(2/14)に書きました。

「変化への圧力をどれだけ自助努力によって高め、変化に対して待ったをかけずに実行し、乗り越えていくかということこそが、今のトップに求められる経営手腕だ」という点については、今回の緊急事態への対処にはその通りかもしれません。しかし、小泉政権時にトップダウン型で失敗してきた歴史もあります。2月14日にも書きましたが、トップダウン型にもボトムアップ型にもメリット・デメリットがあり、どちらが良いとは言い切れません。

イノベーションという観点から考えてもトップダウンが必ずしも良いとは思いません。ボトムアップによって引き起こされるイノベーションもあるはずです。意思決定したい内容や業務によってどちらが良いか、自社にとってどちらが適しているかを見極めることです。

ただ、今回の緊急事態において企業の存続・成長を果たすために変わらなければならないことは事実です。今できることをやることです。管理体制を見直し無駄を省くことです。海外依存が高くてその影響をもろに受けたのなら海外依存度を低下させ国内依存度を高める、飲食ならば宅配・デリバリー・テイクアウトへの業態開発を行うなど新たな取り組みを行うにも良い時期です。今一度、原材料費、人件費などの経費をしっかりと見直し管理して、高収入体質を築き上げることです。顧客が減り時間がある今だからこそ考えることができます。

新型コロナウイルスはいずれは下火になります。今はピンチかもしれませんが、コロナショックが終息した時に他に先んじていち早くチャンスに変えるために今という時間にできることを取り組んでください。それまでは耐えるしかありません。頑張ってください。

 

自粛ムードが悪影響

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おはようございます。

新型コロナウイルス関連以外のニュースをとりあげようと思いましたが、大したニュースはありません。今日も新型コロナ関連です。

政府は、7日、感染拡大で売上が急減した個人事業主を含む中小・小規模事業者支援のための特別貸付を創設したと発表しました。日本政策金融公庫などを通じて、「実質無利子・無担保の融資」を行うということで「雇用の維持と事業の継続に全力を挙げる」と言っていますが、残された時間はありません。早急に中小企業支援のための融資を行わないと倒産に至る企業が続出します。でも、政府が中小企業・小規模事業者の支援に目を向けてくれたことは朗報です。前回の第一弾の中小企業特別融資は、「有利子」でしたから今回は「無利子」と一歩踏み込んだものになっています。

全国的な自粛ムードで、観光客向けの事業者のみならず、飲食業・サービス業など業種に関わらず、あらゆる業種で顧客が激減し売上が減少、自主休業に追い込まれる店舗・事業者が出てきています。また、感染者が出た事業者の名前を公表することで、人々がその地域に近づかなくなりその近辺の事業者・店舗にも影響が出ています。スポーツジムでの感染が公表されたことから、ジムの解約が相次いでいてジム業界が悲鳴を上げています。行き過ぎた自粛ムードは日本経済にかえって悪影響を与えます。この自粛ムードは国民にも多大なストレスを与えます。政府はきちっとした正確な情報を公開し、行ってはいけない危険な場所とそうではない場所を明確にすべきです。専門家会議は、「できるだけ行かない方がいい場所」について「10代、20代、30代の皆さん。・・・皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、多くの人の重症化を食い止め、命を救えます」と呼びかけを行いました。挙げられた例として、「ライブハウス」「スポーツジム」「ビュッフェスタイルの会食」「雀荘」「スキーのゲストハウス」「密閉された仮設テント」などでしたが、これらは実際に感染が確認された場所です。そのほかには「カラオケボックス」「クラブ」「立食パーティー」「自宅での大人数の飲み会」などを挙げ「規模の大小を問わず、風通しの悪い空間で人と人とが至近距離で会話する場所やイベントはできるだけ行かないように」呼びかけています。ここに挙げられた例だけでは不十分です。感染者がパチンコ店に立ち寄ったと公表されましたが、密接した状況でパチンコを打つのにパチンコ店は「行ってはならない場所」に挙げられていません。パチンコ業界が政治家に多額の寄付行為を行っているからかと勘繰りたくもなります。パチンコ店も密着接触のある場所でしょう。散歩やジョギング、美術館鑑賞などは低リスクとされています。でも、今多くの美術館・博物館などは閉館されています。問題はクラスター感染を止めることです。クラスター感染を防止する対策が重要です。そして上記のような「行ってはいけない危険な場所」とされている事業者には積極的な支援が必要です。事業の存続を図るためにあえて営業を行っている業者もあります。その結果新たなクラスター感染が発生しては大ごとです。営業を継続するならしっかりした感染防止対策が行われるように指導すべきです。

無軌道な自粛要請は経済を委縮させ、今後の日本経済に大きな打撃を与えます。無軌道な自粛によって経済が委縮して疲弊すれば、かえって中小企業の首を絞めることになりかねません。今必要なのは本当に自粛が必要なのかどうかを見極め、仮に自粛するとしてもその範囲・程度を明確にすることです。そして自粛せずに営業する場合にはしっかりと感染防止対策をとることです。

 

 

 

 

 

 

