ムラ社会の日本企業を変える
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で12,396人、そのうち東京1834人、神奈川1099人、埼玉779人、千葉610人、愛知1290人、大阪2012人、兵庫852人、京都381人、福岡572人、沖縄413人、北海道180人などとなっています。全国的に減少傾向にあり、ピークアウトした地域もあれば高止まりしている地域もあります。大阪では2日連続で全国最多となり、重傷者も増加しています。また全国で初めて10代の感染者(患者)の死亡が発表されました。基礎疾患があり重篤化リスクを抱えていたようですが、痛ましいことです。政府は、11月をめどに緊急事態宣言下でもワクチン接種者に対する行動制限緩和を行う方針で検討を進めていますが、基礎疾患があり重篤化リスクを抱え、ワクチンを接種したくても接種できない人への差別を助長するようなことがあってはいけません。
総裁選が本格化し、高石早苗が安倍前首相の支持を得て正式に出馬表明しました。また既に出馬を表明している岸田文雄は森友問題で再調査をしないと安倍に対する忖度を示しました。出馬を検討している河野太郎も、派閥の領袖の麻生太郎から全面支持を受けられない状況で未だ出馬表明に至りません。相変わらず、二階、麻生、安倍といった黒幕が暗躍し、派閥の論理、ムラ社会の論理が生きています。ヤフーニュースは、岸田と河野が最終的に争うことになれば、自民党分裂の危険な匂いがすると書いています。麻生・安倍は最終的には岸田を支持し、若手・中堅層、石破茂が河野を支持し、党を二分する争いになるということです。この際、国民のことよりも自分らの保身や利権を最優先する自民党は分裂・解体させる方が国民にとっては望ましいことではないかと思います。この時代、派閥や「ムラ社会」の論理は時代遅れです。
さて、今日は、朝日新聞GLOBE+の「『ムラ社会』の日本企業を変えるカギは、保守的な中堅管理職を変えること」という記事を取り上げます。
派閥やムラ社会の論理は政治の場だけに限りません。企業においても、社長派・専務派などと派閥があり、「ムラ社会」の論理がまかり通っています。
「ムラ社会」というのは、集落に基づいて形成され、有力者を頂点とした序列構造を持ち、古くからの秩序を保った排他的な社会のことです。同類が集まって序列を作り、頂点に立つ者の指示や判断に従って行動したり、利益の分配を図ったりする閉鎖的な組織や社会を村に例えて「ムラ社会」と呼ぶのです。
ムラ社会には、長による支配、ボスと子分といった上下関係が歴然と存在し、無条件に習慣を踏襲し、一切抗わないという特徴があります。まさにやくざの社会です。
また、ムラ社会には多くの問題点があり、様々な指摘がなされています。
- ムラの掟や価値観・しきたりが絶対であり、多様性や少数派の存在を認めない
- 掟に関与しない世間一般のルールやマナーを守らず、自らの掟を他者にも強要
- 出る杭は打たれる。長い物には巻かれろ。寄らば大樹の陰
- 被害に遭った者が責任を追及すると、大勢で被害者を叩きなかったことにする
- 自分らが理解できないよそ者の存在を認めない
- 立場が弱いものに対しては陰湿かつ徹底的に圧力を加える
- 全て自分たちと同質であるとし、自我の存在を認めない
- 事なかれ主義が多い
- 噂話に対しては自分たちに不利益にならない限り、真実かどうか深く追求せず、既成事実にする
日本企業の多くは未だに閉鎖的な経営をしています。まさに「ムラ社会」です。しかし、上場企業の経営規範ともいえる「企業統治指針」(コーポレートガバナンス・コード)が6月に改訂され、ガバナンス改革が注目されるようになって、少しずつ変化の兆しが見えます。しかし、ガバナンスの「形」は整ってきても「質」が伴っていない企業がほとんどです。
日本の大多数の企業では、経営の中核は日本人の中高年男性です。多様性が叫ばれて、多様な人材を登用する企業も増えていますが、多様性(ダイバシティ―)は積極的に取り入れても、包摂(インクルージョン)が不十分です。多様な人材がお互いに個性を認め合い、一体となって働くことができてこその多様性です。多様な人材を採用しても適材適所に配置して動かすことができなければ「形」だけの多様性になってしまいます。
社外取締役を選任する企業が増えていますし、女性の取締役も増えています。しかし、女性取締役のほとんどは社外取締役です。内部出身の優秀な女性が取締役に登用されている企業はほとんどないのです。
社外取締役の登用が増えているものの、「社外取締役がいる会議では情報を出すな」ということで、重要な情報や重要な事柄は、取締役会ではなくその前段階の経営会議等で決まり、取締役会はその報告の場になってしまっています。
コーポレートガバナンス・コードで社外取締役の必要性が謳われているのは、社外取締役に外から見た自社の状況について役に立つ助言をしてもらうアドバイザリーボードとしての役割を担ってもらうためです。会社としても社外取締役を登用した以上は、極秘情報は別としてあらゆる情報を提示して助言を求めるべきですし、就任を承諾した以上、社外取締役も嫌われても忌憚のない意見を言うべきです。
また、多くの企業で執行役が置かれるようになっています。日本の企業の多くでは、取締役に「監督」と「執行」の2つの機能を持たせてきました。米英企業のように、「監督」と「執行」を明確に分けて、取締役は経営を監督するモニタリングボードになっていくべきです。執行については執行役員が中心となって行えばいいのです。
この記事では、閉鎖的な「ムラ社会」の日本企業が変われるかどうかは「中間管理職」世代がカギを握っていると言っています。
中間管理職は、ムラ社会の序列構造・ピラミッド型構造の中では、「中よりも上位」に位置付けられる存在です。いずれは執行役員、取締役へと上がっていく人たちです。中間管理職になって、さらに上を狙える立場になると、トップや経営陣に忖度し、保守的になってきます。経営陣に追従するだけでなく、業務においても失敗を恐れ冒険を行わず、無難に仕事をこなし保守的な態度をとるようになります。
経営陣は、ガバナンス改革の風圧や外圧に晒されているので、世界の流れや環境の変化に敏感です。また、若年層は、インターネットやSNSなどからの情報に敏感で、意外と世界の流れや環境変化をつかんでいます。取り残されているのが中間管理職です。この中間管理職は、近い将来、執行役員や取締役として経営陣として経営のかじ取りをする立場です。この中間管理職が時代や環境の変化に疎く感度が鈍っていては、日本の企業の先行きが心配になります。
この記事では、「この世代によい刺激を与えていくことがガバナンス改革の成否につながるカギを握ると思います」と締めくくっていますが、具体的にどうすべきかが何一つ書かれていません。
以前にも書いたと思いますが、日本の企業では「役職はご褒美」という風潮があり、年功序列というスゴロクを無難に上がってきた人への「上がり」として用意されているものです。これまでの成果が役職に反映するというわけですが、これまでの成果と言っても、勤務年数や上司の覚えめでたく当たり障りなく無難に世渡りしてきただけです。上司に楯突く半沢直樹的な人材は好まれません。しかし、今本当に必要なのは、時代の変化を敏感に察知して迅速に行動を起こせる人材です。過去の栄光にしがみつくリーダーは必要とされていません。
今本当にリーダーに必要な能力は「問題提起力・課題を見極める力」です。問題や課題が比較的明確な時代では問題解決能力が求められました。しかし、今の時代では、問題や課題が複雑に絡み合って問題や課題の本質がどこにあるか分からなくなっています。問題解決以前に問題の本質がどこにあるのかを明確にできる能力が重要になってきているのです。リーダーが、問題や課題の奥に潜む本質を明らかにし、メンバー全体でチーム一丸となって解決策を考えるというのがこれからの組織やチームのあり方です。中間管理職にはこの「問題提起力・課題を見極める力」が要求されるのです。
前述したように、日本の企業の役職は年功序列の上がりで、それは実質的な意味での成果とは何ら結びついていません。年功序列制が悪いというわけではありませんが、欧米型の成果主義を取り入れ、的確に成果を評価するシステムを構築して、その評価に従って役職を与える、昇進させるという組織改革、人事改革が必要です。こういうシステムにすると中間管理職もオチオチと今の地位に胡坐をかいているわけにはいきません。下からの追い上げにもさらされます。
そうなれば中間管理職にも危機感や刺激が生まれ、自らアンテナを張って情報収集に努めるようになり、「問題提起力・課題を見極める力」を養うようになるでしょう。
テレワーク下のコミュニケーションのコツ
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で10,605人、そのうち東京1629人、神奈川738人、埼玉647人、千葉648人、愛知1218人、大阪1649人、兵庫620人、京都291人、福岡424人、沖縄383人、北海道137人などとなっています。全国的に急激に減少していますが、かえって不気味な感じがします。9月に入って人流は増えてきているように見えます。感染が再拡大しないように願います。政府は、10月以降段階的に行動制限を緩和する方針を固めたようです。経済との両立は重要課題ですが、これまでの菅政権での対応はことごとく失敗し、かえって経済を泥沼に引きずり込みました。これまでのコロナ対策の失敗を真摯に受けとめ分析・検証することからのスタートです。闇雲に経済を回さんがために従前と同じような対策をとったのでは、同じ轍を踏むことになってしまいます。専門家の意見を踏まえ、時期や行動制限緩和の要件や内容、どのような要件で再び行動制限を課すのか、その時の行動制限の内容など明確な基準を定め、危機管理の基本に忠実に進めてもらいたいものです。もともと人間は誰しも多かれ少なかれ認知バイアスと確証バイアスを持ち、思い込みや自分に都合のいい方へと流れてしまうものです。楽観的な情報が流れればそれを過大評価して気を緩めてしまいます。それを引き締めるのが政府の役割です。政府や政権トップが国民と同じく認知バイアスや確証バイアスに支配されていてはダメです。リーダーは、国民に対して丁寧な言葉で説明し、国民が認知バイアスと確証バイアスに支配されることのないように正確なメッセージを発するべきです。そういうリーダーが選出されることを期待します。
さて、今日は、リクナビNEXTジャーナルの「職場の人間関係がグンと良好に!【テレワーク】コミュニケーションのコツをプロが紹介」という記事を取り上げます。この記事では、人材育成コンサルタントの片桐あい氏が、テレワークならではの悩みを解消し、職場の人間関係を構築したり、良くしたりするコツを説明しています。
コロナ禍で、テレワークや在宅勤務を導入した企業は増えていますが、オフィス勤務と異なり気楽に雑談したり、飲み会で人間関係を築くという機会が失われてしまいました。一緒に働くメンバーの近況や人となりを知る手段も限られてきています。新規採用や中途採用で入社したものの、テレワークで出社することがなく、上司や同僚と顔を合わせたことがないという人もいます。こうした中で、職場でのより良い人間関係を構築することはなかなか難しいものです。
1.テレワーク環境が整っても、職場の人間関係は希薄になっている
新型コロナの感染拡大当初には、多くの企業が手探り状態で在宅勤務・テレワークを導入しましたが、今ではテレワークに慣れ、テレワークの環境や体制が整ってきているように見えます。企業内でテレワーク環境の整備が進む中で、テレワークに伴う社員の悩みが解消されるどころか、増えているように思います。