休日の本棚 感染列島

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宇治 平等院鳳凰堂

おはようございます。

かつて2009年に「感染列島」という映画がありました。この作品は小学館eコミックで柿崎正澄氏によって漫画化され、小学館から涌井学氏によって小説化されました。

日本において新型ウイルスが蔓延した場合にどのような事態になるかを描いたSFサスペンスです。ネタバレ覚悟であらすじを書きます。

ある日救急救命士の松岡(妻夫木聡)の元にインフルエンザと思われる患者が運ばれてきます。松岡は薬を渡して帰宅させますが、翌日も同じ患者が運ばれてきます。しかも昨日と症状が異なり、あらゆる処置も効果なく、患者は口や鼻から血を流して死亡します。同時に搬送された患者の妻真鍋だけは助かります。これは新型インフルエンザではないかと疑われますが、感染は猛スピードで広まります。新型インフルエンザの感染拡大を防止すべくWHOから小林(檀れい)が派遣されます。小林は松岡の元恋人です。小林は「この感染症が国内に広まれば3か月以内に交通網・都市機能が麻痺し6か月後には感染者が数千万人になる」と予測し医療チームは懸命に対処しますが、感染を食い止めることはできません。ついに医療スタッフにまで広がりますが、潜伏期間がないことと発症から死までの期間が短いことから、松岡と小林はこれは「新型インフルエンザ」ではなく謎の感染症ではないかとの仮説を立て「パンデミック」と名付けます。感染者数は拡大し全国で数千万人にも及び死者数も増えていきます。松岡はウィルスの正体を突き止めるべくウィルス研究者の鈴木に検体を渡し、鳥インフルエンザの権威仁志と共にウイルス発症の地を探します。第一感染者の真鍋の父は海外で活躍する医師で現在失踪中、帰国時に体調が悪かったことが分かります。松岡と仁志は真鍋が赴任していた地を訪れると同じような症状の患者がいて発症地が判明し、さらに感染源が同地の洞窟内のコウモリであることを突き止めます。鈴木も病原体の解明に成功し、ワクチンの作成に取り掛かりますが、ワクチン完成までに半年が必要、それまで生き延びられるかがカギとなります。小林は松岡に血清を輸血する方法を教えて旅立ちます。しかし、小林も感染します。また、養鶏場の娘夏緒が感染し、松岡は第一感染者から採取した血清を小林に教えてもらったとおりに注射し、夏緒は奇跡的に回復します。血清が効果をもたらしたことを確証した松岡は血清を持って小林のもとを訪ねますが、小林はすでに命を落としていました。半年経過してようやくワクチンが完成し、パンデミックは沈静化に向かいます。

まるで、今回の新型コロナウイルスを予想・予言していたような内容ですが、エボラウイルスが流行していた時期の作品です。この作品はネットでも話題となっていますが、この作品で描かれている政府機関の様子が抽象的でリアル感・危機感に欠けるという点でまさに今回の新型コロナウイルスで後手後手に回っている政府の対応に酷似しているからです。また、この作品の中で市民が食品を買い漁るシーンがありますが、今回のマスク不足・トイレットペーパー買い漁りを彷彿させます。

さて、この作品で感染源はコウモリとされています。新型コロナウィルスの感染源も武漢市の市場(武漢華南海鮮卸売市場)で売られていたコウモリ、ネズミ、アライグマ(食用にするようです)などの野生動物だと中国政府は発表しています。しかし、中国の大学教授が武漢市内のウイルス研究所からウイルスが流出した可能性を指摘するレポートをネット上に発表しました。中国政府は即座のそれを削除し、この大学教授は現在行方不明ということです。ここでも中国の隠ぺい体質があらわになっていますが、新型コロナウイルスの原因が何なのか明らかになる日は来るのでしょうか?

こうした中国政府の情報開示に対する不信感から、ネットで新型コロナウイルス生物兵器ではないかとの陰謀説が拡散しています。中国の生物兵器という説だけでなく米国の生物兵器だという説もあるようです。こうした生物兵器陰謀論は科学的根拠がないと多くの専門家から指摘されていますが、政治家やメディアがこの生物兵器陰謀論を面白おかしく取り上げるので拡散がとまりません。

ただ、生物兵器である新型コロナウイルスを意図的にばらまいたという説は論外ですが、生物兵器新型コロナウイルスが何らかの理由で流出した可能性は否定できないように思います。武漢市には国立ウイルス研究所・武漢生物安全実験室がありウイルスの研究が行われていることが知られています。2012年のSARSの感染源については北京にある国立ウイルス研究所であったことがWHO(世界保健機構)によって明らかにされています。今回の新型コロナウイルスもSARSの時と同じように中国の国立ウイルス研究所が発生源ではないとは言い切れないように思います。WHOによる調査と中国政府の情報公開がなされ真相が明らかになることを期待します。

テレビで「感染列島」が放送されないでしょうかねえ。政治家や厚労省の官僚にこそ見てもらいたいものです。

 

 

休日の本棚 本当に使える経営戦略 使えない経営戦略

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おはようございます。

今日は、経営に関する本を取り上げます。若干古い本ですが、いまでも役に立ちます。山田修著「本当に使える戦略 使えない戦略」(ぱる出版)です。「久々に面白いビジネス書を読んだ」「絶対おすすめ」「これまでの常識が一変した」などとの反響を呼んだ名著です。著者の山田氏は外資4社、日本企業2社の社長を務め「企業再生経営者」と評された人物です。机上で経営学を研究してきたのではなく実践で鍛え上げられた見識は素晴らしいものがあり、実際の経営に役立つと思います。

山田氏によれば、経営セロリーには流行りがあり、流行って人気のあるセオリーでもすべてが正しいわけではありません。どこかに偏りがないか、実際のビジネスにそぐわないところはないか、そんなところに気をつけながら理解しながら学ばなければならないのです。

使える戦略として挙げられるのが、「バーニーの経営資源論」「ストーリーとしての競争戦略」「ランチェスター戦略」です。

「バーニーの経営資源論(RBV)」は、新しい経営資源の獲得や追加がその企業に次の段階の発展をもたらすという構造があります。その判断に使われるのが「VRIOフレームワーク」です。