確かにテレワークによって、通勤時間の短縮や労働の自律性の確立といったメリットが認められていますが、一方で、誰もが神経的にささくれ立つことがあり、生産性が低下するというメリットも挙げられます。職場での創造性を高めるものとして、職場での音や匂い、自宅とは違う環境、他人の存在などが挙げられます。これらは、一般に集中力を遮るものでもあるのですが、同僚などとの会話や雑談から得られるアイデア、通勤途中での新しい発見・刺激、偶然の出会いなどが想像力を刺激しイノベーションにつながることもあるのです。
テレワーク環境は整えることができても、こうした面でのケアが十分にできていない企業が多く、特に職場での人間関係を希薄化させ、コミュニケーションが上手く取れなくなっています。
2.テレワークで「うまくコミュニケーションがとれない」のは、あなたのせいではない
テレワーク環境では、自分一人の作業には集中できますが、チームとしてメンバーと連携して行う作業には向きません。特に新規採用や中途採用で上司や同僚と一度も顔を合わせたことがないというのでは、連携すべき人がどんな人なのかもわからず、気楽に連絡や報告もできず、業務が停滞することにもなりかねません。
コロナ禍のテレワークの導入で、コミュニケーションの質や量が落ちているのは、まぎれもない事実ですが、これは企業や上司が対策を講じなければならないことです。だから「コミュニケーションがうまくとれないのは自分のせい」ではないのです。
テレワーク下で、上司・同僚とのつながりが希薄になれば、自分が「この会社の一員」との実感が持てなくなります。企業が持続的に成長するためには、従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と組織が一体となって共に成長し絆を深めていくこと、つまりエンゲージメントを高めていくことが重要です。組織・企業としては、従業員のつまりエンゲージメントを高める施策を積極的に行わなければなりません。
以前書きましたが、「機会を作り、対話することを大事にしながら、一人ひとりが行動することで文化が形成される」のです。そして、重要なのは、「組織内のコミュニケーションを図り、組織としてチームとして、共有・協働しながら、メンバーが組織の理念に共感しそれを『自分ごと化』できるようにすること」です。そういう組織を創るのは経営陣・リーダーの役割です。
3.人間関係を良好にするコミュニケーション術
この記事では、組織に任せていては、いつまで経っても悩みは解消されないかもしれないとして、コミュニケーションのコツを3つ紹介されています。
- 「仲が良い人」と個別に会話したり、「仲良くなれそうな人」を見つけてアプローチする・・・誰とでも仲良くなれるに越したことはありませんが、苦手な人やとっつきにくい人はいます。「テレワークだから、あえて相手によって距離感を変えていい」と割り切り、自分と話が合う人を見つけて積極的に話すことです。
- 積極的に「自己開示」する・・・自分の人となりや考え方、価値観を知ってもらうことで、また相手の人となりや考え方を知ることで、距離感が縮まります。
- ライトな「相談」で頼る・・・あえてほかのメンバーに頼り相談すること、人は頼りにされるとうれしいもので、距離感が縮まります。
4.オンラインでも相手が気持ちよく話せる「聞き方」が良い印象を与える
相手は「興味を持って聞いてくれる」とうれしくなり、どんどん話してくれるようになるので、相手が気持ちよく話せるような「聞き方」を心がけることが大切です。
- 明るい一声・・・最初の雰囲気づくりが大切です
- 口角を上げた表情・・・にこやかな表情で相手が話しやすくなります
- うなずき・・・句点のタイミングで頷くことで、相手は話を進めやすくなります
- あいづち・・・うなずきと相槌を上手く組み合わせることです
- 前のめりの姿勢・・・興味を持っていること、相手の話が響いていることを示せます
5.話しにくい相手なら、ビジネスライクに徹するのも手
話しにくい相手やとっつきにくい相手はいますが、職場である以上、避けて通ることはできません。関わらないわけにはいかないのです。この場合は、無理に「懐に飛び込む」努力をする必要はなく、ビジネスと割り切って接することが大事です。こういう相手には感情的ではなく、ロジカルな話し方を行うべきです。無駄のないコミュニケーションを心がければ、相手をイラつかせることもなく、こちらの感情が刺激されることもありません。もしかしたら、相手の方から歩み寄り、それがきっかけでよい関係が築けることもあるかもしれません。
片桐氏は、「人間関係は『手段』。悩んだら「目的」に立ち返る」と言います。
職場において人間関係を築くことが目的ではありません。業務を円滑に進め成果を上げることこそが目的です。人間関係の構築は、その目的達成の手段にしかすぎません。「仕事を前に進める」という目的に立ち返って、誰とどのような関係を築き上げるかを考えてみることです。すべての人と同じような良好な関係を築くというのは不可能なことです。もしもテレワークで、悩みや課題があっても一人で抱え込まないで、共有できる相手を見つけることです。また、上司やリーダーは悩みや課題を抱えている人がいないか、積極的にコミュニケーションを取り、メンバーが抱えている悩みや課題を解消すべく向き合うことです。
働き方改革としてのDX
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で8234人、そのうち968人、神奈川971人、埼玉450人、千葉665人、愛知1190人、大阪924人、兵庫357人、京都258人、福岡420人、沖縄167人、北海道123人などとなっています。月曜日とはいえ、1万人を下回るのは8月2日以来で、ようやくピークが過ぎたような気がします。しかし、重症者数は高水準にあり医療体制がひっ迫している状況に変わりありません。政府は分科会の提言を受け、早くも行動制限緩和を模索する動きが加速しています。経済の回復と新型コロナ対策の両立は必要ですが、安易な行動制限緩和は再び感染拡大を引き起こし、経済の回復を遅らせることになります。いかに現状を的確に認識し、それを正確に分析して状況に応じ段階的な緩和措置を行っていくことです。前回のGotoのように時期をわきまえず利権主義に振り回されるようなことだけはしてはいけません。この度の総裁選においても、二階、麻生といった老害や森友・加計問題など疑惑だらけの安部が次期政権の黒幕としての地位を得ようと暗躍しています。政治は彼らの私物ではありません。舛添要一氏は「菅首相は、黒幕たちにいいように使われ、捨てられた。悲劇の『雇われマダム』だ。背後に悪いやつがいる」と言っています。こうした派閥主義・黒幕政治にはうんざりです。とっとと政界から退席してもらいたいものです。
さて、今日は、JBPressの「バリューサイクル・マネジメントで働き方のDXを進めよう」という記事を取り上げます。DXについてはこれまでも何度も取り上げてきましたが、その際にも言いましたように、DXやデジタル化は手段であって目的ではありません。しかし、ITを使い、さらにコミュニケーションの方法を変えて組織の内側から活性化していくことは重要です。
この記事は働き方改革とDXあるいはデジタル化の関係を明確にしてくれています。
コロナ禍で、テレワークを導入した企業も多いのですが、テレワークやりモーモーとワーク、更にはワーケーションを取り入れたからと言って、そのまま「働き方改革」や「ビジネスモデル改革」さらには「地域活性」が実現できるわけではありません。
この記事では、「経営の景色と現場の景色をどのように合わせていくのか、どのようにコミュニケーションを変えていくのかがポイントである」と言っています。
この記事によれば、現在2つの格差が広がっていると言っていますが、その通りです。
- 大都市と地方都市の格差・・・コロナ禍で、都市部の企業は、必然的にテレワークのような新しい働き方と向かい合わなければなりませんでしたが、コロナの影響が限定的な地方都市では、テレワークのような働き方をしなくても仕事は回っています。その結果、テレワークのような新しい働き方を経験した都市部の企業と、テレワークの経験がほとんどない地方の企業との間でワークスタイル変革の格差が広がっています。
- 先進企業とレガシー(鈍感)企業の格差・・・デジタルを使った新しい働き方、新しい稼ぎ方に死すとすることで収益力を高め、今までとは違う顧客とのつながり、新たなビジネスモデルを展開し始めている先進企業と、従来道理の経営方針で時代の流れを読めない鈍感企業との格差です。
目まぐるしく変わっていく激動の時代において、従来の考え方や経営方針にとらわれていたのでは、時代の流れに遅れ、成長できないどころか生き残りもできなくなってしまいます。上の格差を縮めていかなければなりません。そこで「マネジメントシフトやマインドシフトによって新しいもの・考え方を取り入れる」ことが重要になります。その新しいもの・考え方の一つが、DXでありデジタル化です。
1.DXの成功には社内外とのコラボレーションが不可欠
DXについては何度も説明していますが、「デジタル(D)+トランスフォーメーション(X)」のことで、トランスフォーメーションは変革・改革を意味しています。
デジタルについては情報システム部門やIT専門家に聞けば解決しますが、それだけでは変革を起こすことはできません。DXというのは単なるデジタル導入ではなく変革を起こすためのものなので経営陣を中心とした全社的な経営戦略でなければならなのです。そこに、多くの企業がDXに失敗している原因があります。DXが時代の流れだと取り入れたものの経営陣がDXの本質を理解せず、情報システム部門や業者に丸投げしてしまっているのです。これでは全社的な変革は起こりません。
DXで変革を起こすものは、企業や各部門が抱えている課題や問題です。これらの問題は情報システム部門や人事部門が単独で解決するには限界があります。
DXを成功させるには、他部門とのコラボレーション、更には社外とのコラボレーションが不可欠なのです。
デジタルを使いながら部門間の壁を越えていくためには、社内業務の電子化が欠かせません。また、スマートデバイスとクラウドサービスで、どうやってお客様に価値を提供していくか、どうやって今までとは異なる売り方をしていくかが求められています。
この記事では「過去思考ではなく未来志向で考えられる人を強化していくような発想がDXを成功させる」と言っています。
2.固定化された働き方からは新しい発想は生まれない
この記事では、DXにはデジタル・トランスフォーメーションのほか、デジタル・エクスペリエンスという意味もある」と言っています。エクスペリエンスというのは、「体験・体感」という意味です。
日本の組織では、最新のデジタル機器やデジタルサービスを使う経験が圧倒的に不足しています。いまだにコミュニケーションツールはメールだけでビジネスチャットを使ったことがないという企業も多く存在します。最新デジタルツールを使うことで、どのようなコミュニケーションの広がりを生むか、あるいはどのようなアイデアを形にできるかという経験が少なければ、DXなど起こり得ません。
小さなデジタル経験を増やすことから始めていくしかありません。まずは身近な不便をデジタルでどう解消できるかということからでいいのです。デジタルで少しは楽になったという体験が、次へとつながるのです。
DXの本質は「デジタルの力で固定された環境から解き放たれること」です。毎日、同じメンバーで、働く時間・仕事内容・行動パターンまで同じ人間同士が集まっている環境では、新しい発想やアイデアは生まれません。DXによって、デジタルゆえに時間や場所の制約から逃れ、空間を超えて他の地域の人とつながることによって、新たな課題の解決策やビジネスモデル、働き方を生んでいくことです。