V=Value (経済価値)、R=Rarity(希少性)、I=Inimitability(模倣困難性)、O=Organization(組織)の4つの条件で判断します。本書ではユニクロの成功とコダックの倒産が例として挙げられ説明されています。「ストーリーとしての競争戦略」は以前から紹介しています楠木建氏の本を基にしたコンセプト経営です。ここでは星野リゾートが例として挙げられています。「ランチェスター戦略」はランチェスターの法則を応用したもので、弱者の戦略と強者の戦略があります。弱者の法則では、弱者は強者の手薄な地域や市場セグメントにマーケティング手段を集中したり差別化を徹底司教者との直接対決を避け、強者の法則では、強者は全国地域や全セグメントで戦い物量にものを言わせた広域戦で戦います。これは田岡信夫氏が唱えた和製戦略です。

使えない戦略として挙げられているのが「エクセレント・カンパニー」「コア・コンピタンス」「ビジョナリー・カンパニー」「ブルー・オーシャン」「ゲーム・セオリー」です。この中で「エクセレント・カンパニー」と「ビジョナリー・カンパニー」は実際に成功している企業を抽出して、共通的な経営行動を観察することで有効な戦略を読み取ろうとするものです。これらの企業が長期的に反映していたかというとそうではなくこれらの本に挙げられていた企業の中には既に姿を消しているものも多数あるのです。成長し反映している企業をまねるということは別段悪いことではありません。真似ることで成長できる面もあります。問題はこれらの本が「良い経営をするために重要な経営行動はこれだ」と決めつけてしまったことです。「コア・コンピタンス経営」にしても「ブルー・オーシャン戦略」にしても、それ自体が間違っているわけではありませんし、全く使えない役に立たない戦略かというとそうではありません。私自身の考えは山田氏とは若干異なります。これらも使い方によっては十分に役立ちます。「中長期的に戦っていける中核的能力(コア・コンピタン)を養え」とか「競争という殺戮が絶えないレッド・オーシャンにとどまっていないで、真っ青な美しいブルーオーシャンに出よ」という表面だけをとらえるところに問題があります。自社が「コア・コンピタンス経営」や「ブルー・オーシャン戦略」に向いているか個々的に判断しなければいけないのです。すべてのセオリーが自社に向いているということはありません。戦略やセオリーに向き不向きがあります。ある企業には使えない戦略も別の企業では使える戦略になりえます。

また、使えるとしても限定的な戦略として「ポーターの競争戦略」「クリステンセンの破壊的技術」「ウェルチ選択と集中」が挙げられています。「ポーターの競争戦略」については以前触れましたが、ポーターの競争戦略は競争要因を分析し、競争上有利なポジショニングを見つけることに主眼が置かれています。ファイブ・フォース分析などフレームワーク化されモデル化されているために使い方自体が限定的になります。しかし、すべての戦略理論は限定的です。「クリステンセンの破壊的技術」も「イノベーションのジレンマ」に触れた際に説明しました。これも限定的なのは当然です。ウェルチ氏ですが、3月1日に亡くなり3月3日に「20世紀最高の経営者」と題してウェルチ氏の考え方には触れました。「ナンバーワン、ナンバー2戦略」や手掛ける事業領域を極端に絞り込む戦略は当時のGEには有効でしたが、それがすべての企業に有効かというとそうではありません。

どのような戦略もすべての企業に有効というものはなく、自社の適した戦略をとるしかないのです。

本当に使える戦略か使えない戦略かは一概には言えないのです。企業や業界によって異なります。自社にとってどのような戦略が適しているか、向いているか、役立つかを知るためにもいろいろな戦略に目を向けておく必要があります。そのために本書は参考になるでしょう。

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新型コロナ さらなる打撃

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おはようございます。

今日も、またまた新型コロナウィルス関連です。すみません。

安倍首相は、新型コロナウィルス感染症対策の一環として中国と韓国からの入国者を制限する新たな措置を発表しました。主な内容は、①中国・韓国からの入国者を2週間待機②中国・韓国向けのビザを無効に③中国・韓国からの航空機の到着を成田・関空に限定などです。この措置に対して各社新聞は、「対中ジレンマ 対策後手」「自民からも初動失敗との声」などと批判的です。1か月前にこのような措置をとっていれば、ここまでの感染拡大は阻止できたでしょう。「今更感」が強いです。今広がっているのは、中国・韓国の入国者からの直接の感染ではありません。感染経路がはっきりしない市中感染・クラスター感染が広まっています。今更入国を制限しても遅きに失したと言わざるを得ません。今取り組むべきは、国内の市中感染・クラスター感染をいかに食い止めるべきかという対策です。これに関してはインフル特措法の改正に手を付け始めましたが、昨日書いたとおりこれも遅いです。また、緊急事態宣言を発動するような事態になれば、日本経済は壊滅的な打撃を被ります。安倍首相が、権力に物言わせ恣意的な運用を行わないことを望みます。

またマスクの転売禁止も決定しました。これに違反した場合には5年以下の懲役または300万円以下の罰金になります。これはネットでのマスクの高額転売が原因です。しかし転売を禁止する必要があるでしょうか。適正価格で転売されるなら買い占められたマスクが市中に出回りマスク不足が少しは解消されるのではないかと思います。禁止すべきは暴利を得ようと目論む高額転売です。

この点、台湾のコロナ対策、特にマスク管理が注目を集めています。マスクは政府が管理し、天才プログラマーの閣僚がITを駆使しマスクの販売店舗がネットの地図上に表示され在庫数なども確認できて購入には実名制がとられているのです。そのためにマスク不足はありません。今頃になって、マスクの転売禁止を打ち出す安倍首相とは大違いです。

さて、中国・韓国からの入国者の制限は、日本経済に更なる打撃を与えます。新型コロナウィルス騒動は、これまでも観光業や小売業に大きな影響を与えています。さらに今回の入国制限は、それに追い打ちを掛けます。2019年に日本を訪れた海外からの旅行者のうち47.6%が中国・韓国からの旅行者です。訪日客の消費額約4兆8000億円のうち中韓は2兆2000億円で45.5%を占めます。今回の入国制限の強化で中韓からの訪日客が途絶えればインバウンドに支えられてきた観光業と小売業は大きな打撃を受けます。今回の決定が日本経済に与える影響を考慮してなされたものとは思えません。これも安倍首相の単なる思い付きではないかと勘繰りたくなります。経済に対する政策・対策が全く見えません。元厚生労働相で前東京都知事舛添要一氏は「感染予防と経済・社会的な影響のバランスをとるのが政治の役割」と言われています。後手後手に回った感染症対策に対する批判をかわすために経済や社会への影響を考えず遮二無二なって足掻いているように見えます。日本経済に対するしっかりとした対策が早急に行われることを望みます。いくつかの対策がされていますが不十分です。消費税増税以降の景気落ち込みで体力の弱っている中小企業を支援する更なる対策が望まれます。また中小企業だけでなくそこで働く労働者の支援も必要です。

以前2/28に「最悪のシナリオ」と題して書きましたが、ここのところ、新型コロナウィルスの影響について、リーマンショック超え、3.11超え、東日本大震災超えと日本経済の最悪のシナリオを指摘する論調が増えてきています。こうした最悪の事態だけは避けたいものです。

個人も中小企業も自分の身は自分で守る、今は耐えるしかありません。忍耐論のような話ですが、今は体力を温存して政府が経済政策を行うまで(期待できるかどうかわかりませんが)とりあえず耐えてください。倒産するような事態だけは避けてください。特別融資や助成金など今でも利用できるものがあります。また各自治体で経営相談もなされています。融資や助成金といってもすぐにお金が出るわけではありません。早め早めに動いてください。

大手企業が新型コロナウィルスにどのような対策を採っているかを見ることは中小企業にも役に立つはずです。次に何社かの例を挙げておりますので参考にしてください。

  • GMOインターネットグループ・・・いち早く在宅勤務を導入、受付にサーモグラフィーを設置、来客へのマスク着用要請、エレベーターのボタンの消毒
  • ヤフー・・・時差出勤、大人数での会議禁止、リモートワーク上限解除
  • NTTグループ・・・テレワーク、時差出勤、在宅勤務の上限撤廃
  • 武田薬品・・・グローバルでの危機管理委員会の設置
  • パソナグループ・・・派遣社員・受託従事社員にも在宅勤務、オフピーク出勤
  • パナソニック・・・既存のフレックスや在宅勤務で対応 

 

   

 

「令和恐慌」は避けねばならない

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おはようございます。

新聞やニュースを見ても新型コロナウィルスばかりで、今日はこれと言って取り上げるニュースは見当たりませんでした。そこで、やむを得ず、今日も新型コロナウィルス関連です。すみません(笑い)。

安倍首相は、各党党首に新型インフルエンザ等対策特別措置法(インフル特措法)の改正への協力を求めました。政府(安倍首相)は法改正を行って、同法の適応疾病に「新型コロナウィルス」を加えるというのです。しかし、同法の適用疾病をみれば①新型インフルエンザ②再興型インフルエンザ③新感染症(すでに知られている感染症の疾病とその病状や治療の結果が明らかに異なるもの)となっています。今回の新型コロナウィルスは③新感染症に該当すると考えられ、あえて法改正をする必要はないように思われます。政府対応が後手後手に回り本来なら1月前に同法を適用しなければならないところ適用しなかったというような批判をかわすために法改正が必要との見解を打ち出したと言われても仕方ありません。また、このインフル特措法は2012年旧民主党政権時代に制定されたもので、その採決に安倍首相も含め自民党議員は欠席して成立した法律です。この反対した法律をそのまま適用することへの躊躇もあるのかもしれません。

インフル特措法の適用で、緊急事態宣言が可能になり、これによって外出自粛、イベント自粛、医薬品などの保管指示、映画館や運動施設の使用制限などの私権制限といった強力な権限発動ができます。私自身は現段階でこのような強力な権限発動が必要かについては疑問を持っていますが、1月前に発動されていれば大阪のライブハウスからのクラスター感染はなかったことも事実です(結果論ですが)。

何事にも政府対応は遅れ後手後手に回っていますし、総理の思い付きで行われた対応では混乱が生じています。改正案が審議され法改正がなされ適用しようとした時には終息に向かっているということになりそうです。医師・専門家の話では1か月後がピークで5月頃に終息すると言われています。早く終息して日常を取り戻したいものです。

さて、時事通信のニュースによれば、新型コロナウィルス対策として、インドが日本人に対して既に発給していた入国ビザ(査証)を無効とする措置を発表しました。また、中国の上海市は日本からの入国者を14日間隔離して経過観測する方針を打ち出しました。このように感染が広がる日本からの入国を拒否する国が増えています。さらに事態が悪化すれば、入国制限が一段と広がる可能性もあります。このような事態が長引けば、企業の事業に与える影響も大きく日本経済に及ぼす影響は計り知れません。米国は日本への渡航について注意喚起のレベルを上げました。さらにアメリカで日本人の入国まで制限されるようになると大変な事態になります。政府は新型コロナウィルスの国内感染の拡大を防止する措置を速やかに行うとともに正確な情報発信を行い世界にアピールする必要があります。企業も今はこうした事態には耐えるしかありません。いつまでも日本人の入国拒否が続くわけではありません。渡航制限が解除された場合に速やかに現地に入って事業が再開できる体制を準備しておく必要があります。