3.組織改革に向けて、経営者と現場に求められること
経営者、中間管理職、現場のそれぞれが自分たちだけで悩むのではなく、全社的に景色を合わせ、他部門とコラボレーションして立体的に解決していくことが重要です。これがバリューサイクル・マネジメントです。
まずは現場の小さな単位で、「未来価値創造」「業務改善」「育成・学習」のコアサイクルを回し、次に他部署とつながって新しい価値を生み出し、正しい成長要求や能力を持った人たちが正しく活躍できるように、デジタルを使い、制約を取り払って滑らかにこのサイクルを回していくのです。
経営には、何よりもITと育成への投資が必要です。社員のスキルアップ、マネージャーのマインドシフトを含め投資し、デジタルエクスペリエンスを社内に増やすことです。そのためにも採用・人材評価制度の刷新は不可欠です。
現場では、身近の課題や問題を言語化して景色を合わせること(共有すること)が出発点です。そして、他部署や経営サイドと小さなデジタルワークで、その課題を解決するのです。少しの成長体験、気持ちよくなった快感や体験を創出し、さらにそこからデジタルの広がりを増やしていくことです。
しつこくようですが、DXやデジタル化は手段であって目的ではありません。組織改革・マネジメント改革・ワークスタイル改革にDXやデジタル化が必要ならば、必要な範囲で導入していけばいいのです。
この記事にあるように、まずは小さなところから始めてデジタルの体験を創出し、そこからデジタルの広がりを増やしながら、DX、デジタル化へとつなげていくことです。ただ、DXは、単なるデジタルの導入ではなく、変革であることを忘れず、経営陣が中心となって全社的に取り組まなければならなりません。
ムダな会議が減らない理由
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で12,908人、そのうち東京1853人、神奈川1242人、埼玉817人、千葉1129人、愛知1376人、大阪1820人、兵庫696人、京都339人、福岡589人、沖縄367人、北海道218人などとなっています。もともと少ない月曜日とはいえ、かなり減少してきました。気を抜かずに頑張りましょう。希望する国民へのワクチン接種が終わった段階で、行動制限を緩和する、いわゆる「ワクチン・パスポート」案の検討が政府分科会から提言されていますが、ワクチンを接種したからと言って必ずしも安心安全ではありません。ワクチン接種による気の緩みも手伝ってか、このところ「ブレークスルー感染」が増えています。ワクチンさえ打てばいいといった「ワクチン神話」はあり得ません。我々が日常生活を取り戻すには、コロナとの共存の道を模索するしかないのです。時期はともかく、今後の行動様式について、われわれ国民自身も考えなければならないと思います。結局はコロナ対策と経済回復の両輪をどのように回していくかということですが、安易にGotoトラベルやGotoイートを再開し闇雲に規制緩和しても再び感染拡大を助長し、第5回目の緊急事態宣言発令という事態を招きます。政府としては出口戦略の策定は慎重に行う必要があります。危機管理の基本に忠実に確たる理念を持ち、戦略を策定し、国民に丁寧に説明して共感を得たうえで、国民と共に実践できる新たなリーダーが生まれることを期待します。
さて、今日は、プレジデントオンラインの「『だからムダな会議がちっとも減らない』日本企業に決定的に欠けている”ある概念”」という記事を取り上げます。
コロナ前から「働き方改革」が叫ばれてきましたが、そこには日本の生産性の低さを働き方改革で克服しようという目的がありました。しかし、コロナ禍でリモートワークやデジタル化が導入され、働き方も少しは変わりましたが、いまだに生産性の低さは改善されていません。だからと言って、生産性の低さを、アトキンソンや菅首相のように中小企業に原因があるとするのは大きな間違いです。大企業が中小企業を搾取するという産業構造に問題があるのです。日本の生産性の低さは中小企業の問題ではなく大企業の問題です。大企業が、中小・零細企業から搾取するという悪しき構造を改革しない限り日本企業の生産性は向上しません。単に中小企業の構造改革を押し進めても何の欲にも立たないのです。
この点はさておき、この記事では、日本企業の生産性の低さの原因の一つを「『決める会議』ができないこと」と言っています。
1.「過去」に時間を使うのは無駄である
日本企業には無駄な会議が多いと言われますが、その通りです。多くの企業経営者・リーダーもそのことに気づいています。しかし、それが改善されないのは、会議ですべきことと会議でする必要のないことの区別ができていないからです。この記事では「会議でした方がいいことを理解していないから」と言っていますが、同じことでしょう。
ビジネスパーソンにしても企業経営においても、「未来志向」が重要です。過去に学ぶことの大切さはこれまでも書いてきましたし、過去の失敗は将来の成功の糧であることは否定できません。しかし、当たり前のことですが、過去に学ぶことと過去の事実にとらわれることとは違います。過去の出来事が変わることはありません。過去に起きたことに時間を使うのは無駄なことなのです。過去の出来事から教訓や学びを得られれば、過去の出来事は忘れてしまっていいのです。
2.対面でやるべきは、報連相の「相」の部分
ビジネスパーソンにとってだけでなく、「報連相」(ほうれんそう)という言葉が一般的になり、よく使われるようになりました。それは報告・連絡・相談を縮めた言葉ですが、その中で、未来志向の言葉は「相」の部分、つまり相談です。報告と連絡は、既に起きたことについての話ですから、あえて言えば過去のこと、相談は、より良い未来を築くためのものです。
会議とは、みんなが同じ時間、同じ場所に集まって(Webなら同じバーチャルの場に集まって)話をすることで、各人がそれぞれの仕事を中断して行うものです。そこで話される内容が過去のことであるならば、はっきり言って時間の無駄です。
ところが多くの会議では報告や連絡事項が多すぎます。このようなものは、いちいち会議を開いてまで行う必要はありません。
3.会議で話し合うべきは未来の話の「相談」
報告や連絡は、ITツールを使って自動化したり、効率化すればいいのです。データなどの「見ればわかるもの」をわざわざ会議の時間を使って報告したりさせたりするのは時間の無駄以外にありません。データはリアルタイムで共有しておけばいいですし、連絡はチャットで十分です。
会議でやるべきは未来志向の話です。未来を最大限によくするために、これからどうするのか、次の一手は何をすべきかを話し合うのが会議です。
4.日本企業に決定的に欠けている「時間は借り物」という概念
何のために集まったのか分からないけど、取り敢えず集まったというような会議があります。時間というのは極めて貴重な資源です。それを一部の人の都合で浪費させるのは時間泥棒です。
この記事では、日本は諸外国に比べ「時間は借り物」という概念が欠けていると言っています。欧米企業では、1時間の会議が45分で終われば、「15 minutes back to you」と言って会議を解散するといいます。「1時間借りていたけで45分で終わったから、15分返す」ということです。こうした「時間の概念」がとても重要です。
「時間は借り物」という概念があれば、目的のない会議に人を集めようと思うはずはありません。
5.コミュニケーションの重要性は変わらない
コロナ禍でテレワークが導入され、人と対面で接する機会は減りました。しかし、どのような働き方になってもコミュニケーションの重要性は変わりません。しかし、報告や連絡はコミュニケーションではありません。コミュニケーションは、言葉のキャッチボールで、それによってお互いを高め合うことができなければなりません。コミュニケーションは未来志向でなければなりません。
未来志向で、どれだけ会社や世の中をよくすることができるのかという視点で、未来のために時間を使うことです。「時間の重要性」を意識して、未来のことにどれだけ時間を割くことができるかを突き詰めることです。
まずは、会議のやり方を変えることです。報告や連絡のための会議ではなく、「こんなアイデアがあるがみんなの意見を聞かせてほしい」というような建設的な相談のための会議にしていくことです。
休日の本棚 ”イノベーションのジレンマ”への挑戦
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で16,012人、そのうち東京2362人、神奈川1633人、埼玉1075人、千葉1204人、愛知1776人、大阪2353人、兵庫755人、京都406人、福岡643人、沖縄558人、、北海道224人などとなっています。全国的に減少に転じてきているようにも見えますが、まだまだ油断はできません。政府は緊急事態宣言を2週間程度延長するようですが、現在の感染者数を鑑みれば、やむを得ないでしょう。政府分科会が提言を発表し、どの程度のワクチン接種率を達成すれば、どのような制限が緩和されるのかなど、今後の感染対策のあり方のたたき台を示したうえで、国民的な議論を求めたいと呼びかけました。ワクチン接種しても感染するブレークスルー感染もあり、ワクチン接種で集団免疫を獲得するのは困難で、コロナ前の日常生活を取り戻すことは難しいと思われます。コロナを打ち負かすことができないのであれば、いかにコロナウイルスと共存するのか(ウイズコロナ)という道を模索しなければなりません。
自民党総裁選が来週から本格化しそうです。高市早苗氏は安倍前首相の支援を取り付け推薦人の目途が立ち、既に出馬を表明している岸田文雄氏、出馬の意向を固めた河野太郎氏、更に石破茂氏も意欲を見せており、混戦になりそうです。菅首相は権力に酔い、結局は権力に潰されました。菅首相とは異なり、「権力は腐敗する」「権力は究極の媚薬である」という言葉を心にとどめ、国民の声を真摯に聞き、国民に寄り添い、国民にビジョンや理念を丁寧に説明し、国民の共感を得て、国民と共に進んでいけるリーダーが選ばれることを期待します。派閥やムラ社会の論理で選ばれることだけは避けてもらいたいものです。
さて、今日は、本の紹介の日ですが、ハーバード・ビジネス・レビューに載った論文を紹介します。それは、クレイトンM・クリステンセン「『イノベーションのジレンマ』への挑戦」という論文です。
クリステンセンと言えば、ハーバード・ビジネス・スクールの教授で、イノベーション研究の一人者、「イノベーションのジレンマ」「イノベーションの解」「イノベーションのDNA」(いずれも翔泳社)などの著書でも世界的に有名です。
イノベーションのジレンマとは、健全かつ合理的で優れた経営を行っていると思われている企業や業界をリードする優良企業が、技術と市場の破壊的変化に直面して失敗してしまうパラドクスを説明したクリステンセン教授の考え方です。
この考え方によれば、業界をリードする優良企業がその地位を失う最大の原因は、健全で合理的な経営にあるとされます。これは一見矛盾しているように見えますが、失敗した企業には成功している間の意思決定方法に、のちに失敗を招く要因があるのです。
優良企業は、持続的技術に投資を行うことで製品の性能を高めています。持続的技術というのは、その企業の製品を支持している顧客が今まで評価してきた基準に従って従来の製品の成功を高めるものです。一方、破壊的技術は、短期的には製品の性能を引き下げますが、従来とは全く異なる価値基準を市場や顧客にもたらすものです。破壊的技術による製品は持続的技術に比べて低性能・低価格・シンプルで、これまでの製品に慣れ親しんだ顧客は興味を示しません。評価するのは少数の新しい顧客で、市場規模は小さく、当初は期待できる収益も少ないのです。したがって、優良企業は、この新市場への参入は見合わせ、従来の製品に投資を継続するのが合理的で正しい判断です。