新型コロナウィルスによって、日本経済に激震が走り、日経平均株価は1割近くも下落し、リーマンショック以来の状況になっています。そもそも昨年10月の消費税増税で日本経済は大きく冷え込み、10月~12月のGDPは6.3%のマイナスとなり、東日本大震災の冷え込みに匹敵する状況でした。景気動向指数も激しく下落し、その下落幅は過去の消費税増税時に比べて非常に悪い状態になっています。それに続いて今回の新型コロナウィルスによる消費落ち込みです。その影響はすでに出ています。

愛知県の老舗旅館の倒産、北海道のコロッケ製造会社、神戸のクルーズ船運航会社など新型コロナウィルス関連の倒産が出てきています。リーマンショック時の倒産件数は1万5千件以上(上場企業33件を含む)ですが、このまま新型コロナウィルスが拡大すれば、消費増税後の消費落ち込みと相まって、リーマンショック時以上の大倒産を招きかねません。

京都大学大学院の藤井聡教授は「今後さらに内需も外需も落ち込むでしょう。そのうえ五輪が中止になれば、感染のために日本を訪れる外国人によるオリンピック景気も期待できないのです。このままでは令和2年の日本経済は奈落の底にたたき落されることになります。安倍内閣がこのまま何の景気対策もしないなら、間違いなく『令和恐慌』が日本を襲うでしょう」(女性自身ー「コロナで日本経済壊滅…『令和恐慌』を招く安倍政権の失策」から)と言われています。

政府は、新型コロナウィルス対策として中小企業への支援策を打ち出していますが、それだけで日本経済の立て直しができるとは思えません。

藤井教授は「今すぐ消費税を5%に引き下げる。それが内需を回復させる。一番簡単な手段です。安倍内閣がすることは、嘘をつかず正しく景気判断を行い対策を行うことです。消費税を5%に戻すのも、決して難しいことではありません。例えば軽減税率の精度を使えばすぐにでもできるはずです」と言われますが、福祉に回す財源をどこから捻出するのかなど多大な問題があり難しいでしょう。

取り敢えず、今は与党・野党一丸となって新型コロナウィルスの拡大を防止すべく最善の対策を迅速かつ適確に行うことです。企業も感染拡大を防止すべき自社の体制を見直しつつ体力の温存に努めることです。SARSの例からすればあと数か月で終息に向かうはずです。それまで耐えることです。日本経済の立て直しはそのあとにじっくりと取り組めばよいのではないかと思います。ただ、安倍政権にそれができる能力と意欲があるとは思えませんが・・・

企業も政府の支援策を最大限活用し、今を乗り切りましょう。

 

 

 

 

新型肺炎感染者が出た場合、どこまで情報開示すべきか?

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大阪駅前第3ビル 桜?ベニバスモモ(紅葉李)

おはようございます。

今日は、また新型コロナウィルス関連です。

経済同友会の櫻田謙悟代表幹事(SOMPOホールディング)は、政府の新型コロナウィルスに関連する経済対策について「しょぼいというか、チマチマ出すのではなく、一気にやって一気に経済を取り戻すというやり方をしないと」とテレワークの環境整備への投資やインターネットを使ったオンラインでの診療など大規模な財政出動を求めました。全く同感です。すべての対策が後手後手に回り、汚名挽回・起死回生と何の科学的根拠もなく思い付きで行われた小中高学校の「一斉休校」。今日のワイドショーを見ると原宿竹下通りは中高生で溢れていました。昨日の梅田やミナミも同様です。「休校」なので昼日中から中高生がウロウロしても注意も補導もできません。中国も「休校」という処置をとっていますが、しっかりとオンライン授業を行っているようです。そうした準備もせずに思い付きだけで行われた一斉休校で、感染リスクが高まったり感染拡大につながったりしないことを祈るばかりです。

さて、こうした中、中小企業にとって朗報があります。厚生労働省は、テレワークを新たに導入する中小企業に対する助成金に特例を設けると発表しました。今年度の申込期間は終了していますが、特例として5月末までに従業員1人以上がテレワークを実施した場合、通信機器の導入・社労士への相談などにかかった費用の半額(上限100万円)が助成されます。特例をつくるのは「時間外労働等改善助成金」のテレワークコースです。2月17日以降の取り組みであれば、さかのぼって助成対象になります。

また、新型コロナウィルス対策として病気休暇制度などを新たに導入するなど、従業員が休みやすい環境を整えた中小企業に、その導入費用の4分の3(上限50万円)を助成する特例もあります。申込開始日は決まっていないようですが、厚労省は「速やかに開始する」としています。

日本の感染者数は、ダイヤモンド・プリンセスの乗船者を含め1000人を超え、死者は12人となっています。大阪ではライブハウスでのクラスター感染などで8人となっています。これから感染者が増えるかどうかわかりませんが、万が一自社に感染者が出た場合、どこまで情報開示すべきかという問題が出てきます。これについては、ダイアモンド・オンラインに詳しい記事が出ていますので、参考にしてください。

NTTデータ電通などしっかりとした広報活動経験の豊富な大企業の場合は、適切に対応されていますが、広報活動経験のない中小企業の場合、情報開示の仕方によっては自社の存続にも影響しかねません。感染者が出入りしていたスポーツジム、入浴施設、卓球施設、ライブハウス、あべのハルカスなど連日実名が報道されています。

行政側は、原則として、感染者については年代・性別・居住地域などの基本情報以外は開示せず、複数に感染者が同じ施設を利用していたり不特定多数者との濃厚接触の可能性があったりする場合に具体的な場所・施設を開示しています。

企業において感染者が出た場合、情報開示すべきかという判断に迫られます。まず、この場合、行政の対応に合わせるということが大事だと思います。行政側は個人が特定できるような情報開示は行いません。行政側が、社名・施設名を伏せている場合にあえて自分から名前を公表というのはいかがなものかと思います。NTTデータ電通は自ら積極的に情報開示を行いました。それは広報活動経験が豊富な大企業だからできたことだと思います。中小企業の場合、情報開示した場合、マスコミの取材等に追われ日常業務もできなくなります。行政の指示に従い行政の対応に合わせ、行政側が公表すれば速やかに自社も情報開示するというので良いのではないかと思います。この場合公表が遅れると致命傷になりかねませんから、行政と緊密に連携をとって公表が遅れないように注意してください。

また、情報開示や情報伝達の企業内組織について、しっかりと確立しておくことが重要です。情報が速やかに下から上に伝達されない企業もありますし、逆に上の情報が下に伝達されない企業もあります。スムーズに情報が流れるような仕組みを作るようにして下さい。大げさかもしれませんが、今は危機的状況です。新型コロナウィルスは政治・経済に甚大な影響を及ぼし、日本経済は壊滅的な打撃を受けるかもしれません。そうなれば中小企業は大企業と違い存続の危機に見舞われます。

中小企業においても、「新型コロナ対策本部」を設け、新型コロナに関するすべての情報(これは新型コロナが自社に与えるすべての情報)をそこに収束して、その情報をもとに新型コロナが自社に与える影響及びその対策を検討し、それを実行に移すようにしてください。抽象的な話になりましたが、存続の危機だけは避けるように努力してください。先日も書きましたが、新型コロナ関連の特別融資もあります。最悪それを利用するのも手です。なんとしてもこの危機を乗り切りましょう。

 

 

 

20世紀最高の経営者

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おはようございます。

今日は、新型コロナウィルス関連の話はやめにします。3月1日に「フォーチュン」誌で「20世紀最高の経営者」に選ばれたジャック・ウェルチ氏が亡くなられました。ウェルチ氏はゼネラル・エレクトリック社(GE)の最高経営責任者を務め、そこでの経営手腕から「伝説の経営者」とも呼ばれています。今日はウェルチ氏の経営手法についてみます。中小企業の経営にも役立つところがあると思います。

ウェルチ氏は、ピーター・ドラッカーの信奉者で、1980年代にアメリカの整理解雇ブームを引き起こした人物として有名です。ウェルチ氏の基本的は経営手法は、①「リストラ」「ダウンサイジング」といった大規模な整理解雇を行うことで資本力の立て直しを図る ②企業の合併・買収(M&A)と国際化を推進するということです。また、部下にあえて過大なノルマを課して克服させ、業績も人材も同時に伸ばすというストレッチ・ゴールの手法も取り入れました。日本企業の中にも導入しようとする企業が出てきますが過大な要求に精神的に参ってしまう社員も多く成功とは程遠いものでした。GEのCEOを退任後はMBAのオンラインプログラムを立ち上げるなど人材育成に尽力されました。

「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社)で有名な一橋大学国際企業戦略研究科教授の楠木建氏によれば、競争戦略の2つの主要視点としてポジショニングと組織能力があります。ポジショニングの戦略は企業を取り巻く競争環境の中で「他社と違うところに自社を位置づけること」です。それに対して、組織能力の戦略は他社と違ったもの、即ち「競争に勝つための独自の強みを持つ」ということです。日本企業は、ポジショニングよりも組織能力に基盤を置いた戦略に傾倒してきた面があります。

ウェルチ氏は、CEO就任後「ナンバーワン、ナンバー2の事業しかやらない」「参入障壁が低くて多数乱戦になる事業はやらない」「市場や技術の変化の激しい事業はやらない」といった切り口で、手掛ける事業領域を大胆に絞り込む戦略をとりました。これはポジショニングの戦略です。ここの戦略的意思決定は数年後に増収増益をもたらし、これによってウェルチ氏が「伝説の経営者」「20世紀最高の経営者」と呼ばれるようになったのです。

戦略には競争戦略と全社戦略があります。競争戦略は、ある企業の特定の事業が特定の業界の競争の土俵で他社とどのように向き合うかに関わる戦略であり、全社戦略は、どのような事業集合であるべきか、複数の事業のバランスをどのように構築するか、そのためにどの事業に最も優先的に経営資源を振り向けるべきか、どのような分野に進出し、どのような分野から撤退するかを考える戦略です。ウェルチ氏の「ナンバーワン・ナンバー2戦略」は全社戦略です。

競争戦略と全社戦略とは相互に関係しますが性格が異なります。戦略を考える際に、全社的な戦略なのか、個々の事業の競争戦略なのかを見極めることも重要です。全社戦略は経営者が意思決定し、個別の事業の成果を評価しその事業に対する資源投入の水準を決めることになるので、経営者の仕事です。M&Aによる事業構成の組み換えや企業再生も全社戦略になります。個別の事業の競争戦略は個別事業部門の責任者の仕事です。

中小企業においてはその点が明確でなく、全社戦略だけでなく競争戦略もすべて経営者が行っているところが多いのですが、すべてを経営者一人で行うには限界があります。個別事業の競争戦略は、個別部門の責任者に任せてみることも企業の成長・発展には必要なことではないでしょうか。それによって、経営者は全社的な戦略にすべての労力を注ぎ込むことが可能になります。