ところが、ある一定水準まで性能が高まると、価格や使いやすさなど性能以外の面を評価する顧客が現れ、それがさらに進むと、やがては破壊的技術による製品市場が従来市場を侵食するまで急成長し、持続的技術でリードしていた優良企業が業界のリーダーから転落することになるのです。
また、優良企業が他社よりも優れた製品を供給しようと、より性能の高い製品の開発に努力すると、顧客が求めている性能を追い抜いてしまうことがあります。その中で、当社は低性能だった破壊的技術が、顧客が求める水準と合致すると、顧客は優良企業の製品よりも低価格・シンプルで使いやすい破壊的技術の製品を好むようになるのです。ここでも、最高の顧客の意見に耳を傾けより高い性能を目指す優良企業は、新しい市場への対応が遅れ、失敗するのです。
以上が、クリステンセン氏のイノベーションのジレンマの概要ですが、この論文は、破壊的変化に対応するために、組織が何を達成する能力を備えているかを判断するためのフレームワークを提供しています。
1.組織能力を決める3つに要因
組織が何ができ、何ができないかを規定するのは、経営資源、プロセス、価値基準の3つの要素です。
- 経営資源 質の高い経営資源が豊富にあれば変化に対応できる可能性は高まります。
- プロセス 経営資源を商品やサービスという一段高い価値に変容させるために、相互作用、調整、コミュニケーション及び意思決定のパターンなどのプロセスが重要な意味を持ちます。プロセスの本質は、社員が常に業務を一貫した方法で成し遂げられるように設定されることで、容易に変更してはいけないものですが、ある仕事を成し遂げるために必要なプロセスが、それ以外の仕事を行うことを不可能にするということもあり得ます。多くの企業が変化に対応するうえで欠けている能力のうち最も深刻な課題は、資源をどこに投入すべきか、市場調査をどのように行うのか、分析結果を財務予測にどのように反映させるか、企画と予算をどのように折り合わせるかといった決定プロセスの中に潜んでいるのです。
- 価値基準・・・ 企業が大きく複雑になると、組織全体の社員を教育して、戦略方針やビジネスモデルとの整合性を取りながら一人ひとりが重要度を判断できるようにすることが大切になり、組織にとって、一貫性のある明確な価値基準が浸透しているかどうかが、企業経営の優劣を図る重要な尺度となります。しかし、社内に浸透した一貫性のある価値基準は、一方で、組織ができることを限定してしまいます。価値基準には企業のコスト構造やビジネスモデルが反映され、企業・社員の行動を規制するからです。
2.能力の重心はシフトする
企業が成長の初期段階では、経営資源、特に人材の影響力が大きいと言えます。それが時が経つと、組織の能力はプロセスと価値基準とに重心がシフトします。企業が成熟するにつれ、社員は、これまで行ってきたプロセスや価値基準が正しいものと思い込むようになり、既存のプロセスと価値基準に従って重要度を判断するようになり、これらを中心に組織文化が形成されるようになります。組織文化が出来上がれば、社員に自律的ながらも一貫した行動をとらせることができるのです。
このように、組織に何ができるか、何ができないかを規定する要素は時とともに変化し、当初は経営資源であったものが、プロセスと価値基準に重心がシフトし、最終的には企業文化へと変容します。組織にある問題に対応するためにプロセスと価値基準を構築し、この種の問題に直面しているうちは、組織運営は比較的簡単ですが、こうした要素は組織にできることを限定してしまうため、企業が直面する問題が根本的に変化すると能力の欠如として現れます。初期段階では能力の入れ替えは比較的容易ですが、企業の能力の重心がプロセスと価値基準に移り、企業文化という形で刻まれると、その能力を変えることは困難になります。
持続的イノベーションは、メイン事業の顧客が既に価値を認めている技術を活用して商品やサービスの機能・性能を向上させる持続的技術が原動力になっています。
一方で、破壊的イノベーションは、新しい種類の商品・サービスの導入により全く新しい市場を創造するものです。
持続的イノベーションを開発し、導入するのは、ほぼ決まって業界のリーダー企業です。こうした企業は決して破壊的イノベーションを起こすことはなく、それにうまく対処することもできないのです。業界のリーダーは、持続的技術を開発し導入するように組織が出来上がっているのです。日々、競合他社に差をつけるため、改良した新商品を開発し、そのために持続的イノベーション、技術的潜在能力を評価し、現在の商品に変わるものに対する顧客ニーズを評価するプロセスを開発します。持続的技術への投資もこうしたリーダー企業が持つ価値基準にも合致するのです。
破壊的イノベーションは頻繁に起こるものではないので、どんな企業にもこれに対処する決まったプロセスはありません。また、破壊的商品は、利益率が低く、優良顧客にも魅力的な商品ではないため、大企業の価値基準には合致しません。
しかし、スタートアップ企業は、経営資源が十分でなくても小規模な市場に挑戦できるのです。彼らは、コスト構造から、低利益率であっても採算が合うのです。また、慎重なリサーチを分析が必要な大企業と異なり、直感で動ける余地があり、こうした優位性が積み重なり、破壊的イノベーションに対応したり、作り出したりする能力とさえなるのです。
4.変化への適応能力を創造する
大企業が、こうした能力を開発するには、持続的なものにしろ破壊的なものにしろ、イノベーションに対応するために組織が新しい能力を求め、プロセスと価値基準を必要とする場合は、その能力を開発できる組織形態を構築しなければなりません。
クリステンセン教授は、その方法は3つあると言います。
- 新たな組織構造を作る・・・企業の内部に新たな組織を創り、そこで新しいプロセスを開発する。
- スピンアウトにより、新たな組織能力を開発する・・・既存組織からスピンアウト(分離独立)し、独立組織をつくる。新しい組織の中で、問題解決するのに必要なプロセスを開発し、価値基準を生み出す。
- 買収によって組織能力を獲得する・・・直面する課題に相応しいプロセスと価値基準をあわせ持つ別の組織を買収する
クリステンセン教授は、組織が変化に直面しているのなら、次の2つを自問してみようと言っています。
- 当社にはこの新たな状況で成功するのに必要な経営資源があるか
- プロセスと価値基準は変化に対応できるだろうか
2つ目の質問が必要なのは、組織に備わった能力は組織に何ができるかを規定すると同時に、何ができないかも規定しているからです。2つ目の質問を考えるに当たって次の質問を考えるように言っています。
- あなたの会社で通常進めている仕事のプロセスは、この新たな課題に対応するのにふさわしいものだろうか
- あなたの会社の価値基準に従うと、この新たな施策は、優先されるのだろうか、それとも尻すぼみに終わるのだろうか
クリステンセン教授は、これらの質問の答えが「ノー」であっても問題ないと言ってくれています。問題を理解することがその解決に欠かせない最も重要なステップだからです。ここで、希望的観測に立って物事を安易に判断してしまうと、イノベーションを担うチームの行く手に障害を作ることにもなりかねません
大企業がイノベーションを起こすことが困難な理由は、すぐに対応すべき課題があり、極めて有能な人材を雇いながらも、その課題とは相いれないプロセスと価値基準とを持つ組織構造内で働かせようとするからです。変転激しい時代、有能な人材を有能な組織に配置することは、経営陣の肩にかかる大きな責任なのです。
クリステンセン教授は、「イノベーションのジレンマ」の冒頭で「60年代、70年代の日本の驚異的な経済成長を支えてきた産業のほとんどが、欧米の競合相手にとって破壊的技術であった。小型車のトヨタ、携帯ラジオや超小型テレビのソニーなど、多くの企業が、欧米市場を下部から破壊した。ここ数年間、日本経済が停滞している理由は、日本の大企業が同様の力に動かされていることにある。市場の最上層まで上り詰めて行き場をなくしている」と言い、また「イノベーションの解」でも「日本の有力企業の多くが、他社の破壊を通じて飛躍的な成長を遂げた。だが破壊が既存の有力企業を脅かす恐れがあることなどから、日本の経済システムは構造的に新たな破壊的成長の波の出現を阻害している」とも言っています。
日本にもまだまだ多くの破壊的技術の種や芽があるはずです。これらを新たな顧客に結び付けることです。破壊的イノベーションを起こすために重要なのは、既存の顧客にとらわれず新たな顧客を創造することであり、そのために組織を変革していくことです。
休日の本棚 ザ・コーチ 最高の自分に出会える「目標達成ノート」
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で16,738人、そのうち東京2539人、神奈川1869人、埼玉925人、千葉1163人、愛知1720人、大阪2305人、兵庫870人、京都372人、福岡732人、沖縄507人、北海道251人などとなっています。検査数によるものなのか、減少傾向にあるものなのかはわかりませんが、先週よりは減少しています。政府分科会でワクチン接種で制限を緩和するかどうかが議論され、政府が検討しているロードマップでは、緊急事態宣言下でも感染対策を行った飲食店での酒類提供や営業時間の制限を緩和することが盛り込まれています。しかし、新規感染者数が一日当たり2万人近くいて重傷者も最多を更新している状況で、宣言緩和の議論をすることは、国民に謝ったメッセージを届けることになりかねません。デルタ株の感染爆発、更にはワクチンの効果を弱めるミュー株の出現、ワクチンを接種しても感染するブレークスルー感染もありうることから、集団免疫の獲得は困難な状況です。誤ったメッセージの発信で国民の意識が低下しさらなる感染拡大につながるのではないかと懸念します。
急転直下、菅首相が総裁選不出馬を表明しました。表向きは「コロナ対策に専念したい」と言っていますが、本気でコロナ対策に取り組みたいのであれば、再選を目指してコロナ対策を重点課題として取り組めばいいはずです。実際は、自民党の若手・中堅層を中心に「菅では戦えない」との「菅おろし」が加速し、総裁選での敗戦が濃厚だからでしょう。自民党史上、現職首相で総裁選に負けたのは福田赳夫ただ一人です。菅首相も、こうした不名誉な事態だけは避けたかったので、不出馬という選択肢を選んだものと思われます。なお、形勢不利で出馬を断念した総裁としては、鈴木善幸、河野洋平、谷垣禎一がいます(河野と谷垣は首相ではありませんでしたが)。この河野洋平の長男である河野太郎が、今回総裁選に出馬を決意したようです。河野家は戦前・戦後90年にわたり国政に議席を持ち続け、鳩山家、岸・安倍家と並ぶ政界の名門ですが、「総理になれない一族」と呼ばれています。祖父河野一郎も父河野洋平も総理の席に手が届きながら結局はつかみ取ることができず無念の人生を送っています。河野太郎が総理の座に就くことができるのかは見ものです。
さて、今日は、谷口貴彦著「ザ・コーチ 最高の自分に出会える『目標達人ノート』」(プレジデント社)を紹介します。この本の帯には、「最強のコーチは自分自身です。保証します。あなたの生き方が変わる本」とあります。また、帯の裏には本書が年齢や職業を問わず支持され続ける理由、読者から寄せられた感想として
- 「やらなければいけない」が「やりたくなる」に変わる、すごい本!
- 「変わる」とは本来の自分に「還る」ことだと知り、楽になりました。
- こんなにもわかりやすい言葉で、こんなにも深く心に伝わるものか。
- おぼろげだった「自分のやりがい」や「生きがい」が明確になりました。
- 多くの自己啓発書を読んできたが、見える変化が現れたのは初めて。
- 頑張っていおるのに成果が出ない営業マンや就活の学生さんにお勧め!
などと書かれています。
この本は、物語形式で書かれており、分かりやすく、読みやすくなっています。
主人公の星野(36歳)は、住宅メーカー営業部の万年係長です。人柄も良く、寄れなりに人望もあるのですが、いかんせん業績が振るいません。ある日、今月一番期待していた顧客に逃げられ、むしゃくしゃした星野は、いつもの公園にさぼりに出かけます。
犬を連れスケッチブックを手にした老人がベンチに座っています。星野は老人の隣のベンチに腰を下ろしますが、この老人との出会いが、星野の人生を大きく変えることになるのです。星野は翌週も公園に行くと老人が座っています。お互いに自己紹介すると、
この老人こそ、戦後の苦しい時代に、一代で大蔵建設を築き上げ、今ではいろいろな援助活動を行っている大蔵建設の会長、星野のあこがれの人でした。この日をきっかけに、大蔵会長の星野に対する個人授業が始まります。
ネタバレになるので、物語のストーリーは割愛します。短時間で読める本なので、興味があれば読んでみてください。
この本に書かれている言葉の中から役立つと思われる言葉を列挙しておきます。
- 夢を持っているだけでは、いつまでも夢のままです。夢を夢で終わらせないためには、夢に向かって一歩踏み出し、歩き続けることです。そのために必要な人生の技が【目標の達人】になることです。
- 世の中で何らかの達人になる人は、「知識」「道具」「能力」の3つのことを真剣に考え、優先して取り組みます。日々、達人になりたいと思う事柄についての知識を増やし、道具を整え、能力を強化するのです。目標についても同じです。
- 大蔵会長からの宿題ー目標・目的・夢・ゴール・ビジョンの意味を5人以上の人に聞き、辞書で調べる。目標とは、目的を達成するために設けた目当て、目的は成し遂げようと目指す事柄。目的、ゴール、目標の関係を理解して、区別しながら、自分の人生の様々な場面で設定することが大事です。
- 目標の達人になるには、どんな些細なことでもいいから、自由に「夢」や願望をリストアップし、その夢の中から、本当に心から実現したい夢をいくつか選んで、どうしてそれを手に入れたいのか、いつまでにどんな状態になりたいのかと言った「目的」や「ゴール」江尾ハッキリさせる。次に、そのゴールを手にするために、具体的な目印や通過点といった「目標」を設定する。ゴールに向かう行動を促進するために、ゴールを手にした瞬間の「ビジョン」や上手くいったときのイメージを繰り返し心の中に描く。
- 夢、目的、ゴール、ビジョンを明確に設定して行動していくことで、自分が得られるベネフィット(恩恵)にはどのようなものがあるか?→①ゴールを目指すことで、どんな人間に成長したかが重要。②多くの共感者や協力者と出会い、さらに大きなことがなせる ③精神的に強くなり、更なる大きな決断の時に必要な勇気を手にする ④人と人との絆が生まれ、人生の宝を得る ⑤人生がワクワク感やドキドキ感にあふれた、感情豊かで感動的なものになる ⑥知識が増える ⑦選択肢が増す ⑧決断力が増す ⑨集中力が増してパフォーマンスが高まる ⑩失敗の体験から次の成功の糧を手にする ⑪可能性の扉が開き想像もしなかった未来の自分に会える ⑫精神的な視点が高くなり、人生で見る景色が変わる ⑬人生を存分に堪能できる
- 夢やゴールを設定することを妨げているものは何か?→①他社との比較による批判や非難を受ける負の感情 ②結果だけで自分の価値を決められる評価 ③夢やゴールそのものに対して、他者の価値観に向けられる批判 ④結果による人格否定 ⑤弱みを克服することばかりを強いられる経験 ⑥学習性無力感 ⑦夢やゴールや目標に対する無知 ⑧変化に対する恐れ ⑨選択と決断に対する恐れ
- 目標はあくまでも目的のための通過点なので、いつでも再設定していい。目的には最後までこだわる方がいいが、目標はいくつもの選択肢がある。目標は最後までやり遂げるに越したことはない。結果はコントロールできないが、プロセスはコントロールできる。だからプロセスに全力を尽くし、結果は神に委ねる。
- 組織において、部下にゴールを設定するときのポイントは?→①会社の目標と個人の目標の接点を見つけて共有する ②部下にゴールを設定する目的は、結果に対する責任を押し付けるのではなく、ゴールに向かう過程で部下を成長させること(ゴールに対する結果の責任は与えた方にある)③目的はゆるぎなく、ゴールを手にする方法は無限にあると知り、目標は柔軟に対応する ④ゴール達成を構成している要素を分解し、そこに期日と量と基準を盛り込んで旗を立てる ⑤自分に合ったゴールまでのたどり方に合わせて、ゴールや目標を設定する
- ゴール設定をより効果的にするポイントは? ゴールの構成要素を分解して書いた設計図、ゴールを手にした時のイメージを書いた写真・絵・完成予想図、実際にゴールを手にする工程・行動計画を書いた施工図の3つ。
- ゴールや目標を立てるときには行動が伴います。行動にはエネルギーが必要です。だから、自分にとって行動のエネルギーになるのが何かを明確にして、ゴールを設定すればいい。さらにほかの人の行動の動機を知れば、その人のゴールへの行動を、持ってサポートすることもできます。ゴールや目標に向かう時の動機となる感情が、やりがいや生きがいと言われる。
- 生きがいややりがいにつながる目的とゴールをセットで設定する。ゴールのための行動計画を目標とすると、ノルマ化して意欲が下がる。目的やゴールは抽象度が高かったり、望む状態屋のボム結果を表しているので、自分でコントロールできないことも出てくる。目標は通過点なので、ゴールを構成している要素に分解して、いつ、何が、どうなっているかを表すもの。コツは、目標文の守護は必ず「私」にすることで、目標が自分でコントロールできるものになる。
- やるべきことを目標にしてしまうと、自分への問いかけは「今日やるべきことをやったか」という閉じた質問になる。答えは「やったか」「やれなかった」で、発展や成長が感じられない。本来の目標とは、作業を消化することではなく、効果的に行動したり、行動から学習したりするための指標である。目標を、目的やゴールに対する通過点だと考えれば、自分への問いかけは「今日、目標に向けてどんなことをやったか」「もっと古プ科的に進むためにはどうすればいいか」という開かれた質問になる。開かれた質問から思わぬ気づきを得たり、発展的思考ができるようになる。目標に向かうということは、自分を成長させること、その道のりで出会う壁や課題を解決する思考力を磨くことが重要である。
この本は、単なる自己啓発書ではなく、ビジネスにも役立ちます。ビジネスにおいても、目的や目標を設定し、戦略を立てて、目的に向かって行動を起こしていかなければなりません。その際抽象的で漠然とした目的を念頭に突き進んでいくというのは難しいものです。目的達成のために目的を細分化し、それぞれの要素において具体的な戦略を打ち立て、段階的に進めていくことが大切です。企業経営においても、目的達成に至る方法・プロセスは多数あり、軌道修正しながら目的へと向かうのは個人の自己研鑽・自己啓発と同じです。
組織を成長させるリーダーシップとは?