ウェルチ氏は、「参入障壁が低くて多数乱戦の事業はやらない」「市場や技術の変化が激しい事業はやらない」というように、手掛ける事業領域を極端に絞り込みました。これは、業界の競争構造を重視する戦略の典型です。他社に先駆けて魅力的な業界に参入し、先行者優位を確保できれば長期利益を可能にします。しかし、利益の高い魅力的な業界は誰にとっても魅力的で他社も参入を考えます。一時的に利益の高い業界でも次々と他社が参入してくれば持続的な競争優位は難しくなります。一時的な利益に目が奪われ長期的な視点が欠落すればかえって損失を被ることにもなりかねません。

ウェルチ氏は、その点をしっかりと見極めたうえで、手掛ける事業領域を絞り込むことにしたのです。

最初に述べましたが、日本企業は組織能力に重点を置いています。つまり、「競争に勝つための独自の強み」に重点を置いた戦略を採ろうとしますが、他社が簡単にまねできない経営資源を構築するには時間がかかりますし、現在のグローバルな経営環境・社会環境の下ではなかなか困難です。

いま日本企業には、「他社と違うところに自社を位置づける」というポジショニングの視点も必要です。自社の位置づけ(ポジショニング)を明確にしたうえで、独自の強み(組織能力)を強化していく、そういう企業が最強となります。楠木氏は、「現実にはポジショニングと組織能力のどちらかに偏ってしまう。それにどのようにに対処するかが企業経営に突き付けられた本質的な挑戦課題だ」というような趣旨のことを述べられています。企業においてポジショニングと組織能力のバランスをとることが重要なのですが、困難だということです。心してこの挑戦的な課題に取り組んでください。 

    

新型コロナに便乗 サイバー攻撃

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大阪場所 無観客

おはようございます。

今日は、東洋経済オンラインから「新型コロナに便乗『サイバー攻撃』の悪質手口」を取り上げます。日本をはじめ、世界的に新型コロナウィルスが広がり、マスク不足や高値転売、さらにはトイレットペーパー・ティッシュがなくなるとのデマが拡散し、米・冷凍食品・レトルト食品までスーパーの店頭から消えるという異常な事態になっています。SNSその他インターネット情報の怖さを痛感します。

これまでも社会的・政治的に人々が危機感を抱く事態には、そうした心理に付け込んだ悪質なサイバー攻撃が仕掛けられてきました。多くの人が関心を持つ時事性の高いテーマのメールなら、なりすましメールの開封の確率が高くなるからです。こうしたメールで使われる手口を知っておくことは、個人情報や企業の機密情報が盗まれ金銭的な損失を被らないために必要なことです。

サイバー攻撃とは、サーバやパソコンなどのコンピュータシステムに対し、ネットワークを通じて破壊活動やデータの窃取、改ざんなどを行うことで、ターゲットは特定の組織・企業・個人だけでなく不特定多数を無差別に攻撃する場合もあります。大企業だけがターゲットではありません。中小企業も個人も対象になりえます。

したがって、この記事からサイバー攻撃の手口を学び、うっかりなりすましメールを開封しないように注意しましょう。

  1. 「重要」「緊急」という言葉に注意…「すぐ読みたい」と思わせる人間の心の隙や不注意に付け込んで騙し、情報を盗む。「ソーシャルエンジニアリング」と呼ばれ、新型コロナウィルスでも使われる手法 ⇒ ①マスクの無料送付に関するショートメールを送りうっかり添付のリンクをクリックすると偽サイトが現れクレジット情報を入力させようとする。 ②保健所福祉室を装い、新型コロナウィルス感染予防対策についての添付書類を確認するように依頼するメールを送付する。
  2. 「エモテット」の脅威…メールへの返信を装い、実在の相手の氏名・メールアドレス・メール本文の一部がなりすましメールに使われる(最近私のところに多いのではドコモ、ヤマト運輸、佐川急便、アマゾンになりすましたメール)。添付ファイルを開き「コンテンツの有効化」というボタンを押すとウィルスに感染⇒メールアカウント、パスワード、メール本文の情報が盗まれる。添付ファイルが通信を暗号化しているhttpsではなくhttpになっており、httpをみれば偽物であることが確認できる。WHOを装ったメールもあるようだ。
  3. 新型コロナで打撃を受けた業界を狙ったもの…感染拡大で打撃を受けている製造業、金融、運輸、製薬、化粧品を狙ったサイバー攻撃。「コロナウィルスとその〇〇業界への影響に関するお知らせをお送りします」というメールを送付し、添付文書を開くとウィルスに感染し情報が盗まれる。
  4. 疾病対策センターをかたったなりすましメールも出現…マイクロソフトアウトルックに見えるサイトに誘導されアウトルックのユーザー名とパスワードの入力が求められる。 

これらコンピュータウィルスは2年半前に出たマイクロソフトオフィスの脆弱性をついたものも多く、マイクロソフト社から修正プログラムが公表されており修正プログラムを適用していればサイバー攻撃の被害を受けることは軽減されます。

繰り返しになりますが、サイバー攻撃の被害にあわないためには、上記のような手口を知り、なりすましメールかどうかを見分け、不自然な点があれば開かないことです。

万一間違って開いた場合でも、感染や被害拡大を防げるように、企業の側も脆弱性対策やネットワークの監視を強めるなどセキュリティ対策をしっかりする必要があります。日頃から社員に対してセキュリティ教育を行い、不審メールに気づいた社員がいた場合、誰に報告しどのように情報をあげていくのかしっかりとしたルール作りも必要です。

 

 

休日の本棚 「知」を読む

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おはようございます。

今日は、「知の逆転」(NHK出版新書)と「知の最先端」(PHP新書)を取り上げます。どちらも、現代最高の知性といわれる人々にインタビューを試みそれをまとめたものです。

まず、「知の逆転」です。これは限りなく真実を追い求め学問の常識を逆転させた現代最高の知性6人に対し、元NHKディレクター吉成真由美氏が、人類の未来についてどのように予見しているか、インタビューしたものです。

  • ジャレド・ダイヤモンド…「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」(いずれも草思社)の著者 西欧の発展は、そこに住む民族の能力が他より優れていたから起きたのではなく、単にたまたま地の利が良かったことと、農業を可能にする動物・植物がその地域にまとまって生息していただけのことで、文明はわずかな決断の誤りによってもろくも崩壊するのです。文明崩壊には①環境に対する取り返しのつかない人為的な影響②気候の変化③敵対する近隣諸国との対立④友好国からの疎遠⑤環境問題に対する誤った対処が関係していると言います。そして5つの国際問題(①人口爆発核兵器国際紛争④環境問題⑤種の保存と自然環境保護)についての解決法にも及んでいます。
  • ノーム・チョムスキー言語学者・「普遍文法」理論の提唱者 「すべての言語には共通する数学的な普遍文法があり、人はあらかじめそれを持って生まれてくる」と提唱し、「エリートは必ずや体制の提灯持ちに堕する」として米国の覇権主義を批判しました。
  • オリバー・サックス…「妻を帽子と間違えた男」(晶文社)「火星の人類学者」(ハヤカワ文庫)の著者 脳の不調は思いがけずも見事なほどに深い物語を紡ぎ、その物語は人によって実に様々な色彩を持つとしました。
  • マービン・ミンスキー人工知能の父とも言われ、AI研究のほか哲学に関する著書も出す 膨大なメモリー力にばかり頼って方向を間違ったために、役に立つロボットを福島に送ることができなかった現在のコンピュータ研究を鋭く批判しています。
  • トム・レイトン…MIT応用数学科教授 数学者でありながら、アルゴリズム・暗号法・分散コンピューティングなど自らの理論を実践すべくインターネットの世界に乗り出しています。
  • ジェームズ・ワトソン…クリックと共にNDAの二重らせん構造を解明しノーベル生理学・医学賞受賞 DNAの二重らせん構造を解明し、コールドスプリングハーバー研究所を第一線の研究所に育てつつも、「二流の研究に時間と労力を費やすくらいなら死んだほうがまし」など正直な発言が物議をかもしてきました。

6人の知性が未来をどう見ているかを示してくれていますが、異なった見解を提示しているところもかなりあります。核を廃絶する以外に人類存続の可能性はないというチョムスキーに対し、ダイヤモンドは霊長類である人類にはもともと暴力性が備わっているので、人類の欲望を制御するために武器も必要になるがどうやってお互い使わずに済ませるか知恵を絞るしかないと言います。また、ワトソンは16歳くらいまでに人生の方向は大体わかっているので早い段階でアドバイスすることが大切というのに対し、サックスは人によって将来どうなるかは15歳位ではわからないから、その後の良い先生との出会いが将来を大きく左右すると言っています。ダイヤモンドは「人生に意味などない。われわれはただ存在するというだけ」と言い切りますが、全く悲観的で否定的でもなく、むしろ人間の問題解決能力に楽観的でm多様な価値観や多様性を受け入れています。この6人の知性の考え方から学べるところは多いと思います。

次に「知の最先端」です。「知の逆襲」が科学や文明に関する知性であったのに対し、こちらはどちらかというと政治・経済・経営に関する知性です。こちらはジャーナリストで執筆家の大野和基氏がインタビューしています。

  • シーナ・アイエンガー…選択の科学(文春文庫)の著者 自らの人生は運命に従ったからなのか、それとも選択の結果なのか。自分自身あるいは自分の置かれた環境を独力で変える能力である選択の原理を理解することは重要です。
  • フランシス・フクヤマ政治学者で歴史の終わり上・下(三笠書房)の著者 ネオコン新保守主義)の立場で、イデオロギー対立の終わりという新しいビジョンを示しました。
  • ダロン‣アセモグル…国家はなぜ衰退するのか上・下(早川書房)の著者の一人 国家はなぜ繁栄するのか、なぜ衰退するのかという本質論を知ることは、われわれの意識づけによって、国家が繁栄への道をたどるか衰退するかという結論は変わることをも示しています。
  • クリス・アンダーソン…雑誌WIREDの元編集者 インターネットの中のイノベーションに留まらず、製造業の在り方をも根本的に変革する「メイカーズ革命」とは?に答えています。
  • リチャード・フロリダ…トロント大学ニューヨーク大学教授 「クリエイティブ・クラス」という新しい価値を提唱し、グローバルに活躍できる人材こそがよくある都市の形成要因であるとしています。
  • クレイトン・クリステンセン…「イノベーションのジレンマ」(翔泳社)の著者 高性能の製品を開発し、市場をリードしていたはずの企業が技術でお鳥企業の新製品によってトップの座をいとも簡単に奪われる現象が「破壊的イノベーション」です。アップルやサムソンの勢いに押されている日本企業にとって自らを省みる良い機会になるはずです。
  • カズオ・イシグロ…小説家でノーベル文学賞受賞 人間とは何か、運命とは何かを問う作品が多いです。「私を離さないで」(ハヤカワ文庫)は、外界と隔絶された寄宿学校で過ごす子供たちが、自らの出生の秘密を知り成長する過程を描き出しますが、彼らはクローン人間で臓器を提供する存在として生を受けたという考えさせられる話です。 

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