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で18,229人、そのうち東京3099人、神奈川1738人、埼玉1115人、千葉1089人、愛知1719人、大阪2501人、兵庫954人、京都478人、福岡795人、沖縄565人、北海道314人などとなっています。首都圏下は減少傾向が見られ、全国的にも高止まりしているようにも見えますが、お盆明け、更に9月の2学期開始で人流が増え、その影響がこれからでてくる可能性があり予断を許しません。
総裁選への立候補を表明した岸田文雄前政調会長が会見を開きました。死んだ魚のような目で原稿棒読みの菅首相とは違い、力のこもった熱意ある内容でした。「(個々のコロナ対策が)全体の中でどこに位置し、どれだけ我慢すれば目標に達するのか丁寧に説明する」「(菅首相のコロナ対策は)国民には説明が十分ではないのではないか、楽観的過ぎるとの声が多数ある」と暗に菅政権を批判し、「多分よくなるだろうでは打ち勝つことはできない。最悪の事態を頭に置く必要がある」とも言っています。危機管理においては最悪の事態を想定し、その対策を事前に立てておくことは基本中の基本です。菅首相は根拠なき楽観論を振りかざし泥縄的な対策しかできず、1年半にも及ぶ期間を国民に自粛を強い無為無策でやり過ごしました。岸田氏が危機管理の基本をしっかりと理解しそれを実践しようとしていることは良いことです。岸田氏は、菅政権が国民の声を無視し、民主主義の根幹が脅かされているとして、「我が国の民主主義を守る」と力強く言っています。素晴らしい言葉です。しかし、リーダー、特に一国の首相には魔物がついています。権力を握った途端それまで抱いていた理想、信念や熱意などが吹っ飛び、権力を振りかざしたくなるのです。ジョン・アクトン卿は「権力は腐敗しやすく、絶対的権力は絶対的に腐敗する」と言い、ヘンリー・キッシンジャー(ニクソン・フォード大統領時の国務長官)は「権力は究極の媚薬だ」と言っています。少なくとの菅首相にも、総裁・首相になる前には崇高な理想があり、菅政権も「国民のための内閣」としてスタートしたはずです。それが、いまや権力を奪われまいと政権維持に躍起になり醜い姿を晒しています。岸田氏には、今抱いている理想や信念、熱意を忘れることなく、総裁選に打ち勝ち、国民の声に素直に耳を傾け、民主主義を守り、権力という媚薬に溺れることがない首相になってもらいたいものです。
さて、今日は、Forbes JAPANの「ビジョナル南社長がマネフォ創業時に『起業はやめておけ』と言った理由」を取り上げます。昨日の続きと言っていい内容です。マネーフォワードの辻庸介氏とビジョナルの南壮一郎氏の両氏に、スタートアップから頭一つ抜け出しすためのリーダーシップについて話を聞いたものです。
組織の成長とともに起業家自身も成長し続けることができなければ、生き馬の目を抜くような厳しい競争環境で生き残ることはできません。スタートアップ企業のリーダーには強いリーダーシップが求められます。
これまで、何気なくスタートアップ企業という言葉を使ってきました。
スタートアップ企業とは、企業の形態を示す言葉ではなく、新たなビジネスモデルを開発し、市場を開拓する企業のことです。スタートアップ企業には、今までにない革新的なビジネスといった「イノベーション性」が不可欠です。ベンチャー企業は立ち上げ間もない企業で、必ずしもイノベーション性は要求されていません。スタートアップ企業は短期間の成長や急成長を狙った企業が多く、ベンチャー企業よりも短いゴールが設定されています。
1.組織を成長させる「リーダーシップ」とは?
辻氏は、リーダーシップには「すごくデカいビジョンを描けること」が必要だと言っていますが、イノベーション性が必要なスタートアップ企業だから「すごくでかい」という形容詞がついているように思います。しかし、リーダーシップには「こういう世界を作りたい」というみんながワクワクするようなビジョンを示せることは重要な要素の一つだと思います。その意味ではリーダーには、みんながワクワクできるようなビジョンを描いて、みんなとそれを共有し前へ進めていく力が必要です。
また、辻氏は「最後まで残ること」を挙げていますが、スタートアップ企業では、意見が合わず仲間割れで袂を分かつ人がいることから挙げられている言葉です。しかし、リーダーは「逃げられない、逃げることはできない」というのは、スタートアップ企業だけに限りません。「どんな嵐や豪雨で船が転覆しそうになっても、船上で最後まで旗を立て続ける人」こそがリーダーであり、自らの命を賭けて乗員を守り続けることができる人がリーダーです。リーダーには、そうした覚悟が必要です。
南氏は、リーダーシップの本質を表す言葉として、「願い」を挙げます。リーダーシップとは、「こうありたい」という未来を願う気持ちがあるかどうかということです。この願いに仲間が集まってくるし、その仲間から願いがさらに芽生え、そのつながりが仲間の絆を強め、願いを実現していくと言うのです。この願いが具現化したものが事業であり、ビジネスモデルであり、理念なのです。ビジネスの本質は、会社が持つ願いに向け、みんなが一枚岩となり、共通の目的に対して改善しながら前進していくことです。リーダーの役割は、願いを絶対に実現することを仲間と約束して必ず実現することです。
2.学びの場としての会社
世の中はものすごいスピードで変化し、特に働き方の変化は目まぐるしくなっています。デジタル化、リモートワークで働き方が大きく変わり、従業員は「この会社で働くことによって何が得られるのか」「この会社で働くことで自分の市場価値が上がるのか」を考えるようになってきています。企業は社員が経験・スキル・知識を伸ばすための投資をしていかなければなりません。
南氏は、「これからの人が会社に求めるのは『学ぶ場』だと思います。会社は『自分の価値を高める場』となっていくのではないか」と言っています。学びと価値向上を実現できる会社に優秀な人材が集まり、実現できない会社からは人材が流出していくというのです。
辻氏も、「社員の成長する機会を作るのが、社長や経営陣の役割で、経験を積むことが一番の成長なので、その機会をできるだけ多く提供することが大事」と言いいます。
3.この仕事がんばったら、世の中良くなるんだっけ?
辻氏は、年功序列ではなく、性別・年齢・国籍に関係なく、結果を出した人が新しいチャンスをつかめること、力のある人は入社数年でも責任ある仕事を任せるというのです。VUCAの時代では多様性は極めて重要です。
また、辻氏は、世の中をよくするという姿勢、「この仕事がんばったら、世の中良くなるんだっけ」という目配りも求められると言っています。自分の仕事がどのように社会課題を解決しているのかという点が重要になってくるというのです。
4.成功の近道とは?
南氏は、「働くうえでの価値観を自分で見つけられるのか、また時代に合わせて自ら変化させられるかどうか。多様な選択肢があることは素晴らしいと思う一方で、一人ひとりが自らのキャリアを主体的に考え、コミットしなくてはならない厳しい時代が到来している」と言います。しかし、成長している事業環境の下で、成長をもたらしている上司の下で働くことが成功への近道であると言っています。
これはスタートアップ企業に限ったことではないと思います。スタートアップ企業だけでなく、どのような企業の経営には、本質的な価値を見極め、アウトプットにコミットできる覚悟が必要です。それは単にリーダーや経営者ばかりでなく、いずれリーダーになろうとする人にもそうした覚悟が必要です。
スタートアップ企業に限らず、どのような組織・企業においても、リーダーは自ら描いたワクワクするようなビジョンをメンバーと共有し、同じ目的に向けて進んでいくことが大切であり、かつ命を賭けてメンバーを守り抜く覚悟が必要です。
成長し続ける組織の原動力
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で20,031人で、そのうち東京3168人、神奈川1921人、埼玉1203人、千葉1134人、愛知1876人、大阪3004人、兵庫1018人、京都532人、福岡1017人、沖縄535人、北海道351人などとなっています。首都圏では高止まりかピークアウトしていますが、大阪では過去最多で3000人を超え、関西圏や中京地域など増加傾向が見られます。厚労省は、コロンビア由来のミュー株の感染者が空港検疫で見つかったと発表しました。このミュー株は、WHOが「注目すべき変異株」に分類し、ワクチンの効果を弱める恐れがある変異が起きているということです。ワクチン以外に打つ手のない菅政権にとっては、ミュー株が感染拡大となれば、自らの首を絞めかねません。しっかりとした水際対策で封じ込みを図るべきですが、菅首相の危機感のなさでは、またしても市中に紛れ込んでくるように思います。昨日は月内解散という話題が出ましたが、自民党内の猛反発で、取り敢えずは思いとどまったようです。ただ自己保身に躍起になっている菅首相は何をしでかすかわかりません。中谷元防衛相は谷垣派のグループの会合で、「新しい総裁の下で政策を実行していく」と「菅おろし」ともとれる発言をし、菅首相が来週にも行おうとしている党人事・内閣改造に「党員や国民はおそらく辟易とする」と批判しました。中谷防衛相は「開かれた政治の場ということで、臨時国会を開いてしっかりと政府が、どのようなコロナ対策を実施して、どうするかということをきちんと説明したうえで、コロナ対策に必要な予算とか、法律を成立させて、コロナ対策に国民の理解をいただけるように努力して、それから解散すべき」と述べていますが、まさに正論です。自民党にも、まだ石破氏や中谷氏のように真面なことを言う政治家がいます。こうした真面な人がトップに立たないと自民党は変われません。
さて、今日は、Forbes JAPANの「ビジョナル×マネーフォワード 2精鋭経営者の『失敗に学ぶ力』『問いを立てる力』」という記事を取り上げます。
ビジョナル創業者南壮一郎氏の「突き抜けるまで問い続けろ 巨大スタートアップ『ビジョナル』挫折と奮闘、成功の軌跡」(ダイヤモンド社)、マネーフォワード創業者辻庸介氏の「失敗を語ろう『わからないことだらけ』を突き進んだ僕らが学んだこと」(日経BP)という2冊の本が出版されました。これらの本の根底にあるのは「成長を続けるための条件」であり、この記事は、この二人に、成長の原動力は何かを語ってもらったものです。
1.経営者の数だけ、「良き仲間」の意味がある
南氏は、「成長を続けるための原動力」を「好奇心」と言います。現状に満足せず、常に好奇心を持ち続け、世の中をよりよくするためにどのように貢献できるということがすべての問いの始まりだというのです。好奇心がある限り、変わり続けるために学び続けることができるのです。
辻氏は、「自分は何のために事業をしているか」を問い続けること、この原点を忘れないことが成長の原動力だと言っています。
そこに欠かせないのが「仲間の存在」です。
南氏は、「社内外の仲間は自分自身を高めてくれる良きライバルであり、成長の原動力、互いに信頼し切磋琢磨し合える存在」と言います。
さらに南氏は、「経営においては、自分一人で全方位を見ることはできません。一人で見られるのはせいぜい60度くらいで、残り300度はブラインド状態になっていると思うんです。だからこそ、見えない背中の部分を、同じ志の仲間に預けられるかどうか。ビジョナルのこれまでの経営は、信頼する仲間との切磋琢磨の歴史そのものです」と言っています。
2.絶対背中から刺さない人」を誘った
辻氏は、森氏の「仲間がライバル」という発言を面白いと言い、「僕自身は仲間をライバルと思ったことはない。仲間は同じ船の乗り組む員というイメージ」と言っています。しかし、同じ船の乗組員でも、同じ目的地に向かう者でもライバルでありえます。お互い傷をなめ合うだけでは成長はありえません。互いに同じ目標に向かって切磋琢磨しお互いが頑張ることでチームとしても個人としても成長していけるのです。その意味では南氏の「仲間がライバル」というのは間違っていません。
辻氏は、仲間を選ぶときには、会社の進もうとしている方向と、本人の目指している方向が一致することを強く意識していると言います。
スタートアップの時には、よく仲間割れが起きたりします。仲間割れが起きるのはスタートアップ時だけではありません。ある程度成熟しても、成熟するにつれ進もうと考える方向性が食い違ってくることがあります。スタートアップ時には見えないほどの小さな溝が徐々に大きくなり、ある程度成熟した段階で埋めることのできない溝となり仲間割れが起きるということもあるのです。
辻氏は「絶対背中から刺さない人を誘う」と言います。スタートアップは経営者にとっては生き死にを賭けた戦いです。その中で、生き残るために侃々諤々の議論を戦わせ真正面から傷を負うことはあり得ます。しかし後ろから不意打ちに仕掛けるような相手ではいけません。その意味では、本音を語り合え、時に喧嘩もできる信頼できる相手でなければならないのです。
3.成長し続ける組織を創る「仲間選び」
ビジョナルもマネーフォワードも、価値観を重視しています。
起業はクラブ活動ではありません。知り合いばかりが集まって楽しく行うことではありません。新たな人材を採用しなければならないのです。その際重要なのは、会社のミッションなりバリュー(価値観)に共感してもらえるかどうかです。価値観が一致していなければ、どんなにスキルや経験がある優秀な人でも、大企業ならいざ知らず、スタートアップの企業では害悪になってしまうことさえあります。
ビジョナルもマネーフォワードも、価値観を大事にし価値観が一致した人を採用してきたからこそ成長し続け、組織が大きくなっても、経営のベクトルを一つの方向に向かせられているのです。
4.なぜ、「社内標語」は意味がないのか
ビジョナルには「Visional Way」という会社のミッションやバリューを定めた憲法のようなものがあります。これを社内に浸透させることに力を注いでいます。
南氏は「どんなに素敵な言葉を並べても、それらの言葉が、社員一人ひとりに腹落ちして理解されなければ、意味がない」と言います。いくら社内標語として美辞麗句を並べてみても、それが社員一人ひとりの心の底に響き、共感を得られるものでなければ何の意味もありません。
南氏は「可能な限り分かりやすく、みんなが普段から自然と使っている言葉」「社員の口から自然と口を衝いて出るくらいシンプルな言葉を、すべての会社にぜひ大切にしてもらいたい」と言っています。
辻氏は、「本質的な価値観の共有はして、決まりごとはあまりつくらない。決まりごとが多いと人間の可能性を狭めて砕米かねない」と言います。スタートアップ企業では、本質的な価値観を共有しルールを最低限にすることで、潜在的な能力を引き出すことができ、チャレンジし続けることができます。
5.名経営者が皆、「言葉」を大切にする理由
楽天の三木谷浩史代表をはじめ多くの経営者は言葉へのこだわりが強いです。以前紹介した稲森経営12箇条もそうです。
ここでは、楽天の「成功のコンセプト」には「仮説→実行→検証→仕組化」「常に改善、常に前進」「スピード!!スピード!!スピード!!」という言葉があります。これは楽天の行動規範の一部になり、楽天社員はみんな暗記しています。これらが頭に刷り込まれ、行動にも表れるのです。こうした言葉を社員に浸透させる仕組みは、楽天の強さの一つです。
6.とにかく信頼だけは裏切るな
辻氏は、マネックスグループCEOの松本大氏の「失敗する可能性の方が高いけど。、人生は続くから信頼だけは裏切るな」という言葉を挙げています。「信頼をきちんと担保していれば、会社が上手くいかなくなっても次のチャンスはある。信頼を裏切ったらチャンスは二度とない」ということです。
従業員の「燃え尽き症候群」を抑制する方法
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で17,713人、そのうち東京2909人、神奈川1541人、埼玉996人、千葉1280人、愛知1611人、大阪2347人、兵庫1024人、京都446人、福岡685人、沖縄554人、北海道305人などとなっています。東京はじめ首都圏はピークアウトしてきたように見えますが、今日から9月に入り新学期が始まって人流が増える時期なので、再び拡大に転じないように気を付けたいものです。
先日来、総裁選の話が出ていますが、今度は、菅首相が9月中に解散に踏み切るとの話が出てきました(これを書いている途中に、「解散できる状況にない」との菅首相の発言が報道されましたが、信用できません)。来週にも党人事(二階幹事長交代)と内閣改造を行い、総裁選を先送り、衆議院解散・総選挙に打って出るということです。総裁選では若手・中堅の危惧感もあり、対抗馬岸田の出現で負ける可能性があることから、まずは衆議院で過半数を得て国民の信任を得たとして総裁選を有利に進めようという腹づもりです。二階を交代させ、内閣改造など刷新を図っても、国民は菅個人の能力や資質に問題ありとして支持率が低いのであって、それで支持率が上がると思ったら大間違いです。国民をバカにするのもほどほどにしてください。緊急事態宣言は延長されそうですが、緊急事態宣言下での解散などもってのほかです。国民の安心安全よりも自己の保身を優先する菅にはリーダ-として資質も能力も、胆力も大局観もありません。解散のための臨時国会ではなく、新型コロナ対策のための臨時国会を直ちに召集すべきですが、野党からの要求を拒否しています。これは明らかに憲法違反です。憲法53条は「いずれかの議員の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定されています。「召集を決定することができる」のではなく「しなければならない」のであって、召集は内閣の義務です。憲法違反も甚だしく許されることではありません。速やかの臨時国会を召集し、新型コロナ対策を真摯に議論すべきです。野党も何でもかんでも反対するのではなく、挙国一致で建設的な議論を行うことです。
さて、今日は、Forbes JAPANの「従業員の『燃え尽き症候群』をどうしたら抑制できるか」という記事を取り上げます。
燃え尽き症候群は、仕事との関係でいえば、今まで熱心に仕事に取り組んでいた人が、急に意欲や熱意を失ってしまう様態を指し、「バーン・アウト」とも呼ばれます。燃え尽き症候群の兆候としては、無気力や感情のない状態、仕事への熱意や意欲の欠如、相手にいい加減な態度や適当な態度をとってしまう状態などです。遅刻や欠勤が増え、仕事中にボーッとしている状態が多くみられるようになります。
燃え尽き症候群の症状としては、次の3つが挙げられることが多いです。
- 情緒的消耗感=仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態 ①自分の仕事がつまらなく思える ②体も気持ちも疲れ果てたと思う
- 脱人格化=無常で非人間的な対応 ①顧客や同僚などの顔を見るのも嫌だ ②顧客や同僚などと何も話したくないことがある
- 個人的達成度の低下=仕事を通した達成感の低下 ①こまごま気配りをするのが嫌になる ②仕事の結果がどうでもよくなる
こうした燃え尽き症候群は、コロナ禍で明らかに増えてきています。「自社の従業員が情緒的・メンタル的に充実している」と答えるリーダーの割合は低く、「燃え尽き症候群が原因でハイパフォーマー(業績の高い人材)が退職する可能性がある」と考えているリーダーは多いのです。
燃え尽き症候群のために、売上やイノベーション、生産性が低下し、更にこれらを牽引していた優秀な人材が退職するという事態になれば、企業は大きな痛手を被ります。それにもかかわらず、従業員の燃え尽き症候群に対する対策をとっている企業は少ないのです。
燃え尽き症候群は、企業にとって、対処できない解決不可能な課題ではありません。
この記事では、「企業がリソースを費やし、従業員に対して、レジリエンス(復元力・回復力)や楽観思考、自己効力感を高め、更に考え方を『内的統制』型に変える方法を教えることで、燃え尽き症候群は減少する」と言います。
内的統制/外的統制というのは、人生に起こる出来事や結果をどれだけ自分自身でコントロールできると思っているかの度合いを表す概念であり、「努力すれば成功できる」と信じている人な統制の所在は自分の内側にあり、「自分では統制できない外部の状況によって成功が妨げられる」と考える人は統制の所在が自分の外側にあります。
この内部統制/外部統制は、生まれつきの特徴ではなく、適切な介入によって内的統制を高めることができるものなのです。
また、レジリエンスや楽観思考という心理的スキルについても、訓練により高めることができるとされています。
したがって、リーダーは、従業員の燃え尽き症候群を緩和する手段を講じることは可能です。燃え尽き症候群に苦しむ従業員は、疲労・ストレス・重圧・フラストレーション・と言った単語を口にすることが多くなるという研究結果もあり、リーダーはメンバーとの会話を通じて、こうした単語に気づければ、メンバーの燃え尽き症候群の兆候を見つけることができます。ここでも重要なのは、リーダーとメンバーの人間関係・信頼関係です。そしてリーダーのコミュニケーション力です。
また、従業員のレジリエンスや楽観思考を高める教育もあります。従業員が簡単なエクササイズを行うことで、自分自身の精神状態を改善できるのです。トレーニングによって朝にその日の目標を考える習慣をつけることで、従業員の自己効力感を高め、燃え尽き症候群を抑制できるのです。
この記事では、「どうすれば燃え尽き症候群を減らせるかではなく、燃え尽き症候群の抑制を優先課題と考え、積極的に投資するかどうかなのだ」と言っています。
燃え尽き症候群を解決するために効果的な研修をしっかりと行うこと、そのための投資を惜しまないことです。
一般に燃え尽き症候群になりやすい職場として、次のようなものが挙げられます。
- 人を相手にする業務がある
- サービスを提供している
- 人材が不足している専門職がいる
情緒的な消耗感によって起こる燃え尽き症候群は、人を相手とし感情が動かされる「感情労働」の職場で起こります。医療・介護、教育、ホテルなどが例として挙げられます。これらの職場では、知らず知らずのうちに過重労働となり、心身への負担が蓄積されていきます。心身への負担が増えると、パフォーマンスは低下し、生産性の低下や離職が増えることになります。
そこで、燃え尽き症候群になりにくい職場づくりが大切です。そのためには次の点が重要です。
- 共感と思いやりのある職場づくり・・・相手に対する経緯や思いやりのある職場ではリラックスした精神状態で仕事に集中でき、個人のパフォーマンスが向上し組織全体の成長にもつながる
- 精神的サポートを行う・・・無気力や感情のなさという燃え尽き症候群には精神的サポートが不可欠。仕事へのモチベーションを維持するために褒めるなど上司と部下の人間関係、信頼関係の構築が必要。
- チームとしての成果を祝う・・・職場編も帰属意識や愛着が必要。チームとして目標を定め、メンバーが協力・切磋琢磨して目標達成を目指す。
燃え尽き症候群はいつでもどこでも誰にも起こりうるものです。特に現在のコロナ禍では、誰もが不安を抱いており、燃え尽き症候群が起こりやすくなっています。
社員が燃え尽き症候群に陥ったら、回復するのは大変で時間もかかりますし、最悪離職という事態になってしまいます。最悪の事態に陥らないためには、リーダーは従業員との対話を通じ、メンバーの燃え尽き症候群の兆候を把握し、サポートしケアに努めるとともに、燃え尽き症候群が起きにくい職場づくりに努める必要があります。
「輝かしい失敗」から学ぶ
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で13,638人、そのうち東京1915人、神奈川1719人、埼玉1106人、千葉1030人、愛知1509人、大阪1605人、兵庫433人、京都345人、福岡626人、沖縄207人、北海道266人などとなっています。東京で2000人を下回りるのは7月26日以来ですが、このところ保健所の追跡が追い付かず検査数が減っているためで、相変わらず陽性率は高い状態にあります。重症者数は2075人で18日連続で過去最多を更新し、人工呼吸器を使った治療を受けている患者は900人を超え、第3波・第4波のピーク時を大きく上回っています。第3波・第4波では高齢者が重傷者の中心であったことを鑑みれば、現在感染拡大しているデルタ株の脅威を感じます。東京医科歯科大学は、英国由来のアルファ株に類似した変異を持つ新たなデルタ株を国内で初めて確認したと発表しました。この新たなタイプのデルタ株はこれまで世界で8例しか確認されておらず、感染力の強さやワクチンの効果など全く不明ということです。患者に渡航歴はなく、日本国内で変異したものか、オリンピックで海外から持ち込まれたものかもわかりません。この新しいタイプのデルタ株が広がっていく可能性も否定できません。
さて、今日は、東洋経済オンラインの「『愚かな失敗』に終わらせないための組織風土科学者・経営者の『輝かしい失敗』から学ぶ」を取り上げます。
現在は変化のスピードが速く、かつ複雑になってきています。経済や政治、あらゆる場面で、大きな変革が起き、予想もつかない出来事が次から次へと起こっています。このような目まぐるしい変化の中で、常に成功するとは限りません。成功体験ばかりを称賛し、失敗を隠そうとする風潮では、成長も発展もあり得ません。むしろ生き残ることすらできません。「失敗は成功につながる学びの宝庫である」とは昔からよく言われることですが、今のように常に変化し続ける環境でこそ、真に生かされる言葉ではないかと思います。
この記事は、失敗研究を行っているオランダ・マーストリヒト大学ビジネススクールのポール・ルイ・イスケ教授の「失敗の殿堂:経営における『輝かしい失敗』の研究」が邦訳されたことに伴い、同書の理論をもとに日本の失敗を読み解いたものです。
1.輝かしい失敗
オランダのマーストリヒト大学に「輝かしい失敗研究所」なる機関が存在し、その最高失敗責任者がイスケ教授です。冗談ぽい肩書のようにも見えますが、この肩書こそ「失敗を恥ずべきものではなく、ポジティブに、ひたすら前向きにとらえようとする意思」の表れです。
「輝かしい失敗」は「価値を生み出そうとしたけれど、本来意図した結果が出せなかった試み」であり、「そこから学んだ教訓や学習経験」により「最終的に何らかの価値を生み出す失敗」のことです。トーマス・エジソンが言う「失敗は成功のもと」の「成功のもと」になる失敗のことです。
エジソンは次のような言葉を残しています。
- 人生に失敗した人のの多くは、諦めたときに自分がどれほど成功に近づいていたか気づかなかった人たちだ。
- 私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、上手くいかない方法を見つけただけだ。
- 私は決して失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ。
- 失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ。
イスケ教授は、「輝かしい失敗」を次の16の意類型に分類しています。
- 見えない像・・・全体は部分の総和より大きいのに部分しか見ない
- ブラックスワン・・・予見できない出来事が頻発する
- 財布を間違う・・・誰かには好都合だが、他の誰かに負担がかかる
- チョルテカの橋・・・解決すべき問題は1か所にとどまっていない
- 欠席者のいるテーブル・・・すべての関係者が参加しているとは限らない
- 熊の毛皮・・・成功する前に結論を急ぎすぎる
- 電球の発明・・・何をやっているか分かっていれば、それを研究とは言わない。試行錯誤を軽んじる
- 兵隊のいない将軍・・・アイデアはいいが、ヒト・モノ・カネ・情報・知識等のリソースが不足
- 捨てられないガラクタ・・・やめる術が分からない
- 深く刻まれた渓谷・・・染みついた思考・行動パターンから抜け出せない
- 右脳の功罪・・・合理的根拠のない直感的な判断をしてしまう
- バナナの皮で滑る・・・アクシデントが起きる
- ポスト・イット・・・失敗したけど、偶然の幸運にも恵まれる
- アインシュタイン・ポイント・・・単純化しすぎても、複雑化しすぎてもいけない
- アカプルコの断崖ダイバー・・・タイミングを誤ってはいけない
- 勝者総取りの理・・・生き残れるのは1人しかいない
イスケ教授が挙げる16の類型が本当に「輝かしい失敗」の類型と言えるのか疑問がないわけではありません。なぜなら、「成功のもと」となる失敗には、少なくとも何がしかの「成功の芽」がなければならないからです。「成功の芽」がない失敗では、いくらもがいても「成功のもと」にはなり得ないのです。
2.失敗の2つのタイプ
イスケ教授は、失敗には2つのタイプがあると言います。
- タイプ1・・・意図した結果と違うが依然として価値があり、時には意図した結果を上回ることもある。
- タイプ2・・・当初に意図したほどの価値を生み出せなかったが、学習体験が詰める。
3.ビジネスでの失敗
柳井氏は、著書「一勝九敗」の中で、「経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある」「十回新しいことを始めれば九回は失敗する」と言っています。
「失敗からの立ち直り」と題した一節では「問題は、失敗と判断したときに『すぐに撤退』できるかどうかだ」「儲からないと判断したら、撤退もスピードが大事」と言っています。前述の「9.捨てられないガラクタ」を回避し続けたからこそ今日に至り成長があるのです。
⑵ 「伊右衛門」開発での「輝かしい失敗」
サントリーは、プーアール茶をベースとした「熟茶」という商品を発売し、「社内史上最悪の失敗」を経験します。中国でプ―アール茶は「神秘のお茶」と珍重され、これにサントリーの技術が加われば成功間違いなしと販売するのですが、通常「売れない商品」の半分程度しか売れず、1年で生産中止に追い込まれます。
競合相手は緑茶に強く、サントリーはウーロン茶でメガブランドを持っていました。そこで、競合相手が「渋味大」の緑茶で勝負するなら、サントリーは「渋味なし」の中国茶(プ-アール茶)で差別化を図ろうとしたのですが、平面的なポジショニングで差別化を図っても、消費者には意味がなかったのです。中国茶という自社の土俵で、自社の商品と争っているだけなのです。これは、「サントリー=中国茶」という思考パターンから抜け出せなかった「10 .深く刻まれた渓谷」です。
サントリーは、この失敗を糧に、緑茶に真正面から向かって、伊右衛門の開発に着手し、競合他社との戦いに真正面から挑み、大ヒットに導いたのです。
⑶ 挑戦と失敗を奨励した鈴木敏文氏
イスケ教授は、社員が失敗から学習できる「環境」を特に重視し、「安心して失敗できる場を作る」ことを奨励しています。
セブン&アイホールディングの前会長兼CEOの鈴木敏文氏は、社員に対し、徹底して新しいことへの挑戦を求める厳しい経営者でした。新しいことに挑戦する限り、失敗はつきものです。鈴木氏は「どれだけ失敗しても、店がつぶれても構いません。ただ全力で新しいことに挑戦してください」と言っていました。
また、イトーヨーカ堂では、地域の固有ニーズに応えるため、店長が自由な発想で運営する「独立運営店舗」の実証実験を行い、その際、鈴木氏は「売り上げが半分になってもいい。好きにやりなさい」と言い、セブン銀行設立プロジェクトでは「失敗してもいいじゃないか。失敗も勉強のうちだよ」と言っています。
いずれも、担当者たちはプレッシャーから解放され、思い存分、能力を発揮し輝かしい成功へを導いたのです。
失敗を恐れると「10.深く刻まれた渓谷」から抜け出せず、「9.捨てられないガラクタ」を持ち続け、試行錯誤せず「7.電球の発明」に至ることができなくなってしまうのです。
⑷ 稲森和夫氏の失敗観
自分の会社は輝かしい失敗が生まれる組織風土になっているか、イスケ教授率いる「輝かしい失敗研究所」では、次の3つの評価項目を挙げています。
- 実験・・・意思決定と行動において、リスクを取る自由度はどこまであるか
- 学習・・・成功と失敗の両方から学んでいるか
- 進化・・・どのくらい学習経験が生かされ、新しい洞察を踏まえてアプローチが変わったか
中でも、イスケ氏は、失敗により習得した知識を活かし、より高レベルへと達するスパイラル上の成長を重視しています。
「仕事で失敗した時にどうしたらいいか」という質問に対し、前述の鈴木氏は「失敗したことは早く忘れろ。忘れて仕切り直せ」と言い、稲森氏は「失敗しないために漠然と無意注意ではなく、目的を持って意識や神経を対象に集中させる有意注意」と言っています。
仕事の失敗は誰もが平気でいられないから、そう簡単に忘れることはできません。ただ、失敗したことを気にしてとどまっている限り、先へは進めません。だから、早く忘れて、次の挑戦へと一歩踏み出さなければなりません。挑戦していけば、前回の失敗がプラスに活かされてきます。無意注意ではなく、「今度はこれを目指いてやっていこう」と目的をもって意識や神経を集中させる有意注意で臨めるようになるのです。
この記事では「『実験→学習→進化』のプロセスが埋め込まれているかどうか。『愚かな失敗』で終わるか、『輝かしい失敗』が生まれるかどうかは、多分に組織風土による」と言っていますが、その通りでしょう。
失敗を「愚かな失敗」で終わらせず「輝かしい失敗」へと高め「成功のもと」となるような組織風土、組織文化の醸成が重要です。